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東京国税局の税理士専門官だより(令和4年~令和6年)-税理士等情報せん,にせ税理士,国税OB税理士の業務制限及び調査妨害(AI作成)

第1 この記事の対象と資料

1 税理士専門官だよりとは

本記事は,東京国税局の税理士専門官が局内及び管内税務署の職員向けに発行している「税理士専門官だより」のうち,令和4年分から令和6年分までの各号を読み,税務署が税理士法違反をどのように把握し,懲戒処分や告発につなげようとしているかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年10月2日である。

当サイトに掲載している写しは,令和4年分(12頁),令和5年分(16頁)及び令和6年分(15頁)の3点である。
各号には,7月の第1号から翌年6月の第5号までの通し番号と,「特別号」又は「号外」があり,文書分類は「共通(法令・通達)」,「情報通信類」とされている。

主な号と題名は次のとおりである。
①令和4年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和4年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和4年5月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和4年5月特別号「税理士法の一部が改正されました。」,令和4年7月第1号「「税理士等情報せん」を作成しましょう」,令和4年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
②令和5年2月第3号「にせ税理士防止月間」,令和5年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和5年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和5年6月特別号(令和5年4月施行の改正の紹介),令和5年7月第1号「「税理士等情報せん」はこうして活用されます!」,令和5年11月第2号「「税理士証票」を確認していますか?」
③令和6年2月第3号「その人、本当に税理士ですか??」,令和6年3月第4号「退職した税務職員に対する税理士業務の制限」,令和6年6月第5号「「税理士事務功績者」への表彰」,令和6年6月号外「税理士の調査妨害には、「毅然とした対応」と「詳細な記録」を!」,令和6年7月第1号「税理士等に対する懲戒処分の実施に向けて」,令和6年11月第2号「調査最盛期!増える調査妨害に向けて」

2 この資料を読むときの注意

税理士専門官だよりは,東京国税局の職員に向けた内部の広報であり,税理士や納税者に対する法令上の義務を定めたものではない。
証拠資料の具体例,表彰を受けた職員が把握した違反の内容,調査妨害に対する税理士調査側の対応等は黒塗りとなっており,その部分は本記事でも扱わない。
表彰を受けた職員の氏名と所属は掲載されているが,本記事では記載しない。

各号に書かれた条文の説明には,現行法と異なる部分がある。
例えば,罰則の「懲役」は,令和7年6月1日から拘禁刑に改められている。
本記事では,税理士専門官だよりの記載と,現行の税理士法及び財務省告示で確認できる事項とを区別して記載する。
本記事で引用した税理士法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。

第2 税理士等情報せん

1 作成を求める場面と主な違反行為

各号に共通する依頼は,税理士法違反行為に関する情報を把握したときは,違反事実に限らず「疑い」も含めて,速やかに「税理士等情報せん」を作成することである。

違反行為を把握する場面として,次の3つが挙げられている。
①調査・滞納整理事務
②面接,電話,投書等による情報提供
③申告書の収受や郵便開封事務(申告書の「控」の送付先が,納税者でも関与税理士でもない第三者の住所である場合など)

主な違反行為として紹介されているのは,次の4類型である。
①脱税相談等をした場合の懲戒(税理士法45条):脱税相談・指示等,事実に反することを知りながら正しくない内容の申告書を作成すること
②信用失墜行為の禁止(同法37条):税理士本人(税理士が代表者である法人を含む。)の脱税や申告漏れ,関与先の書類を預かったまま申告を怠る業務懈怠,令和6年分からは調査妨害
③非税理士に対する名義貸しの禁止(同法37条の2):非税理士が作成した税務書類への署名押印
④使用人等に対する監督義務(同法41条の2):事務所の職員が関与先の不正申告に加担していたことの看過,職員が税理士に無断で他人の申告書を作成すること

令和4年7月第1号は,それぞれの類型を,人件費の架空計上を知りながら申告書を作成した税理士,5年間無申告の税理士,普段は別の人に申告書を作ってもらっていると話す納税者,社長と内緒で経費を増やす事務所職員の会話の例で説明している。

