第1 食品メーカーへの影響は還付・利益・資金繰りを分けて考える
食料品の消費税率が1%になれば,食品メーカーでは,売上げの消費税が減り,一般課税で消費税の還付が生じる場合がある。
しかし,還付される金額がそのまま利益として増えるわけではない。
経営への影響は,①税抜と税込の価格条件,②一般課税・簡易課税・免税の違い,③食品原料と包装・物流・設備等の費用構成,④還付までの資金,⑤販売数量の変化によって異なる。
令和8年10月13日現在,食品1%は,第222回国会へ提出され,衆議院で審議中の政府法案の内容である。
現在の対象飲食料品の軽減税率は8%であり,1%への変更が既に施行されたという意味ではない。
以下では,政府案どおり令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間実施される場合を説明する。
法案の段階は,衆議院の議案審議経過情報と国税庁の特設サイトで確認できる。
国税庁の税率引下げQ&Aも,法案成立等を前提とする資料である。
本記事の計算例は,税率だけの効果を分けるための仮定であり,実在するメーカーの申告税額,業績又は需要の予測ではない。
制度の対象と5つの特例全体は,食料品消費税1%法案の解説を参照されたい。
第2 食品原料も1%になるが,包装・物流・設備まで1%にはならない
1 売上げと仕入れを取引ごとに分類する
(1) 売上げと食品原料の対象判定
政府案の1%の対象は,現在の軽減税率対象である飲食料品の譲渡である。
酒類や外食は対象外であり,軽減税率対象の新聞も,今回の飲食料品1%には含まれない。
メーカーの社名や業種ではなく,個々の商品・取引の内容で判定する。
対象食品を作るために購入する小麦粉,砂糖その他の食品原料も,対象飲食料品の譲渡に当たれば原則1%となる予定である。
「売上げだけが1%,メーカーの原材料費はすべて10%」という説明は正確ではない。
原料,資材,酒類,役務,切替え前の8%取引を分ける必要がある。
(2) 税率別の費用
| 取引・支出 | 現在 | 法案の対象期間 | メーカーの確認点 |
|---|---|---|---|
| 対象となる完成食品の国内販売 | 8% | 原則1% | 酒類,外食等との区分 |
| 対象となる食品原料の購入 | 8% | 原則1% | 食品に当たるか,旧税率取引か |
| 包装紙・容器等を資材として単独購入 | 10% | 10% | 食品の販売に付帯する包装とは区別 |
| 電気・ガス,製造機械,広告等の課税取引 | 10% | 10% | 控除できる税額と用途 |
| 運送会社への運賃,加工のみの外注等 | 10% | 10% | 食品売買か役務の提供か |
| 従業員の給与 | 仕入税額なし | 仕入税額なし | 雇用と外注を区別 |
この表は通常の課税取引を示したものであり,輸出,非課税取引,個別の例外まで一括処理するものではない。
課税仕入れの範囲と給与の除外は,国税庁のNo.6451で確認できる。
給与の多いメーカーについて,人件費に10%を掛けて還付額を計算してはならない。
2 食品を包んで売ることと包装資材を買うことは別である
(1) 食品の包装と包装資材の仕入れ
通常必要な包装を付帯した食品の販売と,メーカーが包装紙を仕入れる取引は,別々に判定する。
国税庁の軽減税率Q&A・個別事例編問29・10頁は,お菓子用包装紙の仕入れを軽減税率の対象外としている。
完成した菓子の販売に食品税率を適用しても,包装紙の仕入税率が同じになるわけではない。
(2) 送料の請求と運送会社への支払
また,同Q&A問39・15頁では,別途請求する送料は食品の譲渡の対価ではなく,送料込みで別途送料を求めない食品販売とは扱いが異なる。
メーカーが運送会社に支払う運賃と,顧客に提示する送料込みの商品価格も区別する。
