第1 法人税とは
法人税は,原則として,会社などの法人が各事業年度に得た所得に対して課される国税である。
売上高や預金残高に一定の率を掛ける税ではなく,益金から損金を差し引いて所得を計算し,税率や税額控除などを適用する。
会計上の利益と法人税の所得は一致するとは限らない。
本記事は,国内の株式会社・合同会社などの普通法人を中心に,令和8年10月13日現在の法令と国税庁の公表資料に基づいて,税率,計算,申告期限及び取引上の注意点を説明する。
公益法人,協同組合,外国法人及びグループ通算制度には別の規定があるため,法人の種類を確かめてから適用関係を判断する必要がある。
1 法人税と法人に関係する税金
会社の決算でいう「税金」には複数の税目が含まれる。
法人税の税率だけを見ても,会社全体の税負担は分からない。
| 税目 | 主な特徴 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 法人税 | 法人の所得に対する国税 | 所得計算,法人区分,軽減税率,税額控除 |
| 地方法人税 | 名称に「地方」があるが国税 | 法人税額を基礎とする計算 |
| 法人住民税 | 都道府県・市町村の地方税 | 法人税割のほか,所得と別に均等割がある |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 法人事業税は地方税,特別法人事業税は国税 | 所得,法人区分,外形標準課税等 |
| 防衛特別法人税 | 対象事業年度から加わる国税 | 基準法人税額,基礎控除,申告義務 |
いわゆる法人実効税率は,法人税その他の所得課税を組み合わせ,事業税の損金算入なども考慮した指標である。
個々の会社の納付額をそのまま示す数値ではなく,所在地,法人の規模,所得及び適用制度によって結果が変わる。
所得計算・税率の基本と実効税率は,財務省「法人課税に関する基本的な資料」が整理している。
地方税の仕組みは,各地方公共団体の案内も確認する必要がある。
2 赤字と申告・納付の関係
法人税の所得が欠損であれば,通常,その所得に対応する法人税額は生じない。
ただし,会計上の赤字でも,損金にならない支出などの申告調整により,法人税の所得が正になることがある。
「決算書が赤字だから税金も申告も不要」と判断してはいけない。
普通法人の確定申告では欠損金額も記載対象となるため,法人税額が0円であることだけで申告が不要になるわけではない。
法人住民税の均等割や消費税の納付は別に確認する必要がある。
防衛特別法人税も,対象となる法人は税額0円の場合に確定申告が必要である。
第2 法人税の税率
1 普通法人の基本税率と中小法人の軽減税率
普通法人の法人税率は原則として23.2%である。
資本金1億円以下などの一定の普通法人には,所得のうち年800万円以下の部分について,軽減税率が設けられている。
ただし,資本金の額だけで軽減税率の対象になるとは決められない。
次の表は,通算法人以外の普通法人についての主要な区分である。
地方税,地方法人税,防衛特別法人税及び税額控除を含む表ではない。
| 法人・所得の区分 | 法人税率 | 主な条件・注意 |
|---|---|---|
| 軽減税率の対象法人で,年800万円以下の所得部分 | 15% | 所得が年10億円を超える事業年度等を除く |
| 上記のうち,所得が年10億円を超える事業年度の年800万円以下の所得部分 | 17% | 令和7年4月1日以後開始事業年度の取扱い |
| 適用除外事業者の年800万円以下の所得部分 | 19% | 過去の所得規模等による特例の対象外 |
| 年800万円を超える所得部分,又は軽減の対象外となる普通法人 | 23.2% | 大法人の完全支配を受ける法人等にも注意 |
15%・17%の特例は,現行の租税特別措置法42条の3の2では,令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象である。
決算の終了日ではなく開始日で適用期間を確認し,その後の事業年度については延長・改正の有無を確認する必要がある。
1年に満たない事業年度では年800万円などの基準額の月数調整も確認する。
資本金が少額でも,資本金5億円以上の大法人による完全支配関係などにより軽減の対象から外れる場合がある。
