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吸収合併の合併比率が不公正なときの少数株主の手段―事前開示,差止め,株式買取請求,決議取消し及び合併無効の訴え(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象と基準日

本記事は,株式会社どうしの吸収合併で,消滅する会社の株主に割り当てられる存続会社の株式の数(いわゆる合併比率)が不公正であると考える少数株主が,合併の前と後に使える会社法上の手段を整理する。
親会社が子会社を吸収合併する場合のように,合併の相手方である会社が消滅会社の多数の議決権を持っている場面を主に想定している。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
裁判例は,裁判所ウェブサイト又は判例秘書プラスで判決等の全文又は裁判要旨を確認したものに限って紹介している。

2 結論

①消滅会社の株主は,承認総会の2週間前の日等から,合併契約の内容や合併対価の相当性に関する事項(親子会社間の合併では,少数株主の利益を害さないように留意した事項を含む。)を記載した書面を,持株の数にかかわらず閲覧できる。
②株主総会では,取締役等に合併比率の算定根拠等の説明を求めることができる。
③合併の差止請求は合併が法令又は定款に違反する場合に認められ,合併対価が著しく不当であることを差止めの理由とする規定は,議決権の10分の9以上を持つ会社との略式合併の場合に限られている。
④合併に反対する株主は,総会に先立って反対を通知し,総会で反対しておけば,効力発生日の20日前の日から前日までの間に,公正な価格での株式の買取りを請求できる。
⑤決議について特別の利害関係を有する者(合併の相手方である会社がこれに当たると主張することになる。)が議決権を行使したことによって著しく不当な承認決議がされたときは,決議の日から3か月以内に,決議の取消しを請求できる。
⑥合併の効力が生じた後は効力発生日から6か月以内に合併無効の訴えを提起でき,承認決議に取消事由となる瑕疵がある場合に合併無効の原因が認められると述べた下級審の裁判例(事案は承認決議の不存在)や,存続会社の事前開示書類の不備置を合併無効の原因と認めた下級審の裁判例がある。
⑦他方,合併比率が不当であること自体は合併無効事由にならないとした会社法制定前の下級審の裁判例が複数あるので,合併の効力が生じた後は,比率の不公正だけでなく,承認決議の瑕疵や事前開示の不備を併せて主張できるかを検討することになる。

第2 合併比率と少数株主の不利益

1 合併比率は合併契約で定める

株式会社が存続する吸収合併では,合併契約において,存続会社が消滅会社の株主に対してその株式に代えて交付する金銭等(合併対価)についての事項と,その割当てに関する事項を定めなければならない(会社法749条1項2号・3号)。
合併対価が存続会社の株式であるときは,その数又はその数の算定方法を定める(同項2号イ)。
消滅会社の株式1株に対して存続会社の株式を何株割り当てるかという比率が,いわゆる合併比率である。

合併比率が消滅会社の株式の価値に比べて低く定められると,消滅会社の株主が合併後に持つ存続会社の株式の価値は,合併前に持っていた株式の価値を下回る。
その差額は,存続会社の既存の株主の側に移ることになる。

2 親子会社間の合併で問題が生じやすい場面

消滅会社は,効力発生日の前日までに,株主総会の決議によって合併契約の承認を受けなければならない(会社法783条1項)。
この決議は,定款に別段の定めがなければ,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う特別決議である(会社法309条2項12号。消滅会社が公開会社で,合併対価の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合は,同条3項2号の決議による。)。

合併の相手方である存続会社が消滅会社の株主でもある場合,存続会社は承認決議で議決権を行使できる。
定款に別段の定めがなければ,存続会社が消滅会社の議決権の3分の2以上を持っている場合,他の株主の全員が出席して反対しても,承認決議は成立する。
存続会社にとっては合併比率が低いほど有利になるので,少数株主の側から見ると,合併比率の決め方と承認決議の成り立ち方の両方を確かめる必要がある。

第3 合併の前に使える手段

1 事前開示書面の閲覧

消滅会社は,吸収合併契約等備置開始日から効力発生日までの間,合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(会社法782条1項)。
備置開始日は,承認総会の日の2週間前の日等のうち最も早い日である(同条2項)。
株主は,持株の数にかかわらず,営業時間内いつでも,その書面の閲覧を請求でき,会社の定めた費用を支払えば謄本又は抄本の交付も請求できる(同条3項)。