2 作成の流れ

署の課税調査で違反行為を把握した場合の流れは,次のとおりとされている。
①担当者が違反行為を把握し,統括官等に報告する。
②統括官等が総務課の課長補佐(非設置署は総務係長)に第一報を入れる。
③確認事項や必要な書類を整理し,違反事実の分かる証拠を保全する。
④担当者が「税理士等情報せん(署用)」を作成して決裁を起案し,署長決裁を経て局の税理士監理官に提出する。

令和6年2月第3号は,にせ税理士の疑いの場面ごとに,情報せんに添付すべき資料を示している。
窓口では「誰が」,「いつ」,「誰の申告書」を,「何件」提出したか(名刺,面接メモ等),郵送では返信先が誰か,申告書の作成者は誰か,いつからか,納税者との関係は何か(返信用封筒,応答メモ等),調査では誰が立ち会おうとしたか,その経緯は何か(名刺,調査経過記録書等)である。

この流れの基になっているのは,国税庁長官の事務運営指針「関係各部課及び税務署から税理士監理官への情報提供要領」(平成14年6月28日付官総6-106ほか12課共同,平成16年10月1日改正)であり,東京国税局長は平成14年7月25日付総総第617号でこれを管下の各部長と各税務署長に伝えている(当サイト掲載の写し)。
同要領によれば,税務署の担当者は,対象となる情報を把握したときは「税理士等情報提供せん(税務署用)」により総務課長(税理士専門官設置署では税理士専門官)に報告し,報告を受けた総務課長等が税理士監理官に通知する。

同要領が特に情報提供の対象とする行為は,税理士等については,①書面添付(33条の2)の虚偽記載,②脱税相談等,③故意又は相当の注意を怠った真正の事実に著しく反する税務代理又は税務書類の作成,④自己の申告に関し加算税(少額の過少申告加算税を除く。)を賦課されたこと又は故意に申告を適正に行っていないこと,⑤納税に関する詐欺,業務上横領又は税理士業務に関する贈賄,⑥名義貸しである。
税理士等でない者については,①経営コンサルタントや会計法人の従業者としての申告書の作成や税務相談,②法人の監査役や経理担当者と称して雇用等の関係を装った税務調査への立会い,③税理士又は税理士法人に類似する名称の使用が挙げられている。
税理士本人が自分の申告で加算税を課されたことも,それだけで情報提供の対象になり得るということである。

3 情報せんの活用

(1) 懲戒処分,告発及び行政指導

令和5年7月第1号と令和6年7月第1号は,税理士専門官が情報せんを端緒に税理士やにせ税理士に対する税理士法に基づく調査を行い,違反行為が認められた場合には,懲戒処分,刑事告発又は署長名による行政指導を行うと説明している。
情報せんを基に,にせ税理士が何件の税務書類を作成しているかを検討し,局の税理士専門官,署の総務課長補佐又は総務係長が税理士法上の調査を行うとも説明されている(令和5年2月第3号)。

(2) 功績者表彰

令和5年6月第5号と令和6年6月第5号は,情報せんの作成により税理士の懲戒処分やにせ税理士の告発につながった職員の表彰(長官表彰及び局長表彰)を紹介している。
端緒は所得税,法人税及び相続税の調査,保留原符解明事務,総務課事務,税理士に対する実態確認と幅広い。
令和6年6月第5号は,受彰者の多くが,課税調査で重加算税を賦課するための質問応答記録書を作成するなど証拠保全を的確に行ったほか,税理士等の違反行為についても証拠保全を行ったことが懲戒処分につながったとしている。

(3) 課税調査との関係

課税調査で税理士の関与が問題になると,納税者の重加算税の調査と並行して,税理士法の観点からも証拠が集められていることになる。
懲戒処分の手続の全体は,「税理士の懲戒処分の手続と量定」で扱っている。

