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令和8年度訪問診療の報酬改定と法務―在宅療養支援診療所の施設基準,夜間対応の委託契約,雇用及び患者引継ぎ(AI作成)

第1 最初に確認するのは自院の届出区分と実際の診療体制

診療報酬の変更によって収支が悪化するおそれがある場合,医療機関の経営者と法務担当者は,算定できる項目,その前提となる施設基準,夜間対応の契約,人員配置及び患者の診療継続を一緒に点検する必要がある。契約書に「24時間対応」と書かれていることだけでは,施設基準に適合する体制を確認できない。

本記事は,令和8年10月3日時点で厚生労働省が公表している施設基準の通知と疑義解釈を基に,在宅療養支援診療所について,契約・雇用・引継ぎの確認方法を説明するものである。施設基準の全項目を網羅する算定表ではなく,在宅療養支援病院には別の規定がある。訪問診療を行う全ての医療機関が一律に減収したことや,特定の医療機関の経営悪化が改定だけによって生じたことを意味するものではない。

まず,事務担当者が,現在の届出控え,受理状況,算定項目別の実績,患者構成,往診当番表,医師の雇用契約,連携医療機関との契約及び患者へ交付している説明文書を集める。その上で,管理者と算定担当者が,従前の区分,改定後に目指す区分及び不足する体制を対応させる。経営判断の前提になるため,件数や収入の見込みには対象期間と算定上の仮定を付す。

第2 24時間の連絡体制と往診体制を分けて確認する

1 連絡先をコールセンターにする場合

施設基準の通知・別添1第9の1は,24時間連絡を受ける保険医又は看護職員を指定し,連絡先や緊急時の注意事項を患者又は家族に事前に説明して,文書で提供する体制を定めている。曜日や時間帯で担当者が異なる場合は,それに対応する担当者と連絡先を明らかにする必要がある。

患者へ提供する連絡先をコールセンター等が担う場合についても規定があり,その利用を事前に説明するとともに,診療所又は対象となる連携医療機関側が,コールセンター等からの連絡を24時間受ける体制を確保することが求められる。受付窓口が電話を受けることと,医療機関が連絡を受けて診療上の判断を行えることを分けて確認する。

2 往診担当医の氏名,担当日及び届出区分

24時間往診が可能な体制については,往診担当医の氏名や担当日等を患家に文書で提供する要件がある。連携型のうち第9の1(2)アでは,所定の医師による連続24時間の往診体制を月4回以上確保する要件も定められている。同(2)イの区分とは要件の構成が異なり,地域に応じた例外もあるため,この月4回の条件を全ての在宅療養支援診療所に一律に当てはめない。

当番表は,担当医の所属,通常の訪問診療への関与,診療録を閲覧できる時点,方針共有の方法及び代替医の手配まで確認できるものにする。担当者を埋めた予定表だけでなく,実際の連絡・往診・情報共有の記録を残すことが,後日の説明に役立つ。

第3 夜間対応の外注では医師との契約と事前面談が問題になる

1 雇用契約のない医師を通常の担当医として掲載できるとは限らない

疑義解釈その2・問88は,往診体制について患家へ提供する文書で氏名を明らかにしない説明を認めず,当該保険医療機関に雇用契約のない医師を掲載することも認めていない。連携型の場合には,連携体制を構築するいずれかの保険医療機関との雇用契約が問題となる。

したがって,診療所と外注会社との業務委託契約だけを見て,担当医の雇用関係まで確認済みと扱わない。誰が医師を雇用し,どの医療機関の体制として往診するのかを確認する。なお,疑義解釈その4・問27には,通知所定の研修医等が研修のため往診する場合の説明・指導体制に関する取扱いがある。この取扱いを一般の外注往診全体へ広げることはできない。

2 面談,共有する情報及び年末までの取扱い

やむを得ない事由により事前に氏名を提供していない医師が往診する場合について,疑義解釈その2・問89及び問90は,前日以前の対面面談又は対面でのカンファレンス出席と,診療方針等の共有を具体化している。共有事項には,急変が予想される患者の情報,緊急入院先の連絡先,医療材料や電子カルテの使用方法等が含まれる。事前に氏名を提供している医師についても,同問91やその4・問28により,普段の診療への関与等に応じた確認が必要である。

その4・問30では面談場所について別の取扱いが示され,問29では,予定していた医師の急病等により当日急遽交代する場合について,経験,方針共有,6か月間に10日という上限及び診療録への理由記載等を伴う例外が示されている。恒常的な外注体制の不足を,緊急交代の例外だけで補えるとは扱わない。

さらに,同問31は,令和8年6月までに全員の対面面談が困難な場合について,十分な方針共有のための具体的な面談計画等を文書で定めて体制整備を進めている場合に,令和8年12月31日までの取扱いを示している。令和9年1月1日以降は,対面面談を行った医師等に限るとされている。自院がこの取扱いを用いている場合には,計画,実施日,面談者及び共有事項を記録し,年内の完了を管理する。

