その他裁判所関係

上告審から見た書記官事務の留意事項

目次
1 上告審から見た書記官事務の留意事項
2 上告審から見た書記官事務の指導ポイント
3 関連記事その他

1 上告審から見た書記官事務の留意事項
(令和時代)
令和 元年分令和 2年分令和 3年分
令和 4年分令和 5年分
(平成時代)
平成24年分平成25年分平成26年分
平成27年分平成28年分平成29年分
平成30年分


2 上告審から見た書記官事務の指導ポイント
・ 上告審から見た書記官事務の指導ポイント(平成29年11月 1日付)
・ 上告審から見た書記官事務の指導ポイント(平成28年10月13日付)
→ 平成28年10月13日付の文書には,「本書面は,平成23年から平成27年までに送付された上告等事件記録から,書記官として,適正かつ効率的な事務を確保していく上で留意すべき事項を抽出し,根拠条文や参考となる判例等を補足したものです。また,年度欄に複数年記載されている事項は,誤りやすい事項であり,事務処理をするに当たって,注意を要する事項でもあります。」と書いてあります。

3 関連記事その他
(1) 口頭弁論調書に不備がある場合,上告理由として主張できることが分かります。
(2)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 訟廷首席書記官付各係の事務分掌(平成22年2月1日時点)
・ 高等裁判所における上告提起事件及び上告受理申立て事件の処理について
→ 上告審から見た書記官事務の留意事項(令和3年分)に含まれている資料です。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
・ 最高裁判所における民事事件の口頭弁論期日
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
・ 民事事件の裁判文書に関する文書管理
・ 裁判所書記官の処分に対する異議申立て
・ 書記官事務等の査察

書記官事務等の査察

目次
1 裁判所における査察の種類
2 最高裁判所による査察の種類
3 大阪高裁の査察結果報告書
4 書記官事務査察とは裁判官査察のこととする意見
5 組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用
6 関連記事その他

1 裁判所における査察の種類
(1) 裁判所は毎年,以下の事務について査察を行っています(書記官事務等の査察について(昭和61年6月30日付の最高裁判所事務総長通達))。
① 書記官事務
② 速記官事務
③ 訟廷事務
④ 書記官事務に関連する会計事務
⑤ 訟廷事務に関連する会計事務
(2) 書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察の場合,査察事務担当者は,高裁及び地裁の民事首席書記官及び刑事首席書記官,並びに家裁の首席書記官です。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察の場合,査察事務担当者は,高裁の事務局次長,並びに地裁及び家裁の事務局長です。
(3) 書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察の場合,査察実施事務代理者は,高裁及び地裁の民事次席書記官及び刑事次席書記官,並びに家裁の次席書記官です。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察の場合,査察実施事務代理者は,高裁の会計課長等,並びに地裁及び家裁の事務局次長等です。
(4) 査察事務担当者及び査察実施事務代理者は,査察実施事務を行うにあたり,被査察庁の全体的な事務処理の状況を把握し,是正又は改善を要する事務の発見及びその事務が執られていた原因の究明に努めるとともに,従前の査察において是正又は改善を要すると指摘された事務について,その後適正な措置が執られているかどうかを調査します。
(5) 査察事務担当者は,査察実施事務が終了した時は,所属の裁判所に対し,速やかに被査察庁ごとに査察の結果を書面により報告します。
(6) 査察庁は,管内の査察実施事務の終了した後2か月以内に,書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察については総務局長あてに,書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察については経理局長あてに,それぞれ査察の結果を被査察庁ごとに取りまとめた上,これに対する所見を付して,書面により報告します。


2 最高裁判所による査察の種類
(1) 最高裁判所は毎年,高等裁判所の以下の事務について査察を行っています(最高裁判所による書記官事務等の査察について(平成13年9月4日付の最高裁判所事務総長通達))。
① 書記官事務
② 速記官事務
③ 訟廷事務
④ 書記官事務に関連する会計事務
⑤ 訟廷事務に関連する会計事務
(2) 査察事務担当者は,大法廷首席書記官,小法廷首席書記官及び訟廷首席書記官であり,大法廷首席書記官が査察事務を統括します。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務についての査察事務担当者は,経理局長です。
(3) 査察事務担当者及び査察実施事務代理者は,査察実施事務を行うにあたり,被査察庁の全体的な事務処理の状況を把握し,是正又は改善を要する事務の発見及びその事務が執られていた原因の究明に努めるとともに,従前の査察において是正又は改善を要すると指摘された事務について,その後適正な措置が執られているかどうかを調査します。
(4) 査察事務担当者は,最高裁判所に対し,査察の結果を速やかに報告します。


3 大阪高裁の査察結果報告書
(1)ア 大阪高裁管内の裁判所を対象とした,査察結果報告書を掲載しています。
① 平成28年度書記官事務等査察の査察結果報告書
② 平成28年度書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務査察結果報告書
イ ②の報告書の作成者が大阪高裁事務局次長となっていますから,大阪高裁が査察庁として実施したものであることが分かります。
(2) 東京高裁管内の裁判所を対象とした,令和元年度書記官事務等査察の査察結果報告書を掲載しています。


4 書記官事務査察とは裁判官査察のこととする意見
(1) 法は国民のために~FLORALAWブログフローラ法律事務所(愛知県豊川市。代表者は43期の早川真一 元裁判官)が運営しているみたいです。)の「1633 名古屋高裁管内にもあった原本に基づかない民事判決言渡しの裁判官(依願退官),当時の支部長の依願退官は詰め腹?」(2019年2月8日付)に以下の記載があります。

【書記官事務査察とは裁判官査察のこと】
20年,30年前の,この種の裁判官があちこちで見つかったことの反省からか
年に2回ほど書記官事務査察というのが励行されています。
本庁の幹部クラスが,全ての裁判記録を目を皿のようにして見てチェックをし,併せて書記官に指導をもするのです。
ただ,この書記官事務査察というのは,名ばかりで
実は裁判官のお仕事振りをチェックするという隠れた目的があるのです。
憲法では裁判官の独立が保障されていますので,裁判官に外部から影響を与えるのは表向き拙いとされています。
それで便宜上「書記官」事務査察と呼ばれているのです。
査察内容や問題点等は,上席裁判官とか所長裁判官にも知らされます。
支部のヒラ裁判官に問題があれば,支部長にも知らされるはずです。

(2) 「42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)」には以下の記載があります。
   被申立人は,平成26年4月1日から平成30年3月31日まで名古屋地方裁判所岡崎支部判事の職にあった者であるが,その在任期間中の平成29年4月17日から平成30年3月30日までの間に,36件の民事訴訟事件について,民事訴訟法252条に違反して,判決書の原本に基づかずに判決を言い渡したものである。


5 組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用
・ Senses Lab.HPの「営業組織をブチ壊したい人必見!サボタージュマニュアルとは?」には,CIAの前身だったOSS(戦略諜報局)が70年ほど前に作成した,組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用として例えば,以下の記載があります。
6.些細なことにも高い完成度を要求せよ。わずかな間違いも繰り返し修正させ小さな間違いも見つけ出せ。
8.もっともらしくペーパーワークを増大させよ。
10.すべての規則を隅々まで厳格に適用せよ。
11.何事をするにも「通常のルート」を通して行うように主張せよ。決断を早めるためのショートカットを認めるな。
16.あらゆる決断の妥当性を問え。ある決定が自分たちの管轄にあるのかどうか、また組織上層部のポリシーと相反しないかどうかなどを問題にせよ。


6 関連記事その他
(1) 書記官事務査察は,最高裁判所事務総局総務局第三課が担当していますところ,同課には平成26年4月1日現在,訟廷企画係,訟廷調査第一係(民事関係),訟廷調査第二係(刑事関係)及び訟廷調査第三係(家事及び少年関係)があります。
(2) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)227頁には「裁判所法第80条第2号に規定された監督権に基づく高等裁判所による管内の地方・家庭裁判所に対する査察,指導等及び裁判所法第80条第3号・4号に規定された監督権に基づく地方・家庭裁判所による管内の支部に対する査察,指導等」と書いてあります。
(3)ア 以下の資料も参照してください。
・ 民事上訴事件記録の送付事務について(令和3年6月18日付の最高裁判所訟廷首席書記官の事務連絡)
・ 民事上訴事件記録の送付事務について(令和3年7月20日付の東京高裁民事首席書記官の事務連絡)
・ メモに類する書面(記録外書面)の管理方法等について(平成29年2月2日付の東京高裁民事首席書記官の事務連絡)
・ 刑事上訴等事件記録送付要領について(令和3年6月25日付の東京高裁刑事首席書記官の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 上告審から見た書記官事務の留意事項
・ 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌
・ 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)

戦前の裁判文書の保存

1(1) 大審院並裁判所書類保存規程(明治18年10月24日司法省丁第21号達)により,裁判記録が他の政府の記録と別の法制度の下で保存されるようになりました(「司法資料の保存と現代的課題」74頁等参照)。
   これにより大審院については明治8年創設の時からの書類,控訴裁判所については明治8年の上等裁判所設置の時からの書類,始審裁判所については明治9年の地方裁判所に改称された時からの書類が保存されることとなりました。
(2) 大審院並裁判所書類保存規程では,事件記録については有期保存とし,それぞれの保存期間が定められたほか,民事及び刑事の判決原本については永久保存とされました。
(3) 司法省の文書の保存については,司法省文書保存規程(明治18年12月28日司法省第6195号達)で定められました。
   

2 民刑訴訟記録保存規程(大正7年6月3日司法省法務局庶第7号訓令)により,民事及び刑事の判決原本は永久保存となり,民事記録及び刑事記録は有期保存となりました。

3(1) 戦前の裁判文書については,民事記録及び刑事記録の両方が裁判所で保管されていました。
(2) 明治15年1月1日施行の治罪法(明治13年7月17日太政官布告第37号),及び明治23年11月1日施行の刑事訴訟法(明治23年10月7日法律第96号)には,刑事記録の保存に関する規定がありました。
   しかし,大正13年1月1日施行の刑事訴訟法(大正11年5月5日法律第75号)には,刑事記録の保存に関する規定はありませんでした。

4 「刑事確定訴訟記録の保管機関が検察庁となった経緯」も参照してください。

公文書管理法に対する,平成21年6月23日付の参議院内閣委員会の付帯決議

○司法行政文書の管理について公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)が適用されるわけではありません(公文書管理法2条8項参照)が裁判所は,公文書管理法の趣旨,裁判所の地位及び権能等を踏まえ,検討が行われるものとされています(公文書管理法附則13条2項)。
そして,平成23年4月1日施行の公文書管理法における,平成21年6月23日付けの参議院内閣委員会の付帯決議は以下のとおりです。

公文書等の管理に関する法律案に対する附帯決議
政府は、公文書等が、国民共有の知的資源であり、その適切な管理、体系的な保存及び利用制度の整備が、国の基本的な責務・機能であるとともに、将来の発展への基盤であることを深く認識して、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一、公文書管理の改革は究極の行政改革であるとの認識のもと、公文書管理の適正な運用を着実に実施していくこと。
二、国民に対する説明責任を果たすため、行政の文書主義の徹底を図るという本法の趣旨にかんがみ、外交・安全保障分野も含む各般の政策形成過程の各段階における意思決定に関わる記録を作成し、その透明化を図ること。また、軽微性を理由とした文書の不作成が恣意的に行われないようにするとともに、文書の組織共用性の解釈を柔軟なものとし、作成後、時間を経過した文書が不必要に廃棄されないようにすること。
三、行政機関の政策決定並びに事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるようにするため、行政機関による委託事業に係る元データが確実に取得される仕組みを検討すること。
四、行政文書の管理が適正に行われることを確保するため、作成から一定期間が経過した行政文書をその保存期間満了前に一括して保管等の管理を行う制度( いわゆる中間書庫の制度) の各行政機関への導入について検討を行うこと。
五、保存期間の満了により廃棄される行政文書の量が膨大なものであることを踏まえ、廃棄に係る行政文書の内容の審査等に要する内閣総理大臣の補佐体制を強化すること。
六、公文書の管理・利活用に関する情報を十分に公開し、その在り方について多角的な専門的知見及び幅広い国民の意見が取り入れられる機会を設けること。
七、特定歴史公文書等の適切なデジタルアーカイブ化を推進し、一般の利用を促進すること。
八、公文書の電子化の在り方を含め、セキュリティーのガイドラインの策定、フォーマットの標準化及び原本性確保等の技術的研究を推進し、電子公文書の長期保存のための十分な検討を行うこと。
九、国立公文書館等へ移管された特定歴史公文書等に対する利用制限については、利用制限は原則として三十年を超えないものとすべきとする「三十年原則」等の国際的動向・慣行を踏まえ、必要最小限のものとすること。
十、特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱いにおける除外規定である本法第十六条に規定する「行政機関の長が認めることにつき相当の理由」の有無の判断に関しては、恣意性を排し、客観性と透明性を担保する方策を検討すること。
十一、宮内庁書陵部及び外務省外交史料館においても、公文書等について国立公文書館と共通のルールで適切な保存、利活用が行われるよう本法の趣旨を徹底すること。
十二、本法に基づく政令等の制定・改廃に際しては、十分に情報を公開し、多角的な専門的知見及び幅広い国民の意見が取り入れられる機会を設けること。
十三、公文書の適正な管理が、国民主権の観点から極めて重要であることにかんがみ、職員の公文書管理に関する意識改革及び能力向上のための研修並びに専門職員の育成を計画的に実施するとともに、専門職員の資格制度の確立について検討を行うこと。また、諸外国における公文書管理体制の在り方を踏まえ、必要な人員、施設及び予算を適正に確保すること。
十四、既に民営化された行政機関や独立行政法人等が保有する歴史資料として重要な文書について、適切に国立公文書館等に移管されるよう積極的に対応すること。また、国民共有の知的資源を永く後世に伝えるため、特定歴史公文書等の保存・修復に万全を期することができる体制を整備すること。
十五、本法の趣旨を踏まえて地方公共団体における公文書管理の在り方の見直しを支援し、また、国立公文書館と地方公文書館との連携強化を図ること。
十六、一部の地方公共団体において公文書館と公立図書館との併設を行っていることを考慮しつつ、より多くの公文書館が設置されることを可能とする環境の整備について検討すること。
十七、刑事訴訟に関する書類については、本法の規定の適用の在り方を引き続き検討すること。
十八、附則第十三条第一項に基づく検討については、行政文書の範囲をより広げる方向で行うとともに、各行政機関における公文書管理の状況を踏まえ、統一的な公文書管理がなされるよう、公文書管理法制における内閣総理大臣の権限及び公文書管理委員会の在り方についても十分検討すること。
十九、公文書等の管理に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための司令塔として公文書管理に係る政策の企画・立案及び実施を担当する部局及び機構の在り方について検討を行うこと。
二十、行政機関のみならず三権の歴史公文書等の総合的かつ一体的な管理を推進するため、国立公文書館の組織の在り方について、独立行政法人組織であることの適否を含めて、検討を行うこと。
二十一、公文書管理と情報公開が車の両輪関係にあるものであることを踏まえ、両者が適正かつ円滑に実施されるよう万全を期すること。
右決議する。

裁判所の情報公開に関する統計文書

目次
第1 総論
第2 毎月の統計文書
第3 毎年の統計文書
1 令和5年度以降の文書
2 平成27年度から令和4年度までの文書
第4 関連記事その他

第1 総論
1 司法行政文書とは,裁判所の職員が職務上作成し,又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,裁判所の職員が組織的に用いるものとして,裁判所が保有しているものをいいます(「司法行政文書の管理について」(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)第1.2(1))。
2 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が設置された平成27年7月1日,現在の方式での統計文書が作成されるようになりました。

第2 毎月の統計文書
   「司法行政文書開示申出に関する統計」を以下のとおり掲載しています(「司法行政文書開示申出に関する統計(令和7年4月分~同年6月分)」といったファイル名です。)。
・ 令和 7年第4期報告分(令和 7年10月分~同年12月分)
・ 令和 7年第3期報告分(令和 7年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 7年第2期報告分(令和 7年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 7年第1期報告分(令和 7年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 6年第4期報告分(令和 6年10月分~同年12月分)
・ 令和 6年第3期報告分(令和 6年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 6年第2期報告分(令和 6年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 6年第1期報告分(令和 6年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 5年第4期報告分(令和 5年10月分~同年12月分)
・ 令和 5年第3期報告分(令和 5年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 5年第2期報告分(令和 5年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 5年第1期報告分(令和 5年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 4年第4期報告分(令和 4年10月分~同年12月分)
 令和 4年第3期報告分(令和 4年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 4年第2期報告分(令和 4年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 4年第1期報告分(令和 4年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 3年第4期報告分(令和 3年10月分~同年12月分)
・ 令和 3年第3期報告分(令和 3年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 3年第2期報告分(令和 3年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 3年第1期報告分(令和 3年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 2年第4期報告分(令和 2年10月分~同年 12月分)
・ 令和 2年第3期報告分(令和 2年 7月分~同年 9月分)
・ 令和 2年第2期報告分(令和 2年 4月分~同年 6月分)
・ 令和 2年第1期報告分(令和 2年 1月分~同年 3月分)
・ 令和 元年第4期報告分(令和 元年10月分~同年12月分)
・ 令和 元年第3期報告分(令和 元年 7月分~同年 9月分)
 平成31年第2期報告分(平成31年 4月分~同年 6月分)
・ 平成31年第1期報告分(平成31年 1月分~同年 3月分)
・ 平成30年第4期報告分(平成30年10月分~同年12月分)
 平成30年第3期報告分(平成30年 7月分~同年 9月分)
・ 平成30年第2期報告分(平成30年 4月分~同年 6月分)
・ 平成30年第1期報告分(平成30年 1月分~同年 3月分)
・ 平成29年第4期報告分(平成29年10月分~同年12月分)
 平成29年第3期報告分(平成29年 7月分~同年 9月分)
・ 平成29年第2期報告分(平成29年 4月分~同年 6月分)
・ 平成29年第1期報告分(平成29年 1月分~同年 3月分)
・ 平成28年第4期報告分(平成28年10月分~同年12月分)
・ 平成28年第3期報告分(平成28年 7月分~同年 9月分)
・ 平成28年第2期報告分(平成28年 4月分~同年 6月分)
・ 平成28年第1期報告分(平成28年 1月分~同年 3月分)
 平成27年第4期報告分(平成27年10月分~同年12月分)
 平成27年第3期報告分(平成27年 7月分~同年 9月分)

