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土地区画整理事業の清算金・移転補償金と税金―売買・相続・5000万円控除の確認事項(AI作成)

第1 清算金・補償金は一律に非課税ではない

土地区画整理事業で受け取る清算金や移転補償金については,金銭の名称,入金日又は使い切ったかどうかだけで税務上の結論を出すことはできない。換地に対応する部分と清算金に対応する部分,建物の対価と移転費用,個人と法人,売買と相続を分ける必要がある。

個人の固定資産である土地についての基本的な整理は,換地の取得に対応する部分には譲渡がなかったものとする取扱いがあり,交付清算金に対応する部分には譲渡所得の計算が必要になる,というものである。さらに,収用等の特別控除の要件に該当するかを検討する。建物移転補償は,交付の目的に従った移転等への支出,実際の取壊し,資本的支出の有無によって扱いが変わる。

本記事は令和8年10月12日時点の施行法令を確認し,国税庁の通達・質疑応答事例及び公表裁決を参照している。国税庁の質疑応答は記載された事実関係を前提とする行政上の取扱いであり,すべての地区・契約について同じ課税を保証するものではない。制度上の金銭の違いは,土地区画整理事業の減歩と清算金も参照されたい。

第2 換地・清算金・仮清算金の課税を分ける

1 換地を取得しただけで時価の含み益全部に課税されるわけではない

租税特別措置法33条の3第1項は,土地区画整理事業の換地処分により土地等を取得する場合について,その土地等に対応する部分の譲渡がなかったものとみなす。清算金とともに換地を取得する場合,清算金に対応する部分まで譲渡がなかったことにする規定ではない。

換地の所得税上の取得価額は,通常,従前地の取得費等を引き継ぐ計算となる。換地処分時の時価や相続税評価額へ自動的に取得費が切り上がるわけではない。同法33条の6及び同法施行令22条の3・22条の6に従い,清算金があるときは取得費等を対応する部分へ配分する。

説明のため,従前地の取得費等を600万円,換地の価額を1800万円,交付清算金を200万円とし,譲渡費用その他の調整がない場合を考える。換地に引き継ぐ取得価額は600万円×1800万円÷2000万円=540万円,清算金に対応する取得費は60万円となる。特別控除等を適用する前の清算金部分の譲渡益は140万円となる。これは割合計算の説明であり,実際の評価額・取得費・適用特例は資料に基づいて確定する。

2 清算金を受け取る場合と支払う場合

交付清算金は,土地等の譲渡に対応する金銭として譲渡所得の計算を行う。徴収清算金は,換地等の取得価額への算入を検討する。自宅以外の土地,賃貸用土地などでも,土地自体の取得価額に算入する金額と,当年の必要経費になる金額を混同してはならない。

措置法通達33-46は,同一人の清算金を相殺した場合でも土地ごとに計算し,交付側は相殺前の清算金額,徴収側は相殺前の額を当該土地等の取得価額へ算入することとしている。差引入金がゼロだから税務上も何もない,という処理にはならない。

複数筆を所有する場合は,各筆・各権利別の清算金明細と相殺明細を保存する。分割に付く利子,延滞金,賦課金は清算金元本と区別し,別の性質の支出まで一括して土地の取得費又は必要経費にしてはならない。

3 課税年は入金年だけで決めない

土地区画整理法104条8項により,清算金は換地処分公告の翌日に確定する。措置法通達33-7は,換地処分による譲渡の日を公告の翌日としている。分割交付の場合も,単に各回の入金年に元本の譲渡所得を分けて申告すればよいわけではない。

一方,法102条による仮清算金は,措置法通達33-46の2により,換地処分があるまでは所得税法36条のその年の収入すべき金額に該当しない。仮清算金を先に受領し,その後に売買又は相続があった場合は,その中間の権利移転も確認する。

第3 5000万円特別控除の対象と除外

1 通常の清算金と換地不交付の清算金

租税特別措置法33条1項3号は,換地処分により取得する土地区画整理法94条の清算金を所定の収用等の特例の対象としている。ただし,土地区画整理法90条に基づく所有者の申出又は同意によって換地を定められなかったことにより支払われる清算金は,この規定の対象から除かれている。

したがって,通知に「清算金」「94条」と記載されているだけでは足りない。換地が与えられた上で不均衡を清算する金銭か,90条の申出・同意を経た換地不交付による金銭かを,換地計画と同意書等で確認する。区画整理会社の株主等については施行令22条の所定の除外も確認する。除外に当たることと,あらゆる別の税務特例が使えないことは同義ではないが,5000万円控除を当然に見込むことはできない。

