第1 この記事の対象と結論
本問は,隣室からの秘密録音と,約束による自白を端緒として得た物証の証拠能力,さらに二つの書面の伝聞性を扱う。
処分の性質と利用場面を分け,それぞれの判断を具体的事実へつなぐことが重要である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 平成27年司法試験・刑事系科目第2問(刑事訴訟法) |
| 基準時 | 平成27年の出題を対象とし,試験当時の法令を前提とする。現行制度への一般化はしない。 |
| 問題 | 法務省の問題PDFの5頁~8頁(第2問)を読んだ。第1問は対象外である。 |
| 出題の趣旨 | 法務省の出題の趣旨PDFの15頁(第2問の見出し)から19頁(選択科目の直前)までを読んだ。 |
| 採点実感 | 法務省の採点実感PDFの7頁~18頁(刑事系科目第2問)を読んだ。採点方針,答案の評価区分及び法科大学院教育への意見を含む。 |
| 判例・法令 | 判例原文と試験当時の法令の確認範囲は第7に示す。 |
| 評価項目 | 43項目。重み5は6項目。表示上の重みの合計163(記事独自の整理であり,公式配点ではない) |
| 答案の分量 | 3367字(見出し・空白・改行を含む。5000字以内) |
第4で評価項目を確認し,第5で答案と対応表を読むことができる。
出典ごとの確認範囲と限界は第7に示す。
本答案は①を適法な任意捜査,②を検証に当たる強制処分として令状欠缺により違法とする。
収集過程による両物証の排除は否定し,文書は非伝聞として採用,メモは伝聞例外の特信情況の立証が現状では足りないとする。
これは公式解答を示すものではなく,公式資料を踏まえた一つの答案構成である。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
公式資料の記述を,一つずつ照合できる要求と注意に整理した。
両資料の根拠を別々に示し,一方にない場合は「記載なし」,全体の規律に関する記述から間接に導く場合は「間接」とした。
資料の所在はPDFの頁で示す。
注意も重要性を個別に判断し,重みを一律にしていない。
許容される別構成や,特定の構成を選んだときだけ必要となる項目を含む。
すべてを一つの答案に累積して書く趣旨ではない。
通常項目と同じ失敗を指摘する注意を,別枠の二重減点に使わない。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は,答案の骨格又は結論を左右する分類・主要な判断を扱う。
重み4は主要な理由付け・適用である。
重み3は通常押さえる法的処理・事情の評価,重み2は論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意,重み1は補充的な引用・記述範囲の確認とする。
本件では重み1に該当する項目はなく,件数を揃えるために設けてはいない。
資料の掲載回数や出題の趣旨・採点実感の双方にあることだけでは重みを決めない。
3 本問で留意した点
強制処分の認定から違法の結論へ飛ばず,既存の法定処分としての性質と必要な手続を確認する。
自白についても,甲自身の公判証拠,乙に関する令状資料,丙公判の物証を分ける。
メモについては,丙の発言とそれを記録した乙の供述を別々に捉える。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
特殊詐欺の現金受取役である甲が逮捕され,警察官は乙の隣室を賃借した。
①ではベランダから通常聞こえる乙の肉声を約3分録音した。
②では壁に耳を当てても聞こえない室内音声を装置で増幅し,約10時間録音した。
検察官Rの不起訴の約束を伝えられた甲は自白した。
その供述を契機に乙が逮捕され,乙の供述から別の場所Hが判明し,令状による捜索で詐欺マニュアルと乙の手書きメモが押収された。
マニュアルには乙の筆跡の被害者の番号と丙の指紋があり,メモには丙からの電話と詐欺方法の変更等が記されていた。
丙の公判で丙側は証拠請求に同意せず,乙はメモの意味等を語らない。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 答えるべき到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Pらの①②の録音 | それぞれの手段・対象・時間を区別 | 強制処分性と適用規律を踏まえた合法性 |
| 2 | 丙公判の文書・メモ | 証拠収集上の問題を検討し,具体的な要証事実を想定する | 各物証の証拠能力。共謀が認められるか自体とは区別 |
第4 評価項目と重み
1 設問1・判断枠組み
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 197条1項の解釈として強制処分と任意処分を区別し,強制処分法定主義と令状主義を混同しない。 | 5 | 15頁「強制処分法定主義」 | 9頁「法定主義と令状主義」 |
