作成日:令和8年9月30日
目次
第1 この記事の対象と結論
この記事は、法務省掲載の令和8年度司法試験問題のうち、選択科目「倒産法」第1問(問題冊子2~3頁、配点50点)を対象とする。問題文の指示どおり、令和8年1月1日現在施行の法令で検討した。以下の評価項目、重み、答案及び解説は当ブログ独自の予想であり、法務省の出題の趣旨、採点実感、採点基準又は配点ではない。作成時点で対象年度の出題の趣旨及び採点実感は公表されておらず、参照していない。
結論は、設問1では破産管財人Xは本件定期預金1の1000万円を請求できないが、本件定期預金2の800万円を請求できる、設問2ではC社への150万円全額の弁済を否認できる、設問3ではDが代位取得した従業員の給与債権200万円を財団債権として破産管財人Xに随時請求する、というものである。設問1の定期預金2は、近時の裁判例との関係で異論があり得るため、第6で反対説を説明する。
第2 評価項目と重みの示し方
評価項目は、問題文の設問指示と配置事実、適用条文、関連裁判例から、一項目一判断を原則として抽出した。重みは5を答案の骨格、4を主要な反論・適用、3を中心的な事実評価、2を補強、1を形式・限定事項とする。これは相対的な重要度の目安であって、点数に換算できない。異なる筋でも、条文要件と事実を対応させ、相手方の反論を処理して救済まで示す答案は評価され得る。
第3 問題の概要と答案の結論
A社は印刷業を営み、仕入先への支払が令和4年以降滞り、B銀行の2億円の貸金につき令和6年11月20日に期限の利益を失った。B銀行は同年12月10日、請求と従来の定期預金1000万円との相殺を当面控える条件として、印刷代金の同行当座預金口座への振込指定と、入金額の半分を定期預金に振り替えることをA社と合意した。開始時には従来の定期預金1が1000万円、合意後の定期預金2が800万円存在した。
C社は令和7年2月16日、A社に紙の仕入資金100万円を貸した。A社は3月5日、取引先から現金で回収した印刷代金150万円を用い、C社の旧貸付50万円と新貸付100万円を返した。C社はA社の支払能力の欠如を知っていた。DはA社の依頼を受け、同年6月3日、退職した従業員らの4月・5月分未払給与200万円を立て替えた。A社は6月10日に破産を申し立て、同月18日に開始決定を受けた。3設問は独立に検討する。
第4 予想される評価項目
1 設問1:B銀行の相殺と二つの定期預金
| 番号 | 予想評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | Xの預金払戻請求に対するB銀行の相殺の抗弁から始める。 | 4 | 設問1・破産法67条1項 |
| 2 | 自働債権が開始前の2億円の貸金債権、受働債権が各預金払戻請求権であると分ける。 | 3 | 問題冊子2~3頁 |
| 3 | 期限の利益喪失と合意の「当面」の猶予を区別し、払戻請求時の満期も踏まえる。 | 4 | 令和6年11月20日・12月10日、設問の仮定 |
| 4 | 定期預金1は危機時期前からある1000万円であり、後発債務負担による相殺制限の対象でないと論じる。 | 4 | 令和4年より前の預入れ・破産法71条1項2号 |
| 5 | B銀行が相殺を確定的に放棄したとの読みと、「当面控える」にとどまる読みを区別する。 | 2 | 本件合意の文言 |
| 6 | 定期預金2について、支払不能の時期を客観的・継続的な弁済能力から認定する。 | 5 | 仕入先への遅滞、失期、返済見通し欠如・破産法2条11項 |
| 7 | B銀行の支払不能の認識を合意当時の財務情報から検討する。 | 4 | メインバンクへの相談・12月10日の合意 |
| 8 | 71条1項2号の「破産者の財産の処分を内容とする契約」を、回収口座の指定と半額振替の双方から論じる。 | 5 | 合意条件①② |
| 9 | 預金債務の負担原因が顧客の振込みか合意か、振替は新債務か条件変更かを双方から論じる。 | 5 | 入金と振替の順序・破産法71条1項2号 |
| 10 | B銀行の「顧客の振込が預金債務の負担原因であり、振替はその条件変更である」との主張を検討する。 | 4 | 本件当座預金口座、東京高裁令和5年5月17日判決の判決本文 |
| 11 | 本件では振込先指定自体が猶予の条件であることを使い、平時からの自然な入金と区別する。 | 5 | 合意条件①・②、相殺原資の形成 |
| 12 | 合意の「専ら相殺に供する目的」を事実上の猶予との対立も踏まえて評価する。 | 4 | 期限の利益を付与しない点・破産法71条1項2号 |
