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弁護人選任届の書式・書き方・提出先―被疑者用・被告人用と家族による選任(AI作成)

第1 弁護人選任届とは

弁護人選任届は,誰が,どの事件について,誰を私選弁護人に選任したかを示す書面である。まず,起訴前の被疑者の事件か,起訴後の被告人の事件かを確認し,選任権者,提出先及び署名押印の方式を選ぶ必要がある。
本記事は,紙の選任届の参考書式と記載例を示すものである。裁判所の公式書式ではなく,担当機関が現行様式を指定している場合は,その様式を確認して使用されたい。

1 依頼契約・選任届・国選請求を分ける

弁護士との委任契約は,依頼する業務や費用等を定めるものである。刑事手続上の選任届と同じ書類ではないため,委任契約書を作成しただけで,捜査機関や裁判所への届出まで済んだと扱ってはならない。
国選弁護人は,裁判所又は裁判官が付する弁護人である。本記事の私選の選任届を提出することが,国選弁護人の選任請求になるわけではない。

2 書式の利用前に確認すること

通常の私選事件として選任する場合と,当番弁護士が勾留前の法律援助を利用して国選への移行を希望する場合は,処理が異なる。
勾留前援助中の提出要否や国選への切替えは,72時間援助中の弁護人選任届を確認し,所属弁護士会及び法テラス地方事務所の現行手順に従う必要がある。

第2 被疑者用・被告人用・家族による選任の記載例

1 起訴前に被疑者本人が選任する場合

起訴前の参考例は,次のとおりである。「検察官又は司法警察員」をそのまま並記して提出するのではなく,事件を取り扱う機関と担当者を確認し,宛先を確定する。

弁護人選任届
○○警察署 司法警察員 ○○殿〔又は,事件を取り扱う検察官の宛先〕
被疑者氏名 ○○○○
罪名・事件の表示 ○○被疑事件
上記被疑者に対する被疑事件につき,下記の者を弁護人に選任する。
弁護士氏名 ○○○○
所属弁護士会 ○○弁護士会
事務所名・所在地 ○○法律事務所 ○○市○○
電話・FAX ○○
令和○年○月○日
被疑者 〔本人が署名〕 印
弁護人 〔弁護士が署名〕 印

被疑者欄の氏名を印字しただけで,署名欄まで完成したと扱ってはならない。起訴前は,選任権者と弁護人の双方の署名押印を原則として点検する。署名又は押印ができない場合は,第6の代書・指印を確認する。

2 起訴後に被告人本人が選任する場合

起訴後は,事件が係属する裁判所と事件番号を確認する。被疑者用の宛先を残したまま使用せず,被告人及び被告事件の表示に改める。

弁護人選任届
○○地方裁判所 刑事第○部 御中
令和○年(わ)第○号
被告人氏名 ○○○○
罪名・事件の表示 ○○被告事件
上記被告人に対する被告事件につき,下記の者を弁護人に選任する。
弁護士氏名 ○○○○
所属弁護士会 ○○弁護士会
事務所名・所在地 ○○法律事務所 ○○市○○
電話・FAX ○○
令和○年○月○日
被告人 〔本人が署名〕 印
弁護人 〔署名又は記名〕 印

事件番号の符号は実際の事件に合わせる。「(わ)」は例示であり,すべての事件に共通する符号ではない。
起訴後の裁判所への提出では,弁護人欄は署名押印に代えて記名押印とすることができるが,記名だけで押印を欠いてよいという意味ではない。

3 家族等が本人とは独立して選任する場合

本人とは独立した選任権がある者が選任する場合は,被疑者又は被告人の氏名と,選任する者の氏名を分け,選任権者の資格を明記する。
起訴前に父が選任する例では,上記1の選任文言及び署名欄を次のようにする。

上記被疑者に対する被疑事件につき,選任権者として,下記の者を弁護人に選任する。
選任権者の資格 被疑者の父
選任権者 〔父が自分の氏名を署名〕 印
弁護人 〔弁護士が署名〕 印