| 2 | 権利・利益の重要性を基準とする理由を,既存の強制処分や憲法上の保護との比較から説明する。 | 4 | 記載なし | 9頁「現に刑事訴訟法が定めている強制処分との対比」 |
| 3 | 秘密の捜査で対象者が認識していないことと,意思の制圧又は反意がないことを区別して検討する。 | 4 | 16頁「現実に乙の明示の意思に反し」 | 9頁「現実に乙の明示の意思に反し」 |
| 4 | 話者と録音者の関係を,会話当事者による無断録音又は一方当事者の同意を得た録音と取り違えない。 | 3 | 記載なし | 11頁「会話の一方当事者」 |
2 設問1・①の録音
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | ①で守られる私生活上の利益を具体化し,通常の聴取と録音による記録・保存の違いも評価する。 | 4 | 16頁「被制約利益の内容」 | 10頁「機械で録音されて記録されることとの違い」 |
| 6 | 任意捜査の限界を,被侵害利益と捜査の必要性との合理的権衡によって判断する枠組みとして示す。 | 4 | 16頁「合理的権衡」 | 10頁「合理的権衡」 |
| 7 | ①の強制処分性では利益が放棄されたとしながら,任意捜査の限界では同じ利益の侵害を無説明に認める矛盾を避ける。 | 3 | 記載なし | 10頁「論理的に矛盾」 |
| 8 | ①のベランダでの可聴性と,Pらが隣室を適法に賃借・占有していた事実を,保護領域への制約の評価に結び付ける。 | 3 | 16頁「適法に賃借・引渡し」 | 9頁「会話の行われた場所」 |
| 9 | ①が約3分間の乙の片側の声だけを録音したことを,取得情報の範囲と侵害程度の限定事情として評価する。 | 3 | 15頁「約3分間」 | 7頁「約3分間」 |
| 10 | ①の具体的必要性を,犯罪の性質・重大性,乙への嫌疑及び共犯関係を解明する必要に即して評価する。 | 4 | 16頁「対象となる犯罪の性質・重大性」 | 10頁「より具体的な必要性」 |
| 11 | 会話が直ちに録音・保全しなければ消失することを,①の録音の具体的緊急性として評価する。 | 4 | 記載なし | 10頁「会話は直ちに録音して保全しなければ消失してしまうこと」 |
| 12 | ①の取得情報と侵害程度,具体的必要性を比較し,許容限度について理由付きの結論を示す。 | 4 | 16頁「合理的権衡を吟味」 | 10頁「それらを総合して結論」 |
3 設問1・②の聴取録音
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 13 | ②の不可聴の居室内音声を機器で増幅し10時間取得する行為を,住居内の私生活の保護と比較して強制処分性を判断する。 | 5 | 17頁「住居」 | 11頁「住居」 |
| 14 | ②を強制処分とする場合,検証の意義・性質から検証該当性を理由付け,既存の法定類型に位置付け得るかを検討する。 | 5 | 17頁「検証」 | 11頁「検証」 |
| 15 | ②の検証該当性について採った構成に応じ,法定根拠の欠如か令状手続の欠如かを区別して適法性の結論を導く。 | 4 | 17頁「いずれの結論をとるにせよ」 | 11頁「令状(検証許可状)」 |
| 16 | ②を任意処分とする構成では,居室内の情報侵害の重要性を評価した上で,必要性だけに偏らず許容限度を検討する。 | 4 | 記載なし | 11頁「任意処分としつつ」 |
| 17 | ①②を電気通信の途中の傍受と誤認し,通信傍受法の適用の検討に答案を費やさない。 | 2 | 記載なし | 11頁「この点を論ずることは必要ない」 |
4 設問2前段・証拠収集
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 18 | 両押収物を,甲供述から乙の逮捕・取調べと乙供述を経て得られた派生証拠として位置付ける。 | 4 | 17頁「そこから派生して得られた証拠」 | 11頁「派生して得られた」 |
| 19 | 起訴不起訴の権限をもつRの不起訴約束がQを通じて伝えられ,甲が利益を期待して自白したことから任意性を検討する。 | 4 | 17頁「典型的な不任意自白」 | 12頁「起訴不起訴の決定権」 |
| 20 | 不任意自白を排除する根拠・趣旨を示し,不任意性と供述獲得手続の違法性を説明なく直結させない。 | 5 | 18頁「証拠能力が否定される趣旨いかん」 | 12頁「直結させ」 |
| 21 | 甲本人に対する公判自白としての利用と,乙の逮捕状請求で第三者供述として用いる場面を区別する。 | 4 | 18頁「甲自身ではなく」 | 12頁「第三者の供述」 |
| 22 | 虚偽排除の観点を採る場合,自白を排除する目的がその後の客観的な派生証拠にも及ぶかを理由付ける。 | 4 | 18頁「虚偽排除の観点」 | 13頁「正しい事実認定の確保」 |
| 23 | 虚偽のおそれを逮捕の疎明資料の適格性や逮捕状の有効性へ問題化する構成では,その法的効果まで説明する。 | 2 | 記載なし | 13頁「そのようにして発付された逮捕状は有効か」 |
