第1 犯罪事実確認の結論と基準日
1 国が交付する確認書で性犯罪前科の有無を確かめる仕組みである
こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律・令和6年法律第69号)の犯罪事実確認とは,対象事業者が,こどもと接する対象業務の従事者について,こども家庭庁から交付される犯罪事実確認書により,「特定性犯罪事実該当者」に当たるか否かを確認することである(法4条1項,こども家庭庁Q&A基礎編6-1)。
事業者が交付を申請し,こども家庭庁が法務大臣に照会して,裁判の確定記録と照合した結果を確認書にする(法33条~35条)。
確認書に該当する旨が記載される場合には,事業者へ交付される前に本人へ通知され,本人は2週間以内に訂正を請求できる(法35条5項,37条1項・2項)。
この確認は,すべての企業がすべての応募者の犯罪歴を調べられる制度ではない。
対象となるのは,法律が定める学校設置者等と認定を受けた民間教育保育等事業者が,対象業務に従事させる者について行う確認に限られる。
こども家庭庁のQ&Aは,本人の承諾があっても,対象業務に従事することが決定していなければ確認はできないとし,内定前の確認を否定している(Q&A基礎編6-4)。
2 本記事の基準日と資料
本記事は,令和8年10月17日に確認した法律・施行令(令和7年政令第440号)の令和8年12月25日施行時点の条文,こども性暴力防止法施行ガイドライン(令和8年9月改訂)及びこども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年9月29日改訂)に基づく。
法の施行日は令和8年12月25日であり,犯罪事実確認はこの日から始まる。
システムの画面や運用の細部は施行までに更新される可能性があるので,実際の申請時には,こども家庭庁の最新資料を確認する必要がある。
制度全体の対象事業者,事業者の措置及び施行前の準備は,こども性暴力防止法とは―日本版DBSの対象・義務・令和8年12月25日の施行準備で説明している。
本記事は,その中の犯罪事実確認について,対象となる罪,期間,手続及び期限を詳しく扱う。
第2 対象となる「特定性犯罪」
1 法律が列挙する罪
犯罪事実確認で照会の対象となる性犯罪の類型を「特定性犯罪」という(法2条7項)。
施行ガイドラインの説明(29頁~31頁)に従って罪名を補うと,次のとおりである。
①刑法176条(不同意わいせつ),177条(不同意性交等),179条(監護者わいせつ及び監護者性交等),180条(未遂),181条(不同意わいせつ等致死傷),182条(16歳未満の者に対する面会要求等)並びに241条1項・3項及び243条(強盗・不同意性交等及び同致死並びにその未遂)の罪
②盗犯等の防止及び処分に関する法律4条の罪(刑法241条1項の罪を犯す行為に係るもの)
③児童福祉法60条1項の罪(児童淫行)
④児童買春・児童ポルノ法4条~8条の罪(児童買春,周旋,勧誘,児童ポルノの所持・提供等,児童買春等目的の人身売買等)
⑤性的姿態撮影等処罰法2条~6条の罪(性的姿態等の撮影,影像記録の提供・保管,影像送信,影像記録)
⑥都道府県の条例で定める罪であって,政令で定めるもの
2 迷惑防止条例と青少年健全育成条例の罪も含まれる
⑥の条例の罪は,みだりに人の身体の一部に接触する行為,下着や身体ののぞき見・盗撮,みだりに卑わいな言動,児童との性交・わいせつな行為のいずれかを罰するものである(法2条7項6号)。
施行令2条は,全都道府県の迷惑防止条例と青少年健全育成条例を中心に,対象となる条例を94号にわたって列挙している。
例えば,大阪府については,大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例と大阪府青少年健全育成条例が挙げられている(施行令2条53号・54号)。
いわゆる痴漢や盗撮が刑法ではなく条例違反として処罰された場合でも,対象となり得るということである。
施行ガイドラインは,迷惑防止条例については接触・のぞき見等・卑わいな言動を罰する罪を,青少年健全育成条例については児童との性交・わいせつな行為を罰する罪を対象とすると説明している(32頁)。