第3 にせ税理士への対応

1 にせ税理士とは

税理士法52条は,「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。」と定める。
税理士専門官だよりは,税理士等(税理士,税理士法人,通知弁護士及び通知弁護士法人)でないのに税理士業務を行っている者を「にせ税理士」と呼んでいる。

令和5年2月第3号は,司法書士,行政書士,社会保険労務士等の有資格者,税理士事務所職員,記帳代行等の会計業務を行う記帳代行業者であっても,有償・無償を問わず,自らの判断で申告書等を作成することはできないとし,特に悪質な者は52条違反として司法当局に告発した事例があるとしている。
令和6年2月第3号は,税理士事務所職員について「税理士の指導監督下にある場合を除く。」と明記している。

各年の2月号は,確定申告期(2月16日から3月15日まで)を「にせ税理士防止月間」と位置付けている。

2 端緒の例

税理士専門官だよりが挙げる端緒の例は,次のとおりである。
①窓口に,税理士の署名がない複数の納税者の申告書を,一人の者がまとめて提出してきた。
②郵送で提出された申告書に同封された返信用封筒の宛先が,納税者本人でも税理士でもない第三者であった。
③申告書の誤りについて税理士の署名がないため納税者に問い合わせたところ,「コンサルタント」や行政書士に申告書の作成を頼んでいると答えた。
④調査で臨場したところ,税理士でもなく納税者の使用人でもない者が調査に立ち会おうとした。

返信先が本人や税理士等でない場合は,なりすまし防止等の観点から,納税者本人に返信先との関係を確認することになっているとされる(令和5年2月第3号)。

3 税理士事務所職員と記帳代行業者ができる業務

(1) 税理士事務所職員

令和4年11月第2号と令和5年11月第2号は,次のように説明している。
税理士事務所職員ができるのは,伝票の整理,記帳業務,決算書の作成などの会計業務と,税理士が税理士業務を行う前に必要な資料の収集などの補助業務に限られる。
職員が,税理士の指導監督に服さない状況の中で,自らの判断で税務相談に応じたり,申告書等の作成や調査立会いを行ったりすれば,にせ税理士として税理士法違反になり,職員に業務を任せきりにしていた税理士は,使用人監督義務違反になる。

(2) 記帳代行業者

記帳代行業者に許されているのは会計業務だけであり,無償であっても税理士業務を行うことはできない。
記帳代行業者が申告書を作成し,税理士が署名していた場合は,税理士がその内容を確認していても,記帳代行業者はにせ税理士,税理士は名義貸しとして,いずれも税理士法違反になるとされている。

(3) 税務職員側の注意

あわせて,税務職員がにせ税理士に納税者の情報を漏らすことや,納税者の申告書の作成を依頼するなどして税理士業務を行わせることは不適切な行為であると注意している。
なお,東京地方裁判所令和2年1月10日判決(平成30年(行ウ)第42号)は,税務署職員が調査の際に申告書等の下書きを作成したことについて,納税者の作業を補助したものであり税理士法52条に抵触しないとして,国家賠償請求を棄却している(判例秘書で判示事項を確認)。

4 税理士証票の確認

税理士法32条は,税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において,当該税務代理に係る税理士が税務官公署の職員と面接するときは,「当該税理士は、税理士証票を提示しなければならない。」と定める。
令和4年11月第2号と令和5年11月第2号は,調査の際に名刺を受け取るだけで身分確認を済ませず,必ず税理士証票を確認するよう求めている。

令和4年11月第2号は,懲戒処分等により税理士登録が抹消されたときは税理士証票を日本税理士会連合会に返還しなければならないこと,平成27年4月以降,交付日から10年を経過した税理士証票は交換しなければならないことにも触れている。

5 想定される違反行為と罰則

令和5年11月第2号は,税理士証票を確認しなかった場合に見逃すおそれのある違反行為を挙げている。
これを現行の税理士法と財務省告示に照らして整理すると,次のとおりである。

