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指定職を除く裁判所職員の級別定数――令和8年度予算と主要官職(AIリライト)

第1 この記事で扱う「級別定数」

1 対象とする職員

本記事は,令和8年度予算に基づき,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員について,行政職俸給表(一)の級別定数と主要官職の関係を整理するものである。指定職俸給表と行政職俸給表(一)は別の俸給表であり,「指定職未満」は厳密な制度用語ではないため,本記事では「指定職を除く裁判所職員」と表現する。

2 裁判所職員は国家公務員法上の特別職であること

国家公務員法2条3項13号は,裁判官及びその他の裁判所職員を特別職とする。他方,裁判所職員臨時措置法は,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の給与等について,一般職の職員の給与に関する法律の規定を準用する。このため,裁判所の予算書等では「一般職の俸給表の準用職員」として整理されているが,国家公務員法上の一般職という意味ではない。

3 行政職の「級」と指定職の「号俸」

一般職の職員の給与に関する法律6条3項は,職員の職務を,その複雑,困難及び責任の度に基づいて職務の級に分類し,指定職俸給表の適用職員については同表の号俸に分類すると定める。したがって,行政職俸給表(一)の1級から10級までと,指定職俸給表の号俸とは別の分類である。また,行政職の給与月額は級だけでなく,その級の中の号俸によって決まる。

第2 令和8年度の裁判所職員の予算定員

1 裁判所全体の俸給表別定員

財務省の令和8年度一般会計予算書では,一般職の俸給表の準用職員は2万1517人である。その内訳は次のとおりであり,指定職俸給表と行政職俸給表(一)の定員だけを合計して裁判所職員全体と扱うことはできない。

適用又は準用を受ける俸給表予算定員
指定職俸給表44人
行政職俸給表(一)2万1132人
行政職俸給表(二)289人
医療職俸給表(一)11人
医療職俸給表(三)41人
合計2万1517人

行政職俸給表(一)2万1132人の級別内訳は,10級34人,9級143人,8級264人,7級532人,6級2380人,5級4331人,4級5010人,3級4817人,2級2077人,1級1544人である。裁判所職員について11級の予算定員は置かれていない。

2 最高裁判所と下級裁判所の内訳

行政職俸給表(一)の定員は,最高裁判所が1069人,下級裁判所が2万63人である。指定職は,最高裁判所が20人,下級裁判所が24人である。

組織指定職俸給表行政職俸給表(一)
最高裁判所20人1069人
下級裁判所24人2万63人
合計44人2万1132人

第3 下級裁判所の主要官職と級

1 行政職俸給表(一)の主要官職

令和8年度予算書に掲げられた下級裁判所の主要官職について,行政職俸給表(一)の定数を級別に整理すると次のとおりである。これは当該官職群に配分された予算定員であり,特定の裁判所又は特定の職員の級を示すものではない。

官職名定員級別内訳級の範囲
事務局長70人10級15人,9級36人,8級19人10級~8級
事務局次長107人8級17人,7級90人8級~7級
首席書記官128人10級9人,9級47人,8級72人10級~8級
次席書記官238人8級48人,7級190人8級~7級
主任書記官2485人7級44人,6級1038人,5級1403人7級~5級
書記官6979人5級1545人,4級3095人,3級1671人,2級668人5級~2級
首席家庭裁判所調査官43人10級2人,9級22人,8級16人,7級3人10級~7級
次席家庭裁判所調査官82人8級15人,7級67人8級~7級

2 下級裁判所の指定職24人

下級裁判所の指定職24人は,事務局長9人,事務局次長8人及び首席家庭裁判所調査官7人である。事務局長9人のうち8人は,予算書の注記上,裁判官又は判事補をもって充てることができる内数とされている。したがって,前項の行政職俸給表(一)の事務局長70人又は首席家庭裁判所調査官43人には,指定職の人数は含まれない。

第4 高裁・地裁・家裁の主要官職

1 高等裁判所

大法廷首席書記官等に関する規則3条は,高等裁判所に民事首席書記官及び刑事首席書記官を置くと定める。令和8年度予算では,下級裁判所の指定職として事務局次長8人が計上されている。他方,首席書記官について予算書が示す10級~8級という範囲は,下級裁判所全体の128人に関するものであり,高裁の民事・刑事首席書記官だけの級を公表したものではない。

2 地方裁判所

最高裁判所が指定する地方裁判所には民事首席書記官及び刑事首席書記官を置き,その他の地方裁判所には首席書記官を置く。令和8年度予算では,指定職の事務局長9人と,行政職俸給表(一)の事務局長70人が別々に計上されているため,個別庁の事務局長がどちらの俸給表の適用を受けるかは,予算書の人数だけから一律には決められない。

3 家庭裁判所

家事首席書記官及び少年首席書記官を分けて置く家庭裁判所は,東京,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,名古屋,広島,福岡及び札幌の11庁である。その他の家庭裁判所には首席書記官を置く。令和8年度予算では,首席家庭裁判所調査官について指定職7人と行政職俸給表(一)43人を計上しているが,個々の家庭裁判所への配分は予算書に記載されていない。