3 毎年の統計文書
1 令和5年度以降の文書
(1) 「苦情申出に関する統計」を含む,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱等に基づく事務の実施状況について」を以下のとおり掲載しています。
令和5年度令和6年度
(2) ファイル名は「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱等に基づく事務の実施状況について(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)」といったものです。
2 平成27年度から令和4年度までの文書
(1)ア 「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱等に基づく事務の実施状況について」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度
(平成時代)
平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度
イ ファイル名は「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱等に基づく事務の実施状況について(令和4年4月1日から令和5年3月31日まで)」といったものです。
ウ 個人情報開示請求に関する統計も含まれています。
(2)ア 「苦情申出に関する統計」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度
(平成時代)
平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度
イ ファイル名は「苦情申出に関する事務の実施状況について(令和4年4月1日から令和5年3月31日まで)」といったものです。

* 平成28年度新任判事補研修の資料からの抜粋です。

第4 関連記事その他
 平成21年度初任行政研修「事務次官講話」「国家がなすべきことと民間とのコラボレーション-裁判員制度からの示唆-」と題する講演(平成21年5月26日実施)において,小津博司法務事務次官は以下の発言をしています(PDF12頁)。
    情報公開法の方もできてこうやってみると、なるほどこういうものだと。役人が仕事で作ったものというのは、原則として誰でも見られるようにしておかなければいけない。人に見られてはいけないような文書は作ってはいけない。あるいは人に見られてはいけないような、聞かれてはいけないような仕事はしてはいけないと、こういうことであります。
2 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所の情報公開に関する通達等
 国立公文書館への移管
 司法行政文書に関する文書管理
 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
・ 民事事件の裁判文書に関する文書管理

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申

1 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申につき,以下のとおり分類して私のブログで紹介しています。
(1) 最高裁判所の司法行政文書
① 最高裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
② 最高裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
③ 不開示事由に該当するとされた最高裁判所の司法行政文書
④ 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた最高裁判所の文書
(2) 下級裁判所の司法行政文書
① 下級裁判所が作成又は取得していないとされた司法行政文書
② 下級裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書
③ 不開示事由に該当するとされた下級裁判所の司法行政文書
④ 司法行政文書開示請求の対象とならないとされた下級裁判所の司法行政文書

2 最高裁平成26年7月14日判決は,「ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し,又は取得したことが立証された場合において,不開示決定時においても当該行政機関が当該行政文書を保有していたことを直接立証することができないときに,これを推認することができるか否かについては,当該行政文書の内容や性質,その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間,その保管の体制や状況等に応じて,その可否を個別具体的に検討すべきもの」と判示しています。

3 以下の資料も参照してください。
① 司法行政文書の管理について(通達)(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長通達)
→ 「職員は,文書管理者の指示に従い,裁判所における経緯も含めた意思決定に至る過程及び裁判所の事務の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,司法行政文書を作成しなければならない。」などと書いてあります。
② 公文書管理法に対する,平成21年6月23日付の参議院内閣委員会の付帯決議
→ 「軽微性を理由とした文書の不作成が恣意的に行われないようにするとともに、文書の組織共用性の解釈を柔軟なものとし、作成後、時間を経過した文書が不必要に廃棄されないようにすること。」などと書いてあります。
③ 情報公開法に係る主な答申等について(平成31年3月)
→ 総務省行政管理局情報公開・個人情報保護推進室が作成したものです。

4 以下の記事も参照してください。
① 裁判所の情報公開
② PKO日報問題に関する特別防衛監察結果報告で示された,行政文書管理及び情報公開業務の改善策
→ 「不存在とした開示請求について、開示請求手続と関係のない立場の組織により、情報公開業務の検査等を実施するなど、チェック機能の強化を図る必要がある。」などと書いてあります。

5(1) 総務省HPに,平成16年3月10日付の「勧告及び要望書」が載っています。
日弁連人権擁護委員会が平成15年12月付で作成した,裁判所行政情報開示人権救済申立事件調査報告書(いわゆるロッキード事件において最高裁宣明書が出された件に関する文書の開示を求めたもの。)が含まれています。
(2) 国立国会図書館HP「調査と情報」に,「行政機関における文書管理-国の説明責務に係る論点と改善方策-」(平成30年2月27日発行の998号)が載っています。

6 日弁連の「公文書管理法制の改正及び運用の改善を求める意見書」(平成30年12月20日付)には,「本意見の趣旨」として以下の記載があります。
2 公文書管理法制の制度設計に関し、
(1) 公文書の恣意的な廃棄等が行われないように監視するため、独立した第三者機関としての公文書管理庁を設置すること
(2) 公文書管理法を、行政文書の作成段階から徹底して電子記録管理を行う法制度に変更すること
を政府及び国会に対して求める。

最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携

目次
1 民事・刑事書記官実務必携
2 関連文書
3 民事書記官実務必携(平成31年4月1日)からの抜粋
4 刑事書記官実務必携(平成31年4月1日)からの抜粋
5 最高裁判所事件管理システム
6 関連記事

1 民事・刑事書記官実務必携
(1) 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携は以下のとおりです。
① 民事書記官実務必携
・ 平成31年4月1日現在のもの(圧縮済み)
・ 平成30年4月1日現在のもの
・ 平成28年4月1日現在のもの
② 刑事書記官実務必携
・ 平成31年4月1日現在のもの(圧縮済み)
・ 平成30年4月1日現在のもの1/32/3及び3/3
→ サイズを圧縮して一つのファイルにしたものも掲載しています。
・ 平成28年4月1日現在のもの1/2及び2/2
(2) 最高裁判所の裁判部とは,大法廷首席書記官等に関する規則(昭和29年最高裁判所規則第9号)に定める大法廷首席書記官が指導監督する職員が属する組織をいいます(司法行政文書の管理について(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長の通達)第1.2(3)参照)。

2 関連文書
・ 最高裁判所による書記官事務等の査察について(平成13年9月4日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 民事立会部における書記官事務の指針(平成12年5月)
・ 民事立会部における書記官事務の指針の解説(平成12年5月)
・ 家庭裁判所調査官執務必携(平成20年3月の,最高裁判所事務総局家庭局作成の文書)

3 民事書記官実務必携(平成31年4月1日)からの抜粋



4 刑事書記官実務必携(平成31年4月1日)からの抜粋




5 最高裁判所事件管理システム
・ 最高裁判所の令和6年度概算要求書説明資料190頁には「最高裁判所事件管理システム等経費」として以下の記載があります。
最高裁判所事件管理システム等の運用等
<要求要旨>
    最高裁判所事件管理システムは、裁判部の調査官室、書記官室、訟廷事務室及び秘書課の秘書官室をネットワークで結び、最高裁で取り扱う各事件の訴訟進行等に関する情報を共有して、事務処理の適正化及び効率化を図ることを目的に平成15年から運用している。
    本システムは、12種類のプログラムで構成されているが、登録された事件の情報を基に多数の帳票を出力するとともに、事件の受理から終局に至るまでの進行や記録の授受、返還事務を円滑・効率的に管理するほか、統計資料の作成事務を適正・迅速に処理するなど、多種多様な事務処理において発揮される効果は絶大である。また、裁判所を利用する国民からの事件に関する問合せ、報道機関からの照会及び各省庁からの行政共助などの司法サービスにおいても、その検索機能は威力を発揮している。
    そこで、本システムの円滑な稼働のために必要なサーバリース料及び保守料を要求する。
    なお、サーバリースについてはデータセンタへのHW統合を行い、年度途中でリース期間が終了するが、サーバ更新(HW統合)に伴い、OSがMicrosoft Windows Server 2019等に変更となる。そのため、同更新後の環境において本システム及び本機能の全機能(画面表示、画面遷移及び出力帳票を含む。)が正常に動作するか調査し、調査の結果から改修が必要な箇所を特定して改修する。また、クライアント端末のWindows11及びOfficeへの対応改修を行った上で新サーバへのデータ移行作業を行う必要があり、そのために必要な経費を要求する。
    また、Java8の無償サポート期間が終了し、継続したサポートを受けるため、有償サポートのライセンス購入に必要な経費を要求する。

6 関連記事
・ 上告審に関するメモ書き
・ 最高裁判所における民事事件の口頭弁論期日
・ 最高裁判所における刑事事件の弁論期日
・ 上告審から見た書記官事務の留意事項
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 裁判所の指定職職員
・ 書記官事務等の査察

人事院規則14-7(政治的行為),及び名古屋家裁裁判官の反天皇制に関する行為

目次
第1 人事院規則14-7(政治的行為)
第2 名古屋家裁裁判官の反天皇制に関する行為
1 平成31年3月13日付の産経新聞の記事
2 夏祭起太郎名義の2つのエッセー
第3 関連記事その他

第1 人事院規則14-7(政治的行為)
   裁判官には適用されないものの,国家公務員法102条(政治的行為の制限)の委任によって制定された人事院規則14-7(政治的行為)は以下のとおりです。

(適用の範囲)
1 法及び規則中政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用として勤務する者、条件付任用期間の者、休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含むすべての一般職に属する職員に適用する。ただし、顧問、参与、委員その他人事院の指定するこれらと同様な諮問的な非常勤の職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)が他の法令に規定する禁止又は制限に触れることなしにする行為には適用しない。
2 法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、すべて、職員が、公然又は内密に、職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止又は制限される。
3 法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。
4 法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、第六項第十六号に定めるものを除いては、職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される。
(政治的目的の定義)
5 法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
一 規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。
二 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。
四 特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。
五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。
六 国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。
七 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。
八 地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること。
(政治的行為の定義)
6 法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
一 政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。
三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。
四 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。
五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。
六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。
七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。
八 政治的目的をもつて、第五項第一号に定める選挙、同項第二号に定める国民審査の投票又は同項第八号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。
九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。
十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。
十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十二 政治的目的を有する文書又は図画を国又は行政執行法人の庁舎(行政執行法人にあつては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は行政執行法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること。
十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。
十四 政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。
十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。
十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。
十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。
7 この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を遂行するため当然行うべき行為を禁止又は制限するものではない。
8 各省各庁の長及び行政執行法人の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。

第2 名古屋家裁裁判官の反天皇制に関する行為
1 平成31年3月13日付の産経新聞の記事
(1) 産経新聞HPの「昭和の日を「無責任の日」と批判 判事、過激派参加団体で活動も」(平成31年3月13日付)には,名古屋家裁裁判官の行為について以下の記載があります。
① 4月末の天皇陛下の譲位を前に、名古屋家裁の男性判事(55)が「反天皇制」をうたう団体の集会に参加していたことが12日、明らかになった。判事は平成21年以降、少なくとも3つの団体で活動。反皇室、反国家、反権力などを掲げ、中には過激派活動家が参加する団体もあった。
② 「反天皇制運動連絡会」(反天連、東京)などが呼びかけた「代替わり」反対集会では、皇室を批判する激しい発言が繰り返される。判事は昨年、こうした反天連による別の集会に複数回にわたって参加し、自らも「批判的に考察していきたい」などと発言していた。
③ 関係者によると、判事は津地家裁四日市支部勤務だった21年、広島県呉市で行われた反戦団体「ピースリンク広島・呉・岩国」(呉市)の集会に参加。実名でスピーチした。その後、広島地家裁呉支部に異動し、同団体の活動に参加した。

④ 名古屋家裁に異動すると、反戦団体「不戦へのネットワーク」(名古屋市)に参加。会報に「夏祭起太郎」の名前で論考を寄稿した。
⑤ 産経新聞は今年2月、判事に複数回、直接取材を申し込んだが、いずれも無言で足早に立ち去った。
⑥ 名古屋家裁には昨年11月に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した結果、書面で「承知していない」「仮定の質問にはお答えできない」との回答があった。今年2月に再度取材したが、家裁は判事に事情を聴くなどの調査をしたかについても明らかにせず、「お答えすることはない」とした。
(2) 名古屋家裁総務課の職員については,裁判所職員に関する臨時措置規則に基づき,人事院規則14-7(政治的行為)が適用されます。

2 夏祭起太郎名義の2つのエッセー
(1) 夏祭起太郎の「天皇代替わり、どうする・・・」不戦へのネットワーク会報80号(2018年2月4日発行))には以下の記載があります。
① 天皇代替り茶番劇のスケジュールも,大分具体化して閣議決定など経て、公表されてきた。
② 国内向け,新天皇即位後初めて行われるビッグイベントが2019年初夏頃行われる愛知植樹祭だ。天皇が、一本の木を植えるために数十億単位の公費を使って、たくさんの木を伐採し、「国土の緑を大切に」ともいうまったくもって不思議で呪術的なイベント(毎年都道府県主催で行われる。もちろん主眼は、天皇が全国を巡り歩いて木を植え、「お言葉」なるものを発する天皇賛美の行事だ。)
③ 天皇制要りません、迷惑です、いい加減にしてくださいという意思表示の一つ一つが天皇制を掘り崩し、葬り去ることにつながると思う。
(2) 夏祭起太郎の「”支配者面した慰霊,慰問の旅”」不戦へのネットワーク会報81号(2018年5月6日発行))には以下の記載があります。
① アキヒト・ミチコの沖縄・与那国訪問は,歓迎される慰霊,慰問の旅という表向きの宣伝(沖縄戦犠牲者の慰霊,日本最西端の離島に訪問)とは裏腹に,ヤマト政府の方針に従わない連中(まずは辺野古ゲート前に集う人たち,次に自衛隊基地強化に不服な人々)を従わせようと(それも,強制的にではなく自発的に)いう底意から企画演出されたイベントである(与那国訪問には,中国を挑発する意味もあるという説もささやかれている。)。
② 天皇・皇后が,福島を訪問し,植樹祭(放射能汚染から身を守るためにはタブーとされている「土いじり」!)に参加し,復興の偽に出演するとは,何たる政治的行動! しかもインチキ! フクイチ肉薄に執念を燃やしているのはミチコだという女性週刊誌の報道も(アキヒトはH式15点あるかどうか疑問・・・)。
③ 世襲の君主がいろいろな動きをする制度は,やっぱり理不尽,不合理,弱い立場のものを圧迫する,逆らいにくい呪術的な拘束力を醸し出し,第一お金がもったいないので,即刻ゴメンこうむりたい。

第3 関連記事その他
1 衆議院HPに「一般職国家公務員の政治的行為の制限」(平成25年6月6日付)が載っています。
2 人事院規則14-7(政治的行為)の運用方針について(昭和24年10月21日法審発第2078)
には以下の記載があります。
   第3号関係 本号中における「特定」の意味については、第1号に準じて解釈されるべきである。「政党」とは、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを本来の目的とする団体をいい、「その他の政治的団体」とは、政党以外の団体で政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくはこれに反対する目的を有するものをいう。「支持し又はこれに反対する」とは、特定の政党その他の政治的団体につき、それらの団体の勢力を維持拡大するように若しくは維持拡大しないように、又はそれらの団体の有する綱領、主張の主義若しくは施策を実現するように若しくは実現しないように、又はそれらの団体に属する者が公職に就任し若しくは就任しないように影響を与えることをいう。
3 裁判所法52条(政治運動等の禁止)は以下のとおりです。
裁判官は、在任中、左の行為をすることができない。
一 国会若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること。
二 最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。
三 商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。
4 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,「裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべきである。」と判示しています。
5 以下の記事も参照してください。
・ 柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容
・ 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判

日弁連推薦以外の弁護士が最高裁判所判事に就任した事例

目次
1 大塚喜一郎最高裁判所判事の事例(第2次田中角栄内閣
 本山亨最高裁判所判事の事例(福田赳夫内閣
3 山口厚最高裁判所判事の事例(第3次安倍第2次改造内閣
4 昭和時代の司法大臣経験者及び最高裁判所長官経験者のコメント
5 関連記事その他

1 大塚喜一郎最高裁判所判事の事例(第2次田中角栄内閣
(1)ア   大弁出身の色川幸太郎最高裁判所判事の後任として昭和48年2月2日に最高裁判所判事に就任した大塚喜一郎(一弁出身)は,日弁連推薦の弁護士ではありませんでした。
   ただし,大塚喜一郎本人によれば,「最高裁や内閣から「あなたをおいてほかにない。」といわれ,もし断って在野法曹出身が減らされては大変だし,日弁連の幹部とも話し合って引き受けることにした」と話したそうです。
   このとき,日弁連は立命館大学教授の弁護士など9人を推薦したそうですし,昭和48年2月2日,日弁連幹部が後藤田正晴内閣官房副長官に会って抗議をしました。
イ 保守化路線を進めていた当時の石田和外最高裁判所長官(保守派)が,保守派の大塚喜一郎を選んだといわれています。
ウ リベラル派の田中二郎最高裁判所判事(行政法学者)は,保守化しすぎた最高裁に嫌気が差して,昭和48年3月31日に依願退官しました。
エ 最高裁物語(下)129頁及び130頁,並びに最高裁全裁判官-人と判決-185頁が参考になります。
(2) 大塚喜一郎は,日弁連事務総長(昭和34年度)及び第一東京弁護士会会長(昭和45年度)の経験があります(「日弁連の歴代会長及び事務総長」参照)。
(3)ア 日弁連は,昭和48年5月26日,最高裁判所裁判官の任命に関する決議を出したところ,決議理由には以下の記載があります。
   少くとも、何人かの最高裁判所裁判官の任命については、何らかの政治的配慮によって恣意的になされたものではなかろうかとする国民の疑惑が深まっている。たとえば最高裁事務総長時代に司法の独立の問題について重大なかかわりを持ち、当連合会も強く批判したことのある裁判官を任命したこと、もと駐米大使として極めて政治色の強い発言を繰り返し当時問題とされた裁判官を任命したこと、当連合会の推薦を無視した任命がなされたこと、あるいは田中裁判官が任期なかばにして最高裁判所裁判官を辞任したことなどについて、国民が強い疑問を持ったことを否定するわけにいかない。
イ 昭和46年4月27日以降,弁護士出身の最高裁判所裁判官が4人となっていました。