想定される場面違反する規定処分又は罰則
税理士事務所の職員だけ又は記帳代行業者が調査に立ち会う52条(税理士業務の制限)2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(59条1項4号)
税理士がにせ税理士に名義を貸す37条の2(名義貸しの禁止)2年以内の業務停止又は業務禁止(告示),2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(59条1項2号)
税理士でない者が税理士又は税理士事務所の名称入りの名刺を使う53条(名称の使用制限)100万円以下の罰金(61条)
税理士が業務停止の期間中に税理士業務を行う業務停止の処分への違反業務禁止(告示),1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(60条3号)

令和5年11月第2号は,名義貸しについて懲戒処分だけを記載しているが,59条1項2号は名義貸し(37条の2違反)にも刑事罰を定めている。
業務停止の期間中の業務について,令和4年11月第2号は税理士法46条(一般の懲戒)に該当するとし,令和5年11月第2号は同法37条(信用失墜行為の禁止)の違反としているが,財務省告示は,信用失墜行為とは別に「税理士業務の停止の処分を受け、その処分に違反して税理士業務を行ったとき」という類型を設け,量定を業務禁止としている。

6 にせ税理士に関する裁判例

(1) 「作成」と「他人の求に応じ」の意味

にせ税理士として処罰された事件では,税理士法2条の税務書類の「作成」と,「他人の求に応じ」(判決当時の表記)の意味が争われてきた。
最高裁判所第一小法廷昭和41年3月31日決定(昭和40年(あ)第1134号,刑集20巻3号146頁)は,零細商工業者が会員となっている任意団体の専務局長が,会員の帳簿や伝票を基に申告書用紙に所要事項を記載し,申告者に内容を説明して署名押印を得て税務署に提出していた事案で,申告者が記載の完了後に内容を承認して署名押印したとしても,専務局長が税務書類を「作成」したものに当たるとした。
同決定は,会員との個々の作成依頼の申込みと承諾という関係がなくても,「他人の求に応じ」たものに当たるとしている。
名古屋高等裁判所昭和48年2月27日判決(昭和47年(う)第367号,高刑集26巻1号56頁)も,非常勤の事務員という形式で多数の企業の税務書類を作成していた事案で,勤務時間が不規則で時間の拘束がないなどの事情から,「他人の求に応じ」たものに当たるとした。

(2) 団体の役職員による申告書の作成

東京地方裁判所平成21年10月29日判決(平成20年(特わ)第2508号)は,商工会の元副会長が,会員10名の求めに応じて確定申告書等40通を作成した事案で,コンピュータソフトを利用した機械的事務であり違法の認識もなかったとの主張を退け,懲役1年2月,執行猶予3年とした。
岡山地方裁判所平成29年3月3日判決(平成26年(わ)第55号・第106号)は,民主商工会の事務員が,特別会費の名目で対価を得て5法人の確定申告書22通を作成した税理士法違反と,会員の法人税のほ脱の幇助を認め,懲役2年,執行猶予4年とした。
同判決は,控訴審の広島高等裁判所岡山支部平成30年1月12日判決(平成29年(う)第24号)で,査察官報告書を証拠とした手続に誤りがあるとして破棄され,差し戻されている(差戻し後の判断は確認していない)。

団体の会員サービスとして申告書を作ることは,無償か会費の範囲内か,本人が内容を承認して署名したかにかかわらず,税理士業務に当たり得る。
税理士でない者に申告書の作成を任せている依頼者には,その者が税務書類を「作成」していることになり得ることを説明しておく必要がある。

第4 退職した税務職員の業務制限

1 税理士法42条の内容と趣旨

(1) 条文と趣旨

税理士法42条は,「国税又は地方税に関する行政事務に従事していた国又は地方公共団体の公務員で税理士となつたものは、離職後一年間は、その離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件について税理士業務を行つてはならない。」と定める。
ただし,国税庁長官の承認を受けた者は,この限りでない(同条ただし書)。

各年の3月号は,その趣旨を,国税OB税理士が在職中の地位を利用して顧客等の開拓を図ることを防止することにあると説明している。
令和5年3月第4号は,退職時の税務署の管内で開業すると無用な疑念を持たれかねないので,事務所の設置場所にも配慮する必要があるとしている。