消滅会社が備え置く事項には,合併対価の相当性に関する事項と,合併対価について参考となるべき事項が含まれる(会社法施行規則182条1項1号・2号)。
合併対価の相当性に関する事項には,合併対価の総数又は総額の相当性に関する事項が含まれる(同条3項1号)。
さらに,存続会社と消滅会社とが共通支配下関係にあるときは,消滅会社の株主(共通支配下関係にある株主を除く。)の利益を害さないように留意した事項(当該事項がない場合にあっては,その旨)も含まれる(同項3号)。
共通支配下関係には,二以上の者のうちの一の者が他の全ての者を支配している場合の関係が含まれる(会社計算規則2条3項36号)。
親会社が子会社を吸収合併する場合,少数株主は,この「留意した事項」の記載を最初に確かめることになる。

存続会社にも同様の備置義務がある(会社法794条1項・3項)。
東京地方裁判所平成22年1月29日判決(平成20年(ワ)第15812号,判例秘書の判例番号 L06530097)は,存続会社の株主が合併の無効を求めた事案で,この備置の規定について「株主が合併条件の公正等を判断して吸収合併契約を承認するか否かを意思決定するため,また,会社債権者が合併に対し異議を述べるか否かを判断するためのみならず,合併無効の訴えを提起すべきか否かをも判断するための資料を提供する趣旨であると解される。」とした。
同判決は,合併対価の相当性に関する事項を記載した書類には,「一般的な株主や会社債権者が,いわゆる合併対価の相当性に関する事項を合理的に理解及び判断するために客観的に必要と認められる情報が記載されている必要があると解される。」とし,シミュレーションを実施した主体や算定根拠等が十分に明らかにされていない書面は,これに当たらないとした。
その上で,同判決は,備え置かれていたと認められない書類について「これらの書類の不備置は合併無効原因になるものと認められる。」として,合併を無効とした。

これに対し,会社法制定前の商法の下で,合併比率の理由を記載した書面の記載内容の不備が争われた東京地方裁判所平成16年1月29日判決(平成15年(ワ)第21850号,判例秘書の判例番号 L05930409)は,「仮に合併理由書の記載に不備が有ったとしても,当該株主総会における質疑の中で,その不備が補われることが予定されているということができる。」とし,「当該株主総会における会社側の説明が著しく不備であり,当該合併承認決議が株主総会決議取消事由に該当するような場合にはともかく,合併理由書の記載内容のみによって,合併決議が無効となると解することはできないというべきである。」とした。
平成16年判決は会社法制定前の合併比率理由書についての判断であり,平成22年判決は,会社法の下で,事前開示書類には合併対価の相当性を理解及び判断するために客観的に必要な情報が記載されている必要があるとした上で,書類の不備置を合併無効原因としている。
記載内容の不備が合併無効原因になるかどうかは,根拠となる規定や不備の程度によって判断が分かれ得る。
記載内容に不満がある場合には,次の説明請求で総会の場で説明を求め,そのやり取りを記録に残しておくことが,後に決議の効力を争う際の材料になる。

2 株主総会での説明請求

取締役等は,株主総会において,株主から特定の事項について説明を求められた場合には,その事項について必要な説明をしなければならない(会社法314条本文)。
ただし,その事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合,説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は,この限りでない(同条ただし書)。
承認総会では,合併比率の算定の方法や前提,第三者の算定書の有無等について説明を求めることが考えられる。

閲覧と説明請求は,合併比率が不公正かどうかを判断する材料を得る手段である。
閲覧や説明の請求をしたこと自体で承認決議の効力が左右されるわけではないので,次の差止め・買取請求・決議取消し・合併無効の訴えを,時期を落とさずに検討する必要がある。

3 合併の差止請求

消滅会社の株主は,次の場合に,株主が不利益を受けるおそれがあるときは,消滅会社に対し,合併をやめることを請求することができる(会社法784条の2)。

号差止めの理由対象となる合併
1号合併が法令又は定款に違反する場合限定なし
2号合併対価やその割当てに関する事項(749条1項2号・3号等)が,消滅会社又は存続会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるとき存続会社が消滅会社の特別支配会社である場合(略式合併)

2号は,「前条第一項本文に規定する場合において」と定めており,存続会社が消滅会社の特別支配会社であるために消滅会社の株主総会の承認を要しない場合(会社法784条1項本文)に限られる。
特別支配会社とは,ある株式会社の総株主の議決権の10分の9(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合)以上を,他の会社及びその完全子会社等が有している場合の当該他の会社をいう(会社法468条1項)。
したがって,親会社の議決権が10分の9に満たず,消滅会社の株主総会で承認決議をする通常の合併では,合併対価が著しく不当であることは,条文上,2号の差止めの理由にならない。
この場合に差止めを求めるには,1号の法令又は定款の違反(例えば,事前開示書面の不備置や,承認決議の手続の違法)を主張することになる。