2 本山亨最高裁判所判事の事例(福田赳夫内閣
(1) 一弁出身の藤林益三最高裁判所長官の定年退官に伴う玉突き人事として昭和52年8月26日に最高裁判所判事に就任した本山亨(名古屋弁出身)は,日弁連推薦の弁護士ではありませんでしたが,財界などから強い支持がありましたし,東京以外の弁護士会からの起用が4年前に定年退官した色川幸太郎以来なかったので,起用されました。
   このとき,日弁連は塚本重頼弁護士(東弁)を強く推薦していたものの,裁判官時代の同期の裁判官がまだ高裁や最高裁事務総局にいるなどとして時期尚早として見送られました(最高裁全裁判官-人と判決-218頁)。
(2) 本山亨弁護士は,昭和52年4月3日に定年退官が発令された下田武三最高裁判所判事(元 外務事務次官)の後任として,弁護士枠を5人に回復することを目指した日弁連によって,他の弁護士と一緒に推薦されたことがありました(東京弁護士会百年史960頁及び961頁参照)。
(3) 塚本重頼弁護士は,東弁出身の本林譲最高裁判所判事の後任として昭和56年10月17日に最高裁判所判事に就任しました。

3 山口厚最高裁判所判事の事例(第3次安倍第2次改造内閣

(1) 行政官出身の桜井龍子最高裁判所判事の後任として平成29年2月6日に最高裁判所判事に就任した山口厚東京大学名誉教授は,日弁連推薦の弁護士ではありませんでした。
   また,同人は,平成28年8月1日に弁護士登録をしたばかりの人です(一弁出身。弁護士登録番号は53854番)から,弁護士出身といえるかどうかについては意見が分かれています。
(2) 仮に同人が弁護士出身の最高裁判所判事ではないとした場合,大橋正春最高裁判所判事(元 日弁連法科大学院センター委員長・一弁出身)が定年退官した後の平成29年3月31日以降,弁護士出身の最高裁判所判事の人数は3人になったこととなります。
(3)ア 山口厚弁護士は,大塚喜一郎弁護士及び本山亨弁護士以上に日弁連との接点のない人でした。
イ 山口厚は昭和49年の司法試験に3年生で合格していますし,平成27年9月に青柳幸一明治大学法科大学院教授による司法試験問題漏洩事件が発生した際,司法試験委員会委員長をしていました。
(4) 外部記事として以下のものがあります。
・ 週刊金曜日オンライン「「慣行」無視の最高裁人事(西川伸一)」(2017年2月27日付)
→ 日弁連は,最高裁に対し,平成28年11月,7名の最高裁判事候補者を推薦しました。
・ 金岡法律事務所HP「弁護士会推薦枠の最高裁判事が任命されなかった事態について」(平成29年3月18日付)


・ 大阪地裁平成30年1月16日判決(判例体系に掲載)に関して提出された書証です。

4 昭和時代の司法大臣経験者及び最高裁判所長官経験者のコメント
(1) 司法大臣経験者のコメント
・ 「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)につき,鈴木義男司法大臣の回想文を引用した204頁及び205頁には以下の記載があります。
 (山中注:15人の最高裁判所裁判官の出身者の色分け)は別にそういう方針で選定したものではなく、人物本位に選んだ結果偶然こういう比率になったに過ぎない。私共の意思としては、将来一人二人の欠員ができた場合、時の内閣は、常に、国家的に見て最適任者を選択任命するように有りたいと念願するものである。
(2) 最高裁判所長官経験者のコメント
・ 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所人事局長・元最高裁判所長官)97頁には以下の記載があります。
  判事、判事補、簡裁判事などの人事は、最高裁が提出する名簿に基づき内閣が任命するが、最高裁裁判官の人事は三権分立におけるチェック・アンド・バランスから、完全な内閣の専権に属している。
  ただ、最高裁長官は自己の後任人事を含む最高裁裁判官の人事について、首相に意見を述べるのが慣例である。その意見を聴くかどうかは内閣の自由だが、この習慣はぜひ続けてほしい。
 


5 関連記事その他
(1) 最高裁物語(上巻)321頁ないし323頁には,石田和外最高裁長官が,岩田誠最高裁判事の後任として内藤頼博名古屋高裁長官を推薦したものの,佐藤栄作首相が拒絶したため,岸上康夫東京高裁長官が岩田誠最高裁判事の後任として最高裁判事に任命されたという話が載っています。
(2) 「司法の可能性と限界と-司法に役割を果たさせるために-」(講演者は31期の井戸謙一 元裁判官)には以下の記載があります(法と民主主義2019年12月号20頁及び21頁)。
    長年、日弁連推薦枠から最高裁判事になった方々は、有能で人格的にも立派な弁護士として、多くの人から尊敬されていた人たちだったと思いますが、最近はそういう人がいないという感じがします。これには最高裁判事の選任手続の問題があると思いますが、これはまたあとで申し上げます。
(3) 明治大学学術成果リポジトリ「内閣は最高裁判所裁判官の指名・任命をめぐる慣行を尊重してきたか -石田・村上・藤林・岡原長官時代を対象に-」が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所発足時の裁判官任命諮問委員会,及び最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案等
・ 日弁連最高裁判所裁判官推薦諮問委員会
・ 歴代の女性最高裁判所判事一覧
・ 弁護士出身の最高裁判所裁判官の氏名の推移(昭和時代及び平成時代)

最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情

目次
1 最高裁の破棄判決等一覧表
2 毎年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」
3 判例委員会において取り上げられた判示事項・判決要旨の位置づけ等
4 関連記事その他

1 最高裁の破棄判決等一覧表
(令和時代)
令和 元年分令和2年分令和3年分令和4年分
令和 5年分
(平成時代)
平成25年分平成26年分平成27年分
平成28年分平成29年分平成30年分
* 「最高裁の破棄判決等一覧表(令和5年分)」といったファイル名です。


2 毎年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」
・ 令和6年度分
判例時報2629号(令和7年10月1日号)
・ 令和5年度分

判例時報2595号(令和6年8月11日号)
・ 令和4年度分
判例時報2563号(令和5年10月1日号)
・ 令和3年度分
判例時報2524号・2525号(令和4年9月11日・21日号)
・ 令和2年度分
判例時報2498号(令和3年12月21日号)
・ 令和元年度分

判例時報2442号(令和2年6月21日号)
・ 平成30年度分
判例時報2420号(令和元年11月21日号)
・ 平成29年度分:
判例時報2374号(平成30年 9月 1日号)
・ 平成28年度分:
判例時報2342号(平成29年10月21日号)
・ 平成27年度分:
判例時報2306号(平成28年11月11日号)
・ 平成26年度分:
上:判例時報2258号(平成27年7月21日号)
下:判例時報2259号(平成27年8月 1日号)
・ 平成25年度分:
上:判例時報2224号(平成26年8月11日号)
下:判例時報2225号(平成26年8月21日号)
・ 平成24年度分:
上:判例時報2188号(平成25年8月11日号)
中:判例時報2189号(平成25年8月21日号)
下:判例時報2191号(平成25年9月11日号)
・ 平成23年度分:
上:判例時報2161号(平成24年11月11日号)
下:判例時報2162号(平成24年11月21日号)
・ 平成22年度分:
上:判例時報2115号(平成23年8月11日号)
中:判例時報2116号(平成23年8月21日号)
下:判例時報2118号(平成23年9月11日号)


3 判例委員会において取り上げられた判示事項・判決要旨の位置づけ等
(1) 最高裁平成19年5月29日判決の裁判官上田豊三,同堀籠幸男の補足意見には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
   判例委員会において取り上げられた判示事項・判決要旨は,その判決の持つ先例的意義・価値を理解する上で重要な導きをするものであることはいうまでもないが,その判示事項・判決要旨がすべて「判例」となると解すべきではないし,逆に判示事項・判決要旨として取り上げられていないからといって「判例」ではないと解すべきものでもない。
   要するに,その判決が,どのような事案においてどのような法理を述べ,それを具体的事案に当てはめてどのような判断をし,解決をしたのかを理解し,先例としての意義・価値や拘束力があるのはどの部分であるかを探求すべきものである。

(2) 最高裁平成19年5月29日判決の裁判要旨は「飛行場において離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,判決言渡日までの分についても,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない。」です。

4 関連記事その他
(1) 上告棄却決定又は不受理決定に関する調書決定は,「最高裁判所が決定をする場合において、相当と認めるときは、決定書の作成に代えて、決定の内容を調書に記載させることができる。」と定める民事訴訟規則50条の2に基づくものです。
(2) 庶民の弁護士 伊藤良徳HP「まだ最高裁がある?(民事裁判編)」には以下の記載があります。
 民事事件(行政事件を除く)の最高裁への上告と上告受理申立てについての、2013年以降の10年間の各年度の既済件数(判決、決定等により終了した件数)、原判決破棄件数、既済件数中の破棄率を見ると次の通りになっています(最高裁での民事事件としては1審が簡裁の事件の高裁の判決に対する特別上告が年間数十件ありますが、これは除いています)。原判決破棄の割合は、ばらつきはありますが、ならして約1%です(最近の10年を見ると、それ以前よりさらに減少傾向にあるように見えます)。言い換えれば、上告棄却(または却下)・不受理が97%程度を占めています(取り下げその他が2%前後)。
(3) 54期の村田一広裁判官が執筆した「最高裁判所における口頭弁論の実情等について」(民事訴訟雑誌68巻(2022年3月20日付)46頁には以下の記載があります(漢数字を算用数字にし,同条を318条にしています。)。
 最高裁判所は、受理決定をする場合において、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除する旨の決定(以下「論旨排除決定」という。)をすることができ(318条3項),多くの上告受理事件において、論旨排除決定がされている。
(4)ア 破棄判決等取扱要領(平成25年4月1日実施分)を掲載しています。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 上告審に関するメモ書き
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所における民事事件の口頭弁論期日
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
 最高裁判所調査官
 最高裁判所判例解説

柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容

目次
第1 柳本つとむ裁判官に関する情報

1 立川反戦ビラ入れ裁判に対する抗議行動で名前が出ていること
2 海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動に対する抗議活動で名前が出ていること
3 ①名古屋家裁の55歳男性判事の行動に関する平成31年3月13日付の産経新聞の記事,及び②柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
4 夏祭起太郎名義の2つのエッセー,及び裁判官等の憲法尊重擁護義務
5 勤務時間外の私的な行為に関する,過去の裁判官の懲戒事例
6 取材に対する名古屋家裁総務課の回答等
7 最高裁判所人事局長の国会答弁,及びこれに関するネット記事等
第2 過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容,及び下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
1 最高裁大法廷平成10年12月 1日決定
2 最高裁大法廷平成13年 3月30日決定
3 最高裁大法廷平成30年10月17日決定
4 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
第3 罪証隠滅のおそれ等

1 元裁判官及び元検事が述べるところの罪証隠滅のおそれ
2 犯人隠避罪に関する裁判例等
3 東京地検次席検事が罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示した,被告人カルロス・ゴーンの保釈条件
4 福岡高裁判事妻ストーカー事件で訴追請求にまでは至らなかった理由
第4 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申の記載
第5 司法修習生の守秘義務違反容疑の場合,司法研修所による調査が実施されて報道されたこと
第6 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話等
1 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話
2 35期新任判事補に対する説明
第7 関連記事その他

第1 柳本つとむ裁判官に関する情報
1 立川反戦ビラ入れ裁判に対する抗議行動で名前が出ていること
   -立川反戦ビラ入れ裁判-不当判決を認めない宣言最高裁平成20年4月11日判決に対するもの)に「柳本つとむ」という名前があります。

2 海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動に対する抗議活動で名前が出ていること
(1) 週刊かけはし(万国の労働者団結せよ!)HP「海自護衛艦のソマリア派兵反対!」(平成21年3月30日付)「三重県の柳本つとむさんらがスピーチをした。」と書いてあります。
(2) 「309-5.2009年3月14日、湯浅一郎さんを送る会(41)~(50)」には「三重県の柳本つとむさん、(中略)三人は、昼間の呉現地での海上自衛隊ソマリア派兵抗議行動に参加した。」と書いてあります。
(3) 柳本つとむ裁判官は,平成21年3月当時,津地家裁四日市支部判事をしていました(柳本つとむ裁判官(45期)の経歴参照)。

3 ①名古屋家裁の55歳男性判事の行動に関する平成31年3月13日付の産経新聞の記事,及び②柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
(1) 平成31年3月13日付の産経新聞の記事
   産経新聞HPの「昭和の日を「無責任の日」と批判 判事、過激派参加団体で活動も」(平成31年3月13日付)には以下の記載があります。
① 4月末の天皇陛下の譲位を前に、名古屋家裁の男性判事(55)が「反天皇制」をうたう団体の集会に参加していたことが12日、明らかになった。判事は平成21年以降、少なくとも3つの団体で活動。反皇室、反国家、反権力などを掲げ、中には過激派活動家が参加する団体もあった。
② 「反天皇制運動連絡会」(反天連、東京)などが呼びかけた「代替わり」反対集会では、皇室を批判する激しい発言が繰り返される。判事は昨年、こうした反天連による別の集会に複数回にわたって参加し、自らも「批判的に考察していきたい」などと発言していた。

③ 関係者によると、判事は津地家裁四日市支部勤務だった21年、広島県呉市で行われた反戦団体「ピースリンク広島・呉・岩国」(呉市)の集会に参加。実名でスピーチした。その後、広島地家裁呉支部に異動し、同団体の活動に参加した。
④ 名古屋家裁に異動すると、反戦団体「不戦へのネットワーク」(名古屋市)に参加。会報に「夏祭起太郎」の名前で論考を寄稿した。
⑤ 産経新聞は今年2月、判事に複数回、直接取材を申し込んだが、いずれも無言で足早に立ち去った。
⑥ 名古屋家裁には昨年11月に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した結果、書面で「承知していない」「仮定の質問にはお答えできない」との回答があった。今年2月に再度取材したが、家裁は判事に事情を聴くなどの調査をしたかについても明らかにせず、「お答えすることはない」とした。
(2) 反天皇制運動連絡会
   反天皇制運動連絡会は,終わりにしよう天皇制!「代替り」に反対するネットワーク(略称は「おわてんねっと」です。)の呼びかけ団体です(おわてんねっとHP「おわてんねっと賛同団体」参照)。

(3) 柳本つとむ名古屋家裁家事第2部判事
ア 柳本つとむ裁判官は昭和38年(1963年)9月19日生まれですから,平成31年(2019年)3月現在,55歳です。
イ 柳本つとむ裁判官は,平成30年4月現在,名古屋家裁家事第2部判事として,財産管理関係事件,後見等関係事件,遺産分割調停事件,遺産分割審判事件等を担当しています(名古屋家裁の事務分配割合表(平成30年4月1日現在)参照)。
ウ 柳本つとむ裁判官は,平成31年4月現在,名古屋家裁家事第2部判事として,財産管理関係事件,後見等関係事件,相続放棄等,遺言書の検認等,遺産分割調停事件,遺産分割審判事件等を担当しています(名古屋家裁の事務分配割合表(平成31年4月8日現在)参照)。


4 夏祭起太郎名義の2つのエッセー,及び裁判官等の憲法尊重擁護義務
(1) 夏祭起太郎名義の2つのエッセー
ア 夏祭起太郎の「天皇代替わり、どうする・・・」不戦へのネットワーク会報80号(2018年2月4日発行))には以下の記載があります。
① 天皇代替り茶番劇のスケジュールも,大分具体化して閣議決定など経て、公表されてきた。
② 国内向け,新天皇即位後初めて行われるビッグイベントが2019年初夏頃行われる愛知植樹祭だ。天皇が、一本の木を植えるために数十億単位の公費を使って、たくさんの木を伐採し、「国土の緑を大切に」ともいうまったくもって不思議で呪術的なイベント(毎年都道府県主催で行われる。もちろん主眼は、天皇が全国を巡り歩いて木を植え、「お言葉」なるものを発する天皇賛美の行事だ。)
③ 天皇制要りません、迷惑です、いい加減にしてくださいという意思表示の一つ一つが天皇制を掘り崩し、葬り去ることにつながると思う。
イ 夏祭起太郎の「”支配者面した慰霊,慰問の旅”」不戦へのネットワーク会報81号(2018年5月6日発行))には以下の記載があります。
① アキヒト・ミチコの沖縄・与那国訪問は,歓迎される慰霊,慰問の旅という表向きの宣伝(沖縄戦犠牲者の慰霊,日本最西端の離島に訪問)とは裏腹に,ヤマト政府の方針に従わない連中(まずは辺野古ゲート前に集う人たち,次に自衛隊基地強化に不服な人々)を従わせようと(それも,強制的にではなく自発的に)いう底意から企画演出されたイベントである(与那国訪問には,中国を挑発する意味もあるという説もささやかれている。)。
② 天皇・皇后が,福島を訪問し,植樹祭(放射能汚染から身を守るためにはタブーとされている「土いじり」!)に参加し,復興の偽に出演するとは,何たる政治的行動! しかもインチキ! フクイチ肉薄に執念を燃やしているのはミチコだという女性週刊誌の報道も(アキヒトはH式15点あるかどうか疑問・・・)。
③ 世襲の君主がいろいろな動きをする制度は,やっぱり理不尽,不合理,弱い立場のものを圧迫する,逆らいにくい呪術的な拘束力を醸し出し,第一お金がもったいないので,即刻ゴメンこうむりたい。
(2) 裁判官等の憲法尊重擁護義務
ア 日本国憲法99条は,「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定めています。
イ 衆議院議員逢坂誠二君提出内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する再質問に対する答弁書(平成29年2月10日付)には以下の記載があります。
   政府としては、憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えている。
ウ ちなみに,日本共産党HPの「天皇をどうする」には,戦後の日本共産党の在り方として,天皇は国政に関する権能を有しないと定める日本国憲法4条1項にかんがみ,「私たちは、四十二年前に綱領を決めたときも、実際にはもっと前からですが、「天皇制打倒」の旗をかかげたことは一度もないのです。」などと書いてあります。
   ただし,日本共産党は,天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律(平成30年12月14日法律第99号)には反対しています(衆議院HPの「議案審議経過情報」,及び参議院HPの「本会議投票結果」参照)。
(3) 宮内庁HPの記載
ア 宮内庁HP「「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(第2回)」に宮内庁が作成,提出した資料」に以下の資料が載っています。
・ 資料1(歴史上の実例)
→ 文化14年(1817年)3月22日,光格天皇(47歳)が仁孝天皇(18歳)に譲位した事例が書いてあります。
・ 資料2(天皇皇后両陛下の平成御大礼時のご日程について)
イ 宮内庁HP「各都道府県へのお出まし」には,それぞれの都道府県を訪問した際の日程が書いてあります。
ウ 宮内庁HP「戦没者慰霊」には,終戦50年,終戦60年及び終戦70年における,慰霊のための行幸啓のことが書いてあります。