税率ごとの商品・費用マスターだけでなく,契約と請求書の構成を確認することが必要である。
第3 一般課税では還付が増えても税抜利益が増えるとは限らない
1 控除できる仕入税額が売上税額を上回れば還付になる
(1) 実際の仕入税額と控除要件
一般課税,いわゆる本則課税は,売上げに係る税額から,控除できる実際の仕入税額を差し引くことを基本とする。
食品の売上税額が1%に減る一方,包装,電気,設備等の10%の仕入税額が残れば,控除額が売上税額を上回る場合がある。
控除不足額の還付は,消費税法30条・52条に基づき,申告によって受けるものである。
食品を売るメーカーがすべて還付になるわけではない。
10%の仕入れの額,食品以外の売上げ,給与の割合,輸出及び控除できる範囲によって結果は変わる。
一般課税でも,帳簿・請求書等の保存,非登録事業者からの仕入れ,非課税売上げと共通する費用等を確認する必要がある。
保存要件は国税庁のNo.6497を参照されたい。
(2) 単純化した差引税額の式
対象食品の国内売上げしかなく,仕入税額をすべて控除できる単純な場合,税抜食品売上げをS,税抜食品仕入れをF,税抜の10%課税仕入れをGとすると,国・地方合計の差引税額は「0.01×(S-F)-0.10×G」で表せる。
例えばSがF以上であれば,Gが「S-F」の10%を超えると,この式の差引税額はマイナスになる。
これは仕組みを説明する式であり,旧8%取引,控除制限,10%売上げ,返品,中間納付及び申告上の端数処理を含む実際の申告計算ではない。
2 120万円納付から160万円還付へ変わる計算例
(1) 設例の前提と比較表
税抜の食品売上げ1億円,食品原料等の仕入れ6000万円,包装・電気等の10%課税仕入れ2000万円があると仮定する。
税抜価格,売上数量,仕入数量は変わらず,すべての仕入税額を控除でき,全額入金・支払済みとする。
8%取引だけの仮想期間と,食品が1%の取引だけの仮想期間を比較し,給与,減価償却,借入返済,設備投資,その他の費用及び端数処理を省略する。
| 項目 | 食品8% | 食品1% |
|---|---|---|
| 食品売上げの税込入金 | 1億800万円 | 1億100万円 |
| 食品仕入れの税込支払 | 6480万円 | 6060万円 |
| 10%課税仕入れの税込支払 | 2200万円 | 2200万円 |
| 売上税額 | 800万円 | 100万円 |
| 控除する仕入税額 | 680万円 | 260万円 |
| 差引税額 | 120万円納付 | 160万円還付 |
| 入金-仕入支払-税納付+還付 | 2000万円 | 2000万円 |
(2) 税精算後の残額
1%の場合,売上税額100万円から,食品の仕入税額60万円とその他の仕入税額200万円を差し引き,160万円の還付になる。
しかし,売上げの税込入金も減っているため,税精算後の残額は同じ2000万円である。
「120万円を納めず,160万円が戻るから,280万円の利益増」と計算することはできない。
税抜売上げ1億円から,税抜の食品仕入れ6000万円とその他の費用2000万円を差し引く計算も変わらない。
表の2000万円は,省略した費用を引く前の取引残額であり,会社の最終利益ではない。
国税庁のNo.6901は税抜経理と税込経理を分けて説明しているが,税込経理で還付金を収益に計上することだけを取り出して経済的な利益増と判断してはならない。
3 税精算前の資金は280万円少なくなる
(1) 還付前の手元資金
前の例で税の納付・還付をまだ行っていない時点の「入金-仕入支払」は,食品8%で2120万円,食品1%で1840万円である。
税抜の取引条件が同じでも,1%の方が手元の残額は280万円少ない。
その後,旧税率側は120万円を納付し,新税率側は160万円の還付を受けることで,両方が2000万円になる。