(2) ただし書の承認

税理士事務提要(国税庁総務課)は,42条ただし書の承認について,申請者の事務所の所在地域に税理士が過少であること,勤務した税務官公署から遠隔の地に事務所を設けたこと等の事情があり,不当な情実関係の生ずるおそれがない場合などに限るとする税理士法基本通達42-4を引用し,承認は「極めて限られた場合にのみ行うもの」としている。

国税庁は,総務課情報第1号(令和7年10月30日)の別添「退職職員に対する税理士業務の制限について(税理士法第42条に関する運用上の留意事項)」を公表している。
税理士専門官だよりが参照先とした「総務課情報第2号」は平成22年当時の版であり,現在は同じ表題の第1号に改められている。
同別添は,「昭和31年に法第42条の但書が設けられて以来、令和7年6月末までに国税庁長官の承認を受けた件数は6件であり、昭和51年以降承認事例はない。」としている。
同別添は,税理士会が実施する税務支援事業(無料相談等)で確定申告書の作成などに携わることも税理士業務に当たり,42条の制限の対象になるとしている。

2 「職の所掌に属すべき事件」の範囲

税理士専門官だよりは,「職の所掌に属すべき事件」を,事務分掌規則等の定めるところにより判断するとし,具体的には,特定の調査,徴収,審理事務等を実施する,又は実施するか否かといった選定に係る判断,指示,決定等を行う対象となり得る納税者に係る案件(「調査等案件」)をいうとしている。

令和4年3月第4号が掲げる42条の業務制限の基本的な範囲の概略は,次のとおりである。

職業務制限の対象となる納税者
署長署所管の全納税者
副署長所掌事務に関する署所管の全納税者(単独署の場合は署所管の全納税者)
総務課の職員なし(総務課制署を除く。)
個人課税部門の第1部門の統括調査官署所管の全個人納税者
法人課税部門の第1部門の統括調査官署所管の全法人納税者
上記以外の統括官(特別国税調査官等を含む。)所属する部門において所掌している納税者
上記以外の職員自己が担当した納税者
国税局の局長局所管の全納税者
国税局の部長(次長)所掌事務に関する局所管の全納税者
国税局の課長(統括調査官等)所属する課(部門)において所掌している納税者

徴収部門,資産課税部門及び管理運営部門の第1部門の統括官は,それぞれの部門が所掌している署所管の全納税者(管理運営部門は延納・物納事務に関するもの)が対象とされている。
国税局の総務部の職員は「なし」とされている。
「自己が担当した納税者」には,直接担当した納税者のほか,指導や支援を行った調査等案件,部門連携調査等で参画した調査等案件に係る納税者が含まれるとされる。
国税局の調査等案件には,資料調査課の案件など,局が調査を実施した署所管の納税者及び調査を実施するか否かを判断した署所管の納税者が含まれる。

3 期間の数え方と違反の具体例

再任用職員は,「離職(退職時)」を「再任用終了時」として判断する。
令和6年3月第4号は,令和6年3月31日に定年退職する職員の業務制限期間を税理士登録日から令和7年3月31日まで(3月31日の翌日から起算),令和6年7月10日付けで辞職する職員の業務制限期間を税理士登録日から令和7年7月9日まで(7月10日の午前零時から起算)と図示している。

違反の具体例として挙げられているのは,法人課税部門の統括官で定年退職した後,再任用で別の税務署に勤務して辞職した職員である。
この職員は,前の税務署で部門が所掌していた納税者と,再任用後の税務署で自ら担当した納税者の両方について業務制限を受ける。
先輩から引き継いだ関与先に,在職中に部下に調査を指示した法人が含まれていることに後で気付き,断り切れずに申告書を作成した場合と,自ら調査した無申告法人の依頼を受けて関与税理士となり,課税調査に立ち会った場合が,いずれも違反とされている。