2 控除額は受取額そのものではない

租税特別措置法33条の4の特別控除は,対象となる譲渡所得等から最高5000万円を控除する制度である。収入5000万円までを無条件に非課税にする制度ではなく,取得費・譲渡費用,その年に適用する他の特別控除,同じ事業に関する過去年の譲渡及び課税繰延べとの選択を確認する。

一般的な公共事業の買取りについては,最初の買取り等の申出から6か月以内の譲渡,最初に申出を受けた者又はその相続人等であること,同じ事業の最初の年であること等の要件がある。国税庁「収用等により土地建物を売ったときの特例」は,これらの原則と必要な申告書類を説明している。

ただし,法定の換地処分による清算金を,任意の買取りと同じ条件だけで判定してはならない。次の国税庁事例がある。

3 建物補償の翌年以後に清算金を受けた事例

国税庁「土地区画整理事業の換地処分により清算金を取得した場合」は,以前の年に換地に伴う建物移転補償金について5000万円特別控除を受け,後年の換地処分で清算金を取得した場合を扱っている。

同事例は,法律の規定により当然に清算金を取得するという事情を踏まえ,所定の同じ事業の最初の年及び6か月の制限にかかわらず,その清算金にも特別控除を適用できるとしている。しかし,90条による換地不交付の清算金は別である。この事例を「どの補償金でも毎年5000万円控除できる」と広げてはならない。

過去の建物補償の申告書,特例適用の明細,今回の換地処分通知・公告・清算金明細を並べ,今回受領する金銭が事例の前提に一致するかを確認する。

4 減価補償地区の土地買取りと建物補償

国税庁「減価補償金を交付すべきこととなる土地区画整理事業における建物の補償金」は,公共施設用地として買い取られた土地の対価には所定の収用等の特例があり得る一方,その土地上の建物を取り壊したことによる補償金には同じ特例が適用されないとする。

これに対し,公共施設用地の買取りの対価と換地処分に伴う建物移転補償金を取得した事例では,先に買い取られたA土地と,別のB土地の換地に伴う建物移転補償を区別して検討している。土地・建物の対象,買取りと換地のどちらによる補償かが異なるためである。「減価補償地区だから建物補償もすべて特例対象」とはならない。

第4 移転補償金は支出の目的と実際の移転方法で判断する

1 総収入金額不算入になる移転等の支出

所得税法44条は,収用その他所定のやむを得ない事由により,資産の移転・移築・除却等の費用へ充てるため受けた金銭を,その目的に従って実際に支出した場合に,その支出した金額を総収入金額に算入しないこととしている。二重に必要経費や譲渡費用として控除することはできない。

国税庁の補償金区分表は,移転補償金のうち目的に従った支出と,未支出又は残額を区別している。残額等は原則として一時所得の収入になる。収益補償金・営業補償金は不動産所得・事業所得・雑所得等,経費補償金はその費用の性質に応じて扱うのであり,名称が「補償金」だから一時所得にまとめるわけではない。

説明のため,移転補償金300万円のうち,交付目的に該当する実際の移転費用が240万円,未使用の残額が60万円の場合,44条の要件を満たす240万円は総収入金額不算入,残額60万円は原則として一時所得の収入を検討する。一時所得の特別控除や2分の1計算はその年の他の一時所得も含めて行うので,「60万円にそのまま所得税率を掛ける」という計算ではない。

2 新築・造成費を使途にしても全部が不算入になるわけではない

所得税法施行令92条は,固定資産の使用可能期間を延長し,又は価額を増加させる資本的支出に係る行為を44条の移転等から除いている。移転先で使ったお金であっても,土地購入,土地の価値を高める造成,新しい資産の取得等を通常の移転費と同一視してはならない。

国税不服審判所平成12年12月18日裁決は,移転先として購入した田を宅地化する造成費について,土地の価値を高めた資本的支出であるため,44条の総収入金額不算入を認めなかった。移転に必要だったという事情だけでは足りないことを示す事例である。

他方,所得税基本通達44-1には,通常行われる程度の腐朽・損傷部分の取替えや修復,模様替え等についての取扱いがある。工事一式の請求書だけで判定せず,工事項目別の金額,旧資産の状態,工事前後の写真及び補償算定内訳をそろえる。

3 建物を実際に取り壊した場合

措置法通達33-14は,曳家・移築等の名義で補償を受けた建物等を実際には取り壊した場合,対価補償金として扱うことができる場合を定めている。これを用いる場合も,元の建物の取得費・減価償却,取り壊した部分,再利用する部分を確認する。

