第1 防衛特別法人税とは
防衛特別法人税は,令和8年4月1日以後に開始する事業年度から,各事業年度の所得に対する法人税を課される法人に適用される国税である。
一般的な場合は,一定の税額控除を適用しないで計算した基準法人税額から基礎控除額を差し引き,その残額に4%を掛けて計算する。
基礎控除額は年500万円であるが,1年に満たない事業年度やグループ通算制度には調整がある。
特に注意すべき点は,対象となる法人では防衛特別法人税額が0円であっても確定申告が必要なことである。
「中小企業だから関係がない」「赤字だから申告欄を省略する」という判断は適切ではない。
本記事は,令和8年10月13日現在の法令と国税庁資料に基づき,国内の普通法人を中心に説明する。
制度の対象となること,納付税額が生じること及び申告が必要であることは,分けて確認する必要がある。
次の表は,12か月の事業年度で,グループ通算,留保金課税及び税額控除等の特別な事情がない普通法人を想定した整理である。
| 状況 | 納付税額 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 制度開始前に始まった事業年度 | この税は対象外 | この税は不要 |
| 対象事業年度で基準法人税額が500万円以下 | 0円 | 必要 |
| 対象事業年度で基準法人税額が500万円を超える | 控除後の額に4% | 必要 |
法人税そのものの税率,所得計算及び決算後の手続は,法人税とは―税率・計算方法・申告期限と会社経営で注意する法律問題(AI作成)を参照されたい。
第2 対象法人と対象事業年度
1 防衛特別法人税は誰が払うのか―中小企業も対象
各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者となり,中小企業も対象に含まれる。
資本金が1億円を超える法人だけに限定される制度ではない。
株式会社や合同会社などでも,対象事業年度と法人税の納税義務を確認する必要がある。
国税庁は,収益事業を行っていない公益法人等や人格のない社団等,国内源泉所得を有しない外国法人など,各事業年度の所得に対する法人税の納税義務がない法人には,防衛特別法人税の確定申告書の提出が不要と説明している。
これらの法人と,課税所得が欠損で税額が0円となる普通法人を混同してはいけない。
2 防衛特別法人税はいつから適用されるのか
原則として,令和8年4月1日以後に開始する事業年度が対象である。
申告書を提出する日,税金を納める日又は事業年度の終了日で判断する制度ではない。
| 事業年度 | 対象か | 理由 |
|---|---|---|
| 令和7年4月1日~令和8年3月31日 | 対象外 | 開始日が令和8年4月1日より前 |
| 令和8年1月1日~同年12月31日 | 対象外 | 終了日は制度開始後でも,開始日は制度開始前 |
| 令和8年4月1日~令和9年3月31日 | 対象 | 開始日が令和8年4月1日 |
| 令和9年1月1日~同年12月31日 | 対象 | 開始日が制度開始後 |
対象外の事業年度について,後日申告することだけを理由に防衛特別法人税が掛かるわけではない。
反対に,設立や決算期変更によって短い事業年度が生じても,開始日が対象期間に入れば検討が必要となる。
通算子法人では,通算親法人の令和8年4月1日以後に開始する事業年度の期間内に開始する子法人の事業年度が対象となる。
子法人の開始日だけを見て決めず,親法人の事業年度も確認する。
第3 防衛特別法人税の計算方法
1 防衛特別法人税の税率は何%か
税率は,課税標準法人税額に対する4%である。
一般的な場合は,所得税額控除・外国税額控除など,防確法10条が除外する一定の税額控除を適用しないで基準法人税額を計算する。
次に,基準法人税額から基礎控除額を控除し,控除後の額が0円を超える場合に4%を掛ける。
最後に,防衛特別法人税について認められる外国税額控除などがあれば,その適用を確認する。
会社の所得に4%を掛ける計算ではない。
また,実際の法人税の納付額は税額控除や中間納付額の影響を受けるため,その納付額から500万円を引くだけでも正しく計算できない場合がある。
基準法人税額の計算で除外する税額控除は法令に列挙されており,すべての税額控除を一律に除くわけではない。