| 13 | 71条2項の前原因による適用除外を検討し、各預金ごとに請求できる額を示す。 | 3 | 当座預金契約と合意後の入金、1000万円/800万円 |
2 設問2:C社への150万円の弁済
| 番号 | 予想評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 14 | 行為を既存の債務を消滅させる弁済と捉え、破産法162条1項1号を選ぶ。 | 5 | 設問2・3月5日の弁済 |
| 15 | 50万円と100万円の債権の成立時期を分け、弁済時には双方とも存在したことを示す。 | 4 | 従前貸付け・2月16日の本件貸付け |
| 16 | 3月5日の支払不能を、全債務の一般的・継続的な弁済能力で判断する。 | 5 | 現金決済の要求、旧債務遅滞、B銀行貸金 |
| 17 | C社が支払不能を知って弁済を受けたことを、明示された認識事実から認定する。 | 5 | 設問の「なお」以下・破産法162条1項1号 |
| 18 | 期限どおりの弁済・窮状を見た援助でも、後日得た現金を一社へ優先配分する問題を示す。 | 3 | 2月16日と3月5日の時間差 |
| 19 | 新規融資100万円の財団不減少・一体取引というC社の反論を最も強く提示する。 | 5 | 「考えられるC社の反論」・紙の仕入れ |
| 20 | 特定旧債務への借入金の即時充当という最高裁平成5年1月25日判決の事実関係と本件を区別する。 | 4 | 本件融資は紙の購入に使用、弁済は後日の回収現金 |
| 21 | 融資時の財産流入と弁済時の財産流出を分け、紙・代金150万円の同一性を推測で補わない。 | 4 | 紙購入2月17日、取引先からの現金回収3月5日 |
| 22 | 50万円・100万円それぞれについて否認の結論を示し、計150万円の原状回復へつなぐ。 | 4 | 破産法167条・169条 |
| 23 | 否認後のC社の貸金債権の扱いを述べ、Xの請求とC社の地位を混同しない。 | 2 | 破産法169条・173条 |
3 設問3:Dの立替えと給与債権への代位
| 番号 | 予想評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 24 | D固有の委託に基づく費用償還・求償と、従業員の原給与債権への代位を区別する。 | 5 | A社の立替依頼・民法650条、499条 |
| 25 | D固有の求償権は開始前原因の破産債権であると論じる。 | 4 | 6月3日の立替え、6月18日の開始・破産法2条5項 |
| 26 | 4月・5月分の給与が開始前3か月間の給料請求権に当たると示す。 | 5 | 支給日5月1日・6月1日、開始日6月18日・破産法149条1項 |
| 27 | 第三者弁済と民法499条による代位、501条による求償権の範囲を示す。 | 5 | DがA社に代わって200万円支払ったこと |
| 28 | 現行法では非利害関係人にも代位のための従業員の承諾は不要であると区別する。 | 3 | 民法499条・平成29年民法改正後 |
| 29 | 元代表者という事実だけで正当な利益を肯定せず、民法500条・467条の通知又は承諾を検討する。 | 4 | Dの地位とA社の依頼 |
| 30 | 求償権が破産債権でも、代位した原給与債権は財団債権性を保つと説明する。 | 5 | 最高裁平成23年11月22日判決 |
| 31 | 財団債権の随時弁済を求める相手方・方法を明示する。 | 4 | 管財人X・破産法2条7項、151条 |
| 32 | 従業員ごとの原債権・立替払額・対抗要件資料を用意し、二重回収を避ける。 | 2 | 設問の「どのような方法」 |
| 33 | 求償権の届出・配当だけで終えず、財団債権200万円の回収可能性に到達する。 | 4 | 設問3の終点 |
重み5は12項目、4は14項目、3は4項目、2は3項目である。重み1に当たる独立項目は設けていない。問題文が利息・遅延損害金の検討を不要とする点及び3設問の独立性は、各項目に共通する答案作法として扱った。
第5 模範解答
1 答案の前提
以下は、公開参考答案を読む前に作成した独立答案を固定したもの。自然に改行した92行で、各行30文字以内(見出し・記号を含む最大30文字、改行を除く2488文字)である。参考答案との比較後も原答案を上書きしていない。各設問は独立に解いている。
2 答案
第1 設問1
1 A社の定期預金払戻請求権は破産財団に属し、Xは預金契約に
基づき払戻しを請求できる。B銀行は開始時にA社への2億円の