4 違反の効果と広告の表示

税理士専門官だよりは,42条違反の行為はたとえ1件であっても懲戒処分の対象となり,懲戒処分は2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止であるとしている。
これは,財務省告示が42条違反の量定を,違反して税務代理等をした件数に応じて2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止としていることと一致する。
罰則について,税理士専門官だよりは1年以下の懲役又は100万円以下の罰金としているが,現行の税理士法60条1号は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金と定めている。

あわせて,税務職員が離職後に税理士登録をした場合,在職時の具体的役職名(管轄地域名を冠した官公署名と役職名の併記)を表示した広告をしてはならないとされ,「元○○税務署長」は不可,「元税務署長」は可という例が示されている。
令和4年3月第4号は,これに違反すると,会則を守る義務を定めた税理士法39条の違反になるとしている。

この規制は,各税理士会の会員の業務の広告に関する細則に置かれている。
日本税理士会連合会が示した「○○○税理士会会員の業務の広告に関する細則(準則)」(平成14年3月25日制定)は,4条1項で「会員は、次の事項を表示した広告をしてはならない。」とし,その1号に「税務行政庁在職時の具体的役職名」を掲げている(内閣府の規制改革会議の資料に収録)。
同条2項により,委嘱者の氏名等の2号から4号までの事項は委嘱者の書面による同意があれば表示できるが,1号の役職名にはこの例外がない。
各税理士会の現行の細則と運用指針の本文は会員向けで公開されておらず,本記事では確認できなかった。

第5 調査妨害への対応

1 調査妨害の類型と税務職員の対応例

令和6年6月号外は,税理士による調査妨害は税理士法37条(信用失墜行為の禁止)違反となり,46条の懲戒事由に該当するとし,その量定は財務省告示に基づき,妨害行為の回数と程度に応じて2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止になると説明している。
財務省告示も,調査妨害を「税務代理をする場合において、税務職員の調査を妨げる行為をすること」と定義し,同じ量定を定めている。

同号外は,調査妨害を6つの類型に分け,税務職員の対応例を示している。
①暴行・脅迫:公務執行妨害である旨を宣言して調査を打ち切り,身の安全を確保した上で警察に通報する。
②不答弁:受忍義務を説明した上で,改めて調査への理解と協力を求める。
③虚偽答弁:答弁内容を質問応答記録書に記録した上で,必要な補完調査を行う。
④検査の拒否(無予告調査・反面調査の拒否):受忍義務を説明した上で,改めて理解と協力を求める。
⑤検査の妨害(帳簿書類の破棄,恫喝,暴言,揚げ足取り,納税者等に質問・回答させないこと):その場で行為を指摘する。
⑥検査の忌避(正当な理由のない調査日程の引延ばし,調査時間・場所の極端な限定):引延ばしの事実を指摘した上で調査妨害に当たる可能性がある旨を指摘し(納税者固有の理由によらない場合は納税者に直接確認させてもらう旨を伝えることも検討する。),限定された時間・場所では必要な調査が行えない旨を伝える。

2 調査非協力との区別

令和6年11月第2号は,「修正申告には応じない!」,「納税者支援調整官に連絡するぞ!」といった発言は,納税者等の権利に当たるため調査妨害とはいえないとしている。
これに対し,資料の提出を拒む,納税者に質問や回答をさせない,調査日程を引き延ばす,何度連絡しても折り返しがないといった行為は,その行為に「正当な理由」があるのかを確認するとしている。

同号は,課税調査で税務職員の人格を否定するような暴言を発していた税理士について,当初は事実を否定していたが,課税調査の状況が詳細に記載された調査経過記録書を基に事実を突き付けたところ,調査妨害を認めた事案を紹介している。

3 記録の重視と受忍義務

(1) 記録の方法

令和6年6月号外は,調査妨害があった場合は,できる限り担当者の主観を排除した客観的事実を,具体的な発言・行為,行為の回数及び程度に分けて,応答形式などで詳細に記録すること,特に調査妨害の部分は「調査報告書」として作成することが望ましいとしている。
立証のための記録事項として,答弁を拒否した理由と回数,虚偽答弁の内容と変遷,書類提出を拒否した内容と回数等が挙げられている。