4 事務局次長の複数配置と兼務

令和8年2月20日付けの最高裁判所事務総長通知は,複数の事務局次長を置く地方裁判所及び家庭裁判所と,その員数を定めている。同通知には,次席書記官が事務局次長を兼ねる場合や,対応する地方裁判所又は家庭裁判所の事務局次長が兼ねる場合も記載されている。官職名,職制上の段階及び俸給表上の級は別の情報であり,役職名だけから一つの級を機械的に当てはめることはできない。

第5 級別定数表の読み方

1 年度末の予算定員であること

令和8年度予算書の備考は,予算定員及び級別内訳が年度末の人員を記載したものであることを明記する。また,職名は,必要に応じて代表的な職名又は包括的な職名を記載している。このため,級別定数表は職員名簿又は個別官職の給与一覧ではない。

2 個々の官職との対応資料は公表されていないこと

令和4年度(最情)答申第30号によれば,級別定数表の職名別予算定員と裁判所データブックの職種別定員との対応が分かる文書は作成又は取得されていない。同答申第32号も,級別定数表の職名は複数の官職を総称する代表的又は包括的な名称であり,具体的な職務内容は個々の官職の設置の定めと関連付けられていると説明する。したがって,「特定の裁判所の事務局長は必ず9級である」といった読み方はできない。

第6 過去の指定職号俸と級別定数

1 平成30年の指定職号俸

平成30年6月6日付け最高裁判所裁判官会議議決は,同年7月1日から,東京高裁事務局次長を指定職俸給表3号俸,その他の高裁事務局次長,東京地裁事務局長及び指定された7家裁の首席家庭裁判所調査官等を2号俸とした。この議決は平成30年当時の官職別号俸を確認できる資料であるが,令和8年現在の官職別号俸を示す公開資料として用いることはできない。

2 平成31年度級別定数表

「平成31年度の級別定数の改定について」の別表第1及び別表第2は,過年度の級別定数を確認できる資料である。次の画像は旧記事に掲載されていたものであり,現行値ではなく,平成31年度当時の資料として参照する必要がある。

平成31年度級別定数表のうち最高裁判所分
平成31年度級別定数表のうち下級裁判所分

3 「退職までに誰でも5級」という問題提起

全司法新聞2327号(2020年2月)は,昇格問題に関して,「退職までに誰でも5級」という枠組みが厳しくなっているのではないかとの組合内の問題提起を紹介している。これは労働組合における処遇改善の要求又は評価であり,5級への昇格を保障する法令上の基準ではない。令和8年度の行政職俸給表(一)における5級の定数は4331人である。

第7 主要官職と瑞宝小綬章の関係

1 官職だけで受章が決まるものではないこと

内閣府の「勲章の授与基準」は,瑞宝章について,職務の複雑度,困難度及び責任の程度を評価するとともに,勤務成績その他の経歴を総合的に考慮する仕組みを示している。一般行政事務では本省課長相当職が瑞宝小綬章の標準に含まれ得るが,特定の官職又は級への在職だけで受章が決まるものではない。

2 公開受章者名簿で確認できる例

令和7年春,令和7年秋及び令和8年春の受章者名簿では,高裁又は地裁の首席書記官,地裁事務局長及び家裁事務局長を最終官職とする瑞宝小綬章の受章例を確認できる。これは公開名簿上の実例であり,同じ官職に在職した者が一律に受章すること,又は次席書記官等が受章対象から除外されることを意味しない。

第8 関連記事

司法行政部門と裁判所書記官等の役職の対応関係――職制上の段階・号俸・級別定数(AIリライト)は,職制上の段階,指定職号俸,級別定数及び叙勲の違いを詳しく説明している。
裁判所の指定職職員は,指定職の官職を扱っている。
級別定数の改定に関する文書は,年度ごとの級別定数改定資料を掲載している。
最高裁判所が作成している,下級裁判所幹部職員名簿は,個別の幹部職員を確認するための資料である。
裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場は,裁判所関係者の受章例をまとめている。

出典・参考資料

1 法令

国家公務員法(昭和22年法律第120号)2条3項13号(e-Gov法令検索)
裁判所職員臨時措置法(昭和26年法律第299号)本則(e-Gov法令検索)
一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)6条(e-Gov法令検索)

2 予算・裁判所組織・情報公開答申

財務省「令和8年度一般会計予算」裁判所所管「令和8年度裁判所職員予算定員及び俸給額表」306頁~310頁(PDF316頁~320頁)
裁判所「令和8年度予算」
裁判所「大法廷首席書記官等に関する規則」3条
裁判所「家事の首席書記官及び少年の首席書記官を置く家庭裁判所の指定について」及び同指定の取消しについて
裁判所「複数の事務局次長を置く裁判所の指定及び事務局次長の員数の定めについて」(令和8年2月20日付け通知)
令和4年度(最情)答申第30号及び令和4年度(最情)答申第32号(最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会)

3 指定職・叙勲・過年度資料

最高裁判所裁判官会議「指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸について」(平成30年6月6日付け議決)
内閣府「勲章の授与基準」及び勲章・褒章制度の概要
③内閣府「令和7年春の叙勲」,「令和7年秋の叙勲」及び「令和8年春の叙勲
全司法新聞2327号(2020年2月)

4 文献

①宇賀克也『行政法概説Ⅲ〔第5版〕』(有斐閣,2019年)373頁~373頁
②泉徳治ほか『一歩前へ出る司法――泉徳治元最高裁判事に聞く』(日本評論社,2017年)214頁~214頁