父が独立して選任する場合,父が被疑者本人の氏名を本人の署名として書く方式とは異なる。家族に費用を負担してもらうことや書面を届けてもらうことも,法律上の選任権とは別である。
起訴後の家族等による選任では,上記2の宛先,事件番号及び被告人の表示を用い,選任権者欄を家族等の資格と署名欄に変更する。

第3 弁護人選任届の書き方と各欄の意味

1 宛先・本人・事件を特定する

宛先は,留置されている施設名だけで決めず,事件を扱う捜査機関又は事件が係属する裁判所を確認する。留置施設と捜査担当の警察署が異なる場合もある。
本人の氏名,罪名及び事件の表示は,別人又は別事件と取り違えないよう,手元の令状,起訴状等の事件資料と照合する。起訴前に裁判所の事件番号が分からない場合に,推測した番号を書き込んではならない。

2 選任する弁護士と連絡先を書く

弁護士の氏名,所属弁護士会,事務所所在地及び連絡先を示す。複数の弁護士を選任する場合は,誰が選任されるかと各人の連署を確認できる書面にする必要がある。
担当機関の様式に事務所名,登録番号,直通番号等の欄がある場合は,その指示も確認する。本記事の参考例にある欄のすべてが,法令で一律に要求される記載事項であるという趣旨ではない。

3 日付・選任権者・署名押印を点検する

書面の作成日を記載し,選任権者が本人か,刑事訴訟法30条2項の独立の選任権者かを確認する。選任権者と弁護人の欄が両方完成しているかを点検する。
提出前に写しを保存し,提出先,提出日,到達又は受領を確認した日時,受領者及び原本の所在を記録する。事務所で原本を作成したことと,担当機関へ提出が完了したことを分けて管理する。

第4 提出先を起訴前後で確認する

1 法令上の提出先と実務上の窓口

刑事訴訟規則17条の起訴前の提出先は,事件を取り扱う検察官又は司法警察員である。18条の起訴後の提出先は裁判所である。
送致前後で事件の担当や受付窓口が変わり得るため,次の表は確認の順序を示すものであり,全国の機関に共通する受付部署を指定するものではない。

事件の段階提出先・確認事項
送致前・起訴前事件を取り扱う司法警察員等を確認する。留置先と捜査担当が同じとは限らない
送致後・起訴前担当検察官・検察庁の受付及び捜査機関への提出状況を確認する。規則17条の文言は「検察官又は司法警察員」である
起訴後事件が係属する裁判所の担当部・受付方法を確認する。起訴前の選任届の提出状況も確認する
控訴・上告後当該審級の選任を確認する。記録の所在,提出窓口及び急ぎの申立先も確認する

2 勾留を扱う裁判所への書面と区別する

起訴前の勾留質問や準抗告を裁判所が扱うことから,起訴前の選任届の法令上の提出先が常に裁判所になるわけではない。
裁判所へ選任届の写し等を示して弁護人資格を確認してもらうことと,規則17条の書面を所定の提出先へ差し出すことを区別する。原本未到達時の緊急申立ては,弁護人選任届の署名押印と申立資格を参照されたい。

第5 家族は誰でも選任できるのか

1 本人とは独立して選任できる者

刑事訴訟法30条2項は,法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹に,本人とは独立した弁護人選任権を認めている。
父母・祖父母・子等は直系親族に当たる。叔父叔母,いとこ,交際相手,友人という関係だけでは,この独立の選任権は認められない。「親族なら誰でも選任できる」と説明してはならない。

2 費用負担・書面の持参・本人の代書との違い

弁護士費用を支払う者と,選任届の選任権者は同じとは限らない。また,完成した書面を届ける者の氏名を,その理由だけで選任権者欄に書くものでもない。
本人が署名できない場合の代書は,家族が独立の選任権を行使することとは異なる。代書には規則61条の方式があるため,本人の氏名を家族が書き,本人の署名としてそのまま提出する処理を避ける必要がある。