| 24 | 派生証拠について,違法の承継又は先行違法と関連性の総合評価のいずれかの判断枠組みを示す。 | 4 | 18頁「総合して判断する」 | 13頁「適切な判断枠組み」 |
| 25 | 甲供述が乙の逮捕・身柄拘束中の取調べを可能にした過程から,先行手続と押収物収集との関連性を具体的に評価する。 | 4 | 18頁「関連性の程度」 | 13頁「その逮捕後の身柄拘束中」 |
| 26 | 乙の任意性のある自白の介在が,先行手続と押収物との関連性を希釈する意味を具体的に説明する。 | 4 | 18頁「乙の任意性のある自白」 | 13頁「乙の任意性のある自白」 |
| 27 | 乙逮捕状とHの捜索差押許可状の二度の令状審査・発付が,関連性の判断で果たす意味を説明する。 | 4 | 18頁「裁判官による令状審査・発付」 | 13頁「二度の令状審査・発付」 |
| 28 | 先行違法の内容・程度,関連性と希釈要因,将来の違法捜査抑制を採用枠組みに即して評価し,両押収物の証拠能力の結論へつなぐ。 | 4 | 18頁「結論を導くに至った思考過程」 | 13頁「希釈要因」 |
| 29 | 甲の供述と乙の供述を,同一人による反復自白の問題として処理しない。 | 3 | 記載なし | 14頁「反復自白」 |
5 設問2後段・伝聞法則
6 設問2後段・本件文書
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | 本件文書を犯行計画の存在と丙の関与を示す状況証拠として用いる具体的な要証事実を示し,記載内容の真実性を要しないことから非伝聞とする。 | 5 | 19頁「書面の存在や記載自体」 | 15頁「その存在自体が謀議の存在」 |
| 32 | 文書の記載と実行態様の符合,乙によるV番号の付記及び丙の指紋を,共謀を推認する具体的事情として結び付ける。 | 4 | 18頁「丙の指紋」 | 15頁「丙の指紋」 |
| 33 | 本件文書がマニュアルであるという呼称だけで,具体的な要証事実の検討なしに非伝聞と結論付けない。 | 3 | 記載なし | 15頁「犯行マニュアルであるので」 |
7 設問2後段・本件メモ
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 34 | 本件メモについて,丙が乙に電話で指示した事実を要証事実とし,乙の知覚・記憶・表現叙述の正確性を要する供述証拠として伝聞と判断する。 | 5 | 19頁「誰の意思内容」 | 15頁「乙の供述書の性質」 |
| 35 | 乙の心理状態を立証するというだけで,丙の関与への推論上の意味を示さずメモを非伝聞としない。 | 4 | 記載なし | 15頁「乙の心理」 |
| 36 | 聞いた内容をそのまま筆記したとの理由だけで,誤りが混入しないとしてメモを非伝聞としない。 | 3 | 記載なし | 15頁「そのまま書き取った」 |
| 37 | 本件メモを被告人丙以外の乙の供述書と位置付け,321条1項3号の伝聞例外を検討する。 | 4 | 19頁「第321条第1項各号」 | 15頁「被告人(丙)以外の者(乙)の供述書」 |
| 38 | 321条1項3号の供述不能,証拠の不可欠性,絶対的特信情況を,本件の具体的事実に即して検討する。 | 4 | 記載なし | 15頁「絶対的特信情況」 |
| 39 | メモが伝聞証拠であることだけで直ちに証拠能力を否定し,伝聞例外の検討を省略しない。 | 3 | 19頁「伝聞例外の要件」 | 15頁「直ちに証拠能力が認められない」 |
| 40 | 写しが検面調書に添付されたことや丙の発言が記載されたことだけで,誰の意思を表示する書面かを検討せず2号書面・被告人供述の規定へ置き換えない。 | 3 | 19頁「誰の意思内容」 | 15頁「検察官調書に添付」 |
8 設問2・共謀立証の前提に関する注意
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 41 | 共謀立証という検察官の狙い自体の当否へ脱線せず,各書面で立証する具体的な間接事実を検討する。 | 2 | 記載なし | 14頁「ほとんど意味のない作業」 |
9 設問1・①を強制処分とする場合
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 42 | ①を強制処分とする場合,法定された既存の強制処分の類型に該当するかを,検証の意義・性質と電話傍受判例の射程を踏まえて検討する。 | 4 | 16頁「法定された既存の強制処分の類型に該当するか否かを検討した上で」 | 間接:9頁「法定主義と令状主義」 |
| 43 | ①を強制処分とする場合,採った法定類型の根拠規定と要件の充足を確認して適法性の結論へつなぐ。 | 4 | 16頁「刑事訴訟法上の根拠規定が存在し,かつ,その定める要件を満たしていなければ,違法となる。」 | 間接:9頁「法定主義と令状主義」 |
10 重みの分布
| 重み | 件数 | 合計 |
|---|---|---|
| 1 | 0 | 0 |
| 2 | 3 | 6 |
| 3 | 9 | 27 |