譲渡所得の収入に当たることと,収用等の5000万円控除を受けられることは別の判断である。国税庁の特例対象外の建物移転補償事例は,建物取壊しによる補償を譲渡所得の収入としながら,元の土地の収用等に関する要件を満たさないため収用等の特例は認めていない。

4 一部取壊し・複数棟・営業補償の振替え

一部を取り壊した国税庁事例は,取壊し部分に係る金額だけを対価補償金とし,残存部分との区分を原則として床面積比で行う。残存部分の切取り面補修へ充てた金額については44条の取扱いを認めている。建物全体の補償金を一括して対価補償金にする扱いではない。

複数の建物についての国税庁事例は,建物ごとの補償算定と取壊しの判定を前提として,個々の建物ごとに対価補償金として扱うかを選択できるとしている。これと,収益補償金の任意額を対価補償金へ振り替えることは異なる。税額が有利になるという理由だけで補償明細の分類や金額を任意に変更してはならない。

第5 売買するときは清算金の帰属と譲渡対価をそろえる

1 受領済み仮清算金を買主へ現金で渡さない場合

国税庁「仮清算金の受領後,換地処分前に仮換地の譲渡があった場合」は,買主が清算金の権利義務を承継し,売主が受領済み仮清算金を買主へ支払わない契約を扱う。

国税庁の設例では,取得価額50万円,時価1000万円の従前地について,時価900万円の仮換地と仮清算金100万円を得た売主が,買主から900万円を受領する。売主の仮受金100万円の債務が消滅するため,譲渡対価は現金900万円だけでなく1000万円となる。示された前提では譲渡益は950万円である。この売買自体を施行者からの清算金交付と同じ収用特例対象と決めつけてはならない。

同事例の図では,買主の従前地取得額は1000万円となり,その後の換地処分では換地900万円と仮清算金100万円へ対応させる。売主への現金支払額だけで双方の取得費・譲渡対価を整理すると,整合しなくなる。

2 売主が将来の清算金を留保する場合

国税庁「土地区画整理事業に伴う清算金に対する課税」は,将来の清算金を売主に帰属させる特約を置き,仮換地の価額を譲渡価額とし,市への清算金債権債務譲渡届及び売主に対する収用証明等を伴う事例を扱う。この前提では,売主に交付される清算金について所定の特例の適用を認めている。

受領済み仮清算金の承継の事例とは契約と施行者側の処理が異なる。私人間の「清算金は売主のもの」という一文だけで,施行者に対する帰属,証明書の名義及び課税関係がすべて確定すると考えてはならない。

3 契約前に書面で確認する事項

確認事項そろえる資料・記載
売買する対象従前地の登記,仮換地指定図,換地処分の有無及び公告日
清算金の帰属交付・徴収の見込額,仮清算金の受領・支払履歴,売主・買主の特約
施行者との関係届出,債権譲渡・債務引受の取扱い,通知名義,証明書の発行先
譲渡対価と取得費現金代金だけでなく承継する金額,取得費配分,過去の特例適用

換地処分前後で清算金の確定状況は異なる。既に確定した債権・債務と土地の売買,未確定の仮清算金承継を分け,契約担当者と税務担当者が同じ資料に基づいて確認することが重要である。

第6 相続では所得税・相続税・土地評価を分ける

1 相続税評価と譲渡所得の取得費は異なる

相続税では相続開始時の財産の価額を評価する。他方,相続した土地を売却する際の所得税上の取得費は,通常,所得税法60条により被相続人の取得費等を引き継ぐ。限定承認等には別の取扱いがある。相続税申告で2000万円と評価した土地だから,所得税でも取得費2000万円にできる,という処理はできない。

旧法の遺留分減殺請求や価額弁償で問題となる民事上の評価基準時も,この税務上の取得費とは異なる。換地処分があった土地の遺留分と評価基準時と合わせて,何を計算するための評価かを明示する。

2 区画整理中の宅地の相続税評価

財産評価基本通達24-2は,仮換地指定がある場合,原則として仮換地の価額に相当する価額で宅地を評価する。

仮換地の造成工事が施工中で,完了までの期間が1年を超えると見込まれる場合には,完成したものとして評価した価額の95%による取扱いがある。区画整理中の土地すべてを5%減額する規定ではない。

また,仮換地の使用収益開始日を別に定めるためまだ使用収益できず,かつ,仮換地の造成工事が行われていない場合は,従前の宅地の価額による。仮換地指定通知,使用収益開始日の通知,相続時点の施工状況・完成見込みを確かめる。宅地以外の地目や権利について,この宅地の通達をそのまま適用しない。