第6 署名押印・記名押印・指印・代書

1 起訴前と起訴後の違い

刑事訴訟規則60条は,公務員以外の者が作成する書類について,年月日の記載と署名押印を原則とする。
同規則60条の2第2項2号は,弁護人又は弁護人となろうとする者が裁判所又は裁判官へ提出する訴訟関係書類について,署名押印に代えて記名押印を認める。これは弁護人側の方式に関する規定であり,選任権者側も一律に記名だけでよいという意味ではない。

紙の選任届選任権者欄弁護人欄
起訴前原則,署名押印原則,署名押印
起訴後・裁判所宛原則,署名押印署名押印に代えて記名押印が可能

2 署名又は押印ができない場合

規則61条は,署名できないときは他人に代書させ,押印できないときは指印することを定める。代書した者は,その事由を記載し,署名押印する必要がある。
署名できるか,印章を使えるかを個別に確認し,単に署名欄を空欄にしたり,本人の了解を得たという理由だけで代書者の表示を省いたりしない。施設内での書面作成方法も,担当弁護士と施設へ確認する。

第7 起訴後・控訴後に選任届を出し直す場面

1 起訴前の選任が第一審にも効力を持つ条件

刑事訴訟法32条1項は,公訴提起前の選任が第一審にも効力を有することを定める。刑事訴訟規則17条は,被疑者その他の選任権者と弁護人が連署した書面を,事件を取り扱う検察官又は司法警察員へ差し出した場合に限り,第一審にも効力を有するものとする。
したがって,適式に提出した起訴前の選任届は,起訴されたという理由だけで第一審の効力が当然に失われるものではない。他方,17条を,起訴前は届出がなければ選任関係が一切成立しないという説明に広げてはならない。

2 起訴後は審級ごとに選任する

刑事訴訟法32条2項により,起訴後の選任は審級ごとにする。第一審の選任届があれば控訴審・上告審でも当然に同じ権限を行使できる,とは扱わない。
原審の弁護人が上訴を申し立てることができることと,上訴後に保釈請求等を行う資格は別に確認する。控訴後の保釈請求の詳細は,署名押印と申立資格の記事を参照されたい。

第8 よくある質問

1 選任届を出す前は接見できないのか

選任届の提出前は弁護士が一切接見できない,という説明は正確ではない。刑事訴訟法39条1項は,身体拘束中の被疑者又は被告人について,弁護人だけでなく,選任権者の依頼により弁護人となろうとする者による接見も定めている。
届出前の接見と,弁護人名義で準抗告等の申立てをする資格は,それぞれの根拠と提出状況を確認する必要がある。

2 FAX・郵送・電子提出でよいのか

FAX送信又はメール送信だけで,すべての機関において原本の提出と同じ扱いになるとは断定できない。利用できる方法,原本後送の要否,休日・夜間の受付及び到達確認の方法を,提出先へ確認する。
本記事の紙の書式と署名押印の説明を,電子提出における本人確認・電子署名の方式へそのまま当てはめてはならない。急ぎの申立てでは,届出と申立書の両方について受付方法を確認する。

3 原本を郵送した日に申立てをしてよいのか

発送しただけでは,担当機関への到達や申立先での資格確認が済んだことにならない。原本の所在,到達予定,保存した写し及び届出状況を申立先へ説明し,資格確認に必要な対応を具体的に確認する。
控えには,「作成済み」「発送済み」「受領確認済み」を分けて記録しておくのが有用である。

第9 関連記事・法令の出典

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逮捕後の手続:被疑者の逮捕
勾留と通知:被疑者及び被告人の勾留

2 法令と確認時点

本記事の法令確認日は令和8年10月11日である。施行中の規定と,将来施行の改正規定を区別して確認した。
根拠法令は,刑事訴訟法30条・32条・39条及び刑事訴訟規則17条・18条・60条・60条の2・61条である。具体的な受付部署・提出方法・援助制度の書式は,事件を扱う機関の現行の取扱いを別途確認する必要がある。