5 勤務時間外の私的な行為に関する,過去の裁判官の懲戒事例
(1)ア 45期の寺西和史仙台地裁判事補は,勤務時間外に出席した,国会提出法案に反対する集会において,パネリストとしての発言は辞退するなどと発言した結果,戒告の懲戒処分を受けました(最高裁大法廷平成10年12月1日決定)。
イ 裁判官は,憲法を尊重し,擁護する義務を負っている(憲法99条)ものの,国会提出法案を尊重し,擁護する義務は負っていません。
(2) 36期の古川龍一福岡高裁判事は,罪証隠滅行為まではしなかったものの,勤務時間外に,実質的に妻の弁護活動に当たる行為をした結果,戒告の懲戒処分を受けました(
最高裁大法廷平成13年3月30日決定)。
(3) 
46期の岡口基一裁判官は,①東京高裁判事をしていた際,勤務時間外に,犬の返還請求を認められた当事者の感情を傷つけるツイートを行った結果,戒告の懲戒処分を受けましたし(最高裁大法廷平成30年10月17日決定),②仙台高裁判事をしていた際,強盗殺人及び強盗強姦未遂事件の遺族が東京高裁事務局等に洗脳されているという投稿を遺族の命日にフェイスブックに行った結果,戒告の懲戒処分を再び受けました(最高裁大法廷令和2年8月26日決定)。

6 取材に対する名古屋家裁総務課の回答等
(1) 示現舎HP「反天皇に血道を上げる名古屋家裁判事の「活動歴」」(平成31年3月15日付)によれば,名古屋家裁総務課は,取材に対し,以下のとおり回答したそうです。
① 記事中に出てきた人物が柳本つとむ判事なのか承知していません。把握していない以上、特に処分の有無も言えません。メディアからの取材件数や抗議件数?メディアからの問い合わせについては報道のことですのでお話しするのは控えます。また抗議件数も把握していません。
② (柳本判事の反天皇活動を調査しないかどうかについて)勤務外の行動についての調査の有無はお話できません。
(2)ア 裁判官には適用されませんが,人事院規則14-7(政治的行為)8項は以下のとおり定めています。
   各省各庁の長及び行政執行法人の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。
イ 名古屋家裁総務課の職員については,裁判所職員に関する臨時措置規則に基づき,人事院規則14-7(政治的行為)が適用されます。
ウ 最高裁判所長官「新年のことば」(平成31年1月1日)には以下の記載があります。
   裁判所は,法にのっとり社会に生起する紛争の解決を図ることによって法の支配を実現する使命を託されています。裁判所に働く者一人一人が,それぞれの職場において,安易に先例に頼るのではなく,常にその行為が適正なものといえるかを問う姿勢で職務に当たることが求められていることに思いを致し,自らを戒めなければならないと感じています。

7 最高裁判所人事局長の国会答弁,及びこれに関するネット記事等
(1)ア 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成31年3月22日の衆議院法務委員会(リンク先の動画の3時間45分の24秒~55秒)において,串田誠一衆議院議員(日本維新の会)の質問に対し,以下の答弁をしています。
   委員ご指摘の新聞報道の件に関しましては,裁判官の私生活上の自由や思想・表現の自由にも配慮しつつ慎重に調査をしているところでございます。
   現時点では,新聞記事の対象となったと考えられます裁判官からの事情聴取等を行いましたものの,本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして,服務規律違反の事実があったことは確認できていないというところでございます。
イ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成31年3月26日の衆議院法務委員会(リンク先の動画の2時間44分56秒~45分37秒)において,門博文衆議院議員(自民党)の質問に対し,以下の答弁をしています。
   委員ご指摘の新聞記事の件に関しましては,委員からもご指摘ございました裁判官の私生活上の自由や思想・表現の自由にも配慮しつつ慎重に調査しているところでございます。
   現時点では,新聞記事の対象となったと考えられる裁判官からの事情聴取等を行いましたものの,本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして,服務規律違反の事実があったことは確認できていないところでございます。
   事実関係を適切に確認できるよう,引き続き慎重に調査してまいりたいと考えております。
(2) 産経新聞HPの「「反天皇制」裁判所の自浄能力注視 調査の甘さ指摘も」(平成31年3月22日付)には以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 産経新聞は、判事が活動に参加している様子を撮影した複数の写真や、団体など多数の関係者への取材を基に報じている。インターネットなどの公開情報で確認できるものだけでも、判事の主張は事実と食い違っている。
② 産経新聞は昨年11月、名古屋家裁に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した。しかし、報道するまでの3カ月以上にわたり、事実関係について「承知していない」の一点張りだった。
③ 法曹関係者は「裁判所は判事にパソコンや携帯電話の任意提出も求めず、事情聴取して否定されたから終わりというのはおかしい。団体の関係者や判事の休暇の取得状況まで調査すべきだ」と指摘する。
(3)ア 示現舎HP「反天皇に血道を上げる名古屋家裁判事の「活動歴」」(平成31年3月15日付)には以下の記載がありますところ,関係団体の人は,産経新聞の記事とニュアンスの異なることを言っているみたいです。
   団体名が浮上した 「ピースリンク広島・呉・岩国」と「不戦へのネットワーク」 に柳本氏の活動に聞いてみると、いずれも産経の報道は把握しており、こう回答した。
   「私たちの団体名が出ているということで記事は読みました。しかしこの件で私たちが何か言えることはありません」 (ピースリンク広島・呉・岩国)
   「柳本という名前で活動している者は不戦ネットにいませんし、裁判官を名乗って活動している者もいません。記事に出ていた夏祭起太郎さんは会員ですが柳本つとむという方なのか分からないんですよ。マスコミ関係からの問い合わせは4社ほどありまして、その時も柳本さんという名前が出てきましたが、その名前を聞いたのは初めてです。会報における発言は不戦ネットの公式的な見解ではなく、会の方針とは全く違う内容を投稿される人もいますよ。(夏祭の記事には)植樹祭やオリンピック反対と書いているがそれを討議したことはなく、不戦ネットとして天皇制の問題は一昨年に交流会をやったぐらいです」 (不戦へのネットワーク担当者 )
イ 不戦へのネットワーク会報83号(2018年11月11日発行)には「今回の天皇代替わりの特徴と問題点が載っています。
   また,不戦へのネットワーク会報84号(2019年2月16日発行)には「憲法と天皇制」が載っています。
ウ 不戦へのネットワークHPに掲載されている「2018年度方針(案)」には以下の記載があります。
   私たちは、16年8月から17年6月にいたる退位新法成立の中にハッキリとアキヒト天皇政治を見ることができました。「強制ではなく、自発的に」がアキヒト政治の極意であったと理解します。

第2 過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容,及び下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
1 最高裁大法廷平成10年12月1日決定
(1) 寺西判事補事件に関する最高裁大法廷平成10年12月1日決定が判示した,45期の寺西和史仙台地裁判事補(抗告人)の懲戒の原因となる事実は以下のとおりです。
   抗告人は、本件集会において、パネルディスカッションの始まる直前、数分間にわたり、会場の一般参加者席から、仙台地方裁判所判事補であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をし(以下、本件集会におけるこの抗告人の言動を「本件言動」という。)、本件集会の参加者に対し、本件法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという抗告人の意見を伝えることによって、本件集会の目的である本件法案を廃案に追い込む運動を支援し、これを推進する役割を果たし、もって積極的に政治運動をして、裁判官の職務上の義務に違反した。
(2) 最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,裁判所法52条1号の「積極的に政治運動をすること」の意義に関して,以下の判示をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 憲法は、近代民主主義国家の採る三権分立主義を採用している。
   その中で、司法は、法律上の紛争について、紛争当事者から独立した第三者である裁判所が、中立・公正な立場から法を適用し、具体的な法が何であるかを宣言して紛争を解決することによって、国民の自由と権利を守り、法秩序を維持することをその任務としている。
   このような司法権の担い手である裁判官は、中立・公正な立場に立つ者でなければならず、その良心に従い独立してその職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されるものとされ(憲法七六条三項)、また、その独立を保障するため、裁判官には手厚い身分保障がされている(憲法七八条ないし八○条)のである。
   裁判官は、独立して中立・公正な立場に立ってその職務を行わなければならないのであるが、外見上も中立・公正を害さないように自律、自制すべきことが要請される。
   司法に対する国民の信頼は、具体的な裁判の内容の公正、裁判運営の適正はもとより当然のこととして、外見的にも中立・公正な裁判官の態度によって支えられるからである。

   したがって、裁判官は、いかなる勢力からも影響を受けることがあってはならず、とりわけ政治的な勢力との間には一線を画さなければならない。
   そのような要請は、司法の使命、本質から当然に導かれるところであり、現行憲法下における我が国の裁判官は、違憲立法審査権を有し、法令や処分の憲法適合性を審査することができ、また、行政事件や国家賠償請求事件などを取り扱い、立法府や行政府の行為の適否を判断する権限を有しているのであるから、特にその要請が強いというべきである。

   職務を離れた私人としての行為であっても、裁判官が政治的な勢力にくみする行動に及ぶときは、当該裁判官に中立・公正な裁判を期待することはできないと国民から見られるのは、避けられないところである。
   身分を保障され政治的責任を負わない裁判官が政治の方向に影響を与えるような行動に及ぶことは、右のような意味において裁判の存立する基礎を崩し、裁判官の中立・公正に対する国民の信頼を揺るがすばかりでなく、立法権や行政権に対する不当な干渉、侵害にもつながることになるということができる。
② これらのことからすると、裁判所法五二条一号が裁判官に対し「積極的に政治運動をすること」を禁止しているのは、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義の下における司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにその目的があるものと解される。
③ なお、国家公務員法一〇二条及びこれを受けた人事院規則一四―七は、行政府に属する一般職の国家公務員の政治的行為を一定の範囲で禁止している。
   これは、行政の分野における公務が、憲法の定める統治組織の構造に照らし、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策の忠実な遂行を期し、専ら国民全体に対する奉仕を旨とし、政治的偏向を排して運営されなければならず、そのためには、個々の公務員が政治的に、一党一派に偏することなく、厳に中立の立場を堅持して、その職務の遂行に当たることが必要となることを考慮したことによるものと解される(最高裁昭和四四年(あ)第一五〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・刑集ニ八巻九号三九三頁参照)。
   これに対し、裁判所法五二条一号が裁判官の積極的な政治運動を禁止しているのは、右に述べたとおり、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するとともに、三権分立主義の下における司法と立法、行政とのあるべき関係を規律することにその目的があると解されるのであり、右目的の重要性及び裁判官は単独で又は合議体の一員として司法権を行使する主体であることにかんがみれば、裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべきである。
   また、国家公務員法一〇二条及び人事院規則一四―七は、一般職の国家公務員が禁止される政治的行為について、同条が自ら規定しているもののほかは、同規則六項が具体的に列挙したものに限定され、政治的色彩が強いと思われる行為であっても、具体的列挙事項のいずれにも該当しないものは、同条の禁止する「政治的行為」には当たらないものとし、しかも、同規則六項は、五号から七号までに定めるものを除き、同規則五項の定義する「政治的目的」をもってする行為のみを「政治的行為」と規定している。
   これは、右禁止規定の違反行為が懲戒事由となるほか刑罰の対象ともなり得るものである(同法一一〇条一項一九号)ことから、懲戒権者等のし意的な解釈運用を排するために、あえて限定列挙方式が採られているものと解される。
   これに対し、裁判官の禁止される「積極的に政治運動をすること」については、このような限定列挙をする規定はなく、その意味はあくまで右文言自体の解釈に懸かっている。
   裁判官の場合には、強い身分保障の下、懲戒は裁判によってのみ行われることとされているから、懲戒権者のし意的な解釈により表現の自由が事実上制約されるという事態は予想し難いし、違反行為に対し刑罰を科する規定も設けられていないことから、右のような限定列挙方式が採られていないものと解される。
   これらのことを考えると、裁判所法五二条一号の「積極的に政治運動をすること」の意味は、国家公務員法の「政治的行為」の意味に近いと解されるが、これと必ずしも同一ではないというのが相当である。
④ 以上のような見地に立って考えると、「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって、裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものが、これに該当すると解され、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、その行為の内容、その行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、その行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
(3) 最高裁大法廷平成10年12月1日決定は,「懲戒事由該当性」に関して以下の判示をしています。
   裁判所法四九条にいう「職務上の義務」は、裁判官が職務を遂行するに当たって遵守すべき義務に限られるものではなく、純然たる私的行為においても裁判官の職にあることに伴って負っている義務をも含むものと解され、積極的に政治運動をしてはならないという義務は、職務遂行中と否とを問わず裁判官の職にある限り遵守すべき義務であるから、右の「職務上の義務」に当たる。

2 最高裁大法廷平成13年3月30日決定
   福岡高裁判事妻ストーカー事件(平成13年3月14日付の最高裁判所調査委員会の調査報告書参照)に関する最高裁大法廷平成13年3月30日決定が判示した,36期の古川龍一福岡高裁判事(被申立人)の行為について以下の判示をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 前記事実関係を通覧すれば,被申立人は,山下次席検事から,妻Dに対する被疑事件の捜査が逮捕も可能な程度に進行しているので,事実を確認し,これを認めたならば示談をするようにとの趣旨で,捜査情報の開示を受けたのに対し,Dが繰り返し事実を否認したことから,その嫌疑を晴らすためとみられる一連の行動に出たものであり,具体的には,前記1(2),(3)のとおり,同次席検事から提供された捜査情報の内容をも用いて「〔Dの容疑事実〕ストカー防止法違反」と題する書面等を作成し,被疑者であるDとその弁護に当たる甲弁護士とに交付したなどというのである。
   そして,同書面の記載内容の中には,捜査機関と被疑者のいずれの側にも立たず中立的な立場において捜査状況を分析したというのではなく,被疑者であるDの側に立って,捜査機関の有する証拠や立論の疑問点,問題点を取り出し,強制捜査や公訴の提起がされないようにする端緒を見いだすために記載されたとみられるものが多く含まれている。
② この被申立人の行為は,その主観的意図はともかく,客観的にこれをみれば,被疑者であるDに捜査機関の取調べに対する弁解方法を教示したり,弁護人である甲弁護士に弁護方針について示唆を与えるなどの意味を持つものであり,これにより捜査活動に具体的影響が出ることも十分に予想されたところである。
   また,被申立人としても,この行為がそのような意味を持つものであることを認識し得たということができる。
   これらによれば,被申立人は,先に述べたような実質的に弁護活動に当たる行為をしたといわなければならず,その結果,裁判官の公正,中立に対する国民の信頼を傷つけ,ひいては裁判所に対する国民の信頼を傷つけたのである。
   したがって,被申立人としては,裁判官の立場にある以上,そのような行為は弁護人にゆだねるべきであったのであり,被申立人の行為は,妻を支援,擁護するものとして許容される限界を超えたものというほかはない。
③ 以上のとおり,被申立人の上記行為は,捜査情報の入手が受動的なものであった点や,妻の無実を晴らしたいという夫としての心情から出たものとみられる点を考慮しても,裁判官の職責と相いれず,慎重さを欠いた行為であり,裁判所法49条に該当するものといわなければならない。

3 最高裁大法廷平成30年10月17日決定
(1)ア 岡口基一裁判官に対する分限裁判に関する最高裁大法廷平成30年10月17日決定が判示した,46期の岡口基一東京高裁判事(被申立人)の懲戒の原因となる事実は以下のとおりです。
   被申立人は,平成30年5月17日頃,本件アカウントにおいて,東京高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに,別紙ツイート目録記載2の文言を記載した投稿(以下「本件ツイート」という。)をして,上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた。
   本件ツイートは,本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった。
イ 別紙ツイート目録記載2の文言は以下のとおりです。
公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,
もとの飼い主が名乗り出てきて,「返して下さい」
え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・
裁判の結果は・・
(2) 最高裁大法廷平成30年10月17日決定は,一般論として以下の判示をしています。
   裁判の公正,中立は,裁判ないしは裁判所に対する国民の信頼の基礎を成すものであり,裁判官は,公正,中立な審判者として裁判を行うことを職責とする者である。したがって,裁判官は,職務を遂行するに際してはもとより,職務を離れた私人としての生活においても,その職責と相いれないような行為をしてはならず,また,裁判所や裁判官に対する国民の信頼を傷つけることのないように,慎重に行動すべき義務を負っているものというべきである最高裁平成13年(分)第3号同年3月30日大法廷決定・裁判集民事201号737頁参照)。
   裁判所法49条も,裁判官が上記の義務を負っていることを踏まえて,「品位を辱める行状」を懲戒事由として定めたものと解されるから,同条にいう「品位を辱める行状」とは,職務上の行為であると,純然たる私的行為であるとを問わず,およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうものと解するのが相当である。