したがって,最終的な税精算が中立であることと,還付までの資金が不要であることは別である。
工場・生産設備を購入する場合には,設備代とその消費税の支払,借入実行・返済,売掛金回収及び還付の時期を並べる必要がある。
資金調達の金利,申告事務及びシステム改修の費用が増えれば,その費用は会社の利益にも影響する。
(2) 課税期間短縮と申告負担
課税期間を3か月又は1か月へ短縮する現行制度は,還付申告の機会を早める選択肢となる。
ただし,短縮する課税期間の初日の前日までの届出,原則2年間の継続及び申告回数の増加を伴い,即日の還付入金を保証するものではない。
国税庁の税率引下げQ&A問3-3・14頁を参照し,申告負担と資金効果を比較する。
第4 簡易課税・免税のメーカーは同じ計算にならない
1 簡易課税には食品売上税額の同額控除が予定されている
(1) 食品売上税額の同額控除
通常の簡易課税では,実際の仕入税額に代えて,売上税額と業種別のみなし仕入率を使う。
通常の製造業は第三種事業でみなし仕入率70%であるが,政府案の1%対象の食品売上げを,その率だけで計算してはならない。
国税庁の税率引下げQ&A問3-6・18頁~19頁と法律案4条は,対象食品の売上税額と同額を仕入税額として計上する特例を予定している。
この特例で対象食品売上げの差引税額がゼロになることと,包装・機械等に払った実際の消費税が還付されることは異なる。
実際の仕入税額を追加して控除する制度ではないため,第3の一般課税の還付例を簡易課税へ当てはめることはできない。
食品原料の税込支払額が下がる効果と,従来の納付税額が変わる効果を合わせて,会社全体の収支を比較する必要がある。
(2) 食品以外の売上げとの区分
酒類,食品ではない商品,加工役務等の売上げを併営する場合には,それらの売上税額を別に計算する。
同Q&A問3-7・19頁~20頁では,75%ルールの判定・計算から1%対象の食品売上げを除くとしている。
2割・3割特例にも関連する扱いがあるが,利用できる事業者と課税期間を先に確認し,すべての食品メーカーが使えると考えてはならない。
2 免税のままでは還付されず,価格条件によって収支が変わる
(1) 免税事業者の仕入負担
免税事業者のままであれば,包装・設備等の購入で消費税を負担していても,仕入税額の還付を受けられない。
この点は国税庁のNo.6613で確認できる。
食品原料の税込支払額が下がる可能性はあるが,取引先から製品価格の引下げを求められることも含め,売上入金と仕入支払の両方を見る。
(2) 課税事業者・インボイス登録との区別
免税事業者の売上げに,課税事業者と同じように「預かった1%から実際の仕入税額を控除する」という計算を置くことはできない。
また,インボイス登録を受けている間は課税事業者となるため,会社の規模だけで免税と決めつけてはならない。
税額を実額控除しない方式では,食品原料の支払額が減ることが収支に影響し得るが,一般課税の中立例とは条件が違う。
3 一般課税への変更は決算期・届出・設備取得も含めて比較する
(1) 特例が適用される課税期間
政府案には,食品を販売する事業者について,課税選択や簡易課税の取りやめに関する届出特例がある。
簡易課税から一般課税への特例は,令和9年4月1日を含む課税期間中の届出によって,その課税期間から一般課税で申告できるようにする予定のものである。
全社一律に4月1日からだけ計算を切り替える制度ではなく,決算期と届出の効力が生じる期間を確認する必要がある。
(2) 届出と設備取得の制限
課税選択,インボイス登録及び課税期間の短縮は,別の手続である。
課税事業者の継続期間や,調整対象固定資産・高額特定資産の取得による制限も確認する。
税率引下げQ&A問3-2~3-5・11頁~17頁を基に,食品以外の売上げ,控除可能な仕入れ,設備投資及び申告費用を含めて比較し,還付見込みだけで方式を変更しないことが重要である。