第4 委託・連携契約で確認する内容

以下は,施設基準を実際の運用に結び付けるための契約点検の提案であり,通知が全ての条項を同じ文言で契約書へ記載するよう求めているという意味ではない。

契約の業務範囲は,電話受付,医療機関への連絡,医師による判断,往診,入院先の調整及び記録作成を分ける。対応する地域・曜日・時間帯,担当医の確保方法,代替医の条件,必要な面談と患者説明の分担,診療録へのアクセス,方針共有の責任者を具体化する。「夜間対応一式」という記載だけでは,連絡不通や医師の欠員が生じた場合の対応が分かりにくい。

運用変更時の通知期限,重大な連絡不通や情報共有の不備があった場合の報告,相互に確認できる記録,改善の期限及び代替体制も定める。料金については,当番の確保費用,受付・往診等の実績に応じた費用,研修や交代に伴う費用を分け,診療報酬が変わった場合の協議方法を確認する。改定があれば当然に契約を解約できると決めつけず,現在の契約の期間,解除条件及び予告期間を読む。

契約終了時には,最後の対応日,新体制への切替日,未了の患者対応,記録の引渡し,アクセス権の終了及び患者へ交付する文書の差替えを合わせる。連携先へ必要な診療情報を提供する体制についても,通知には患者の同意と文書・電子媒体による随時提供の要件があるため,契約と情報共有の実態を照合する。

第5 雇用の変更・終了は報酬改定と分けて検討する

診療報酬や委託料金が変わったことだけで,医師や看護職員の賃金を一方的に下げたり,雇用契約を終了したりできるわけではない。労働契約法8条は合意による労働条件の変更を定め,9条・10条は就業規則による不利益変更について規律している。雇用契約,就業規則,勤務体制及び変更理由を確認し,変更案と説明の記録を残す。

解雇には労働契約法16条の規律があり,有期契約の期間途中の解雇には17条の規律がある。解雇予告又は予告手当の問題と,解雇の有効性は別に検討する必要がある。配置転換,業務量の調整,契約の更新又は終了を検討する場合も,個別の契約と実態を基に進める。

夜間対応の継続を求める際も,応招義務を理由に労働関係法令の確認を省略しない。厚生労働省の令和元年12月25日通知は,労使協定・労働契約の範囲を超える診療指示等を,勤務医と使用者の労働関係上の問題として整理している。

第6 患者の引継ぎと業務継続計画を実際に使えるものにする

診療範囲の縮小や委託終了を検討する場合には,患者ごとの急変リスク,次の訪問日,処方・処置の継続,新たな担当医療機関の受入れ状況,患者・家族への説明及び緊急連絡先を確認する。この点検項目は,診療の空白を減らすための実務上の提案である。終了通知を送付しただけで,引継ぎが完了したとは扱わない。

令和元年12月25日通知は,応招義務を医師個人が国に対して負う公法上の義務と整理し,医療機関の対応も別に説明している。診療しないことの正当化については,緊急性,診療・勤務時間,診療能力,代替可能性及び信頼関係等が問題となる。収支悪化から直ちに全ての患者への診療終了が正当化されると結論付けず,個別の事情を検討する。

在宅療養支援診療所の施設基準には,実情に応じた業務継続計画(BCP)の策定,必要な措置及び見直しも定められている。疑義解釈その12・問7は,日本医師会のひな形も参考にできる一方,医療機関や地域の特性等に応じた追加・削除,職員への周知及び定期的更新に言及している。ひな形の保管で終えず,停電・通信障害・担当医の不在時に,誰が患者の診療を継続するかを確認する。

第7 相談時に持参する資料と判断の順序

相談前に用意したい資料は,施設基準の届出控え,算定実績と収支試算,患者への説明文書,当番表と実施記録,医師・職員の雇用契約,委託・連携契約,面談記録及びBCPである。個人情報を含む資料は,必要な範囲と取扱方法を決めて共有する。

管理者,算定担当者,人事担当者及び契約担当者が,対象区分,不足する体制,対応費用,契約変更の期限,職員への説明及び患者の引継ぎ日を同じ計画で管理する。基準への適合が不明なまま算定を続けること,担当医の雇用や面談が確認できないこと,患者の受入れ先が確定しないまま対応を終了することは,早期に関係機関や専門家へ確認するべき事情である。

第8 参考資料

① 厚生労働省令和8年度診療報酬改定について。告示・通知の訂正と疑義解釈を確認するための公式一覧である。本記事では令和8年9月25日公表のその13までの一覧を確認している。

② 厚生労働省特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて・令和8年3月5日保医発0305第8号(7月30日訂正後)。別添1第9,PDF85~95頁の在宅療養支援診療所に関する規定を参照した。

③ 厚生労働省疑義解釈資料の送付について(その2)・令和8年4月1日・問88~92,疑義解釈資料の送付について(その4)・令和8年4月21日・問26~31及び疑義解釈資料の送付について(その12)・令和8年9月2日・問7。

④ 厚生労働省労働契約法及び労働契約の終了に関するルール。

⑤ 厚生労働省応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について・令和元年12月25日医政発1225第4号(愛媛県掲載の通知)。