貸金債権を有し、破産法67条1項により手続外で預金債務と相殺
できると主張する。同条は開始時に相互に債権債務を負う者の相殺
への期待を保護する。貸金は令和6年11月20日に期限の利益を
失った。本件合意は請求等を当面控えるだけで期限の利益を回復
させない。預金も払戻請求時には満期であり、相殺適状にある。
2 定期預金1の1000万円は令和4年より前から存在し、
B銀行が支払不能を知って新たに負担した債務ではないから、
同法71条1項の相殺禁止に当たらない。Xは本件合意を
相殺しない約束と主張し得るが、「当面」控えるとの
文言から確定的放棄とは解せない。B銀行の相殺により
預金債権は全額消滅し、Xはその支払を得られない。
3 定期預金2の800万円について、Xは同法71条1項
2号を主張する。同号は、支払不能を知った破産債権者が、
専らその債権との相殺に充てる目的で破産者と財産処分契約を
結び、その契約によって支払不能後に債務を負担したときの
相殺を禁じる。危機時期に他の債権者に先駆けて相殺原資
を作ることを防ぐ規定である。支払不能とは弁済期の
債務を一般的、継続的に弁済できない客観的状態である。
内々の猶予相談だけから支払停止と断定する必要はない。
A社は仕入先への支払を重ねて遅滞し、2億円の貸金全額が
弁済期にあるのに返済の見通しがない。遅くとも合意時には
支払不能と評価でき、B銀行もその財務状況を知っていた。
B銀行は定期預金1との相殺を控える代わりに、印刷代金
の同行口座への振込指定と半額の定期預金化を求めた。
法律上の返済猶予は与えておらず、印刷代金を同行の預金債務
に取り込み、貸金との相殺に充てる目的が認められる。
これに対しB銀行は、返済難だけでは合意時の支払不能は
未証明であり、振込は取引先の支払だから、当座預金債務の
原因は振込であって本件合意ではないという。定期預金への
振替も預金の種類を変えただけで、事業継続のため請求を
控えたのであり、相殺だけが目的ではないと反論する。
しかし仕入先への長期の遅滞と2億円の失期から支払不能は
認められる。本件合意は従前の預金を拘束しただけではない。
A社が債権の回収先をB銀行に指定し、半額を定期預金に移す
財産処分を一体として定めた。これを平常取引の確認とみる
根拠は乏しい。合意後の振込で預金債務が発生し、その半額が
定期預金2になった点は、既存預金の単なる条件変更と異なる。
その履行により同行は新たな債務を負担した。従前の当座預金契約
を原因として71条2項の例外とすることもできない。よって
定期預金2との相殺は禁止され、Xは800万円を請求できる。
第2 設問2
1 本件弁済は、A社の既存債務150万円を消滅させる行為で
ある。破産法162条1項1号により、支払不能後の債務消滅行為
は、受益者が支払不能を知っていたとき、管財人が否認できる。
ここでいう既存債務は弁済時に存在すれば足り、支払不能前に成立
した債務に限られない。支払不能の判断は個々の債務を払えたかで
はなく、一般的、継続的な弁済能力による。A社は仕入代金の即時
決済もできず、借入れで紙を仕入れ、他の買掛金や2億円の返済
もできなかった。3月5日時点で支払不能である。C社はこれらの
債務と支払能力の欠如を知って弁済を受けたから、主観的要件も
満たす。現金150万円を1社だけに配分した偏頗行為である。
2 C社は、100万円を新たに融資し、その現金でA社が紙を
仕入れた以上、同額の弁済は新規の信用供与と一体の取引であり、
財団を害さないと反論する。しかし融資は2月16日、紙の購入
は17日、弁済は約定期日の3月5日である。弁済時には貸金債務
が既に成立し、A社は後日回収した現金をC社に交付した。
融資と弁済は同時交換ではない。150万円の回収金が当該紙
によって得られたかも問題文から確定しない。仮に営業継続に
寄与しても、後日の回収金を特定債権者だけに充てることは他の
債権者への配当原資を減らす。C社の援助の動機や約定どおりの
弁済であることは、偏頗性を消さない。従前貸付け50万円
はもちろん、本件貸付け100万円についても否認できる。
3 Xは否認権を行使してC社に150万円の返還を求める。
否認により財団は原状に復し、返還したC社の貸金債権は復活
して破産債権として扱われる(同法167条、169条)。
第3 設問3
1 DはA社に依頼されて200万円を立て替えたので、
民法650条1項の費用償還ないし求償を求め得る。しかし
開始前の委託と立替えを原因とするその請求権は破産債権であり、
これだけでは届出をして破産手続内の配当を受けるにとどまる。
