第1 この記事の対象
この記事は,大阪家庭裁判所で遺産分割調停を利用する場合の管轄,申立人・相手方,令和7年1月版の申立書類,費用及び本庁の期日運用を整理するものである。
申立書式,郵便料,窓口及び期日運用は改定されるため,実際に申し立てるときは大阪家庭裁判所の最新案内を確認する必要がある。
遺産分割の対象財産,特別受益,寄与分,遺言の効力又は使途不明金の結論は,個別の事実と資料により異なる。
本記事は手続の入口を説明し,各争点の主張・立証は関連記事又は個別相談で検討する。
第2 大阪家庭裁判所へ申し立てられる場合
1 調停の管轄
遺産分割調停の申立先は,相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所である。
被相続人の最後の住所が大阪であったこと,遺産が大阪にあること又は大阪の弁護士へ依頼することだけで,大阪家庭裁判所の調停管轄が決まるわけではない。
相手方が複数で住所地が異なる場合は,管轄を持つ家庭裁判所が複数になることがある。
管轄合意,調停不成立後の審判管轄,移送及び自庁処理まで検討する場合は,遺産分割調停・審判の管轄,移送と自庁処理を参照されたい。
2 本庁・堺支部・岸和田支部
大阪家庭裁判所には本庁のほか堺支部及び岸和田支部があり,住所地によって担当区域が分かれる。
「大阪府内だから本庁」とは限らないため,裁判所の申立書提出先一覧で市区町村ごとの担当裁判所を確認する。
第3 申立人と相手方
共同相続人,包括受遺者及び相続分譲受人等が申立人となることができる。
申立人以外の共同相続人・包括受遺者等は全員を相手方として記載し,当事者の一部だけで遺産分割調停を進めることはできない。
申立人と相手方の呼び方は手続上の立場であり,相手方とされたことだけで不利になるわけではない。
相続人の一人に判断能力の問題がある場合,成年後見等の手続や特別代理人が必要になることがあるため,申立前に確認する。
第4 大阪家庭裁判所へ提出する基本書類
1 申立書一式
大阪家庭裁判所の案内では,申立書,当事者目録,遺産目録,相続関係図,事情説明書,送達場所の届出書及び進行連絡メモ等を提出する。
弁護士が申し立てる場合は,送達場所の届出書と進行連絡メモが不要とされている。
相続人が多数の場合は,交渉状況一覧表その他の追加書式を求められることがある。
申立書一式の写しや遺産関係資料の写しは,相手方の人数に応じて準備する。
2 相続関係の資料
登記官の認証文付き法定相続情報一覧図又は相続人を確定できる戸籍謄本等,被相続人の戸籍附票・住民票,相続人全員の現在戸籍及び住所資料を準備する。
相続人の範囲,数次相続,代襲相続,相続放棄又は戸籍の保存状況によって,必要な戸籍は変わる。
大阪家庭裁判所の令和7年1月版一覧では,相続人の現在戸籍と住所資料は3か月以内等の期限が示されている一方,被相続人に関する戸籍等には期限がないとされている。
提出直前に最新の一覧表で有効期間を再確認する。
3 遺産関係の資料
不動産は登記事項証明書と固定資産評価証明書,預貯金は最新の残高証明書又は記帳済み通帳の写し,有価証券は現在の内容を特定できる金融機関の資料を準備する。
自動車,保険,借地権・借家権その他の財産は,存在・名義・現在価値を示す資料をそろえる。
相続税申告書と遺言書が作成されている場合は,マイナンバーを除いた写しを提出する。
裁判所へ提出する資料にはマイナンバーを記載しない。
第5 申立費用と郵便料
遺産分割調停の申立手数料は,被相続人一人につき収入印紙1200円である。
これとは別に連絡用の郵便料が必要であり,当事者数,納付方法及び改定時期によって金額が変わる。
大阪家庭裁判所の案内は,郵便切手,現金納付,当座納付又は電子納付等の方法を示している。
古い郵便切手一覧を使わず,申立直前に最新の早見表で金額と内訳を確認する。
戸籍,住民票,登記事項証明書,評価証明書,残高証明書,コピー及び郵送にも別途費用がかかる。
弁護士へ依頼する場合は,法律相談料,着手金,成功報酬,実費及び日当の範囲を委任契約書で確認する。
第6 調停期日の流れ
大阪家庭裁判所本庁の案内では,調停期日の開始時刻は午前10時,午後1時20分及び午後3時で,1回の期日は80分程度とされている。
堺支部・岸和田支部では開始時刻等が異なる場合がある。
調停委員会は,各当事者から事情と希望を聴き,必要な資料の提出を求め,解決案を示すなどして合意を目指す。
同じ日に全当事者が出席しても,事情に応じて別々に話を聴くことがある。
ウェブ会議等を利用できるかは,裁判所が当事者の意向と具体的事情を踏まえて判断する。
遠隔参加の希望は早めに伝え,接続方法,提出資料,調停成立時の手続及び本人確認を裁判所の指示に従って確認する。
第7 調停前に整理する争点と資料
第一に,当事者全員と遺産の範囲を確定する。
遺産に含まれるか争いがある財産,死亡後に払い戻された預金又は名義財産は,通常の財産目録と分けて事実・主張・証拠を整理する。
第二に,各財産の評価時点と資料をそろえる。
不動産査定,固定資産評価,預貯金残高,有価証券価格及び事業財産の評価方法が異なると,具体的な分割案を比較できない。
第三に,特別受益,寄与分,遺留分,遺言の効力,葬儀費用その他の関連問題を,遺産分割調停で判断される事項と別手続が必要な事項に分ける。
全てを「相続の問題」として一つの申立てへ入れられるわけではない。
第8 調停が不成立になった場合
遺産分割調停で合意できず不成立となった場合は,原則として遺産分割審判へ移行する。
裁判官は,遺産に属する物・権利の種類と性質その他一切の事情を考慮して分割方法を判断する。
不成立までの期間だけでなく,審判,抗告,関連訴訟,換価又は登記・税務まで含めた予定を考える必要がある。
大阪の審理期間に関する統計と二期日指定は,遺産分割調停・審判はどのくらいかかるかを参照されたい。
第9 弁護士へ相談する時期
相続人全員と遺産が確定し,争点が少なく,合意案を自分で検討できる場合は,本人で申立てをすることもできる。
他方,管轄が複数ある,遺言又は相続人の範囲に争いがある,特別受益・寄与分・使途不明金が主要争点である,不動産評価や換価条件が複雑である,又は相手方代理人から書面が届いた場合は,申立前に弁護士へ相談することが有用である。
既に期日が指定されている場合は,次回期日,裁判所から求められた資料及び提出期限を最初に伝える。
大阪での相続相談の準備と費用は,大阪で相続を弁護士に相談する方へを参照されたい。
第10 出典
裁判所「遺産分割調停」及び大阪家庭裁判所「遺産分割調停」を令和8年10月15日に確認した。
申立書類は同ページ掲載の「遺産分割申立必要書類一覧表(大阪家庭裁判所・令和7年1月版)」及び一括説明書による。
裁判所「家事事件Q&A」及びe-Gov法令検索・家事事件手続法も同日に確認した。