3 清算金債権・債務と死亡前後の所得

相続時に既に換地処分公告の翌日を迎えている場合,土地とは別に確定した清算金債権又は債務と,未収・未払額を確認する。相続税法13条・14条の債務控除は,相続開始時に現存し,確実と認められる債務等の要件を満たす必要がある。「将来清算金を払うかもしれない」という見込みだけで確定債務と同じ額を控除することはできない。

換地処分公告の翌日が死亡前で,清算金の入金が死亡後である場合には,死亡前に確定した所得と相続する未収債権を区別する。反対に,死亡時は仮清算金の段階で換地処分が後日である場合は,承継した権利義務と後日の課税関係を確認する。入金を受けた人だけで所得の帰属を決めない。

国税庁の準確定申告の説明では,相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納税する。相続税申告と所得税の準確定申告は別である。土地評価への織込みと,別に計上する清算金債権・債務を重複させず,仮清算金の取扱いも個別資料に基づいて整理する。

4 申出後の相続と特例の期限

買取り等の申出を受けた所有者の死亡後に,相続人がその資産を譲渡する場合,前記国税庁の特例説明は,最初に申出を受けた者の相続人等を対象者に含めている。ただし,相続した日から新たに6か月が始まると考えてはならない。被相続人への最初の申出日,死亡日,契約・譲渡日及び特例適用歴を引き継いで確認する。

第7 法人税・消費税は個人の所得税と別に判断する

法人には租税特別措置法64条・65条の圧縮記帳,65条の2の所定の特別控除等がある。個人の44条をそのまま法人へ適用したり,法人にも個人の一時所得があると説明したりしてはならない。国税庁の法人税の収用特例は,固定資産であること,所定の代替資産取得・経理・申告等の条件を説明している。販売目的の棚卸資産を同じ特例対象としない。

消費税でも,所得税で対価補償金として取り扱ったという理由だけで課税を決めない。消費税法基本通達5-2-10は,収用される権利の対価と,移転費用・収益・経費の補償等を区別する。収用等により権利を取得する者から受ける対価補償金は,資産の譲渡の説明に従って検討する。

その上で,個人の生活用資産か事業としての譲渡か,法人か,対象が土地等の非課税取引か建物等かを分ける。国税庁の非課税取引の説明は土地の譲渡等を掲げている。「所得税の特例で税額がゼロだから消費税もゼロ」「補償金という名前だから全部消費税対象外」という判断はできない。

第8 申告前にそろえる資料と確認手順

判断する順序確認内容
金銭を分類する清算金,仮清算金,土地買取り,建物対価,移転,営業・経費補償を対象資産ごとに分ける
課税する人と年を決める換地処分公告,売買,死亡,権利義務の承継,補償の確定と支出の時期を確認する
所得と取得費を計算する従前地の取得資料,清算金配分,建物減価償却,工事内訳,相殺前の額を用いる
特例と使途を確かめる90条の同意,6か月・過去年の申告,代替資産取得,実際の取壊し等を点検する
証明と申告を行う施行者の証明,譲渡所得内訳書,特例に応じた添付書類を確認する

施行者へは,換地計画の該当部分,各筆各権利別清算金明細,公告の写し,補償の対象と内訳,収用等の証明書の発行可否・名義を確認する。特例は税額が結果としてゼロになる場合でも申告等の要件を確認する必要があり,証明書があるだけで要件をすべて満たすわけではない。

弁護士が整理すべき契約上の帰属・処分の時期と,税理士等が確認する所得区分・特例・申告書を同じ時系列表で共有すると,売買代金の精算と課税の不一致を防ぎやすい。金額の算定そのものや税率までを決めるには,個別の取得資料,所得の種類,申告年及び適用特例が必要である。

第9 関連解説と資料の位置付け

土地区画整理事業の仕組みと地権者の注意点,減歩・清算金・補償の違い,相続後の換地処分と遺留分の評価基準時も参照されたい。

法令上の要件は,土地区画整理法90条・94条・102条・104条・129条,所得税法33条・44条・60条・124条・125条,租税特別措置法33条・33条の3・33条の4・33条の6等及び各施行令・施行規則を基礎としている。相続税の評価・債務控除は相続税法13条・14条・22条と財産評価基本通達24-2を区別して参照した。

国税庁事例の多くは令和7年8月1日現在の説明であり,本記事の確認時点の施行法令とは日付が異なる。通達は課税庁の解釈・取扱い,公表裁決はその事案についての審判所の判断,本文中の計算例と資料収集の提案は制度理解のための説明である。個別契約の課税結果をこれらだけから確定するものではない。