適用除外事業者には,原則として前3事業年度の所得金額の平均が年15億円を超える法人が含まれる。
詳しい区分と注記は,国税庁「No.5759 法人税の税率」を参照されたい。
2 税率が15%でも,税負担全体が15%とは限らない
年800万円以下の所得に15%を適用できても,別途,地方法人税や地方税などが問題となる。
また,所得が800万円を超えた場合に,全所得へ一律23.2%を掛けるわけではない。
対象となる会社では,800万円以下の部分と超える部分を分けて計算する。
第3 法人税の計算方法
1 会計上の利益から税務上の所得へ
法人税法22条は,原則として益金から損金を控除して所得を計算する仕組みを定めている。
会計上の収益・費用を出発点としても,法人税法で別段の定めがある項目は税務上の扱いに合わせて調整する。
例えば,支出した寄附金が全額損金になるとは限らず,帳簿に計上した貸倒損失にも税務上の要件がある。
次の設例では,税引前の会計利益200万円に,損金に算入できない費用50万円と益金に算入しない収益20万円だけがあり,その他の申告調整がないと仮定する。
法人税の所得は,200万円+50万円-20万円=230万円となる。
実際の申告では,減価償却,役員給与,寄附金,欠損金などの項目を別表と帳簿で照合する必要がある。
2 所得300万円と1,000万円の計算例
事業年度が12か月で,15%の軽減税率を適用できる普通法人とする。
所得は税務上の所得であり,売上高や会計利益ではない。
税額控除,中間納付額,地方法人税,地方税及び防衛特別法人税を含めず,法人税額だけを計算する。
| 所得 | 計算 | 法人税額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 300万円×15% | 45万円 |
| 1,000万円 | 800万円×15%+200万円×23.2% | 166万4,000円 |
納付すべき額を求める際は,この計算の後に適用される税額控除や既に納付した中間納付額などを確認する。
会社にある現金から先に納税額を推測するのではなく,所得計算,税額計算,納付額の順に確定する。
3 入出金と益金・損金を分ける
借入金の受領や元本返済は,通常の売上収入や事業費用とは区別する。
固定資産の購入も,支払った年度に全額を損金にできるとは限らず,資産計上と減価償却の確認が必要となる。
反対に,現金の受領がなくても,無償・低額で資産を取得したことにより受贈益が問題となる場合がある。
契約書,請求書,検収書,入出金明細及び決算仕訳を対応させ,取引の内容と帰属年度を確認することが重要である。
第4 法人税の申告期限と納付期限
1 原則は事業年度終了後2か月以内
普通法人の確定申告は,原則として,事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行う。
法人税の納付も,原則としてその確定申告書の提出期限までに行う。
事業年度が令和8年4月1日から令和9年3月31日までで,期限延長などがない会社であれば,通常の期限は令和9年5月31日となる。
法定期限が休日等に当たる場合,残余財産が確定した清算事業年度,申告期限延長の適用がある場合などは別の取扱いがある。
「どの会社も決算日から2か月」と固定せず,法人の状態と適用制度を確認する。
2 申告期限の延長と資金計画
定款で定める総会の時期などの事情により,法人税法75条の2の申告期限延長の特例を利用できる場合がある。
申請の要件と提出時期を確認し,決算作業が遅れたという理由だけで自動的に延長されると考えてはいけない。
延長が認められても,原則の期限を超えた期間について利子税が問題となる。
利子税を抑えるための見込納付を検討し,申告期限の管理と納付資金の準備を並行して行う。
法人税の延長が他の税目にも同じ条件で及ぶかは,税目ごとに確認する必要がある。
3 中間申告と年間の納税予定
法人税には,前事業年度の税額などに応じた中間申告・納付の制度がある。
確定申告の時期だけで資金繰りを考えると,中間納付への備えが不足することがある。
前年度の申告書,今回の事業年度の期間及び税務署からの通知を基に,中間・確定の予定を管理する。
第5 防衛特別法人税はいつから加わるのか
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から,各事業年度の所得に対する法人税を課される法人には,防衛特別法人税が適用される。