4 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
(1) 「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)が載ってある判例タイムズ588号の12頁及び13頁には以下の記載があります。
 次に、特殊な場合として下級審裁判官が既存の最高裁判例(または大審院判例-裁判所法施行令5条参照)に反する裁判をなす場合につき若干考察しておく。
 まず、それがまったく容認され得ないものでないことはいうまでもない。最高裁判所の拘束力の根拠は、当該事件に関する国の裁判所としてのあるべき法解釈の推測資料として、最高裁が同種事件についてなした法解釈が重要な意味をもつということにあった。すなわち、そこで重要なのは、最高裁判例それ自体ではなく、国家機関としてのあるべき法解釈ということにあるといわなければならない。ところで、法解釈は社会情勢の変化等に対応して不断に生成発展すべき性質をも有するものであり、最高裁判例も、常にあるべき法解釈を示すとは限らない。このことは、刑訴法410条2項において最高裁自体によって既存の最高裁判例が変更されることが予定されていることから明らかであろう。そして、下級審裁判官としては、あるべき法解釈が既存の最高裁判例と異なると信ずるときには、既存の最高裁判例と異なる裁判をなすことが容認されるといい得るのである。
 ただ、あるべき法解釈というのが、既に述べたように、当該裁判官が個人的に正当であると信ずる法解釈ではなく、国の裁判所全体としてのあるべき法解釈、換言すれば、当該事件が最高裁判所に係属した場合に最高裁が下すであろう法解釈を意味するものであるとすれば、下級裁判所裁判官が右のように信じ得るのは、当該事件が最高裁に係属した場合に最高裁が従前の判例を変更し自己の採った法解釈を是認することが見込まれる場合ということにほかならない。そして、最高裁判例の変更が見込まれるということの判断がしかく容易にされるものではないことは明らかである。その意味では、下級審裁判官が最高裁の判例に従わないことは例外的にのみ許容されるといってよいであろう。下級審裁判官としてただ単に最高裁判例に納得できないということが直ちにこの判断と結びつくものではないことはもとより、最高裁判例に従わない所以を十分の説得力をもって論証できると考えるときも、そのことから直ちに右判例の変更が見込まれるということはできないであろう。下級審裁判官として、最高裁判例の変更が見込まれるかどうかの判断に当たっては、当該判例につき、最近に至るまで何回も同趣旨の判例が反復して出されているか古い時期に一度しか出ていないものであるか、大法廷の判例であるか小法廷の判例であるか、少数意見の有無およびその数の多少、同種の問題につき他の判例と調和を欠くものでないか、それが出された後これに反する下級審判決が現われているか等を、慎重に勘案すべきであろう。
(2) 35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「裁判官の身分保障について(3)」(平成31年2月21日付)には,「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)は,裁判官国家機関説(一審の裁判官たるものは,高裁や最高裁がするであろう判断と異なる判断をしてはならないとする説)を裁判官全体に浸透させるのに大いに力があったという趣旨のことが書いてあります。

第3 罪証隠滅のおそれ等
1 元裁判官及び元検事が述べるところの罪証隠滅のおそれ等
(1)ア ヤフーニュースの「【PC遠隔操作事件】「罪証隠滅のおそれ」って何?~名(元)裁判官・原田國男氏が語る”裁判官マインド”」(平成25年6月1日付)には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 僕は裁判官として、量刑と事実認定については厳格にやってきたっていう自負心はあるんですよ。
   ただ、本音を言うと、勾留など身柄の関係については、大勢に従っていたというか、多くの裁判官と同じスタンスでやってきた。
② (「「罪証隠滅のおそれ」が問題になるのは、どういう場合でしょう。 」という問いに対し,)否認が出発点。冤罪であっても、否認すると、検察は必ず「罪証隠滅のおそれ」があると言ってきて、勾留となり、否認を続けていれば、勾留延長になる。起訴になっても、なかなか保釈が通らない。
   在宅の被告人に比べて、弁護人との打ち合わせもなかなか十分にはできない。そして最後は実刑になる。そういう悪い連鎖を作るキーが、「罪証隠滅のおそれ」。
   (否認していると解放されないという)人質司法という問題の中心は、否認した時の「罪証隠滅のおそれ」なんですよ。
   裁判官も、否認すれば「罪証隠滅のおそれ」があるんだろうな、と考えてしまうから。

③ (罪証隠滅の恐れがあることを伝える検察官の意見書の添付書類というのは)捜査
報告書の類。検察官の意見書と一緒に出されるけど、法廷には普通、出て来ない。
   勾留などを決める場合の疎明資料は、証拠能力を立証する必要がなく、そこに、被疑者・被告人は知人に罪証隠滅を働きかけるような手紙を出しているとか、そういうことが書いてある。だから、「罪証隠滅のおそれ」があるんですよ、と。

   そこまで分かりやすい行為でなくても、なんか怪しいと思えることが書かれていると、具体的な「おそれ」まで行ってなくても、裁判官は「罪証隠滅やりそう」って考えがち。あくまで「おそれ」でいいわけだし、もし罪証隠滅されたら事件つぶしちゃうことになるから。
   自分の判断で事件つぶしちゃうのは困るから、身柄はとっておいて、決着は判決でつけよう、という判断になりやすいんだ。

④ 否認していると、「罪証隠滅のおそれ」で出られない。保釈もされない。
   「罪証隠滅のおそれ」というのは、そうやって、いろんな場面で使えるババみたいなカードなんだ。
⑤ 被告人については、悪いことを考えがちですね。40年も裁判官やっていれば、罪証隠滅された話だとかの知識は豊富にあるから。

⑥ (「目の前の被告人が具体的に何かをする「おそれ」があるというより、今までの蓄積と今の被告人が結びついてしまう?」という問いに対し)それが可能なんですよ。職業病と言えば職業病。(初めて刑事裁判を担当する)裁判員みたいな気持ちで被告人を見れば、「罪証隠滅のおそれ」なんてないよね、と思う場合でも、いろんな例を知っているもんだから、「ひょっとすると…」と。
イ PC遠隔操作事件については,平成26年3月5日に保釈された被告人において,別に真犯人がいるという趣旨の電子メールを,別人を装って自ら報道機関に送るなどした結果,同年5月20日に保釈を取り消され,平成27年2月4日,懲役8年の実刑判決を受けました。
(2) 検事失格 弁護士 市川寛のブログ「「罪証隠滅」って何?」には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 人の供述を「隠滅」するとは、なにも文字通りその人を抹殺することではなく、例えば同居人に会って「俺がカネに困っていたとは言わないでくれ」と頼むなどの「口裏合わせ」をすることです。
 ですから、結局のところ、検事が勾留請求したり、保釈に反対するときは、「被疑者(被告人)は、関係者と接触して虚偽の供述をするようはたらきかけるおそれがある」などと述べて、罪証隠滅のおそれを主張するわけです。
② 起訴後では、検事が被害者や目撃者の調書をとっています。
 刑事訴訟法では、警察の調書と比べると、検事の調書は公判で証拠として採用されやすい仕組みになっています(これ自体に問題があることは、ここでは言及しません)。
 被害者・目撃者の供述は、検事の調書という形で保存されているのです。
 ですから、仮に被告人が被害者や目撃者に接触しようが、検事は保存された調書を出せば足りるはずなのです。
 ですが、実情は、たとえ被疑者・被告人が被害者や目撃者と何らの面識のない「赤の他人」の関係でも、検事は「接触して虚偽の供述をはたらきかけるおそれがある」と主張し、裁判所もこの主張を認めるのが殆どなのです。
 「罪証隠滅のおそれ」が、非常に抽象的なものとして運用されているわけです。
 すなわち、果たして本当にそんな罪証隠滅ができるのかという疑問があるのに、これを肯定しての身柄拘束が行われているのです。

2 犯人隠避罪に関する裁判例等
(1)ア 部下である検察官がその職務に関して証拠隠滅罪を犯したことを覚知した地方検察庁の幹部検察官2人が,その犯行を知った他の部下検察官らから上司への報告を求められたなどの本件事実関係の下において,共同して,上司や上級庁に対しては,犯人の証拠隠滅に関する嫌疑を抱かせないための工作を行うとともに,同検察庁の内部及び部下の検察官らに対しては,当該嫌疑に関する情報を管理し,捜査に向けた動きを封じる工作を行ったことは,全体として,刑法103条にいう犯人隠避罪に当たります(大阪高裁平成25年9月25日判決)。
イ 法務省HPに「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(公表版)」(平成22年12月)が載っています。
(2) 
道路交通法違反,自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,Aとの間で,事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする行為は,刑法103条の「隠避させた」に当たります(最高裁平成29年3月27日決定参照)。
(3)ア ヤフーニュースの「なぜ捜査当局は極秘の捜査情報をマスコミにリークするのか (1)」には,リークのデメリットとして以下の記載があります。
リーク報道により、自分(達)が捜査対象だということを相手に対して明確に認識させることで、証拠隠滅や口裏合わせ、逃亡、自殺を招く。
捜査の手の内が分かれば、狡猾な被疑者らが新たな弁解を構築したり、捜査当局が把握していない未解明の事実を覆い隠すことも可能となる。
イ 捜査情報の漏洩により証拠隠滅や口裏合わせ,新たな弁解の構築等により真相の解明が困難となった可能性がある事件については,罪証隠滅に関する知識の豊富な被疑者を逮捕し,接見禁止付で勾留できる捜査機関が起訴できなかったとしても,当該被疑者が潔白であったとはいえないと思います。

3 東京地検次席検事が罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示した,被告人カルロス・ゴーンの保釈条件
(1) 東京地検次席検事は,平成31年3月8日の定例記者会見において,東京地裁が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車前会長の被告人カルロス・ゴーンの保釈条件について,罪証隠滅防止の実効性がないとの見解を示しました(産経新聞HPの「ゴーン被告保釈条件 地検次席が地裁決定に異例の批判「実効性ない」」参照)。
(2)ア 被告人カルロス・ゴーンの弁護人である高野隆弁護士ブログの「保釈条件について」(平成31年4月6日付)によれば,平成31年3月のカルロス・ゴーンの保釈条件は以下のとおりです(1,2などを①,②などに変えています。)。
① 被告人は、東京都***に居住しなければならない。
  住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない。
② 召喚を受けたときは、必ず定められた日時に出頭しなければならない(出頭できない正当な理由があれば、前もって、その理由を明らかにして、届け出なければならない。)
③ 逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない。
④ 3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
⑤ 海外渡航をしてはならない。
⑥ 被告人は、所持する旅券すべてを弁護人に預けなければならない。
⑦ 被告人は、第一審の判決宣告に至るまでの間、本邦における在留期間を更新し又は在留資格を取得できるように努め、弁護人を介して、その経過及び結果を裁判所に報告しなければならない。
⑧ 被告人は、グレゴリー ルイス ケリー、大沼敏明、西川廣人、ヘマント クマール ナダナサバパシー、真野力、小坂厚夫、ハーリド ジュファリ(Khaled Juffali)、ジル ノルマンその他の本件事件関係者及び罪体に関する弁護人請求の証人(証人請求予定者を含む。)に対し、直接又は弁護人を除く他の者を介して、面接、通信、電話等による一切の接触をしてはならない。
⑨ 被告人は、弁護人が上記制限住居の玄関に監視カメラ(24時間作動するもの)を設置して録画し、かつその画像を①マイクロSDカード又は②ビデオレコーダー及びUSBメモリーに保存すること、その録画画像(毎月末日までの分)を翌月15日までに裁判所に提出することを、妨げてはならない。
⑩ 被告人は、弁護人から提供される携帯電話1台(番号***)のみを使用し、それ以外の携帯電話機、スマートフォンなどの通信機器を使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記携帯電話機の通話履歴明細を保存しておかなければならない。
⑪ 被告人は、弁護士法人法律事務所ヒロナカから提供されるパーソナルコンピューター(機種名***、製造番号***)のみを、平日午前9時から午後5時までの間、同事務所内(東京都千代田区***)において使用し、それ以外の日時・場所で、パーソナルコンピューターを使用してはならない。被告人は、使用を許可された上記パーソナルコンピューターのインターネットのログ記録を保存しておかなければならない。
⑫ 被告人は、制限住居の内外を問わず、面会した相手の氏名(ただし、被告人の妻、弁護人、弁護士法人法律事務所ヒロナカの事務員を除く)、日時・場所を記録しておかなければならない。
⑬ 被告人は、弁護人を介して、10項の通話履歴明細(毎月末日までの分)を翌月末日までに、11項のインターネットのログ記録(毎月末日までの分)及び12項の面会記録(毎月末日までの分)を翌月15日までに、それぞれ裁判所に提出しなければならない。
⑭ 被告人は日産自動車株式会社の株主総会、取締役会その他の会合に出席する場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
⑮ 本件につき公判期日の召喚状、保釈許可決定謄本等裁判所から郵便で送達された書類については、保釈制限住居で受領すべきはもちろんのこと、不在時に配達された場合には、すみやかに集配局に出頭する等の方法により、必ず受領しなければならない。
イ 高野隆弁護士ブログの「保釈条件(2)」(平成31年4月27日付)に,平成31年4月のカルロス・ゴーンの再度の保釈条件が載っています。
ウ 外国人被告人の出国確認留保の通知に係る事務の取扱いについて(平成12年8月28日付の最高裁判所刑事局長,家庭局長通達)を掲載しています。

4 福岡高裁判事妻ストーカー事件で訴追請求にまでは至らなかった理由等
(1)ア 福岡高裁判事妻ストーカー事件では,古川龍一福岡高裁判事の自宅にあった3台のパソコン等が押収されましたし,当時はマスコミの注目を集めていた事件でした。
   そのため,福岡県西警察署及び福岡地検によって徹底的に調査されたと思います。
イ 福岡高裁平成13年2月16日決定の決定要旨には,「脅迫等被疑事件の捜査指揮の権限が福岡高等検察庁に移ってからは、妻の起訴・不起訴等のいわゆる生殺与奪の権限を直接同検察庁が握るようになった」などと書いてあります。
(2)ア 最高裁判所調査委員会としては,3台のパソコンの使用状況等にも言及した上で,「古川判事が平成12年12月28日に山下次席検事から妻園子に関する嫌疑を聞かされて以降取った行動に関する供述に何ら不自然な点はなく,罪証を隠滅したとの疑惑についての供述も理解が可能なものであるほか,その一部は捜査機関により公表された捜査の結果裏付けられていることに照らすと,古川判事が,妻園子の刑事事件に関する証拠を隠滅したと認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。」という事実関係を前提として,裁判官弾劾法に基づく訴追請求をすべき理由があるものとまでは認められないと判断しました平成13年3月14日付の最高裁判所調査委員会の調査報告書23頁及び24頁等参照)。
イ 京都弁護士会(平成13年度会長は福井啓介弁護士)が平成13年3月頃に出した「「福岡」事件につき、真相の徹底的究明と抜本的改革策の確立を求める意見書」
には以下の記載があります。
   「最高裁判所調査委員会」は、本件においては当事者ともいうべき同事務総局の局長クラスにより構成されたもので、事実関係の解明が十分なされていないことや、きちんとした改革策が出されていないことは、そのことに起因していると言うほかない。また、最高裁裁判官会議との関係も明らかでなく、いかなる法的根拠、権限により設置されたか等、同報告書の出所そのものも疑問なしとしない。
(3)ア 裁判官訴追委員会は,平成13年4月19日,古川龍一判事について,7対7の評決により不訴追を決定しました(罷免の訴追をするためには,出席訴追委員の3分の2以上の多数が必要であることにつき裁判官弾劾法10条2項ただし書)。
   そのため,古川龍一判事は,平成13年4月24日に依願退官しました(Wikipediaの「福岡高裁判事妻ストーカー事件」参照)。
イ 古川龍一判事について,事実関係に関する供述に何らかの不自然な点があったり,妻の刑事事件に関する証拠を隠滅したと認めるに足りる証拠があったりしたと最高裁判所調査委員会によって判断されていた場合,裁判官訴追委員会において裁判官弾劾法に基づく訴追請求をされていたかもしれません。

第4 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の答申の記載
1 平成27年度(最情)答申第5号(平成28年2月22日答申)の記載
   裁判官は,憲法上その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されており(憲法76条3項,78条),また,身分保障の現れとして,その意思に反して,転官や転所をされることはないとされている(裁判所法48条)。したがって,裁判官の異動時期の目安を含めた人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,それを知った裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者などから不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められることから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等も含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する情報に当たると認められる。
2 平成29年度(最情)答申第4号(平成29年5月25日答申)の記載
   裁判官は,憲法上,その職務の独立性が保障されるとともに,身分が保障されている(憲法76条3項,78条)。また,その身分保障の現れとして,裁判官がその意思に反して転官や転所をされることはない(裁判所法48条)。これらの規定の趣旨に照らすと,裁判官の人事管理に係る情報については,裁判官の独立を確保するため,非常に高い機密性が求められる機微な情報であるということができ,本件対象文書に記録されている上記のような情報を公にすると,裁判官の異動を望み,あるいは望まない関係者等から不当な働き掛け等がされるなどして,今後の裁判官の人事管理に係る事務に関し,適正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められるから,本件対象文書に記録された情報は,その文書の標題部分や発出者名等を含め,全体として法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する。
3 
平成29年度(情)答申第2号(平成29年4月28日答申)の記載
   下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,事務の取扱いや行状についての改善を目的として行うものであって,懲戒処分のような制裁的実質を含んだ処分とは異なるものであると判断される。
そして,裁判官については,憲法上その独立が強く保障されており,懲戒処分も,裁判官分限法に基づく分限裁判によって行われることとされていて(裁判所法48条,49条参照),下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意がされたとしても,そのことにより,当該裁判官に具体的な不利益が課されることは,予定されていない。また,裁判官の懲戒である分限裁判が確定したときは,官報に掲載して公告されることとされている(裁判官の分限事件手続規則9条)のに対し,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意は,公表が予定されていない。
   下級裁判所事務処理規則21条に基づく裁判官に対する注意が上記のような性質のものであることからすると,その運用自体が裁判官の個人的事情に関わる機微なものであるというべきであり,その手続きについては,当該裁判官の行状等の改善に対する実効性を確保する目的で,適切な時期に効果的な形でされるべきであるという観点等から慎重であるべきものと認められる。したがって,司法行政手続の中でその運用においてどのような手続がとられるのか,文書が作成されるのか,作成されるとしてどのような文書が作成,管理,保存されるのかなどについて,本来,これを公にすると,下級裁判所事務処理規則21条に基づく注意という人事管理に係る事務に関与する判断権者及び職員に対し,文書の作成,管理,保存について好ましくない影響が生ずる等,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
4 平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)の記載
   本件不開示部分のうちその余の記載部分については,その記載内容に照らせば,罷免された司法修習生に係る個人識別情報と認められ,同号ただし書イからハまでに相当する事情は認められない。また,これらの記載部分については,司法修習生の人事事務に関する担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない秘密性の高い情報であり,特に罷免理由を公にすると,どのような事案で罷免されるのかといった内容が明らかになるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえず,司法修習生の罷免に係る事務に支障が生じるおそれがあると認められるから,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当する。
5 平成30年度(最情)答申第41号(平成30年11月16日答申)の記載
   本件対象文書(注:70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則19条に基づく報告書)を見分した結果によれば,本件対象文書は,70期司法修習生を罷免するに際し,司法研修所が作成した司法修習生に関する規則(平成29年最高裁判所規則第4号による改正前のもの)19条に基づく報告書であり,司法修習生の氏名や行状等が記載されていることが認められる。このうち司法修習生の氏名や行状等の記載部分については,法5条1号に規定する個人識別情報と認められ,同号ただし書イからハまでに相当する事情も認められない。また,本件対象文書の性質及び内容を踏まえると,標題等を含む本件対象文書全体について,これを公にすると,司法修習生の罷免事由に関する調査事項,司法修習生の弁明書及び提出された資料の内容が明らかになり,今後の公正かつ円滑な調査及び資料収集事務に好ましくない影響を与えるなど,適正な司法修習生の罷免手続事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。