第5 製品価格と販売数量がメーカーの利益を左右する
1 税抜価格を維持する場合と税込価格を維持する場合
(1) 税抜価格を維持する場合
対象食品の税抜価格1000円を維持すれば,税込価格は1080円から1010円になる。
70円の値下がりは,旧税込価格1080円に対して約6.48%であり,7%値下がりとは異なる。
ただし,これは価格と数量を固定して税率だけ変えた計算である。
(2) 税込価格を維持する場合
反対に税込価格1080円を維持する場合,1%を除いた税抜価格は「1080円÷1.01」で約1069.31円となる。
以前の税抜1000円と比べ約69.31円増えるため,数量と税抜費用等が同じなら利益を増やす方向に働く。
税率の変更と同時に本体価格を変更する条件であり,減税だけで自動的にこの利益が得られるわけではない。
(3) 卸価格と店頭価格
メーカーの卸価格と,小売店が消費者へ示す税込価格は別々の価格である。
店頭価格が下がったことだけからメーカーの税抜売上げが減ったと判断することも,店頭価格が据え置かれたことだけからメーカーがその差額を得たと判断することもできない。
契約が税抜価格に税額を加える合意か,税込総額の合意か,価格改定条項があるかを確認する。
契約・表示・請求書の詳しい対応は,食料品消費税1%法案への事業者対応を参照されたい。
2 需要増加と終了時の反動は条件付きで考える
(1) 消費者需要と税率復帰時の反動
消費者向けの税込価格が下がれば,購入数量や購入する商品の構成が変わる可能性がある。
一方,節約できた金額がすべて食品に再支出されるとは限らず,メーカーの受注増加や利益率の上昇を税率だけから断定することはできない。
食品の種類,保存性,価格設定,競合商品,小売の販売方針及び家計の支出配分を確認する必要がある。
日本総研の藤本一輝は,令和8年8月5日のレポート1頁で,2年後の税率復帰に伴う消費の反動と,企業の価格設定による影響を論じている。
同頁の図表4には,海外の価格反応が対称な例や,減税時の方が大きい例も掲げられているため,どの国・商品でも同じ価格転嫁や反動が起きるという一般則にはできない。
これは実施後の日本の食品メーカーを測定した結果ではなく,メーカー別の販売増減幅は本記事の確認資料からは分からない。
(2) 取引先の税精算後の仕入負担
一般課税で仕入税額を全額控除する卸・小売・飲食店にとっては,税精算後の仕入負担は税抜価格に左右される。
そのため,税込の仕入支払額が減るだけで,取引先の実質的なコスト減少や発注増加が生じると説明することはできない。
買い手が簡易課税・免税である場合や控除に制限がある場合は,別に比較する。
飲食店側の影響は,食品1%と飲食店の納付税額・利益・資金繰りで整理している。
3 価格交渉では税率と合理的な費用を分けて示す
(1) 税率と費用を分けた説明
取引先との交渉では,税率による税込額の変化と,原料の税抜価格,賃金,電気,包装,物流等の費用の変化を分けて示すことが有用である。
還付金を一括して利益と扱ったり,原材料費のすべてに10%の立替えがあると扱ったりすると,交渉の前提を誤る。
売上明細,費用明細及び契約価格を同じ条件で比較する。
(2) 食料システム法の努力義務
現行の食料システム法36条は,対象事業者間の取引で,持続的供給に要する費用等の事由を示した協議の申出があった場合,誠実に協議へ応じることを努力義務としている。
これは特定の価格への合意やメーカーの値上げを保証する制度ではない。
農林水産省の取引適正化資料及び努力義務Q&Aも確認し,協議の根拠と検討結果を記録することが実務上重要である。
第6 OEM・リベート・輸出は取引の実質を確認する
1 OEMでも製造販売と加工役務では税率が異なる
(1) 完成食品の販売と加工役務