| 4 | 25 | 100 |
| 5 | 6 | 30 |
| 計 | 43 | 163 |
総項目数は43,重み合計は163である。
重み5は,1(強制・任意と適用規律),13(②の重大な利益侵害),14(②の検証等としての性質),20(自白排除根拠と取得違法),31(文書の非伝聞利用),34(メモを構成する乙の供述の伝聞性)である。
いずれも後続の結論を支える判断の骨格である。
14は検証に含める結論だけを強制する趣旨ではなく,採用する類型の性質を論じる要求である。
42・43は①を強制処分とする場合だけの主要な類型論・要件適用であり,任意処分とする答案へ累積しない。
採点実感欄は全体の法的規律に関する要求からの間接対応であって,①の検証論を明示したものではない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
平成27年の問題文の事実と試験当時の法令を前提とする。
刑訴法の条番号は,法律名を省略することがある。
以下は検証該当性を肯定する構成を選んだ一例である。
物証収集は供述の自由を侵害する取得違法の側面も含めて検討する。
メモの特信情況の結論は,作成日や即時性を補わない評価である。
答案の字数は3367字(見出し・空白・改行を含む)である。
2 答案
第1 設問1
1 判断の枠組み
刑訴法197条1項ただし書は,強制処分について特別の根拠規定を要求する。
強制処分とは,有形力の行使に限らず,相手方の意思に反して重要な権利・利益を実質的に制約する処分をいう。
既存の強制処分と同程度に重要な利益を制約する場合には,捜査官の判断だけでなく,法律による特別の統制が必要だからである。
秘密の処分でも,認識していれば通常拒絶する行為は合理的に推認される意思に反し,現実の抵抗がないだけで任意処分にはならない。
強制処分法定主義と,法定の強制処分について裁判官の事前審査を要求する令状主義は区別すべきである。
また,任意処分も同項本文により無制限に許されず,具体的な捜査の必要性・緊急性と被侵害利益の内容・程度との合理的権衡を保つ相当な限度に限られる。
2 ①の録音
乙の会話には私生活上の秘密として保護される利益があり,その場で聞くことより,録音して反復利用できる状態にすることの侵害は大きい。
しかし,乙は隣室ベランダに通常の聴力で聞こえる声で話している。
Pらは502号室を適法に賃借して引渡しを受け,そのベランダで聞いたのであって,乙の閉鎖した生活領域へ特別の機器で入り込んだわけではない。
約3分間の乙の肉声だけを録音し,通話相手の声は取得していない。
秘密の全面的な放棄とはいえないが,制約の程度は小さく,重要な利益の実質的制約には至らないから,任意処分である。
甲が否認する一方,乙には甲との頻繁な通話,逮捕後の発信,外出の少なさや周囲を警戒する様子があり,共犯関与の嫌疑がある。
組織的な詐欺の共犯者と役割を解明する必要性は高い。
偶然始まった会話はその場を逃せば失われ,別の機会に同じ内容を確保できる保証もない。
短時間・片方の肉声に限定された録音であることと合わせれば,記録保存による不利益を考慮しても合理的権衡を保っており,①は適法である。
3 ②の聴取・録音
②は,壁に耳を当てても聞こえない乙の居室内の音声を,壁の振動を増幅する装置で初めて鮮明にし,約10時間にわたって広く録音したものである。
装置が隣室側にあっても,通常他人に知られない住居内部の生活を把握する侵害は,憲法35条の住居捜索に比すべき重大なものである。
乙がこれを拒絶する意思も合理的に推認できるから,強制処分である。
その性質は,機器を補助として五官により室内音声という状況を認識・保全する検証に当たり,刑訴法218条1項による令状を要する。
継続的な録音という方法も含め,対象・範囲について裁判官の審査を受けるべきであり,必要性があるだけでは足りない。
本件では令状を得ずに実施したから違法である。
無関係の会話しか得られなかったという結果を理由にするのではない。
第2 設問2
1 証拠収集過程
Rは起訴不起訴の権限を有する検察官として,共犯者を含め自供して改悛すれば起訴猶予にするとの約束をQを通じて甲に伝えた。
甲はこれを信じ,不起訴を期待して否認から自白へ転じた。
単なる処分方針の一般的説明ではなく,処分権と結び付いた重大な利益で供述を誘導している。
迎合した虚偽供述の危険があるだけでなく,供述するかを自由に選択する権利を不当に制約するから,任意性に疑いがあり,その取得には違法がある。
後に約束を履行しても,自白時の任意性は回復しない。
もっとも,甲自身の有罪立証に自白を用いる場合は319条1項によって排除されるが,本件では乙の逮捕等の令状請求の疎明資料として用いられ,そこから丙の公判で用いる物証が得られている。
自白排除を直接当てはめることはできない。
虚偽自白の排除という目的だけなら,既存の物証の排除までは直ちに導けないが,上記の権利侵害を伴う違法な取得がある以上,物証への影響も検討すべきである。
そこで,先行する違法の程度,後続証拠収集との関連性を総合し,令状主義等の適正手続の保障を没却する重大な違法があり,証拠採用が将来の違法捜査抑制の見地から相当でない場合に排除する。