差止めは合併の効力が生じる前にしか意味がないので,実際には,差止請求権を被保全権利とする仮処分の申立てを検討することになる。

4 反対の通知と総会での反対

後で株式買取請求をするためには,承認総会に先立って合併に反対する旨を消滅会社に通知し,かつ,総会で合併に反対しておく必要がある(会社法785条2項1号イ)。
総会で議決権を行使することができない株主は,この手続を経なくても反対株主に当たる(同号ロ)。
通知を忘れると,総会で反対しても買取請求ができないので,招集通知を受け取った段階で通知の要否と方法を確かめる。

第4 株式買取請求と価格の決定

1 請求の期間

反対株主は,消滅会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法785条1項)。
請求は,効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に,株式の数を明らかにしてしなければならない(同条5項)。
株式の価格について,効力発生日から30日以内に協議が調わないときは,株主又は会社は,その期間の満了の日後30日以内に,裁判所に対し,価格の決定の申立てをすることができる(会社法786条2項)。

2 「公正な価格」

最高裁判所第三小法廷平成23年4月19日決定(平成22年(許)第30号,民集65巻3号1311頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,「原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいう。」とするものである。
この裁判要旨は,シナジーが生じない場合について,承認決議がされることがなければその株式が有したであろう価格を原則とするものであり,合併契約で定めた合併比率を前提とする価格を基準とするものではない。
合併によりシナジーが生じる場合の「公正な価格」は,この裁判要旨の対象外である。
非上場会社の株式の評価方法や非流動性ディスカウントの扱いは,会社法の株式価格決定と相続税評価の違いで扱っている。

3 買取請求の限界

買取請求は,会社から退出して投下資本を回収する手段である。
株主として存続会社に残りながら合併比率の不公正を正したい場合には,次の決議取消し又は合併無効の訴えを検討することになる。

第5 承認決議の取消し

1 特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議

株主等は,株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって,著しく不当な決議がされたときは,株主総会等の決議の日から3か月以内に,訴えをもって決議の取消しを請求することができる(会社法831条1項3号)。

東京地方裁判所平成22年9月6日判決(平成21年(ワ)第26121号,判例秘書の判例番号 L06530452)は,全部取得条項付種類株式を用いた完全子会社化の事案で,会社法831条1項3号による取消事由があるというためには,①決議につき特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことにより決議が成立したという特別利害関係の要件と,②決議が著しく不当であるという不当性の要件が必要であるとした。
同判決は,不当性の要件について,「少なくとも、少数株主に交付される予定の金員が、対象会社の株式の公正な価格に比して著しく低廉であることを必要とすると解すベきである。」とした上で,「少数株主は、価格決定の申立てにおいて価格の公正さを争う機会を有しているものの、権利行使に必要な手続的要件の具備や、価格決定手続に要する費用・時間を考慮すると、当該決議の効力自体を争う途を閉ざすことは相当でない。」とした(請求は棄却)。
同判決は合併の事案ではないが,価格決定の申立てで価格の公正さを争う機会があっても,決議の効力自体を争う途を閉ざすことは相当でないとした点は,合併の承認決議を争う場合にも参考になる。

2 合併比率が「著しく不当」かどうか

会社法制定前の商法の下の事案であるが,東京地方裁判所平成元年8月24日判決(昭和63年(ワ)第6541号,判例秘書の判例番号 L04430193)は,存続会社の株主が合併の無効を求めた訴訟の中で,特別利害関係人が議決権を行使したため著しく不当な合併比率の合併契約書の承認がされたとして決議取消事由があると主張した事案で,「各合併当事会社の株式の価値及びそれに照応する合併比率は、このように多くの事情を勘案して種々の方式によって算定されうるのであるから、厳密に客観的正確性をもって唯一の数値とは確定しえず、微妙な企業価値の測定として許される範囲を超えない限り、著しく不当とは言えないこととなる。」とした。
同判決は,合併比率の算定の経緯を認定した上で,「本件承認決議における決議内容は著しく不当とはいえないから、同決議において被告の株主が特別利害関係人として議決権を行使したかどうかの点について判断するまでもなく、原告の右主張は理由がない。」とした。