元代表者の立替えを、それ自体で財団債権とする根拠はない。
2 4、5月分の給与は、6月18日の開始前3か月間の
給料請求権であり、破産法149条1項の財団債権である。
DはA社のために給料債務を弁済したので、民法499条により
各従業員の給料債権に当然に代位し、自己の求償権の範囲でこれを
行使できる(同法501条)。弁済による代位に元従業員の承諾は
要しない。元代表者というだけでは弁済につき正当な利益を有
するとはいえず、代位を対抗するには同法500条、467条所定
の元従業員からA社への通知又はA社の承諾を整えるべきである。
A社の立替依頼だけで代位の承諾まで当然に認めてはならない。
3 Dは元従業員ごとの給料額と弁済の事実を示し、
代位取得した各給料債権を財団債権としてXに請求する。
財団債権は破産手続によらず随時弁済されるから、破産債権
としての届出や配当を待たず、財団から200万円の支払を
求める方法が適切である。求償権が破産債権でも代位した
原債権の財団債権性は失われないという最高裁判例に沿う。
労働者の生活保障という趣旨が弁済により達成されても、
元の財団債権の性質は変わらない。求償権について別途届出
をする場合も、同一の支払を二重に受けることはできない。第6 争点の解説と参考答案の検討
1 設問1:定期預金2は結論に幅がある
破産法67条1項の相殺の原則を出発点とし、定期預金1と2を分ける。定期預金1は危機前から存在し、12月10日の「当面」相殺を控える提案は永続的な相殺権放棄とは読み難い。定期預金2については、71条1項2号のうち、①合意時のA社の支払不能、②B銀行の認識、③財産処分契約、④これによる新たな預金債務負担、⑤専ら相殺に供する目的が焦点となる。
銀行側には強い反論がある。東京高裁令和5年5月17日判決(令和4年(ネ)第5851号、判例秘書L07820484)の判決本文によると、銀行と破産会社は、顧客から普通預金口座へ振込入金がある都度、その一部を別段預金へ同時に振り替えることを合意していた。高裁は、この合意が財産処分契約に当たる余地を認めつつ、平時と同様に顧客からされた振込みを普通預金債務の負担原因と捉え、別段預金への振替えはその取引条件の変更にとどまるとして、71条1項2号の相殺禁止を否定した。本問でもB銀行は、顧客の振込みが預金債務の原因であり、振替えは条件変更にとどまると主張できる。この裁判例を無視し、振替えだけで当然に新債務が生じたとする説明は不十分である。
これに対し本問では、従前の平時の振込先がB銀行であったとは記載されず、B銀行の口座を印刷代金の回収先に指定する行為そのものが相殺見送りの条件となった。さらに、その半額を定期預金にすることも合意の一部である。高裁事案も危機後の入金と同時振替えを含むから、「振替えの時点で新債務が生じた」との違いだけでは区別できない。本問で71条1項2号を肯定するには、回収先の新たな指定と定期預金化を一体の財産処分契約とみて、それがB銀行の預金債務の負担原因になったと論証する必要がある。本答案はこの読みからXの800万円請求を認める。ただし、高裁判決の負担原因に関する判断を本問にも及ぼせば、B銀行の相殺を認める余地がある。この区別と結論は、判決本文と問題文を踏まえた当ブログの推論である。
2 設問2:新しい100万円の融資と後日の返済を分ける
C社に最も有利な反論は、新融資で紙を買えたので100万円の返済は一体取引であり、債権者全体の担保を減らさない、というものである。最高裁平成5年1月25日判決(平成元年(オ)第1062号、判例秘書L04810011)の判決本文は、特定の旧債務の弁済を条件としなければ借りられなかった金員について、貸主・弁済先の立会いの下で借入後その場で直ちに弁済し、流用や差押えによって別の使途に回る可能性も全くなく、借入債務が旧債務より重くないという事実関係の下で、共同担保の減損を否定した。同判決は旧破産法72条1号下の事案である。
本問では、C社からの100万円は旧債務の即時返済資金ではなく、2月17日に紙の購入へ使われた。3月5日の返済原資は取引先から後日現金で回収した印刷代金であり、その150万円が購入した紙から生じた代金かも確定しない。新たな融資に経済的価値があったとしても、既にA社に帰属した現金を一社に全額渡す行為の偏頗性は消えない。旧貸付50万円とともに新貸付100万円の弁済を否認する。破産法162条1項柱書が「既存の債務」についての行為に限定する点との関係でも、融資時と後日の弁済とを一つの同時交換とは扱えないことが重要である。
3 設問3:求償権の種類と代位した原債権の種類を混同しない