甲の自白は乙の逮捕状請求を可能にし,身柄拘束下で乙を取り調べる機会を生み,乙の供述からHの捜索差押えに至った。
この意味で因果的・手続的関連はあり,乙の自白が任意であるだけで消えるものではない。
他方,乙には甲の具体的供述内容が示されず,自ら甲の自白を察して自己の犯行とHの保管場所を供述した。
乙への同様の利益約束は事例に示されておらず,Gから証拠が得られなかった後に,乙の新しい情報がHの発見をもたらした。
また,乙の逮捕状は身柄拘束の要件について,Hの捜索差押許可状は新たに判明した場所と証拠について,それぞれ裁判官の審査を介している。
令状が先行違法を当然に治癒するわけではないが,捜査官の判断だけで直結して物証を取得した場合と比べ,違法の影響を弱める事情となる。
甲への約束は任意性を損なうが,事例に示された方法は不起訴の利益約束であり,実際に履行されてもいる。
以上を総合すれば,両物証まで排除すべき重大性は認め難く,収集過程を理由に証拠能力を否定しない。
2 本件文書
伝聞証拠とは,公判廷外の供述(原供述)を内容とする公判供述又は書面で,原供述の内容の真実性の証明に用いるものをいい,具体的な要証事実との関係で判断する。
本件文書については,乙が使用した詐欺の台本に丙も接触していた事実を要証事実とする。
会社の金を先物取引に使い込み500万円の穴埋めを要するという台本は,Vへの実際の欺罔と符合する。
乙の筆跡のVの電話番号,丙の指紋があり,受取役への弁解の指示も甲の否認内容と符合する。
このような本件用台本の存在と丙の接触から,乙丙間の共謀を推認できる。
ここでは,台本に記載された息子の横領等が真実であることを立証するのではなく,特有の記載を持つ文書が存在することを利用する。
その記載の知覚・記憶・表現の正確性を吟味する必要はなく,非伝聞である。
乙の供述や筆跡等により本件との結び付きも認められ,上記の用途で証拠能力がある。
共謀の認定に十分な証明力があるかとは別である。
3 本件メモ
メモの要証事実は,丙が乙に電話し,痴漢の示談金から先物取引による穴埋めに変更し,金額を500万円にしてマニュアルを用意する旨を指示した事実であり,丙乙間の共謀を推認させる。
指示の発言自体を立証する限り,丙の発言内容の真実性は問題とならない。
しかし,メモはその発言を乙が記録したものであり,丙による電話と指示の存在を認めるには,乙の相手・発言内容の知覚,記憶,表現の正確性に依存する。
この乙の供述について反対尋問を経ていないから伝聞である。
乙の心理状態を示すだけの用途に変更しても,丙の関与を直接示す上記の用途を代替しない。
丙は不同意であり326条は使えない。
メモは,筆跡と乙の自認から乙作成の供述書と認められ,供述録取書の署名押印の問題とは区別される。
乙は分離された丙の公判では被告人以外の者であるから,321条1項3号を検討する。
乙は証人として出頭しても,丙との電話やメモの意味について供述を拒んでおり,実質的な供述を得られない点で供述不能を認め得る。
また,指紋は文書への接触,通話記録は通話の存在を示すにとどまるのに対し,メモは丙による方法変更等の指示を示すから,不可欠性を肯定できる。
特に信用すべき情況について,簡潔な備忘メモの体裁や実際の欺罔との符合は信用性を支える。
しかし,作成者が判明したことだけでは足りず,「1/5」とあっても,その日に電話の直後に書いたとは確定できない。
乙が記録の目的・経緯を明らかにしておらず,与件だけでは虚偽や記憶違いのおそれが特に小さいとまでは認め難い。
したがって,現状ではこの伝聞用途での証拠能力を認めず,記録時の具体的状況等により絶対的特信情況が立証された場合に同号で認めるべきである。
個人的メモである以上,当然に323条3号の文書とはいえず,検面調書に写しが添付されたことでも,メモ自体が321条1項2号の検察官面前調書になるわけではない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案第1の1は1~3・6,第1の2は4~12,第1の3は13~17に対応する。
第2の1は18~29,第2の2は30~33,第2の3は34~41を中心に扱う。
42・43は①を強制処分とする場合の項目であり,本答案では採っていない。
主要な判断として,1は冒頭の法定主義と令状主義の区別,13・14は②の住居内音声と検証の性質,20は供述選択の自由と取得違法,31は台本の存在の利用,34は乙の知覚・記憶・表現の吟味の必要性に表れている。
各項目が全て同じ密度で独立の段落になるわけではない。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | 197条1項の解釈として強制処分と任意処分を区別し,強制処分法定主義と令状主義を混同しない。 | 第1・1 判断の枠組み:197条1項ただし書の解釈を示し,法定主義と令状主義を区別する。 |