(2) 最高裁昭和48年7月10日決定

同号外は,質問検査の相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負うと解されているとして,最高裁昭和48年7月10日決定を挙げている。
最高裁判所第三小法廷昭和48年7月10日決定(昭和45年(あ)第2339号,刑集27巻7号1205頁)は,当時の所得税法の質問検査について,違憲の主張を退ける理由の中で,相手方は「これを受忍すべき義務を一般的に負い」,その履行を間接的心理的に強制されていると述べている。
同決定が裁判要旨として掲げているのは,質問検査の対象者の意義と,質問検査の理由及び必要性の告知が法律上の要件ではないことであり,受忍義務の部分は裁判要旨には含まれていない。

(3) 調査に立ち会う代理人の留意点

税務調査に立ち会う税理士や弁護士にとっては,強い言葉での抗議が調査経過記録書に逐語で残り,懲戒の証拠になり得ることを意識しておく必要がある。
修正申告に応じない,納税者支援調整官に相談するといった権利の行使と,質問への不答弁や日程の引延ばしとを区別し,後者に当たる対応をとるときはその正当な理由を記録に残しておくことが考えられる。

第6 令和4年度改正の紹介

令和4年5月特別号と令和5年6月特別号は,令和4年度税制改正による税理士法の改正を職員向けに紹介している。
主な内容は次のとおりである。
①税理士業務のICT化の努力義務(税理士法2条の3):令和4年4月1日施行とされ,e-Taxを行っていないことだけで直ちに努力義務を果たしていないとはいえない,との留意事項が付されている。
②税務代理の範囲の明確化:税務官公署から納税者に対して発する書類(更正通知書等)の受領行為が税務代理に含まれることを税理士法基本通達2-3で明確にしたとされる。
③懲戒逃れをする税理士への対応:税理士であった者に対する懲戒処分を受けるべきであったことの決定(同法48条),税理士であった者への調査(同法55条2項)及び10年の除斥期間(同法47条の3)で,いずれも令和5年4月1日以後に行われた違反行為に適用されるとされる。
④事務所の設置:複数設置が禁止される「事務所」の該当性の基準を外部に対する表示のみとし,テレワークなど税理士から離れた場所での使用人等の業務の適切性を確保する措置を設けたとされる。
⑤税理士試験の受験資格の見直し:会計学科目の受験資格を不要とし,税法科目の学識による受験資格の要件を緩和したとされる。

④の事務所について,現行の税理士法基本通達40-1は,「税理士業務を行うための事務所」とは税理士業務の本拠をいい,本拠であるかどうかは「委嘱者等に示す連絡先など外部に対する表示に係る客観的事実によって判定する」とし,「外部に対する表示」には看板等の物理的な表示,ウェブサイトへの連絡先の掲載及び契約書等への連絡先の記載が含まれるとしている。
同通達40-2は,自宅以外に税理士事務所を設けて外部に対する表示をしながら,自宅でも外部に対する表示をして税理士業務を行っている場合を,2か所事務所の例として挙げている。
改正前の40-1は,外部に対する表示の有無に加え,設備の状況や使用人の有無等も判定の要素としていた(令和4年3月31日付けの改正通達の新旧対照表による)。

令和5年6月特別号は,令和6年4月1日以降,税務代理権限証書の様式が改定され,「税務代理権限証書に記載した税務代理の委任が終了した旨の通知書」という新しい様式も用いられること,税理士法33条の2の書面の名称が「申告書の作成に関する計算事項等記載書面」に変わり,資産税用の様式が定められることも紹介している。

第7 弁護士及び依頼者にとっての意味

税理士専門官だよりから読み取れるのは,税務署の窓口,郵便開封,調査及び滞納整理のあらゆる場面で,税理士法違反の情報が集められているということである。
依頼者が税理士以外の者(コンサルタント,行政書士,記帳代行業者等)に申告書の作成を頼んでいる場合には,申告書の提出時や調査時にそれが明らかになり,作成した者がにせ税理士として調査や告発の対象になり得る。