この二つの判決からすると,取消しを求める株主は,特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことにより決議が成立したことに加え,合併比率が企業価値の測定として許される範囲を超えていることを,算定の前提や方法に即して具体的に主張することになる。
平成元年判決は,被告の株主が特別利害関係人として議決権を行使したかどうかについては判断していない。

3 裁量棄却は3号には適用されない

裁判所は,株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても,その違反する事実が重大でなく,かつ,決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは,取消しの請求を棄却することができる(会社法831条2項)。
この裁量棄却は,招集の手続又は決議の方法の法令・定款違反(同条1項1号)についての規定であり,3号の取消事由には適用されない。

第6 合併無効の訴え

1 期間と提訴権者

吸収合併の無効は,効力が生じた日から6か月以内に,訴えをもってのみ主張することができる(会社法828条1項7号)。
訴えを提起できるのは,効力が生じた日において合併をする会社の株主等であった者,又は存続会社の株主等,破産管財人若しくは合併について承認をしなかった債権者である(同条2項7号)。
被告は存続会社である(会社法834条7号)。
請求を認容する確定判決は第三者に対してもその効力を有し(会社法838条),無効とされた合併は将来に向かってその効力を失う(会社法839条)。

2 承認決議の瑕疵と事前開示の不備置を無効原因とした裁判例

東京地方裁判所令和6年3月28日判決(令和5年(ワ)第70637号,判例秘書の判例番号 L07930685)は,承認決議について「この承認決議が総会決議として不存在の場合、又は無効事由若しくは取消事由となる瑕疵がある場合、合併無効の原因が認められる。」とした上で,合併契約を承認する書面決議が不存在であるとして,合併を無効とした。
同判決の事案は承認決議が不存在とされたものであり,取消事由があるとされたものではない。
また,前記の東京地方裁判所平成22年1月29日判決は,事前開示書類の不備置を合併無効原因と認めた。

この説示によれば,第5で述べた取消事由(特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議)がある場合には,合併の効力が生じた後も,それを合併無効の原因として主張することが考えられる。
もっとも,取消事由を合併無効の原因として主張する場合に,決議の取消しの訴えの期間(決議の日から3か月)との関係をどう考えるかについては,本記事の調査の範囲では,これを判断した裁判例を確認できなかった。
期間を落とさないためには,決議の日から3か月以内に決議の取消しの訴えを提起しておくのが安全である。

3 合併比率の不公正それ自体

前記の東京地方裁判所平成元年8月24日判決は,「合併比率が不当であるとしても、合併契約の承認決議に反対した株主は、会社に対し、株式買取請求権を行使できるのであるから、これに鑑みると、合併比率の不当又は不公正ということ自体が合併無効事由になるものではないというべきである。」とした。
その控訴審である東京高等裁判所平成2年1月31日判決(平成元年(ネ)第2921号,判例秘書の判例番号 L04520595)は,原判決を引用して控訴を棄却した。
同判決は,引用に当たって原判決の一部を改め,「仮に、合併比率が著しく不公正な場合には、それが合併無効事由になるとの控訴人の主張を前提にしても、」という文言を加えている。
その上告審である最高裁判所第三小法廷平成5年10月5日判決(平成2年(オ)第603号,判例秘書の判例番号 L04810197)は,原審の認定判断は正当として是認することができるとして上告を棄却したが,合併比率と合併無効事由の関係について判示していない。
この3件は,いずれも裁判所ウェブサイトの裁判例検索では掲載が確認できなかった。
また,東京地方裁判所平成16年10月18日判決(平成16年(ワ)第4172号,判例秘書の判例番号 L05934138)も,「一般的に合併比率の不公正は合併無効原因とはならないとされていることからすると,本件合併における存続会社と消滅会社の純資産額の状況を考慮しても,上記結論は左右されないというべきである。」とした。
同判決は,合併無効の訴えは認容判決に対世効が生じる訴訟であるから,被告による請求の認諾は認められないとも述べている。

会社法の下で,合併比率の不公正それ自体が合併無効事由になるかを判断した最高裁判所の判例は,本記事の調査の範囲では確認できなかった。
そのため,合併の効力が生じた後に合併比率を争うときは,比率の不公正だけを主張するのではなく,承認決議の取消事由や事前開示の不備置のような手続上の瑕疵を併せて主張できるかを検討することになる。