| 2 | 4 | 権利・利益の重要性を基準とする理由を,既存の強制処分や憲法上の保護との比較から説明する。 | 第1・1 判断の枠組み:既存の強制処分と同程度の利益には法律による特別の統制が必要とする。 |
| 3 | 4 | 秘密の捜査で対象者が認識していないことと,意思の制圧又は反意がないことを区別して検討する。 | 第1・1 判断の枠組み:秘密の処分でも合理的に推認される意思に反し得ると説明する。 |
| 5 | 4 | ①で守られる私生活上の利益を具体化し,通常の聴取と録音による記録・保存の違いも評価する。 | 第1・2 ①の録音:私生活上の秘密の利益と,録音による反復利用の侵害の大きさ。 |
| 6 | 4 | 任意捜査の限界を,被侵害利益と捜査の必要性との合理的権衡によって判断する枠組みとして示す。 | 第1・1で合理的権衡の枠組みを示し,第1・2で当てはめる。 |
| 7 | 3 | ①の強制処分性では利益が放棄されたとしながら,任意捜査の限界では同じ利益の侵害を無説明に認める矛盾を避ける。 | 第1・2 ①の録音:全面的な放棄とせず,制約の程度が小さいとして両段階を整合させる。 |
| 10 | 4 | ①の具体的必要性を,犯罪の性質・重大性,乙への嫌疑及び共犯関係を解明する必要に即して評価する。 | 第1・2 ①の録音:乙への嫌疑の事情と,組織的な詐欺の共犯者・役割を解明する必要性。 |
| 11 | 4 | 会話が直ちに録音・保全しなければ消失することを,①の録音の具体的緊急性として評価する。 | 第1・2 ①の録音:その場を逃せば失われる会話の性質。 |
| 12 | 4 | ①の取得情報と侵害程度,具体的必要性を比較し,許容限度について理由付きの結論を示す。 | 第1・2 ①の録音:短時間・片方の肉声という限定と必要性を比較して適法とする。 |
| 13 | 5 | ②の不可聴の居室内音声を機器で増幅し10時間取得する行為を,住居内の私生活の保護と比較して強制処分性を判断する。 | 第1・3 ②の聴取・録音:住居内部の生活を把握する侵害を憲法35条の住居捜索と比較する。 |
| 14 | 5 | ②を強制処分とする場合,検証の意義・性質から検証該当性を理由付け,既存の法定類型に位置付け得るかを検討する。 | 第1・3 ②の聴取・録音。検証に当たる立場を採用。新たな法定処分の必要性を説く立場までは累積しない。 |
| 15 | 4 | ②の検証該当性について採った構成に応じ,法定根拠の欠如か令状手続の欠如かを区別して適法性の結論を導く。 | 第1・3 ②の聴取・録音。検証として令状欠缺を論じる。検証に含めない場合の法定根拠欠缺は別構成。 |
| 16 | 4 | ②を任意処分とする構成では,居室内の情報侵害の重要性を評価した上で,必要性だけに偏らず許容限度を検討する。 | 第1・3 ②の聴取・録音。強制処分とする主位の判断を採用したため,仮定的な任意処分の限界論は答案では不採用。 |
| 18 | 4 | 両押収物を,甲供述から乙の逮捕・取調べと乙供述を経て得られた派生証拠として位置付ける。 | 第2・1 証拠収集過程:甲の自白から乙の逮捕,乙の供述,Hの捜索差押えへの流れ。 |
| 19 | 4 | 起訴不起訴の権限をもつRの不起訴約束がQを通じて伝えられ,甲が利益を期待して自白したことから任意性を検討する。 | 第2・1 証拠収集過程:Rの権限,Qを通じた伝達及び甲の期待から任意性を検討する。 |
| 20 | 5 | 不任意自白を排除する根拠・趣旨を示し,不任意性と供述獲得手続の違法性を説明なく直結させない。 | 第2・1 証拠収集過程。虚偽排除に加え,供述選択の自由への不当な制約を取得違法の理由に置く。 |
| 21 | 4 | 甲本人に対する公判自白としての利用と,乙の逮捕状請求で第三者供述として用いる場面を区別する。 | 第2・1 証拠収集過程:甲自身の有罪立証と,乙の令状請求の疎明資料としての利用を区別する。 |
| 22 | 4 | 虚偽排除の観点を採る場合,自白を排除する目的がその後の客観的な派生証拠にも及ぶかを理由付ける。 | 第2・1 証拠収集過程。虚偽排除だけでは足りないことを明示し,人権侵害を伴う違法取得のルートで後続物証を検討。 |
| 23 | 2 | 虚偽のおそれを逮捕の疎明資料の適格性や逮捕状の有効性へ問題化する構成では,その法的効果まで説明する。 | 第2・1 証拠収集過程。令状疎明資料の信用性から逮捕状自体の効力を論じる発展的構成は不採用。 |
| 24 | 4 | 派生証拠について,違法の承継又は先行違法と関連性の総合評価のいずれかの判断枠組みを示す。 | 第2・1 証拠収集過程:先行する違法の程度と後続の証拠収集との関連性を総合する枠組み。 |
| 25 | 4 | 甲供述が乙の逮捕・身柄拘束中の取調べを可能にした過程から,先行手続と押収物収集との関連性を具体的に評価する。 | 第2・1 証拠収集過程:自白が逮捕状請求と身柄拘束下の取調べを可能にした過程。 |
| 26 | 4 | 乙の任意性のある自白の介在が,先行手続と押収物との関連性を希釈する意味を具体的に説明する。 | 第2・1 証拠収集過程:乙が甲の自白を察して自ら供述した経緯と,乙の新しい情報の介在。 |