2 12か月の事業年度の計算例
次の表は,通算法人以外の法人で,事業年度が12か月,留保金課税の加算がなく,防衛特別法人税の税額控除もない場合を仮定した例である。
表の「基準法人税額」は会社の所得ではない。
| 基準法人税額 | 基礎控除後の課税標準法人税額 | 防衛特別法人税額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 0円 | 0円 |
| 500万円 | 0円 | 0円 |
| 800万円 | 800万円-500万円=300万円 | 300万円×4%=12万円 |
| 1,000万円 | 1,000万円-500万円=500万円 | 500万円×4%=20万円 |
この例で税額が0円となる法人にも,対象事業年度の確定申告は必要である。
「所得500万円以下なら対象外」という読み替えはできない。
3 1年に満たない事業年度
通算法人以外の法人で課税事業年度が1年に満たない場合,基礎控除額は,500万円を12で除し,その事業年度の月数を掛けて計算する。
月数は暦に従い,1か月に満たない端数は1か月に切り上げる。
例えば,6か月の事業年度であれば,基礎控除額は250万円となる。
その事業年度の基準法人税額が300万円で,前記の単純化した計算条件と同じであれば,防衛特別法人税額は,(300万円-250万円)×4%=2万円となる。
短い事業年度に年500万円をそのまま用いると,税額を誤ることがある。
4 グループ通算・留保金課税・外国税額控除
通算法人には,原則として500万円を各通算法人の基準法人税額などの比で配分する規定がある。
同じグループの各法人が,それぞれ独立に年500万円を控除できると考えてはいけない。
通算親法人の事業年度の長さや子法人の事業年度の終了日にも規定があるため,単体法人の設例をそのまま当てはめない。
特定同族会社の留保金課税がある場合には,加算前の基準法人税額と加算額を区分する計算が必要となる。
また,法人税・地方法人税の外国税額控除で控除しきれない額について,防衛特別法人税側の控除が認められる場合がある。
これらを適用する法人は,対応する別表と法令の要件を個別に照合する必要がある。
第4 税額0円でも申告が必要な場合
1 赤字の場合と基礎控除内の場合
国税庁の令和8年6月改訂資料は,所得が欠損等のため基準法人税額が0円となる場合と,基礎控除により課税標準法人税額が0円となる場合のいずれも,確定申告書の提出が必要と明記している。
税額を納める必要がないことと,申告書を出す必要がないことは別である。
例えば,対象事業年度の普通法人について,基準法人税額が300万円で,12か月の基礎控除500万円を適用した結果,税額が0円となっても,確定申告書を提出する必要がある。
赤字会社も,通常の法人税申告だけで手続を終えたと判断せず,防衛特別法人税の記載を確認する。
2 別表の提出漏れを防ぐ
防衛特別法人税の申告書は,法人税・地方法人税の申告書と一体の様式である。
ただし,別表一などでは防衛特別法人税の欄が別葉となるため,「一体の様式だから自動的に提出済み」と考えてはいけない。
国税庁は,税額0円の場合にも,別表一次葉一の課税標準法人税額・防衛特別法人税額の計算欄を記載し,防衛特別法人税額及びその合計欄に0を記載して提出するよう説明している。
申告ソフトを利用する場合も,送信対象に必要な別表が含まれているかを確認する。
第5 申告期限・納付期限と中間申告
1 確定申告は原則として事業年度終了後2か月以内
防衛特別法人税の確定申告書は,原則として,課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出する。
納付すべき防衛特別法人税がある場合は,原則としてその確定申告書の提出期限までに納付する。
例えば,令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度で,申告期限延長などがない会社の通常の期限は,令和9年5月31日となる。
法人税の確定申告書の提出期限が延長されている場合,防衛特別法人税の提出期限もその延長された期限となる。
休日等の期限の取扱いや,残余財産が確定する清算事業年度の特則は別に確認する。