D固有の費用償還・求償権は開始前原因の破産債権である。他方、退職した従業員らの4月・5月分給与は破産法149条1項の財団債権であり、Dは弁済により各原債権へ代位する。最高裁平成23年11月22日判決は、求償権が破産債権にとどまっても、代位取得した財団債権は手続外で行使できるとした。立替えで労働者が支払を得たことだけで、原債権の財団債権性は失われない。
代位の成立と対抗要件は別である。令和8年1月1日施行の民法499条では、DはA社のために弁済すれば、従業員の承諾なしに代位する。ただし、元代表者であることのみから「弁済をするについて正当な利益」は導けないので、Dは各従業員からA社への代位の通知、又はA社の承諾という民法500条・467条の対抗要件を整え、支払資料を添えて管財人Xに財団債権として請求するのが確実である。A社による立替えの依頼を、代位についての承諾と当然に同一視しない。
4 ネット上の同一設問の参考答案との照合
令和8年9月30日、一般検索で「令和8年度/令和8年/R8司法試験」「倒産法」「第1問」に「参考答案」「模範解答」「再現答案」「定期預金」等を組み合わせ、note及び主要な司法試験講座の公開ページを確認した。同一の司法試験第1問について本文を読めた再現答案は、源勝芳氏の「R8司法試験・再現答案(※答案構成のみ)」の1件であった。同記事は題名どおり答案構成の概要であり、設問1・2の理由付けを十分に再現した全文答案ではない。公開範囲で、定期預金1のみ相殺可能、150万円全額を否認、給与債権への代位によりDが財団債権を行使できる、という3結論を確認した。
本記事の答案は、この公開答案を読む前に独立作成して固定した。比較で結論が一致したことは正解や採点項目の証明ではない。加藤ゼミナールの倒産法過去問講座は令和8年分を出題趣旨・採点実感の公表後に提供すると記しており、公開の無料体験は別年度の問題だった。アガルートの倒産法過去問解析講座は講座案内を確認したが、本問の公開答案本文は確認できなかった。加藤ゼミナールの令和8年予備試験解答速報は司法試験ではなく予備試験の別問題であり、本問の参考答案に数えなかった。令和8年司法試験対応と題するTKC全国統一模試の倒産法も別問題である。有料・非公開の答案、検索で見付からなかった答案については本文未確認であり、「存在しない」とは述べない。公開参考答案の文章は転載せず、論点と結論のみを比較した。
第7 関連記事
- 破産者の未払賃金を第三者が立替払いした場合――設問3の求償権と代位した原債権。
- 偏頗弁済と否認権――設問2の162条の位置付け。
- 相殺に関するメモ――設問1の相殺制限。
第8 出典と確認状態
| 区分 | 資料 | 今回確認した範囲 |
|---|---|---|
| 公式問題 | 法務省・令和8年度司法試験問題 | 倒産法第1問、問題冊子2~3頁。令和8年1月1日施行法を指定。 |
| 法令 | 破産法 | 2条、67条、71条、149条、151条、162条、167条、169条、173条を確認。 |
| 法令 | 民法 | 467条、499条~501条、650条を確認。 |
| 判決原文 | 最高裁平成23年11月22日判決 | 財団債権性の承継に関する法廷意見、補足意見。 |
| 判決原文 | 東京高裁令和5年5月17日判決、令和4年(ネ)第5851号、判例秘書L07820484 | 判例秘書の判決本文で、争点、当審の補正・追加判断、相殺有効の結論を確認。原審判断は引用されており、原審判決自体は今回未確認。 |
| 判決原文 | 最高裁平成5年1月25日第二小法廷判決、平成元年(オ)第1062号、判例秘書L04810011、民集47巻1号344頁 | 判例秘書の判決本文で、事実関係(1)~(9)、共同担保の減損否定の理由、上告棄却を確認。 |
| 判例解説 | 東京高裁令和5年5月17日判決の解説 | 判決の事実・要旨及び解説を確認。 |
| 研究資料 | 日本銀行金融研究所「現金、金銭に関する法的一考察」 | 最高裁平成5年1月25日判決への言及を確認。 |
| 参考答案 | 源勝芳氏の再現答案構成 | 倒産法第1問の3設問の公開部分を確認。正答・公式採点ではない。 |
確認状態: 問題文、指定時点の法令、最高裁平成23年判決の記述に加え、2026年9月30日に判例秘書で東京高裁令和5年判決及び最高裁平成5年判決の判決本文を直接確認した。定期預金2に関する本問と東京高裁事案の区別、予想評価項目の重み及び最終結論は当ブログの推論である。対象年度の公式出題の趣旨・採点実感、個々の受験者答案の得点、非公開の参考答案は未確認である。