3 改正前の罪名や懲役刑も対象になる
刑法は平成29年と令和5年に性犯罪の規定を改正しており,強制わいせつ罪・強制性交等罪・準強制わいせつ罪等の旧規定や,削除された集団強姦等の罪で処罰された者もいる。
法附則2条は,これらの改正前の罪も特定性犯罪とみなしている。
また,刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による拘禁刑の導入前に言い渡された懲役刑も,拘禁刑の言渡しとみなされる(法附則3条)。
施行令附則2項により,改正・廃止前の条例で定められていた罪も対象となる(施行ガイドライン32頁~33頁)。
4 被害者がこどもである罪に限られない
特定性犯罪には,成人に対する犯罪も含まれる(Q&A基礎編2-11)。
例えば,成人に対する不同意わいせつ罪で有罪判決が確定した者も,次に述べる期間内であれば特定性犯罪事実該当者に当たる。
第3 特定性犯罪事実該当者と期間
1 実刑は20年,執行猶予と罰金は10年
特定性犯罪事実該当者は,特定性犯罪について有罪判決が確定し,次の期間を経過していない者である(法2条8項)。
| 区分 | 期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 拘禁刑の実刑 | 20年 | 刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日 |
| 拘禁刑の全部の執行猶予 | 10年 | 裁判が確定した日 |
| 罰金 | 10年 | 刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日 |
執行猶予の言渡しが取り消された者は,執行猶予の区分ではなく実刑の区分で扱われる(法2条8項1号括弧書)。
「執行を受けることがなくなった」には,刑の時効の完成や恩赦による刑の執行の免除,大赦・特赦などが含まれると説明されている(施行ガイドライン35頁)。
2 刑の言渡しの効力が失われた後も確認される
刑法34条の2は,拘禁刑以上の刑の執行を終えてから罰金以上の刑に処せられずに10年(罰金以下の刑では5年)を経過すると,刑の言渡しは効力を失うと定めている。
しかし,こども性暴力防止法の期間はこれより長いため,法は「裁判が確定した者」という形で定義し,刑の言渡しの効力が失われた者についても確認できるようにしている(施行ガイドライン34頁~35頁)。
執行猶予の場合も,猶予期間が満了した後,裁判の確定から10年を経過するまでは特定性犯罪事実該当者に当たる。
3 期間を過ぎると「該当しない」と記載される
上記の期間を経過した者については,確認書に特定性犯罪事実該当者ではない旨が記載され,事業者は過去に該当者であったことを知ることができない(Q&A応用編6-2)。
したがって,確認書に該当しない旨の記載があることは,その者に性犯罪前科が一切ないことまで示すものではない。
第4 犯罪事実確認の対象にならないもの
1 不起訴・示談
Q&Aは,不起訴や示談になった者は,刑事裁判による事実認定を受けていないため,特定性犯罪事実該当者に当たらないとしている(Q&A基礎編2-10)。
法2条8項は拘禁刑又は罰金を言い渡す裁判が確定したことを要件としており,確認の照合先も確定した事件の記録である(法34条2項)。
2 特定性犯罪以外の罪
Q&Aは,窃盗罪など特定性犯罪以外の罪で刑が確定した者は,現行法上,特定性犯罪事実該当者に当たらないとしている(Q&A基礎編2-10)。
例えば,刑法174条の公然わいせつ罪は,法2条7項1号に掲げられていない。
他方,盗撮・痴漢の類型は,性的姿態撮影等処罰法や条例の罪として対象に含まれ得るので,罪名の印象だけで判断しない。
3 少年審判による保護処分
家庭裁判所の少年審判で保護処分を受けたことは,拘禁刑又は罰金を言い渡す裁判の確定ではないので,法2条8項の文言上,特定性犯罪事実該当者には当たらないと考えられる。
これに対し,少年であっても,家庭裁判所から検察官に送致されて刑事裁判を受け,特定性犯罪について拘禁刑又は罰金が確定した場合は,同項の要件に当たる。