2 中間申告は令和9年4月1日以後開始事業年度から
国税庁は,令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度において,法人税の中間申告書を提出すべき法人は,防衛特別法人税についても中間申告が必要になると説明している。
防衛特別法人税の確定申告が始まる年度と,中間申告が始まる年度を分けて確認する。
通算子法人については,親法人の対象事業年度との関係も確認する必要がある。
3 e-Taxと納付方法
e-Taxを利用する場合は,事業年度に対応する申告様式,必要な別表及び税目を確認する。
電子申告を送信したことだけで,納付すべき税額の納付が完了したとは判断できない。
受信通知と納付の結果をそれぞれ確認する必要がある。
様式やシステムの対応状況,時期に応じた納付手順は,e-Tax「防衛特別法人税に関するお知らせ」及び申告手続の案内の最新情報で確認する。
令和9年5月までの納付には,納付情報登録依頼や納付書の記載について暫定的な取扱いがある。
別表一次葉一の確認箇所,税額0円の記載及び申告後の納付手順は,防衛特別法人税の申告書・納付方法―別表一次葉一,税額0円とe-Taxの注意点(AI作成)で説明する。
第6 決算前に確認する資料
事業年度の開始日・終了日,法人の種類,法人税の納税義務及びグループ通算の有無を先に確認する。
その上で,法人税額の計算書,所得税額控除・外国税額控除等の明細,中間納付の記録,申告期限延長の通知及び申告ソフトの対応様式を揃える。
税額0円の場合も,申告書の作成・提出と記録の保存を省略しない。
取引により法人税の所得自体が変わる場合には,防衛特別法人税の計算にも影響し得る。
低額での資産取得,貸倒損失及び補助金の圧縮記帳などは,先にそれぞれの法人税上の要件を確認する必要がある。
税額を抑える目的で取引の実体や帰属年度を変えず,契約・決算・申告の前提を一致させることが重要である。
防衛特別法人税の申告税額と,決算上の会計処理・税効果会計は分けて確認する必要がある。
法定実効税率と基礎控除500万円の関係は,防衛特別法人税の会計処理・税効果会計と実効税率―基礎控除500万円との関係(AI作成)で説明する。
第7 よくある質問
1 法人税率が一律4%上がるのか
所得へ掛かる法人税率を一律4ポイント引き上げる制度ではない。
一般的な場合は,基準法人税額から基礎控除額を差し引いた残額へ4%を掛ける。
2 基準法人税額が500万円以下なら何もしなくてよいのか
12か月の単体法人の一般的な計算では,税額が0円となる場合がある。
ただし,対象となる法人の確定申告は必要であり,短い事業年度では基礎控除額も変わる。
3 令和8年12月決算の会社は必ず対象か
令和8年1月1日から同年12月31日までの事業年度は,開始日が令和8年4月1日より前なので対象外である。
同じ12月決算でも,設立による事業年度の開始日などによって結果が変わるため,期間を確認する。
4 防衛特別所得税とは何が違うのか
防衛特別法人税は法人の基準法人税額を基礎とする税であり,防衛特別所得税は所得税に関係する別の税である。
国税庁のQ&Aは,令和9年1月1日以後に生ずる所得について防衛特別所得税を導入し,源泉徴収すべき所得税額の1%相当額を併せて徴収すると説明している。
復興特別所得税の税率変更もあるため,二つの防衛特別税の税率や開始時期を混同してはいけない。
個人の所得税に関する説明と比較は,所得税とは―税率・計算方法・所得控除・住民税との違い(AI作成)を参照されたい。
第8 出典
e-Gov法令検索「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」8条,10条,11条,13条から16条,21条,25条,30条。
国税庁「防衛特別法人税が創設されました」令和8年6月改訂。
e-Tax「防衛特別法人税に関するお知らせ」。
e-Tax「申告手続」。
国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」(令和8年5月,PDF実頁3,Q1・Q2):https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0026005-024_03.pdf