| 27 | 4 | 乙逮捕状とHの捜索差押許可状の二度の令状審査・発付が,関連性の判断で果たす意味を説明する。 | 第2・1 証拠収集過程:逮捕状とHの捜索差押許可状の審査。令状による当然の治癒は否定する。 |
| 28 | 4 | 先行違法の内容・程度,関連性と希釈要因,将来の違法捜査抑制を採用枠組みに即して評価し,両押収物の証拠能力の結論へつなぐ。 | 第2・1 証拠収集過程:違法の内容,関連性及び弱める事情を総合し,両物証の排除を否定する。 |
| 30 | 4 | 具体的な要証事実との関係で,原供述の内容の真実性を利用する書面かどうかという伝聞判定の枠組みを示す。 | 第2・2 伝聞の定義:要証事実との関係で判断する枠組み。 |
| 31 | 5 | 本件文書を犯行計画の存在と丙の関与を示す状況証拠として用いる具体的な要証事実を示し,記載内容の真実性を要しないことから非伝聞とする。 | 第2・2 本件文書:丙の接触を要証事実とし,記載内容の真実性を要しないとする。 |
| 32 | 4 | 文書の記載と実行態様の符合,乙によるV番号の付記及び丙の指紋を,共謀を推認する具体的事情として結び付ける。 | 第2・2 本件文書:欺罔との符合,乙の筆跡の番号,丙の指紋及び弁解の指示を推認に結び付ける。 |
| 34 | 5 | 本件メモについて,丙が乙に電話で指示した事実を要証事実とし,乙の知覚・記憶・表現叙述の正確性を要する供述証拠として伝聞と判断する。 | 第2・3 本件メモ:丙の指示を要証事実とし,乙の知覚・記憶・表現の正確性に依存すると判断する。 |
| 35 | 4 | 乙の心理状態を立証するというだけで,丙の関与への推論上の意味を示さずメモを非伝聞としない。 | 第2・3 本件メモ。心理状態だけを要証事実にする代替ルートは不採用。丙の指示の存在を立証する用途を採用。 |
| 37 | 4 | 本件メモを被告人丙以外の乙の供述書と位置付け,321条1項3号の伝聞例外を検討する。 | 第2・3 本件メモ:乙作成の供述書として321条1項3号を検討する。 |
| 38 | 4 | 321条1項3号の供述不能,証拠の不可欠性,絶対的特信情況を,本件の具体的事実に即して検討する。 | 第2・3 本件メモ。供述不能・不可欠性は肯定し,現状の特信立証は不十分と評価。公式資料が一義的結論を指定したものではない。 |
| 39 | 3 | メモが伝聞証拠であることだけで直ちに証拠能力を否定し,伝聞例外の検討を省略しない。 | 第2・3 本件メモ:伝聞としつつ,321条1項3号の要件を検討する。 |
| 40 | 3 | 写しが検面調書に添付されたことや丙の発言が記載されたことだけで,誰の意思を表示する書面かを検討せず2号書面・被告人供述の規定へ置き換えない。 | 第2・3 本件メモ:検面調書への添付で2号書面にならないことを示し,丙の発言部分は第2・3の前半で整理する。 |
| 42 | 4 | ①を強制処分とする場合,法定された既存の強制処分の類型に該当するかを,検証の意義・性質と電話傍受判例の射程を踏まえて検討する。 | 第1・2。①を任意処分とするため不採用の分岐。法定類型の性質・要件の確認は②について第1・3で実施。 |
| 43 | 4 | ①を強制処分とする場合,採った法定類型の根拠規定と要件の充足を確認して適法性の結論へつなぐ。 | 第1・2。①を任意処分とするため不採用の分岐。法定類型の性質・要件の確認は②について第1・3で実施。 |
(2) 設問1の解説
出題の趣旨は①②の侵害利益と方法を比較させ,採点実感は「重要な」権利・利益という基準の理由,録音による記録と聴取の違い,法定主義と令状主義の区別を取り上げる。
答案は1~15について,基準の理由を示した上で具体的な可聴性・時間・占有関係を評価した。
①では会話の消失性も緊急性に結び付けた(11)。
②を強制処分としただけでは,どの規律に反するかは決まらない。
答案は機器を用いた状況の認識・保全という性質から検証に含め,令状の欠缺を指摘する(14・15)。
包括的・継続的な取得に特有の保障が必要で既存の検証に収まらないと構成する場合は,別の法定根拠を要するという説明が必要となる。
後者を本答案に重ねて結論だけ併記してはいない。
(3) 設問2の解説
出題の趣旨・採点実感は,任意性に疑いのある自白があれば直ちに物証まで排除されるという処理を求めていない。
どの排除根拠を採るか,なぜ先行取得が違法か,その影響がどのように後続へ及ぶかを説明する必要がある。
答案は18~28について,甲と乙の立場,乙の新しい供述,二つの令状審査を分け,それぞれが派生関係を弱める機能を述べた。
文書については記載された欺罔内容の真実性を立証するのではなく,本件用台本の存在と丙の接触を推認の基礎にする(31・32)。
メモでは丙の指示そのものを立証するため,それを記録した乙の知覚・記憶等の正確性を信用する必要がある(34)。
したがって乙の供述書として3号の条件を検討する(37・38)。
この用途の違いを,単にマニュアルとメモという名称の違いに置き換えていない。
(4) 答案の弱点と扱わなかった事項