第7 手段と期限の一覧

時期手段条文期限の目安
総会の前事前開示書面の閲覧・謄本の交付会社法782条3項備置開始日から効力発生日まで
総会の前合併に反対する旨の通知会社法785条2項1号イ承認総会に先立って
総会の前差止請求(仮処分)会社法784条の2効力発生日の前まで
総会説明請求・反対の議決権行使会社法314条,785条2項1号イ承認総会
総会の後株式買取請求会社法785条1項・5項効力発生日の20日前の日から前日まで
総会の後決議の取消しの訴え会社法831条1項3号決議の日から3か月以内
効力発生後価格の決定の申立て会社法786条2項効力発生日から30日の満了後30日以内
効力発生後合併無効の訴え会社法828条1項7号・2項7号効力発生日から6か月以内

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第9 出典・参考資料

1 法令

①会社法(e-Gov法令検索)309条,314条,468条,749条,782条,783条,784条,784条の2,785条,786条,794条,828条,831条,834条,838条,839条
②会社法施行規則(e-Gov法令検索)182条
③会社計算規則(e-Gov法令検索)2条

2 裁判例

①最高裁判所第三小法廷平成23年4月19日決定(平成22年(許)第30号,民集65巻3号1311頁,裁判所ウェブサイト)
②東京地方裁判所令和6年3月28日判決(令和5年(ワ)第70637号,判例秘書の判例番号 L07930685)
③東京地方裁判所平成22年9月6日判決(平成21年(ワ)第26121号,判例秘書の判例番号 L06530452)
④東京地方裁判所平成22年1月29日判決(平成20年(ワ)第15812号,判例秘書の判例番号 L06530097)
⑤東京地方裁判所平成元年8月24日判決(昭和63年(ワ)第6541号,判例秘書の判例番号 L04430193)
⑥東京高等裁判所平成2年1月31日判決(平成元年(ネ)第2921号,判例秘書の判例番号 L04520595)
⑦最高裁判所第三小法廷平成5年10月5日判決(平成2年(オ)第603号,判例秘書の判例番号 L04810197)
⑧東京地方裁判所平成16年1月29日判決(平成15年(ワ)第21850号,判例秘書の判例番号 L05930409)
⑨東京地方裁判所平成16年10月18日判決(平成16年(ワ)第4172号,判例秘書の判例番号 L05934138)

3 調査範囲

裁判例は,令和8年9月27日に,判例秘書プラスで任意語「合併比率」を裁判日付の期間で区切って検索し(昭和40年から平成9年まで13件,平成10年から平成23年まで29件,平成24年から令和8年まで13件),一覧に表示された事件名と裁判所から,合併の効力,合併の承認決議又は株主総会決議の効力を争う事件を選んで判決を開いたものである。
平成10年から平成23年までは,平成10年から平成16年まで(10件)及び平成10年から平成20年まで(20件)にも分けて一覧を確認した。
②から⑨までの8件は,判例秘書プラスで判決を開き,本記事で紹介した部分を確認した。
②から⑨までの8件は,いずれも裁判所ウェブサイトの裁判例検索(裁判年月日による検索等)では掲載が確認できなかった。
このほか,福岡地方裁判所昭和57年3月30日判決(昭和49年(ワ)第156号,判例秘書の判例番号 L03750155,信用組合と相互銀行の合併で総会の招集手続の瑕疵が争われた事案),名古屋高等裁判所昭和47年2月14日判決(昭和46年(ネ)第596号,判例秘書の判例番号 L02720065,合併契約書に関する監査役の意見報告の欠缺が争われた事案)及び東京地方裁判所令和2年6月22日判決(平成31年(ワ)第10360号,判例秘書の判例番号 L07531139,株式併合に係る臨時株主総会の決議の取消し等が争われた事案)も開いたが,合併比率の不公正を扱うものではないため,本記事では紹介していない。
裁判所ウェブサイトの全文検索(「合併無効」等)で表示された会社法施行後の名古屋地方裁判所平成19年11月21日判決(平成19年(ワ)第5266号,錯誤による合併契約の無効が争われた事案)及び名古屋高等裁判所平成24年1月17日判決(平成23年(ネ)第1005号,債権者の破産管財人の原告適格が争われた事案)は,全文を確認したが,合併比率の不公正を扱うものではないため,本記事では紹介していない。
①は,裁判所ウェブサイトの詳細ページで裁判要旨を確認した(決定の全文は確認していない)。
昭和40年から平成9年までの13件及び平成24年から令和8年までの13件は,いずれも一覧の1頁目(各10件)だけを確認し,2頁目(各3件)は確認していない。
株式買取価格の算定方法,合併比率の算定実務,上場会社の合併における金融商品取引法上の開示及び取締役の損害賠償責任は,本記事では扱っていない。