第5 新61期長崎修習の人の守秘義務違反容疑の場合,司法研修所による調査が実施されて報道されたこと
1 平成20年6月19日,「司法修習生のなんとなく日記」と題するブログに関して,取り調べや刑務所内の見学など修習内容をインターネット上のブログに掲載していたとして,長崎地裁が裁判所法に基づく守秘義務違反の疑いもあるとして調べていると報道されました(孫引きですが,外部ブログの「司法修習生。守秘義務違反」参照)。
    問題となったブログの記載の一部を引用すると以下のとおりであり,ブログを書いてから4ヶ月余り後に報道されたようです。
2008-02-15 | 修習
今日,はじめて取調べやりました。
相手は80歳のばあちゃん。
最初はいろいろ話を聞いてたけど,
途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり。
おばあちゃん,涙は出てなかったけど。
けど,なんで20代の若造が80歳のばあちゃんを説教してるのか。
それに対してなんで80歳のばあちゃんが泣いて謝ってるのか。
なんとなく,権力というか,自分の力じゃない力を背後に感じた。
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(2) 新61期長崎修習の人の守秘義務違反容疑につき,司法研修所による調査の結論は以下のとおりになったみたいです(外部ブログの「守秘義務について」参照)。
   ブログ内容は、個人が特定されるものではないとして、「厳密な意味で守秘義務違反に該当するとはいえない」と判断。(長崎新聞7/25より引用)
   だが、「国民の信頼を損ない、修習生の品位を辱めるもので、守秘義務違反にも匹敵する厳しい非難を受けるべき」と批判した。(同前)
2(1) 56期高松修習の人が書いた「司法修習生日記」における「検察修習」とかについては,現在でもインターネット上に存在してますから,検察修習に関するこれらの記載は司法修習生の守秘義務には違反していなかったと思われます。
 しかし,新61期長崎修習の人が書いた「司法修習生のなんとなく日記」が守秘義務に違反するとして不祥事扱いになったのに対し,56期高松修習のブログが守秘義務に違反しないと判断する基準はよく分かりません。
(2)ア   実際,「やっぱり世界は**しい!」と題するブログ「守秘義務」によれば,司法研修所が動くこと自体が司法修習生にとっては大変な脅威であって,司法修習生という立場は,まさに現代の特別権力関係だそうです。
イ 最高裁昭和32年5月10日判決は,公務員に対する懲戒処分は,特別権力関係に基づく行政監督権の作用であると判示していました。
3 名古屋家裁の55歳の男性裁判官については,平成30年11月時点で産経新聞が名古屋家裁に政治活動疑惑を伝えたみたいです。
   しかし,産経新聞が平成31年3月13日に報道するまでの間に,名古屋家裁が何らかの調査をしたかどうかは不明です。

第6 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話等
1 昭和45年4月8日付の最高裁判所事務総長談話
「裁判官の政治的中立性について」(昭和45年4月8日付の岸盛一最高裁判所事務総長談話)は,同月9日の新聞朝刊に掲載されたほか,裁判所時報544号(昭和45年5月1日付)2頁にも掲載されていますところ,その内容は以下のとおりです。
 裁判官の任用について、差別待遇があると二十二期司法修習修了者の代表が主張しているそうであるが、裁判官志望の某君らが不採用となった理由は、人事の機密にぞくすることなので、一切公表することはできない。ただ、同君らが青法協会員であるという理由からではない。
 なお、一般的問題としてであるが、裁判官は、その職責上からして、特に政治的中立性が強く要請されているのは、当然のことである。そしてこの中立性は、裁判官の法廷における適正な訴訟指揮権や法廷警察官の行使を通じ、窮極においては、裁判によって貫かれるべきことである。しかしこれと同時に、裁判は、国民の信頼の基礎の上に成り立っているものであり、したがって裁判官は、常に政治的に厳正中立であると国民全般からうけとられるような姿勢を堅持していることが肝要である。裁判官が政治的色彩を帯びた団体に加入していると、その裁判官の裁判がいかに公正なものであっても、その団体の構成員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった裁判がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、裁判が特定の政治的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。裁判は、その内容自体において公正でなければならぬばかりでなく、国民一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。裁判官は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、政治的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。
 以上は最高裁判所の公式見解である。

2 35期新任判事補に対する説明
 35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「ある元裁判官の履歴書(5)」(令和元年5月25日付)には以下の記載があります。
 その研修(注:熱海のホテルで行われた「新任判事補集中研修」のこと。)で講師となった最高裁事務局(だったと思う)員が述べたことのうち、2つの事柄については、今でも鮮明に覚えている(もちろん、記憶の変容があるかもしれないが)。
(中略)
 もう一つは、いわゆる団体に所属してよいか、という問題についてである。当時はまだ、青法協に所属している司法修習生が任官希望する事例があり、その中には、採用願を出す前に、青法協に対して脱退届を出し、その写しを司法研修所の教官に提出するということもあったらしく(注6)、その講師の話は青法協を前提とするものだと思ったので、私は、これには反対されないだろうと思いながら、念の為と思って次の質問をした。
 「私の子は、ある病気に罹っているが、同じ病気の子を持つ親の会に加入している。その団体への加入は問題ないでしょうね?」と。
 それに対する講師の返答は次のようなものであった。
 「その団体が、世論に訴えたり、国会議員に働きかけたりして、その病気の子らのための法律を制定しようとしたら、裁判官はその団体を脱退しなければならない」
 そのとき私は、決してその団体を脱退するつもりはなかったし、その返答を聞いても私の気持ちは変わらなかった。ただ、こう思った。
 「やってられんわ!」

第7 関連記事その他
1 衆議院HPに「裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会に関する資料」(平成25年5月に衆議院憲法審査会事務局が作成した資料)が載っていますところ,末尾1頁には以下の記載があります。
   裁判官であっても、国民の信頼を裏切るような行為を犯した場合には辞めさせることができなくてはならない。そこで、日本国憲法において、理念として、公務員を罷免することが国民の権利であると宣言されていること(15 条1項)や、身分保障が強く要請される裁判官をいたずらに不安定な地位におくことは望ましくないことなども考慮して、罷免事由等が限定された現在の裁判官弾劾制度が採用された(64 条1 項)。
2 管理職的地位にあり,その職務の内容や権限に裁量権のある一般職国家公務員が行った本件の政党の機関紙の配布は,それが,勤務時間外に,国ないし職場の施設を利用せず,公務員としての地位を利用することなく,公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず,公務員による行為と認識し得る態様によることなく行われたものであるとしても,当該公務員及びその属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に認められ,国家公務員法102条1項,人事院規則14−7第6項7号により禁止された行為に当たります(最高裁平成24年12月7日判決)。
3 裁判官弾劾裁判所令和6年4月3日判決は以下の判示をしています(判決要旨29頁及び30頁)。
    裁判官とは、司法権を行使して裁判を行う官職にある者をいい、裁判とは、対等な私人間の社会関係上の紛争の解決や公権力を有する国家と国民との間の公益と私益との衝突の調整を目的とする国家の権能である。そして、裁判がこのような重要な役割を安定的、継続的に果たす上で、絶対に不可欠なのが一般国民の裁判に対する信頼である。
    このため、裁判権を行使する裁判官は、単に事実認定や法律判断に関する高度な素養だけでなく、人格的にも、一般国民の尊敬と信頼を集めるに足りる品位を兼備しなければならず、裁判官という地位には、もともと裁判官に望まれる品位を辱める行為をしてはならないという倫理規範が内在していると解すべきである。
4(1) 国家公務員の倫理に関する以下の資料を掲載しています。
① 国家公務員の服務・懲戒制度(平成29年度版)
② 裁判所職員倫理審査会規則(平成12年2月10日最高裁判所規則第5号)
③ 下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せ(平成12年6月15日付の高等裁判所長官申合せ)
(2) 最高裁判所事務総長が作成した,以下の理由説明書を掲載しています。
① 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋高裁が,名古屋家裁から取得した,柳本つとむ裁判官の勤務時間外の行為を調査した文書)
② 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋家裁の男性判事(55歳)が平成30年中に反天皇制をうたう団体の集会に複数回参加するなどしたことに関する文書)
③ 令和元年8月19日付の理由説明書(名古屋家裁が作成し,又は取得した「夏祭起太郎」に関する文書)
5 以下の記事も参照してください。
① 人事院規則14-7(政治的行為),及び名古屋家裁裁判官の反天皇制に関する行為
② 岡口基一裁判官に対する分限裁判
③ 裁判官の職務に対する苦情申告方法
④ 分限裁判及び罷免判決の実例
⑤ 弁護士の懲戒

裁判官の号別在職状況

目次
1 裁判官の号別在職状況に関する最高裁の開示文書
2 裁判官の報酬月額,号別在職状況等の推移
3 裁判官の給料と指定職俸給表の比較(令和2年9月9日追加)
4 元裁判官がブログで公表している判事4号どまりの実例
5 裁判官の号別在職状況に関する国会での質疑応答例
6 昭和62年当時の裁判官の昇給差別に関する国会での質疑応答例(令和3年3月16日追加)
7 裁判官の配置定員と裁判官の号別在職状況の数字が異なる理由
8 関連記事その他

*1 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)も参照してください。
*2 studyFIRE「年収別 手取り金額一覧(年収100万円~年収1億円まで)」が載っています。

1 裁判官の号別在職状況に関する最高裁の開示文書
(1)ア 裁判官の号別在職状況に関する最高裁の開示文書は,以下のとおりです。
・ 令和 7年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 6年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 5年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 4年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 3年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 2年7月1日及び同年12月1日
・ 令和 元年7月1日及び同年12月1日
・ 平成30年7月1日及び同年12月1日
・ 平成29年7月1日及び同年12月1日
・ 平成28年7月1日及び同年12月1日
・ 平成27年7月1日及び同年12月1日
・ 平成24年12月1日から平成26年12月1日までの分
・ 平成14年7月1日から平成23年12月1日までの分(平成27年11月26日付で開示されたもの)
→ 平成26年7月28日付の司法行政文書不開示通知書によれば,同日当時は最高裁判所に存在しなかった文書です。
イ 裁判官の号別在職状況(平成14年7月1日現在から令和6年12月1日現在まで)として1本化しています。
ウ 行政機関等への出向裁判官は号別在職状況の人数に含まれていません。

(2) 平成30年度(最情)答申第78号(平成31年3月15日答申)には以下の記載があります。
 最高裁判所においては,毎年12月1日現在の判事及び判事補の現在員を算出しており,12月1日以外の基準日の現在員を算出する必要が生じた場合には,直近に算出した12月1日時点の数値をもとに,同日以降の任官者数,退官者数等を集計して算出する
(3) 平成28年度(最情)答申第4号(平成28年4月14日答申)によれば,①裁判官の号別定数が分かる文書,②下級裁判所における指定職相当の裁判官の内訳が分かる文書,及び③下級裁判所におけるその他の裁判官1160人の内訳が分かる文書は存在しません。

平成14年7月1日現在の,裁判官の号別在職状況(判事の合計として401人とあるのは,1401人の誤記と思います。)

2 裁判官の報酬月額,号別在職状況等の推移
(1)ア 平成14年7月1日以降の,裁判官の報酬月額,号別在職状況等の推移については,裁判官の報酬月額・号別在職状況等の推移表(平成14年7月1日以降)のとおりです。
イ 判事1号ないし判事3号の合計人数が減って,判事4号の人数が増えていますから,昔と異なり,任官21年目の時点,つまり,判事に再任された時点で判事3号に昇給する人はほとんどいない気がします。
 また,平成25年12月1日からの1年間,56期の昇給がなく,平成27年12月1日からの1年間,54期の昇給がなかったみたいです。
(2) 自由と正義2017年4月号28頁において,39期の田口紀子裁判官(弁護士任官者)が,「昇給は,以前に比べ遅くなり,退職金も減ってはいるものの,必要経費は少なく,生活に困ることはなく,特に不満はありません。」と書いています。
(3) 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)を見れば,修習期及び勤務地別の裁判官の推定年収が分かります。
(4) IT mediaビジネスONLINE「エリート集団の裁判所が、「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない理由 (2/5)」には,「相撲の番付表にも似た細かい裁判官のヒエラルキーが存在しているんですよね。時によって順序が少し変わることもありますが、基本的には同じ。」とか,「最高裁長官と事務総長の意を受けた最高裁判所事務総局人事局は、人事を一手に握っています。だから、いくらでも裁判官を支配することできるんですよ。」などと書いてあります。
(5) 判事特号(高裁長官と判事1号の間の報酬)は,裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年11月7日法律第116号。平成18年4月1日施行)によって廃止されました。

令和3年12月1日現在の,裁判官の号別在職状況

裁判官・検察官の給与月額表(平成31年4月1日現在)

3 裁判官の給料と指定職俸給表の比較

(1) 判事1号(令和元年度の月額は117万5000円)
ア 判事1号は,①一般職である各省庁の事務次官,並びに②特別職である内閣官房副長官補,内閣広報官,内閣情報官,内閣総理大臣補佐官,大臣補佐官,国家公務員倫理審査会委員,公正取引委員会委員,原子力規制委員会委員及び式部官長に適用されている指定職俸給表8号棒と同じです。
イ 司法行政部門では,最高裁判所事務総長について指定職俸給表8号棒が適用されています。
(2) 判事2号(令和元年度の月額は103万5000円)
ア 判事2号は,①一般職である警察庁次長,公安調査庁長官及び財務省主計局長等,並びに②特別職である個人情報保護委員会委員,公害等調整委員会委員,中央労働委員会後衛木医院,運輸安全委員会委員,総合科学技術・イノベーション会議議員,8条機関の委員長及び東宮大夫に適用されている指定職俸給表6号棒と同じです。
イ 司法行政部門では,指定職俸給表6号棒が適用されている官職はありません。
(3) 判事3号及び簡裁判事特号(令和元年度の月額は96万5000円)
ア 判事3号及び簡裁判事特号(裁判官の報酬等に関する法律附則15条)は,法務省の民事局長及び刑事局長等に適用されている指定職俸給表5号棒と同じです。
イ 司法行政部門では,指定職俸給表5号棒が適用されている官職はありません。
(4) 判事4号及び簡裁判事1号(令和元年度の月額は81万8000円)
ア 判事4号及び簡裁判事1号は,公安調査庁次長,関東及び近畿の財務局長,東京及び大阪の税関長等に適用されている指定職俸給表3号棒と同じです。
イ 司法行政部門では,最高裁判所審議官,最高裁大法廷首席書記官,最高裁家庭審議官及び東京高裁事務局次長について指定職俸給表3号棒が適用されています。
 そのため,これらのポストから簡裁判事に就任する場合,簡裁判事特号又は簡裁判事1号にならない限り,年収が減少することとなります。
(5) 判事4号及び判事5号の間に相当する指定職俸給表2号棒(令和元年度の月額は76万1000円)
ア 法務省大臣官房司法法制部長,最高検察庁事務局長,東京及び福岡の高検事務局長,東京及び大阪の矯正管区長,関東地方更生保護委員会委員長,東京拘置所長,東京及び大阪の法務局長,並びに東京,大阪,名古屋及び福岡の地方出入国在留管理局長に適用されている指定職俸給表2号棒
イ 司法行政部門では,最高裁判所小法廷首席書記官,訟廷首席書記官,裁判所職員総合研修所事務局長,東京地裁事務局長,高裁(東京高裁を除く)の事務局次長並びに東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台及び札幌の家裁の首席調査官について指定職俸給表2号棒が適用されています。
 そのため,これらのポストから簡裁判事に就任する場合,簡裁判事特号又は簡裁判事1号にならない限り,年収が減少することとなります。
ウ 高等検察庁事務局の場合,東京及び福岡の事務局長が指定職俸給表2号棒であり,大阪及び名古屋の事務局長が指定職俸給表1号棒です。
   これに対して高等裁判所事務局の場合,東京高裁の事務局次長が指定職俸給表3号棒に相当し,それ以外の高裁の事務局次長が指定職俸給表2号棒に相当しています。
(6) 判事5号及び簡裁判事2号(令和元年度の月額は70万6000円)
ア 判事5号及び簡裁判事2号は,大阪及び名古屋の高検事務局長,並びに札幌,仙台,名古屋,広島及び福岡の法務局長に適用される指定職俸給表1号棒と同じです。
イ 司法行政部門では,指定職俸給1号棒が適用されている官職はありません。
(7)ア 司法行政部門における指定職俸給表の適用状況については,指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸について(平成30年6月6日付の最高裁判所裁判官会議議決)に書いてあります。
イ 会計検査院及び人事院以外の行政機関における指定職俸給表の適用状況については,人事院HP「級別定数等に関する内閣総理大臣への意見」に書いてあります。
(8)ア 国家公務員の給与(令和4年版)15頁の指定職の給与によれば,令和4年4月1日現在,①法務省民事局長等に適用される指定職俸給表5号棒(判事3号と同じ)の在職者数は93人であり,②外局の長官等に適用される指定職俸給表6号棒(判事2号と同じ。)の在職者数は20人であり,③内閣府審議官等に適用される指定職俸給表7号棒の在職者数は31人であり,④事務次官に適用される指定職俸給表8号棒(判事1号と同じ。)の在職者数は19人です。
イ 国家公務員の給与(令和4年版)16頁の「モデル給与例(令和3年版)」によれば,①50歳の地方機関課長の年間給与は667万円であり,②35歳の本府省課長補佐の年間給与は715万5000円であり,③50歳の本府省課長の年間給与は1253万4000円であり,④本府省局長の年間給与は1765万3000円であり,⑤事務次官の年間給与は2317万5000円です。