本答案の留保は,メモの特信情況を十分とはしない点である。
公式資料がその最終結論を一義的に指定しているわけではなく,作成状況をどこまで評価できるかの理由が重要となる。
また,疎明資料の信用性から乙の逮捕状の効力自体を詳論する発展的構成(23)と,②を任意処分と仮定する構成(16)は採用していない。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
平成27年司法試験論文式試験問題・刑事系科目は,第2問に当たるPDFの5頁~8頁を読み,末頁の資料1・資料2は画像でも確認した。
第1問は対象外である。
平成27年司法試験論文式試験の出題の趣旨は,PDFの15頁の刑事系第2問の見出しから19頁の選択科目の直前までを読んだ。
平成27年司法試験の採点実感等に関する意見(刑事系科目第2問)は,PDFの7頁~18頁を読んだ。
採点方針,具体的な不足の指摘,答案の評価区分及び法科大学院教育への意見も対象に含めた。
2 法令
法務省の試験日程によれば,刑事系科目の試験日は平成27年5月16日である。
法令の確認は,この時点の関係規定を対象とした。
e-Govの刑事訴訟法の改正履歴で確認できる最も古い本文は,平成28年12月1日施行版である。
これを平成27年版として扱わず,国立国会図書館の改正沿革及び平成28年法律第54号の成立原文と照らし合わせた。
確認したのは197条1項,198条2項,218条1項,219条1項,222条1項,319条1項,320条1項,321条1項,322条1項,323条,325条及び326条の本問に関係する規定である。
これらの規定が試験当時の内容と変わらないことを確認したものであり,平成27年当時の刑事訴訟法全体の本文を確認したという意味ではない。
憲法は13条,33条,35条及び38条を確認した。
3 裁判例
次の裁判例は,裁判所ウェブサイトの全文PDFを読んだ。
① 最高裁昭和51年3月16日第三小法廷決定(昭和50年(あ)第146号,刑集30巻2号187頁)
PDFは全4頁で,強制手段と任意捜査の限界に関する判示は3頁~4頁にある。
本問の秘密録音にそのまま結論を与えた判例ではない。
② 最高裁平成11年12月16日第三小法廷決定(平成9年(あ)第636号,刑集53巻9号1327頁)
PDFは全6頁で,電話傍受の検証としての性質と手続は1頁~3頁,反対意見は4頁~6頁にある。
通信傍受法の制定前の事件についての判示であり,本問の居室内音声への機器使用を直接判断したものではない。
③ 最高裁昭和41年7月1日第二小法廷判決(昭和40年(あ)第1968号,刑集20巻6号537頁)
PDFは全3頁で,起訴猶予を期待した自白の任意性に疑いがあるとの判断は2頁にある。
本答案で述べた取得違法の理論的根拠や派生物証の評価は,この判決が直接判断した結論と区別する。
④ 最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決(昭和51年(あ)第865号,刑集32巻6号1672頁),最高裁昭和61年4月25日第二小法廷判決(昭和60年(あ)第427号,刑集40巻3号215頁)及び最高裁平成15年2月14日第二小法廷判決(平成13年(あ)第1678号,刑集57巻2号121頁)
PDFは順に全8頁,全6頁,全5頁である。
違法の重大性・排除相当性,先行手続との関係及び後続証拠ごとの関連性を確認した。
任意の供述や令状が介在すれば当然に適法化するとの扱いは採っていない。
⑤ 最高裁平成21年9月28日第三小法廷決定(平成19年(あ)第798号,刑集63巻7号868頁)
PDFは全3頁で,エックス線検査の検証としての性質とプライバシー侵害を確認した。
居室内録音への評価は本問への推論である。
⑥ 最高裁昭和29年11月25日第一小法廷決定(昭和28年(あ)第5444号,刑集8巻11号1888頁)及び最高裁昭和31年3月27日第三小法廷判決(昭和27年(あ)第302号,刑集10巻3号387頁)
PDFは順に全1頁,全3頁である。
本人作成の供述書の署名・押印と,心覚えの手帳について321条1項3号の要件を検討することを確認した。
個人のメモであることから当然に特信情況の有無が決まるという趣旨ではない。
⑦ 最高裁昭和27年4月9日大法廷判決(昭和26年(あ)第2357号,刑集6巻4号584頁)
PDFは全7頁で,証言拒否を供述不能に含める判断を確認した。
直接の対象は321条1項2号であり,本問の3号に同じ供述不能の考え方を及ぼす解釈と区別する。
4 確認状態
公式資料に加え,上記の判例原文及び法令を確認した上で,本問への当てはめを点検した。
裁判例が直接判断した事項,公式資料が求める検討,本答案が選択した構成・推論は区別している。
本答案の結論が唯一の正解であることや,採点者が同じ得点を付けることまで示すものではない。
重みは答案点検のための独自の整理で,公式配点・合格可能性を示さない。
読みやすい記載や,手続を動的に理解すること等の教育上の一般的な指摘は,評価項目に加えていない。
確認日は令和8年10月31日である。