税理士に依頼する場面では,その人が税理士又は通知弁護士であることを税理士証票等で確かめること,申告書の控えの返送先が税理士事務所以外の第三者になっていないかを見ることが,依頼者自身の確認事項になる。
国税OB税理士に依頼する場合には,退職から1年以内であれば,退職前1年内の職の所掌に属すべき事件に当たらないかを確認することが考えられる。

税務調査に立ち会う代理人は,権利の行使としての主張と調査妨害との区別を意識し,自らの発言や対応が記録されていることを前提に行動する必要がある。
税務調査への対応一般は,「税務調査に関するメモ書き」で扱っている。

第8 掘り下げの結果と残る点

1 公開後に確認した事項

本記事の公開時に別のセッションで掘り下げる点として挙げた事項は,次のとおり確認し,各節に追記した。
①情報提供要領は当サイトに写しがあり,その内容を第2の2に追記した。
②にせ税理士の裁判例を第3の6に追記した。
③退職職員の業務制限に関する国税庁総務課情報の現行の版と,42条ただし書の承認実績を第4の1に追記した。
④広告の規制の根拠となる細則の準則を第4の4に追記した。
⑤税理士法基本通達40-1及び40-2の現行の文言を第6に追記した。

2 なお確認できていない事項

次の事項は,公表されている資料からは確認できなかった。
①「税理士事務提要の制定について」(平成23年7月8日付東局総総6-206)による東京国税局版の税理士事務提要の本文
②令和5年7月4日付東局課総一総2-15ほか9課合同「検査忌避等事案調査票の提出等について」の本文
③各税理士会の現行の広告に関する細則と運用指針の本文
④岡山地方裁判所平成29年3月3日判決の事件の差戻し後の判断
①と②は内部文書であり,確認するには情報公開請求が必要と考えられる。

第9 出典・関連記事

1 検討した資料

東京国税局「税理士専門官だより」令和6年分
東京国税局「税理士専門官だより」令和5年分
東京国税局「税理士専門官だより」令和4年分
税理士事務提要(国税庁総務課)2/2(第11章「退職予定者に対する指導等」)
関係各部課及び税務署から税理士監理官への情報提供要領(東京国税局,平成14年7月25日付総総第617号)

2 法令及び告示

税理士法(e-Gov法令検索)
本記事で引用した税理士法の条文は,e-Gov法令検索がメンテナンス中であったため,令和8年10月2日に判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在)で確認した。
国税庁「税理士等・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方(令和5年4月1日以後にした不正行為に係る懲戒処分等に適用)」
国税庁「税理士法基本通達」(令和7年6月1日現在)
国税庁「退職職員に対する税理士業務の制限について(税理士法第42条に関する運用上の留意事項)」の送付について(総務課情報第1号,令和7年10月30日)
内閣府規制改革会議ワーキンググループ資料(平成18年3月30日。「○○○税理士会会員の業務の広告に関する細則(準則)」を収録)

3 裁判例

最高裁判所第一小法廷昭和41年3月31日決定(昭和40年(あ)第1134号,刑集20巻3号146頁,裁判所ウェブサイト)
名古屋高等裁判所昭和48年2月27日判決(昭和47年(う)第367号,高刑集26巻1号56頁,裁判所ウェブサイト)
東京地方裁判所平成21年10月29日判決(平成20年(特わ)第2508号,判例秘書・判例番号L06430558,裁判所HP未掲載)
岡山地方裁判所平成29年3月3日判決(平成26年(わ)第55号・第106号,判例秘書・判例番号L07251160,裁判所HP未掲載)
広島高等裁判所岡山支部平成30年1月12日判決(平成29年(う)第24号,裁判所ウェブサイト)
東京地方裁判所令和2年1月10日判決(平成30年(行ウ)第42号,判例秘書・判例番号L07530068)
最高裁判所第三小法廷昭和48年7月10日決定(昭和45年(あ)第2339号,刑集27巻7号1205頁,裁判所ウェブサイト)

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