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英会話教室の中途解約と返金―受講済み授業料の単価と解約料の上限(AI作成)

第1 中途解約では何を差し引けるのか

英会話教室の授業料をまとめて前払いした後,途中で通うのをやめた場合,返金額は「未受講の回数」だけでは決まらない。
契約時の単価,受講済みの回数,解約料の約定,特定商取引法の適用を分けて確認する必要がある。

本記事では,消費者庁の特定商取引法ガイドと,最高裁の外国語会話教室の受講料清算事件を基に,受講開始後の中途解約を中心に説明する。

以下は,特定継続的役務提供契約(特定商取引法41条1項1号)の授業料を全額前払いし,同法50条の適用除外に当たらない場合を中心とする説明である。

1 受講済みの授業料と解約料を分ける

特定商取引法の対象となる語学教室では,クーリング・オフ期間の経過後でも,将来に向かって契約を中途解約できる。
受講開始後に事業者が請求できる額には制限がある。
同法49条2項1号は「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」と,解除によって通常生ずる損害の額を分けている。

語学教室の解約によって通常生ずる損害の上限は,5万円と契約残額の20%を比べた低い方である。
ここでいう契約残額は,契約に関する役務の対価総額から,既に提供された役務の対価相当額を差し引いた額である。
契約時に解約料や違約金を約束していても,この法定の制限を超える額を請求できるわけではない。
なお,同法49条2項には法定利率による遅延損害金の加算も定められており,後掲の計算例ではこれを含めていない。

この上限額が,事業者に当然に発生する定額の解約料という意味ではない。
実際の精算では,約定の有無・内容,入学金等の扱い,関連商品の有無も確認する。

2 中途解約とクーリング・オフは扱いが違う

クーリング・オフは,法定の契約書面を受け取ってから一定期間内に行う解除であり,受講開始後の中途解約と同じ計算をする制度ではない。
本記事の計算例を,そのままクーリング・オフの精算へ使うことはできない。

消費者庁の説明:
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/

第2 すべての英語学習サービスが同じ扱いになるのか

特定継続的役務提供として規制される語学教室は,語学の教授を内容とし,契約期間が2か月を超え,契約金の総額が5万円を超えるものが基本となる。
語学を教える契約であっても,入学試験の準備や学校教育の補習に当たる場合には,語学教室としての指定との区別が必要である。
また,営業のために締結する契約など,適用除外もある。
同法50条2項は,特定継続的役務等の割賦販売について,49条2項等の請求額の制限を適用しないと定めている。
これは中途解約権そのものの有無とは別の問題であり,分割払い等を利用している場合は,契約内容と支払方法を示す資料をそろえて,適用される規定を別に確認する。

対面かオンラインかだけで対象の内外は決まらない。
消費者庁は,インターネット等を用いて役務を提供する場合も広く含まれると説明している。
一方,録画教材の購入,短期間の講座,法人の研修契約などを,名称だけで同じ規制の対象と決めることはできない。
契約で提供される内容,期間,金額,契約目的を確認する。

法令原文(41条・49条・50条):
https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057

指定役務,期間及び解約料の上限は,施行令24条・25条・30条及び別表第四で定められている。
https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295

第3 解約したときだけ単価を上げてよいのか

1 最高裁が扱ったポイント制の授業契約

最高裁第三小法廷平成19年4月3日判決(平成17年(受)第1930号,民集61巻3号967頁。以下「受講料清算事件」という。)の事案では,受講者が600ポイントを登録し,受講料75万6000円を前払いしていた。
契約時の単価は1ポイント1200円で,受講者は386ポイントを使用した後に解約した。
これらの金額には,当時の消費税率による計算が含まれている。

事業者の清算規定は,解約時に使用済みポイント数に応じた別の高い単価を用いるものであった。
その規定による使用済み分の対価は65万1000円となるのに対し,契約時の単価で計算した対価は48万6360円となるため,返金額に大きな違いが生じる。

2 契約時の単価と別の高額な精算単価

最高裁は,本件の料金規定では,契約時に各授業の対価が一律の単価で定められていることを重視した。
解約した場合にだけ高額の対価を用いる清算規定は,実質的に損害賠償額の予定又は違約金として機能し,受講者が自由に解除する権利を制約すると判断している。