4 元裁判官がブログで公表している判事4号どまりの実例
(1) 元裁判官である森脇淳一弁護士ブログ「裁判官の身分保障について(2)」(2018年12月31日付)には以下の記載があります。
① たしか、上野支部に着任した年であるから、多分、世間で言われているように任官18年目に判事4号俸を頂くようになってから、任官約35年半後に退官するまでずっと4号俸のままであったが、その給与額は、一番多かった時期で、月額額面90万6000円だったから(ご承知のように、裁判官の俸給額もいったん減額され、私が退官した時点では81万8000円。注1)、経営責任や、部下の不祥事について責任を負う必要がある管理職でもない(注2)、単なる「サラリーマン」としては破格の高給取りといえるであろう。
② 裁判官同士で、特に互いの俸給について話題になることはなかったし、司法修習の期(以下、「期」とはその趣旨)が下の者が部総括指名を受けたりして、私より先に3号俸になったとわかったり、同期や、期の下の者が所長や高裁の裁判長になって、2号俸や1号俸になったことがわかっても(同期同士だと、尋ねて教えてもらうこともあった)、その交友関係に何ら差は生じなかった(期が下の者からは、やはり丁寧語を使われた。私の傍若無人な性格のなせる業かもしれないが)。
(2) 35期の森脇淳一 元裁判官は,平成30年9月30日付で大阪高等裁判所判事を依願退官しました(森脇淳一弁護士ブログ「経歴」参照)。

5 裁判官の号別在職状況に関する国会での質疑応答例
(1) 平成10年10月8日の参議院法務委員会における質疑応答
○松岡滿壽男君 今回の裁判官の報酬と検察官の俸給に関する問題、私も今までの議事録をひもといてみましたら、一、二年前に、昔の仲間でありました志村哲良さんが、報酬と俸給がどうしてこう表現が違うんだという質問をしているんです。それに対して、裁判官の報酬というのは憲法に書いてある、それから検察官の俸給等は法律に書いてあるというような答弁なんです。また同じような答弁をすると、やっぱりこれはどういうことなんだ、同じものじゃないのかという素朴な疑問がある。そういうものにやはりきちっとこたえていくことが必要ではないかと思うんです。
 それで、こういう裁判官の報酬、検察官の俸給は財政民主主義の要請から法定されておって、国民の意思に基づきその代表者で構成されている国会で決定されることになっている。したがって、この給与体系の号俸別の在職状況等の情報は国民に公開されることが原則ですね。情報の公開と謙虚であるということがやっぱり司法を国民に近づける大切な条件だというふうに思うんです。
 ところが、参議院の法務委員会調査室のこの資料を見てみますると、裁判官の号俸別の在職状況については記載されていないんです。検察官の号俸別の在職状況は記載されている。最高裁判所はなぜ裁判官の号俸別の在職状況について国会に報告しないのかということが非常に疑問に思うわけでありまして、これはある面では国民の知る権利を無視するものじゃないかと思うんです。公表しない理由をひとつ明らかにしていただきたい。
 それからまた、先ほど冒頭に申し上げた報酬等と俸給等という言葉、どうしてこれがいつまでも統一されないのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
最高裁判所長官代理者(金築誠志君) それでは、私の方から裁判官の報酬の号俸別現在員の関係について申し上げますと、この号俸別現在員というものにつきましては、人事管理上の問題が実はございまして公表しておらないわけでございます。
 裁判官につきましては、各裁判官の職務の困難、責任度合いに応じまして、同期の裁判官でも報酬の号に違いが生ずることがあるわけでございますけれども、号俸別の現在員を開示いたしますと、例えば裁判官がその現在員数を見ますと、裁判官の報酬については号の刻みの数が非常に少ないものでございますから、およそ同期の裁判官に対して自分がどういうふうに、どこにいるのかということがわかってしまうわけです。
 そういう観点から、裁判官は職務上一人一人独立して判断、職権行使をする、こういう立場にあるものですから、その辺のところに無用な影響を与えてはいけないという懸念から従来公表していないわけでございます。
○松岡滿壽男君 しかし、それはわかってしまつてもやむを得ないことだと私は思います。そういう感覚から正していただきたいと思います。これ以上もう申し上げません。
(2) 平成12年3月28日の参議院法務委員会における質問
○中村敦夫君 これは最後の質問ですけれども、平成十年十月八日の参議院法務委員会で、裁判官の号俸別在職状況、つまり給与の各級別の定数についての質問について、金築人事局長は情報公開を拒否したわけです。その理由は、裁判官に無用の影響を与えるといけないという妙なものであったわけなんです。
 どの年俸に何人いるのかというのを公開するのは予算検討上不可欠のことだと思うんですね。しかも、個人名が特定できる資料ではありませんから、裁判官同士のねたみだとか心理状態だとかを資料公開拒否の理由にするのはちょっとナンセンスだというふうに思っておりました。そして、今回もその要求をしましたが、けさになって初めてこの内容の報告書をいただいて、大変びっくりすると同時にありがたいというふうに思いました。
 裁判所の透明化、民主化というのはどうしても必要なことであり、これは裁判所のためにもなると思いますので、今後もこれでストップしないでどんどん情報公開されることを期待しまして、質問を終わります。
(3) 平成13年3月16日の衆議院法務委員会における質疑応答
金築最高裁判所長官代理者 裁判官の昇給につきましては、これは最高裁の裁判官会議で決めることになっております。
 ただ、実際を申しますと、判事の四号までは、特段の長期病休等がない限りは、大体同じように上がっているというのが実情でございまして、それ以上のところについては、そのポストでありますとか仕事の状況でありますとかその他が勘案されて、これもやはり最高裁の裁判官会議で決められておりますが、この場合には、高等裁判所等の意見を十分に聞きまして、適正なものになるように努めているということでございます。
○植田委員 要するに、内規みたいなものはないわけですね、そういう基準というのは。四号までは年次で決まるけどということですね。いや答弁は結構です、そういうことでうなずいていただければ結構です。
 そこで、私自身、これは平成十一年度のデータしかないんですが、聞くところによると、裁判官の号別在職状況という、この表をいただいたんですが、これもなかなか最高裁は出したがらへんという話も聞いているんですが、ここで判一以上、いわゆる事務次官級以上の報酬をもらっているのは二百人超えておるということなんです。このいわゆる次官級以上で、私が関心を持っているのは、裁判官がたくさん報酬をもらう場合、評価というのは、どんな裁判をやってきたか、裁判官としての経験が問われるだろうと思うんですよ。
 ですから、そこで私がお伺いしたいのは、先ほどの出向とのかかわりで、実は幾つか私が個別に調べてみますと、例えば、九年裁判官をやっていました、二十九年間は出向していました、そういう方がしかるべき職について、判一以上の方でいらっしゃるという場合もあるようです。ですから、これは個々の事例になると個人が抽出されてしまうので問題だと思うわけですけれども、少なくとも判一以上の者が経験した、まさに裁判官としての実務経験数というのは平均すればどれぐらいになるのかということ、また、裁判官としての経験よりもいわゆる司法官僚の方、裁判してへん経験の方がむしろ長くて判一以上になっている人というのはどれぐらいいるのかというのはわかりますでしょうか。
金築最高裁判所長官代理者 御指摘ありましたように、判事一号の裁判官の総数が約二百人もございますので、その経歴を全部出しまして分類、分析する作業というのは結構時間がかかりまして、現在のところそういうデータは持ち合わせておりません。


6 昭和62年当時の裁判官の昇給差別に関する国会での質疑応答例
・ 坂上富男衆議院議員(日本社会党)と11期の櫻井文夫最高裁判所人事局長との間で,昭和62年3月24日の衆議院法務委員会において以下の質疑応答がありました。
○坂上委員 毎日新聞(山中注:昭和61年3月12日付のもの)によりますと、環さん(山中注:環直弥 元大阪高裁判事)は、
 「裁判官の自主的な研修組織の全国裁判官懇話会参加者や、青年法律家協会の元会員だったというだけで意識的に不当な差別を受けている」
 と分析。
  裁判官の報酬は、法で在職十年以上の判事が八ランク、十年未満の判事補が十二、簡易裁判所判事が十七の各ランクの号報酬月額を定めている。
これは去年私たちが決めたことであります。
 さてそこで、同元判事は、
 昨年一月から全国の裁判官のうち昭和三十二年任官の九期から同三十八年任官の十五期まで計十五人の裁判官に回答を求め、他の裁判官にも実情を尋ねた。
  調査の結果、月額報酬七十万九千円(昨年一月一日現在)の判事四号までは、長期の病欠などがない限り昇給差はないが、一ランク上の判事三号(月八十三万一千円)から格差が出始め、一般的には最高裁や高裁勤務者、大都市の地裁裁判長などが任官二十二年目の四月に三号になり、残りの中小都市の裁判長クラスは十月に、地裁支部や家裁勤務者も加え、同期の大半が在職二十三年目の四月には同号になるのに、いつまでたっても昇給しない人も。
  今回、具体的回答を寄せた十五人(うち三人は退官)は全国裁判官懇話会の世話人が三人、青法協元会員が十三人(一人は双方に重複)。
こういうふうなことになりまして、
 この十五人を一般状況と比較すると、全員が同期トップ組より遅れ、いずれも二十二年以上の在職なのに三号への未昇給者は三人。また昇給時期では、最も遅れたのは同期トップより七年六カ月で、五年、四年、三年遅れが各一人など。二年、一年九カ月遅れの各一人は退官前日に昇給。
 こういうふうに昇給格差が言われておりまして、大体月十二万円ぐらいの差があると言われております。
 今度は、昇格といいましょうか、昇進といいましょうか、これについても、
 また①最高裁事務総局や東京、大阪の裁判所の行政、労働部などいわゆる司法行政上の中枢に配置されていない②家裁勤務が著しく長期化し、小規模支部ばかり回らされる――など「報酬の差別は任地の差別に符合している」との実態も明らかになったのであります。そこで同元判事は、「回答を寄せた十五人はいずれも人格、識見、実務に優れており、青法協加入や懇話会活動を理由にした思想差別は明らか」と断定をされておるわけであります。したがいまして、このような司法の差別については、私は、裁判の独立の上からも大変な問題があろうかと思っております。
 きょうは質問事項が多くありますので、そう一問一答論争をするというようなことは避けたいと思いまするので、私の意見を交えながら、的確な御判断を賜りたいし、御意見も申し上げたいと思っておるわけであります。
(以下省略)
◯櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘ありましたように、環元大阪高裁判事が「法と民主主義」(山中注:民主法律家協会が出している雑誌です。)にお書きになったといいますか、講演されたものの記録でございますが、が載っておりまして、そして今読み上げられました毎日新聞の記事は、大体それに基づいて記載されているわけでございます。「法と民主主義」の記事は、大体正確に毎日新聞にも載っているものと理解いたしております。この毎日新聞には最高裁人事局長としてのコメントも載せてもらっておりますけれども、要するに私たちとしては、結論といたしまして、裁判の内容や思想、信条などによる差別というものは全くないと考えております。
 一体どういうことを基準にして差ができてくるのかということでございますが、この新聞記事にもありますように、判事の四号までといいますのは大体一律にすべての裁判官が昇給してくるわけでございます。二十年以上経過いたしますと、判事三号以上の報酬になってまいります。判事三号と申しますのは、行政職、一般職で申しますと、指定職の八号という非常に高い報酬にランクされているものでございます。したがって、その三号以上の報酬ということになってまいりますと、これはどうしても裁判官一律の昇給という考え方ではなくて、やはり各人の実績あるいは各人の責任の度合いと申しますか、そんなふうなものを考慮して決めていくということにならざるを得ないわけであります。そういった今申しましたような要素を各高裁から意見を聞き、かつ最高裁でも判断をいたしまして、各人の受けるべき報酬というのをそれぞれの昇給期に決めているということでございます。
 この環元裁判官の調査では、十五人の裁判官に回答を求めたというふうにしておられますが、私どもにはこの十五人というのがどなたであるか、これはわからないわけでありますけれども、ただ、ここに書いてあります、例えば同期の者より七年六カ月のおくれがある、あるいは五年、四年、三年のおくれがあるということ、そしてまた、その報酬の差額が相当額になるということ、これはあり得ることであろうと思います。
 例えば三号以上への昇給は一律に行われるものではなくて、各人ごとに決まっていくということになりますと、数年の昇給の開きというものは、これは当然出てまいるわけであります。それに応じまして、例えば三号から一号までの差と申しますのは、これは相当額の差になりますので、それはあるわけでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、結局それは各人の今までの仕事の実績というもの、あるいは各人の負担している責任の度合いというもの、そういったものを考慮して決められているものでありまして、それはここにありますように、青法協の元会員であった、あるいは全国裁判官懇話会に出席していた、そんなふうなことが原因でなっているものではないわけであります。私どもでは、そういう裁判官懇話会の出席者であるとか、青法協の元会員であるとか、そういうものが、一体どなたがそうであるのかというのは、これはごく一部の、例えば雑誌などにその名前を出している方を除いてはわからないわけでありますし、そういう方たちでも上がっている方が当然あるはずでございます。それからまた逆に、そういう全国裁判官懇話会には出席していない方、あるいは元青法協会員ではない方でも、やはり上がっていない方があるわけでございます。だから、そういう意味で、そのような要素というものが原因になって、そして昇給等の面で開きが出てきているというものではないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。

7 裁判官の配置定員と裁判官の号別在職状況の数字が異なる理由

(1) 平成31年4月8日付の理由説明書には以下の記載があります。
 最高裁判所において,平成30年度の高等裁判所裁判官及び地方・家庭裁判所裁判官の配置定員の合計と裁判官の号別在職状況(平成30年7月1日現在)における判事及び判事補の合計が異なる理由について説明した文書は作成しておらず,取得もしていない。
 また,本件申出が単に平成30年度の高等裁判所裁判官及び地方・家庭裁判所裁判官の配置定員の合計を裁判官の号別在職状況(平成30年7月1日現在)における判事及び判事補の合計の差の内訳を示す文書を含む趣旨であったとしても,これを作成しておらず,取得もしていない。
(2)   令和元年10月18日付の答申書
の「委員会の判断の理由」には以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,平成30年度の高等裁判所裁判官及び地方・家庭裁判所裁判官の配置定員は, 当該年度において各庁の裁判事務に従事すべき判事等の数を定めたものであり,一方,裁判官の号別在職状況(平成30年7月1日現在)は,裁判事務に従事していない判事等を含め,当該基準日現在において判事等に発令されている者の数を表したものであるとのことである。
   このことを前提に検討すれば, 司法行政事務を遂行するに当たり,そもそも概念が異なる両者の合計数に差があることにつき,その理由を説明した文書や合計数の差の内訳を示した文書をあえて作成する必要性は乏しいと考えられるから,本件開示申出文書を作成し,又は取得していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
   そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。

8 関連記事その他
(1) 裁判所HPの「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には「裁判官から法務省等の行政省庁へ出向する場合は,検事に転官しているので,裁判官定員の枠外である。」と書いてあります。
(2) 酒居会計マネーブログ ~税金・転職・起業・株式投資・ふるさと納税~「年収別 手取り金額 一覧 (年収100万円~年収1億円まで対応)」が載っています。
(3) スローニュース旧公式サイトの「不思議な裁判官人事 第4回「出る杭」として処分を受けた人 」(2022年8月10日付)には,45期の寺西和史 元裁判官の発言として「一般企業に勤めたことはないですが、裁判所は絶対に良い職場だと思います。給料もそう。部総括になると、『判事3号』となって少し違いが出ますが、それまでの『判事4号』までは、上がり方もだいたい平等なんです。私でも4号になれた。民間企業は、そこまで平等ではないですよね」と書いてあります。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
→ 最高裁判所が作成した裁判官・検察官の給与月額表を掲載しています。
・ 裁判官に対する期末手当及び勤勉手当の支給月数表
・ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
・ 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)

・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 最高裁判所が作成している,下級裁判所幹部職員名簿
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の昇給
・ 簡易裁判所判事の採用選考に関する国会答弁
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 裁判官の「報酬」,検察官の「俸給」及び国家公務員の「給与」の違い
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
・ 簡易裁判所判事の採用選考に関する国会答弁
 簡易裁判所判事選考委員会(第2回)議事録(平成19年度以降)
・ 戦前の裁判官の報酬減額の適法性に関する国会答弁
・ 裁判官の報酬減額の合憲性に関する国会答弁


指定職未満の裁判所一般職の級

目次
1 高裁及び地家裁の一般職トップのポスト
2 退官後に瑞宝小綬章をもらえる可能性がある,指定職未満の裁判所一般職の級
3 「平成31年度の級別定数の改定について」別表第1及び別表第2
4 関連記事その他
   
1 高裁及び地家裁の一般職トップのポスト
(1) 高裁の一般職トップ
ア 高裁の一般職トップは事務局次長,民事及び刑事の首席書記官であります。
イ   事務局次長は指定職俸給表3号棒(東京高裁)又は指定職俸給表2号棒(それ以外の高裁)です。
ウ   民事又は刑事の首席書記官については,行政職俸給表(一)10級ないし7級が準用されています。
エ 高裁の事務局長は裁判官が就任しています。
(2) 地裁の一般職トップ
ア 地裁の一般職トップは事務局長,民事及び刑事の首席書記官となります。
イ 東京地裁事務局長は指定職俸給表2号棒であり,それ以外のポストは行政職俸給表(一)10級ないし7級が準用されているポストです。
(3) 家裁の一般職トップ
ア 家裁の一般職トップは事務局長,首席書記官及び首席家裁調査官となります。
    令和3年4月現在,家裁の首席書記官として家事及び少年の首席書記官がいるのは,東京,横浜,さいたま及び千葉,大阪,京都及び神戸,名古屋,広島,福岡並びに札幌の11家裁です。
イ 東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台及び札幌の首席家裁調査官は指定職俸給表2号棒であり,それ以外の首席家裁調査官,並びに事務局長及び首席書記官は行政職俸給表(一)10級ないし7級が準用されているポストです。