一般的な計算では,所得税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した基準法人税額から年500万円を控除し,その残額に4%を掛ける。
会社の所得そのものへ4%を掛ける制度ではない。
防衛特別法人税は,所得に対する法人税率を一律4ポイント引き上げる制度ではない。
法人税,地方法人税及び防衛特別法人税は別の税目であり,申告書が一体の様式であっても,それぞれの計算欄と必要な別葉を確認する。
対象となる法人では,赤字で基準法人税額が0円の場合や,基礎控除により税額が0円となる場合も,防衛特別法人税の確定申告が必要である。
詳しい計算例,事業年度の判定,短期の事業年度及び税額0円の申告については,防衛特別法人税とは―対象法人・計算方法・申告時期と税額0円の場合の注意点(AI作成)で説明する。
申告書の別葉や暫定的な納付手順は,防衛特別法人税の申告書・納付方法―別表一次葉一,税額0円とe-Taxの注意点(AI作成)で説明する。
決算で用いる法定実効税率や税効果会計は,実際の申告税額の計算と区別して検討する必要がある。
基礎控除500万円との関係及び適用する会計基準は,防衛特別法人税の会計処理・税効果会計と実効税率―基礎控除500万円との関係(AI作成)を参照されたい。
第6 会社経営で注意する取引と法律問題
1 資産を安く譲り受ける場合
売買契約で代金を支払っていても,取得時の適正な価額との差額について,買主法人に受贈益が問題となることがある。
売主側の所得税・法人税,株主側の贈与税及び買主の取得価額は,それぞれ別に確認する必要がある。
当事者の資本関係による例外もあるため,法人が資産を時価より低額で譲り受けた場合の税務―受贈益・時価・取得価額・相手方課税(AI作成)を参照されたい。
2 売掛金・貸付金を回収できない場合
貸倒損失は,入金が遅れているだけで損金にできるものではない。
債権の切捨て,全額回収不能,一定期間取引停止後の売掛債権など,適用する基準によって帰属年度と損金経理の要否が異なる。
債権放棄を行う前に,回収見込み,担保・保証,書面及び当事者の関係を確認する必要がある。
具体的な基準は,法人の貸倒損失の計上基準―法人税・消費税(AI作成)で整理している。
3 補助金でソフトウェアを購入する場合
補助金収入と固定資産の取得は分けて検討する。
国庫補助金等の要件を満たす場合には圧縮記帳を利用できることがあるが,課税の繰延べであり,永久に非課税になる制度ではない。
交付目的,固定資産への該当性,返還不要の確定時期及び決算経理を確認する必要がある。
具体例は,国庫補助金でソフトウェアを取得した場合の圧縮記帳(AI作成)を参照されたい。
4 弁護士と税理士へ相談する際の資料
申告・税額計算を相談する際は,税理士に決算書,総勘定元帳,前年度申告書及び取引資料を示す。
契約の有効性,債権放棄,会社法上の手続又は税務争訟が問題となる場合は,弁護士にも契約書,通知書,議事録,資本関係図及び紛争の経過を共有する。
法的な取引内容と申告の前提が食い違わないよう,同じ資料と時系列で検討することが重要である。
第7 よくある質問
1 法人税は売上に掛かるのか
原則として,売上高そのものではなく,益金から損金を控除した税務上の所得に掛かる。
売上が同じ会社でも,原価,費用,申告調整及び適用制度が異なれば,税額は変わる。
2 赤字なら申告をしなくてもよいのか
通常の普通法人では,欠損金額も確定申告の対象となる。
税額0円と申告不要は別であり,地方税や防衛特別法人税の申告も確認する。
3 合同会社にも法人税が掛かるのか
国内の合同会社も通常は普通法人として法人税の対象となる。
株式会社との会社形態の違いだけで法人税が免除されるわけではない。
第8 出典
e-Gov法令検索「法人税法」22条,66条,71条,74条,75条の2,77条。
e-Gov法令検索「租税特別措置法」42条の3の2。
国税庁「No.5759 法人税の税率」。
財務省「法人課税に関する基本的な資料」。
e-Gov法令検索「地方法人税法」1条,6条。
大阪府「法人府民税」及び「法人事業税」。
国税庁「法人税法(基礎編)令和8年度版」(令和8年1月1日現在の法令・通達に基づく講本)。
国税庁「防衛特別法人税が創設されました」令和8年6月改訂。