OEMとして他社ブランドの商品を作っていても,完成食品を製造販売する取引か,支給された材料に加工だけを施す取引かで税率は異なる。
現在の軽減税率Q&A・個別事例編問40・15頁は,支給されたコーヒー生豆を焙煎する加工を役務の提供としている。
このような加工だけの取引まで食品1%になるとは考えてはならない。
(2) 材料の支給条件と所有権
同Q&A問41・16頁は,原材料・包装資材の調達方法,対価の設定及び完成品の所有権等で製造販売か賃加工かを判断するとしている。
例示される有償支給,材料・包装・加工賃を含む販売代金,完成品引渡時の所有権移転という契約では,食品の製造販売として扱われる。
この例と条件が違う契約へ一律に結論を広げず,東京国税局の文書回答・別紙も参照して契約の実質を確認する。
2 販売奨励金と物流センター使用料を同じ扱いにしない
(1) 対価の返還と役務への支払
個別事例編問42・17頁は,販売数量等に応じた販売奨励金について,売上げ又は仕入れの対価の返還なのか,販路拡大等の役務への対価なのかを区別している。
問44・18頁は,物流センターの使用等への対価であるセンターフィーを,食品売買の対価の返還とは区別する。
売上高に連動して計算することだけを理由に,いずれも食品1%と扱うことはできない。
(2) 旧税率取引と元伝票
旧税率取引の返品・値引き等では,元の取引に対応する税率を確認する。
8%の売上げに対応する返還と,1%の売上げに対応する返還が混在するため,元伝票に遡れる管理が必要である。
契約書の「リベート」「協賛金」「手数料」という名称だけでなく,目的,負担する業務及び請求方法を確認する。
3 輸出メーカーは還付が減る場合もある
(1) 輸出売上げと国内売上げ
輸出取引は,必要な証明・控除要件を満たせば,現在も売上げの消費税が免除され,対応する仕入税額を控除できる。
制度は国税庁のNo.6551で確認できる。
国内の食品売上げ8%が1%になるメーカーと,元々輸出売上げの税額がないメーカーを,同じ計算で比較することはできない。
(2) 食品原料の税率低下と還付額
税抜価格が同じ国内食品原料を仕入れる輸出メーカーでは,原料の仕入税額が下がり,還付額が減る場合がある。
しかし,その場合は原料の税込支払額も減るため,還付額の減少だけで損失とはいえない。
国内販売,輸出,輸入原料及び国内原料の比率を分けて試算する。
第7 メーカーが実施前にそろえる資料と切替え時の注意点
1 経理・営業・法務・システムで同じ前提を使う
以下は,原典を踏まえた本記事の準備提案である。
課税方式,価格条件及び入出金の時期を同じ資料にそろえると,税精算と資金の違いを比較しやすくなる。
(1) 部署別にそろえる資料
最初に,自社の現在の課税方式で,税抜価格を維持する場合と税込価格を維持する場合を比較する。
次に数量や費用が変わる場合を別の試算として加え,最後に月別の入出金と税精算を並べる。
税率だけの効果,需要の仮定,価格交渉の結果及び還付の時期を一つの利益額に混ぜないことが重要である。
| 担当 | そろえる資料 | 判断する内容 |
|---|---|---|
| 経理・税務 | 申告書,届出控え,登録情報,税率別仕入明細,固定資産計画 | 一般・簡易・免税,控除可能額,届出の効力と制限 |
| 営業・購買 | 製品別・取引先別の税抜税込価格,販売・仕入数量 | 価格維持条件,値下げ・値上げと数量の別試算 |
| 法務 | 売買・OEM契約,送料,リベート,価格改定条項 | 所有権・対価の実質,協議と変更合意の記録 |
| 財務 | 売掛・買掛の予定,投資支払,納付・還付予定,借入条件 | 還付待ちの必要資金と調達費用 |
| システム | 商品・費用マスター,受発注・請求・返品データ | 1%・8%・10%の区分と元伝票への対応 |
(2) 課税方式変更の比較条件