2 退官後に瑞宝小綬章をもらえる可能性がある,指定職未満の裁判所一般職の級
(1) 平成27年度一般会計予算参照書(予算書・決算書データベースに掲載されています。)の級別内訳によれば,退官後に瑞宝小綬章をもらえる可能性がある,指定職未満の裁判所一般職の級は以下のとおりです。
① 最高裁事務総局の局の課長(10級~8級),司法研修所事務局次長(9級),裁判所職員総合研修所事務局次長(9級),最高裁判所図書館副館長(8級)
② 高裁の民事又は刑事の首次席書記官(高裁及び地裁を通じ,首席につき10級~7級,次席につき8級~6級)
③ 東京地裁以外の地裁事務局長(地家裁を通じ,10級~7級),民事又は刑事の首席書記官(高裁及び地家裁を通じ,首席につき10級~7級,次席につき8級~6級)
④ 家裁の事務局長,首席書記官,東京家裁等以外の首席家裁調査官(いずれも10級~7級)
(2) 高裁の総括主任書記官及び地家裁の次席書記官の任命権者は最高裁判所ですが,退官後に瑞宝小綬章をもらえるポストではありません。


3 「平成31年度の級別定数の改定について」別表第1及び別表第2


4 関連記事その他
(1) 全司法新聞2327号(2020年2月)には,「昇格課題については、「『退職までに誰でも5級』の枠組みが厳しくなっているのではないか。4級昇格を確実に、そして早く発令するようなとりくみも必要ではないか」(香川)との問題提起がなされました。」と書いてあります。
(2) ①東京高裁事務局次長は昭和時代から指定職であったところ,②平成2年度に大阪高裁事務局次長が指定職となり,③平成4年度に福岡高裁事務局次長が指定職となり,④平成5年度に名古屋高裁事務局次長が指定職となり,⑤平成6年度に広島高裁事務局次長が指定職となり,⑥平成7年度に仙台高裁事務局次長が指定職となり,⑦平成8年度に札幌高裁事務局次長が指定職となり,⑧平成9年度に高松高裁事務局次長が指定職となりました(最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成9年5月30日開催)における発言(全国裁判所書記官協議会会報第139号4頁)等参照)
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
・ 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿

・ 
裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 最高裁判所が作成している,下級裁判所幹部職員名簿
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 
裁判所の指定職職員
 裁判所の指定職職員の名簿(一般職)
・ 裁判所書記官の役職

・ 家庭裁判所調査官の役職


裁判官の昇給

目次
1 総論
2 裁判官の昇給等に関する公式説明
3 裁判官の昇給上申に関する開示文書(令和7年2月17日追記)
4 裁判官昇給候補者名簿の相当部分は不開示情報であること
5 昇給差別は最高裁の段階でなされているのかもしれないこと
6 判事4号で終わった元裁判官の経験談
7 関連記事その他

1 総論
   判事3号以上への昇給及び簡易裁判所判事3号以上への昇給の決定は最高裁判所裁判官会議の議決による事項であるのに対し,それ以外の報酬の決定は,最高裁判所長官の決裁による事項です(「裁判所の人事行政事務の実情について」(平成27年5月26日の最高裁判所事務総局会議資料)2頁参照)。

2  裁判官の昇給等に関する公式説明
   平成14年7月16日付の裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書における「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には,以下の記載があります。
(1) 裁判官の給与体系
   裁判官の給与体系については,裁判官の報酬等に関する法律に定められており,報酬については,判事補は12号から1号までの12の,また,判事は8号から1号及びいわゆる特号まで9の刻みとなっている。簡易裁判所判事については,17号から1号及び特号までの18の刻みとなっている。
   現在の報酬制度については,号の刻みが細かすぎて,裁判官の職務にふさわしくないのではないかという議論が従来からあるが,裁判官といえども次第に経験を積んでよ り責任の重いポストに就いていくという面があり,判事の場合であれば,10年から30数年までの経験差とそれに応じた職務の差があるので,相当数の段階は設けざるを得ないという考え方に基づくものである。また,社会全般に年功序列型賃金が行われてきた中で,一般公務員の給与体系の上に,これと連動した形で報酬額を定めることによって,報酬のレベルが確保されるとともに,社会的実情に則した報酬体系となっていたともいえる。この点については,審議会意見において,「裁判官の報酬の進級制(昇給制)について,現在の報酬の段階の簡素化を含め,その在り方について検討すべきである。」と指摘されており,今後検討すべき課題となっている。
   裁判官の報酬は,一般公務員のそれよりも高い水準にあるが,それは,裁判官の地位,職責の重要性や,超過勤務手当が支給されず,その分が報酬に組み入れられていることなどによる。
(2)  昇給の実情
     以上のように細かい刻みで昇給していくことが,裁判官の独立に影響してはならないことはいうまでもないことであり,任官後,判事4号まで(法曹資格取得 後約20年間)は,長期病休等の特別な事情がない限り,昇給ペースに差を設けていない。判事3号から上への昇給は,ポスト,評価,勤務状態等を考慮し,各高等裁判所の意見を聞いた上,最高裁判所裁判官会議において決定されている。

3 裁判官の昇給上申に関する開示文書
     令和7年2月5日現在,①判事3号からの上の昇給につき,高等裁判所の意見をどのような方法で集めることになっているかが分かる文書,及び②判事4号までの昇給につき,高等裁判所の意見をどのような方法で集めることになっているかが分かる文書として開示された文書はいずれも以下の文書です(最高裁の延長通知及び開示通知書(判事の昇給につき,高等裁判所の意見をどのような方法で集めることになっているかが分かる文書)参照)。
・ 裁判官の昇給上申について(平成19年4月17日付の最高裁人事局長の依命通達)
・ 裁判官の昇給上申に関する様式について(平成31年3月25日付の最高裁人事局長の通知)


4 裁判官昇給候補者名簿の相当部分は不開示情報であること
   最高裁判所裁判官会議の配付資料として保管されている裁判官昇給候補者名簿のうち,昇給号報,官職名,氏名,期別及び備考は不開示情報であるとした,平成28年度(最情)答申第13号(平成28年6月3日答申)には以下の記載があります。
(1) 本件対象文書(山中注:平成27年9月16日の最高裁判所裁判官会議の議事録に添付された平成27年10月1日付けの裁判官昇給候補者名簿で,最高裁判所事務総局人事局が作成したものであり,表紙のほか3枚からなるもの)を見分したところ,本件不開示部分には,具体的な昇給候補者の氏名,期別,昇給号報,官職名等が記載されていることが認められるところ,これらの情報は,昇給候補者ごとに個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものであると認められるから,これらの情報は,法5条1号に規定する不開示情報に相当する情報であり,同号ただし書イ,ロ及びハのいずれにも相当せず,取扱要綱記第3の2による部分開示も相当でない。
(2) また,本件対象文書を見分したところ,本件不開示部分に記載されている情報には,具体的に昇給する者の期別や昇給号報,その人数等の情報が含まれていることが認められるところ,そのような情報は,最高裁判所事務総長が説明するとおり,人事事務担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない性質のものであると推測される。そうすると,これらが公になると,当該情報を知った者から不当な働き掛けがされたり,裁判官の職務遂行に無用の影響を与えたりすることがあり,今後の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとする最高裁判所事務総長の説明も,十分首肯できるものである。したがって,これらの情報については,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当すると認められる。
    苦情申出人は,様々な主張をするが,いずれも上記判断を左右するものではない。
(3) したがって,本件不開示部分につき,取扱要綱記第2の2に基づき不開示としたことは,妥当である。

5 昇給差別は最高裁の段階でなされているのかもしれないこと
・ 14期の安倍晴彦裁判官が著した「犬になれなかった裁判官―司法官僚統制に抗して36年 」(平成13年5月1日出版)220頁及び221頁には以下の記載があります。
    所長を経験した、ある裁判官に聞いたところによると、昇給のシステムは、次のようになっているようである。
    まず、地・家裁所長が、それまでの号俸において一定年限がたった管内の裁判官に順番をつけて、昇給候補者のリストを作成する。次に高裁長官が管内の地・家裁から上がってきたリストを総合して順番をつけて最高裁に提出する。それを最高裁が全国分を総合して順番をつけ、順次昇給させる、ということである。普通、高裁までは極端な差別をつけることはなく、極端に問題になる差別処遇は、最高裁の段階でなされるのだそうである。場合によっては、現場の意見も無視することもある、最高裁の人事政策なので、言ってみれば、「高度の政治的判断」である。そう思わざるを得ない例が、いくつもある。宮本再任拒否についても理由を一切いわない最高裁のこと、そのような状態で、完全に「ほしいままに」給与の差別がなされてきたのである。

6 判事4号で終わった元裁判官の経験談
(1) 元裁判官である森脇淳一弁護士ブログ「裁判官の身分保障について(2)」(2018年12月31日付)には以下の記載があります。
① たしか、上野支部に着任した年であるから、多分、世間で言われているように任官18年目に判事4号俸を頂くようになってから、任官約35年半後に退官するまでずっと4号俸のままであったが、その給与額は、一番多かった時期で、月額額面90万6000円だったから(ご承知のように、裁判官の俸給額もいったん減額され、私が退官した時点では81万8000円。注1)、経営責任や、部下の不祥事について責任を負う必要がある管理職でもない(注2)、単なる「サラリーマン」としては破格の高給取りといえるであろう。
② 裁判官同士で、特に互いの俸給について話題になることはなかったし、司法修習の期(以下、「期」とはその趣旨)が下の者が部総括指名を受けたりして、私より先に3号俸になったとわかったり、同期や、期の下の者が所長や高裁の裁判長になって、2号俸や1号俸になったことがわかっても(同期同士だと、尋ねて教えてもらうこともあった)、その交友関係に何ら差は生じなかった(期が下の者からは、やはり丁寧語を使われた。私の傍若無人な性格のなせる業かもしれないが)。
(2) スローニュース旧公式サイトの「不思議な裁判官人事 第4回「出る杭」として処分を受けた人 」(2022年8月10日付)には,45期の寺西和史 元裁判官の発言として「一般企業に勤めたことはないですが、裁判所は絶対に良い職場だと思います。給料もそう。部総括になると、『判事3号』となって少し違いが出ますが、それまでの『判事4号』までは、上がり方もだいたい平等なんです。私でも4号になれた。民間企業は、そこまで平等ではないですよね」と書いてあります。

7 関連記事その他

(1) 最高裁の裁判官会議議事録を見る限り,毎年1月1日,4月1日,7月1日及び10月1日に裁判官の昇給が実施されています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)

裁判官の給料と他の国家公務員の給料との整合性に関する答弁例

目次
1 平成13年9月25日付の内閣答弁書の記載
2 平成22年11月16日の衆議院法務委員会における国会答弁
3 関連記事

1 平成13年9月25日付の内閣答弁書の記載
   平成13年9月25日付の「衆議院議員保坂展人君提出死刑制度に関する質問に対する答弁書」における記載
① 裁判官は、憲法の定める分立している三権のうち司法権を担うものであり、その良心に従い独立して憲法判断を始めとする職権を行使するものであることから、憲法は裁判官につき相当額の報酬を受けることを保障している。
   検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求するなどの検察権を行使する等、その職務は、司法権の適正円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有し、準司法官的な性格を有するものであり、その職責については、他の一般政府職員とは異なった著しい特殊性が認められ、その職責及びその準司法官的性格にかんがみれば、裁判官に対する待遇に準じた待遇を受けるべきものである。
   お尋ねの裁判官及び検察官の給与の額については、それぞれの職務と責任の特殊性に照らしてふさわしいものであること、超過勤務手当の支給がないこと、その重責にふさわしい適材確保の必要性等も満たすべきものであること等を考慮しつつ、民間企業の給与水準とのバランスにも配慮して、裁判官の報酬については裁判官の報酬等に関する法律によって、検察官の俸給については検察官の俸給等に関する法律によってそれぞれ定められていると理解しており、それぞれの給与の額は適正・妥当なものであると考えている。
② 検察官のうち、事務次官と同額以上の給与を受けている者は、検事総長、次長検事、検事長、最高検察庁の検事、検事正などであり、また、裁判官のうち、事務次官と同額以上の給与を受けている者は、最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、高等裁判所の部を総括する判事、地方裁判所長、家庭裁判所長などであるところ、これらの検察官及び裁判官は、いずれも重大な職責を担っており、事務次官と同額以上の給与を受けることは、相当な待遇であると考えている。
2 平成22年11月16日の衆議院法務委員会における国会答弁
(1) 29期の大谷直人最高裁判所事務総局人事局長の答弁
① 判事一号以上の報酬を受けている裁判官ですが、最高裁判所の長官、それから最高裁判所判事、東京高等裁判所長官、その他の高等裁判所長官及び判事一号の裁判官ということでございまして、その人数及びそれぞれの報酬の年額でございますが、最高裁の長官が約四千万円、それから最高裁判所判事が、これは十四人の方々ですが、約二千九百万円、東京高等裁判所長官が約二千八百万円、その他の高等裁判所長官が七名の方、約二千六百万円、そして判事一号が百八十五人で約二千三百万円ということになっております。
② これまで我が国におきまして、裁判官の労働基本権ということが問題となった事例がございませんで、法令の解釈にかかわるという事柄でもありますので、私の立場から意見を述べることは差し控えさせていただきたいと思うわけです。
   従来から、裁判官につきましては、憲法によって報酬あるいは身分といったものについて強い保障を受けるとともに、職務の執行についてもその独立性が強く保障されているわけでございます。一般の勤労者のように、使用者と対等の立場に立って経済的地位の向上あるいは労働条件の改善を図る必要がない、こういった理由から、裁判官に、労働組合を結成し、またはこれに加盟する権利は認められない、このように理解されてきたものと承知しております。
(2) 稲田伸夫法務省大臣官房長の答弁
① 平成二十二年七月一日現在の数字でございますが、事務次官より高額の俸給を受けている検察官は、検事総長あるいは検事長などの認証官が十名でございます。それから、事務次官と同額の俸給を受けている検察官は、検事正あるいは高検の次席検事など五十九名であると承知しておるところでございます。
   なお、それぞれの俸給の年額でございますが、検事総長につきましては約二千九百万、次長検事及び東京高検検事長以外の検事長が約二千四百万、東京高検の検事長が二千六百万、それから一号俸の検事正等が約二千三百万円というところでございます。
② 御指摘ございましたように、法務省には、局長クラス以上の役職に、検察官出身者でありますとかあるいは裁判官の出身の方が転官して来ていただいているという実情にございます。
   まずその人数から申し上げますと、法務本省の内部部局で申し上げますと、七月一日現在で局長以上の役職についているのは裁判官出身者二名、それから検察官出身者六名でございます。
   次に、俸給の比較というところでございますが、これは同じポストに検察官以外の一般職職員がついた場合との格差ということで、やや、こういう言い方はあれですけれども、そうしてみればという話なものでございますので、なかなか比較しにくいところがございます。給与の場合、どうしてもそれぞれの者が背負ってきているものというようなものもございますし、俸給体系自体が異なりますので、単純に比較は難しいということを前提に御説明をさせていただきたいと思うんですが、局長級の一般職の俸給としては、通常、指定職の俸給表の四号あるいは五号ぐらいだろうと言われております。
   検察官につきましても、局長級のポストにだれがつくかによって号俸は必ずしも一定ではございませんが、高い方で仮に比較するといたしますと、検事一号と指定職五号とでは月収で二十万近い差があるというのが実情でございます。(大口委員「年収では」と呼ぶ)年収は、済みません、ちょっと今、手元にそのあれがございませんが、その倍数を掛けるぐらいの数になると思います。十六ぐらい掛ければいいと思いますけれども。
③ 御存じのとおりでございますが、法務省の所掌事務のかなりの部分と申し上げますと、司法制度に関する法令でありますとか民事及び刑事の基本法令、これらの立案、それから訟務を中心といたしました訴訟事項の追行、あるいは検察に関すること、あるいは検察の周辺といいますか刑事司法全体にかかわるものなど、そういう意味では、専門的な法律的知識、経験を要する事務が他省庁に比べてかなり多いというふうに認識しております。これらの事務を適正に行うためには、どうしても法律専門家としての実務経験を有する検察官や裁判官を法務省において任用する必要があるというのが、いわば必要性というか実態でございます。
   他方で、裁判官出身者を含めて、検事、これは検察庁にいる検事の職にある者を法務事務官という形で転官させるということなりますと、検察官の身分保障との関係で、人事行政上非常に難しくなるというようなこともございまして、法令上も、一部の検事を検事のまま法務省の職員に充てることができるというふうにされております。そこで、給与につきましても、現在御審議いただいております検察官の俸給等に関する法律が適用されるというようなことになっております。
   これは、検察庁法二十五条によりまして、検察官につきましては、その意に反して官を失うことがなく、また俸給を減額されることはないという身分保障が定められているというところ、今申し上げましたような事務官に転官させるということになりますと、一時的であれ検事の身分を失うというようなこともございますので、そのような点からなかなか実態上は難しいということもございまして、現在、申し上げるような検察官の俸給法の適用のままというふうにしております。また、実際上も、このような形で行えないと、なかなか異動が難しいというような実態にあるということでございます。
(3) 35期の後藤博法務省大臣官房司法法制部長の答弁
   裁判官は、特別職の国家公務員の中でも、司法府に属し、独立してその職権を行使するなど、その地位や職責に特殊性がございます。また、憲法上、裁判官の報酬は在任中これを減額することはできないという規定も設けられておるところであります。このような特殊性から、一般職の国家公務員はもとより、特別職の国家公務員の給与法とも別に裁判官報酬法が定められております。
   それから、検察官でございますけれども、検察官は、司法権の発動を促し、その適正円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を担う準司法官的性格を有する特殊な官職であるとされております。また検察官は、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経る者でございます。これらの点などから、試験、任免、身分保障等についても検察庁法に特例が定められておるところであります。このように、検察官の職務等の特殊性から、検察官の給与については、一般の政府職員とは別個に、裁判官の給与に準じて検察官俸給表が制定されているものと承知しております。

3 関連記事
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の号別在職状況