そのうえで,本件清算規定を法定限度額を超える支払を求めるものとして無効とし,使用済み分は契約時の単価によって算定するのが相当とした。
問題とされたのは本件の清算規定であり,受講契約全体が無効になった,又は授業を受けた分を含めて全額返金される,という判断ではない。

原審は,合理的な理由なく契約時と異なる単価を用いることが許されないという一般的な説明をしている。
これに対し,最高裁は,本件で各授業の対価が一律に設定され,解約した場合にだけ高額の対価を用いる清算規定であったことに即して理由を述べている。
原審の一般的な説明と最高裁自身の理由付けは分けて読む必要がある。
異なる授業ごとに対価が設定された契約なども含め,あらゆる料金体系を契約時の平均単価だけで処理できるとまではいえない。

裁判所公表の判決本文。
事実関係はPDF1頁~3頁,最高裁の理由は4頁~6頁である。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-34469.pdf

第4 返金額の計算例

以下は,実際の裁判の金額とは別の仮例である。
全額前払い,各授業の対価は一律,金額は税込みとし,入学金・関連商品・遅延損害金等を考えない。
また,解約料について,法定上限額を請求できる有効な約定があると仮定する。

1 契約残額の20%が5万円を下回る場合

1回3000円の授業40回分として12万円を支払い,10回受講して解約したとする。

– 受講済み分:3000円×10回=3万円
– 契約残額:12万円-3万円=9万円
– 解約料の上限:5万円と9万円×20%=1万8000円の低い方である1万8000円
– この仮例の返金額:12万円-3万円-1万8000円=7万2000円

2 5万円の上限が働く場合

1回3000円の授業200回分として60万円を支払い,20回受講して解約したとする。

– 受講済み分:3000円×20回=6万円
– 契約残額:60万円-6万円=54万円
– 解約料の上限:5万円と54万円×20%=10万8000円の低い方である5万円
– この仮例の返金額:60万円-6万円-5万円=49万円

契約書にこれより低い解約料が定められている場合などには,その約定も踏まえて精算する。
上限額の計算だけで,個別の返金額が確定するわけではない。

第5 返金を求める前に残しておく資料

精算の説明を受けたときは,総額だけでなく,受講済み分の単価と回数,解約料,その他の控除を分けた明細を確認する。
特に「割引を取り消す」「通常料金で計算し直す」という説明がある場合には,契約時に各授業の対価をどのように決めていたかが問題となる。

相談に備えて,次の資料をまとめておくと,契約内容と精算額を比較しやすくなる。

– 申込書,概要書面,契約書面及び契約当時の規約
– 契約時の料金表,割引の説明,広告や申込画面の記録
– 支払額・支払日・支払先が分かる領収書や利用明細
– 受講履歴,ポイント残高及び予約・キャンセルの記録
– 解約を申し出た内容と日付,事業者の返金計算書,双方の連絡記録

現在のウェブサイトの規約が,契約当時の規約と同じとは限らない。
会員ページに入れなくなる場合にも備えて,自分の契約や受講履歴を確認できるうちに保存しておくことが役立ちる。

第6 教室が倒産した場合は返金の計算と回収を分ける

返金請求権の金額を計算できることと,その金額を現実に回収できることは別の問題である。
教室の運営会社について倒産手続が問題となった場合には,契約相手の法人名,手続の種類,通知の差出人,債権届出等の案内と期限を確認する。

同じブランドの別会社が授業を引き継ぐという案内があっても,旧会社への返金請求,追加費用,残りの授業を受ける条件を別々に確認する必要がある。
新しい契約を結ぶかどうかを,旧契約の未消化回数だけで判断しないことが大切である。

最高裁の受講料清算事件は,倒産手続での債権の順位や,返金の原資,承継先の義務まで判断したものではない。
倒産一般の手続と債権の扱いについては,次の記事も参照されたい。

倒産事件の実務メモ―破産・個人再生・私的整理(AIリライト)