課税方式変更や期間短縮の判断は,会社の課税期間・届出・設備取得を確認して行う。
一般課税の還付見込みと簡易課税の同額控除を比較する場合も,食品以外の取引と申告費用を含める。
決算期が異なる会社に,同じ暦日の届出・適用開始を一律に案内しないことが必要である。
2 8%の在庫・中間申告・2年後の復帰を確認する
(1) 施行前の8%在庫
施行前に8%で行った食品の仕入れは,施行後にその食品を1%で販売しても,仕入れの税率を1%へ書き換えるものではない。
税率引下げQ&A問1-3の注2及び問1-4・3頁を参照し,仕入日,計上基準及びインボイスの税率を確認する。
仕入税額控除は原則として仕入れを行った課税期間の計算であり,8%在庫を後に売ったという理由だけで,過去の控除をその販売期へ移すこともできない。
(2) 定期供給契約・通信販売
一定の定期供給契約や通信販売には,旧8%の経過取扱いも予定されている。
4月1日以後の請求書であればすべて1%という処理は避け,販売時期と契約条件を確認する。
返品・値引きの元税率とともに,切替え前後を通した管理が必要である。
(3) 中間申告と確定還付
法案には中間申告の特例もあるが,還付見込みだから中間申告を自動的に省略してよいわけではない。
国税庁Q&A問3-8・20頁~21頁が説明する仮決算による中間申告では,計算がマイナスでも中間申告による還付を受けるものではない。
中間納付の方法,確定還付及び期間短縮を分けて資金計画に反映する。
(4) 2年後の税率復帰
政府案は2年間の措置であるため,開始時の対応と合わせて令和11年4月の税率復帰を見据える。
価格条件,受発注,請求書,返品及び在庫の管理を,税率を往復して切り替えられる形で準備することが有用である。
最終的な法令・行政資料が確定したときには,その内容に合わせて対応を再確認する。
第8 出典
以下の頁は,特記しない限り資料上の頁である。
国税庁税率引下げQ&AのPDF通し頁は本文頁に5,個別事例編は本文頁に25,農林水産省努力義務Q&Aは本文頁に3を加えた番号となる。
1 現行法令と提出法律案
e-Gov・消費税法(基準日現在の本則30条・52条)。
e-Gov・食料システム法36条。
内閣官房・提出法律案(令和8年10月9日提出,第二章2~5条,2頁~16頁)。
2 行政機関の解説・Q&A
国税庁飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(令和8年9月。法案成立等を前提。対象・切替え:問1-1~1-6,届出・期間短縮:問3-1~3-5,簡易課税:問3-6・3-7,中間申告:問3-8)。
国税庁No.6451・課税仕入れ,No.6497・帳簿及び請求書等の保存,No.6509・簡易課税の事業区分,No.6613・免税と還付,No.6901・経理処理,No.6551・輸出免税。
国税庁軽減税率Q&A・個別事例編(令和8年4月版。問29・10頁,問38~40・15頁,問41・16頁,問42・17頁,問44・18頁)及び東京国税局の受託製造に関する文書回答(平成30年12月7日)。
農林水産省食品等の取引適正化及び飲食料品等事業者等の努力義務に関するQ&A(令和8年8月3日改定,3頁・10頁)。
3 立法経過と政府発表
衆議院・第222回国会の議案一覧及び閣法第1号の審議経過(令和8年10月13日確認)。
財務大臣記者会見(令和8年10月9日,法案の閣議決定・提出に関する冒頭発言)。
4 民間の経済分析
藤本一輝食料品の消費減税、再増税時の消費減少は避けられず(日本総研,Research Eye No.2026-039,令和8年8月5日)1頁本文及び図表4,2頁参考文献。
本記事の数値は,上記の制度を踏まえた独自の仮定付き計算である。
メーカー別の利益増加率,価格転嫁率,還付の入金日又は販売数量の変化を示す実測値ではない。