本記事の基準日に確認したQ&A・ガイドラインの範囲では,保護処分の扱いを直接述べた記載は見当たらなかったので,個別の事案では最新の公式資料で確認する必要がある。
4 確認できない部分は日常の措置で補う
犯罪事実確認で分かるのは,確定した有罪判決のうち,法定の罪と期間に当たるものだけである。
前科のない者による加害や,起訴に至らなかった事案は,この確認では把握できない。
そのため,法は,不適切な行為の防止,早期把握,相談体制,研修及び疑いが生じた場合の調査等を併せて求めている。
日常の行動基準については,こども性暴力防止法の「不適切な行為」とは―SNS・撮影・身体接触と行動基準の作り方で説明している。
第5 犯罪事実確認の流れ(確認方法)
1 手続はこまもろうシステムで行う
犯罪事実確認の手続は,原則として,こども性暴力防止法関連システム(こまもろうシステム)上で行う(Q&A基礎編6-10)。
流れは次のとおりである。
①事業者がGビズIDを取得し,こまもろうシステムに事業者アカウントを作成する。
②事業者が対象従事者の氏名とメールアドレスを登録すると,従事者にアカウント作成依頼のメールが届く。
③従事者がマイナンバーカード等で本人確認をして従事者アカウントを作成する。
④事業者が従事開始予定日等の申請情報を入力し,従事者が戸籍情報等を登録する。
⑤双方の登録がそろうと交付申請ができ,こども家庭庁が戸籍情報を確認した上で法務大臣に照会する。
⑥照会結果に基づき,こども家庭庁から事業者へ犯罪事実確認書が交付される。
認定対象事業者は,認定を受けた後に従事者の登録へ進む(Q&A基礎編6-10)。
GビズIDと事業者アカウントの準備は,こども性暴力防止法のGビズID・まとめ登録―こまもろうシステムの施行前準備で整理している。
2 事業者が入力・提出するもの
事業者は,事業者の名称・所在地,従事者の氏名・住所・生年月日・性別,勤務する事業所,業務の内容及び従事予定日等を申請書の事項として入力する(法33条3項,Q&A基礎編6-11)。
あわせて,内定通知書や雇用契約書など,その従事者を対象業務に従事させることを証する書類を添付する(法33条4項1号)。
対象業務に従事させることが決まっていない者について申請できないのは,この添付書類の要件からも明らかである。
3 従事者が提出するもの
従事者は,氏名・住所・生年月日・性別等の情報を入力し,国籍に応じて次の書類を提出する(法33条5項,Q&A基礎編6-12)。
日本国籍の場合は,全ての戸籍・除籍の抄本等であり,マイナアプリでマイナンバーカードをスマートフォンにかざして提出できる(一部対応していない戸籍等がある)。
外国籍の場合は,在留カード,住民票,旅券の写し等と,過去に氏名等の変更があった場合にそれを証する戸籍相当書類である。
全ての戸籍・除籍を求めるのは,氏名を変更した者についても,変更前の氏名を含めて照合するためである(法34条1項1号,Q&A応用編6-1)。
過去の犯罪事実確認で提出した書類は,別の事業者での確認の際も提出を省略できるが,前回の提出後に記載事項が変わった戸籍等と最新の内容が記載された戸籍等は省略できない(法33条6項,Q&A応用編6-18)。
戸籍等は,こまもろうシステムを通じて従事者から直接こども家庭庁へ提出されるので,その内容が事業者に知られることはないと説明されている(Q&A応用編6-20)。
ただし,従事者が希望する場合は事業者を経由して提出することもでき,事業者はこれを拒めない(法33条7項)。
戸籍等の取得費用は従事者の負担であり,提出したかどうかはシステム上で事業者も把握できる(Q&A応用編6-21・6-22)。
4 法務大臣による照合と確認書の記載事項
こども家庭庁(法文上は内閣総理大臣)は,氏名(変更前の氏名を含む。),生年月日及び本籍(外国籍の場合は国籍等)を法務大臣に提供し,照会する(法34条1項)。
法務大臣は,特定性犯罪について拘禁刑又は罰金が確定した事件の保管記録と照合し,該当する記録の有無と確認日を通知する(法34条2項)。
事業者に交付される確認書には,本人の情報と確認日のほか,該当しない場合はその旨が,該当する場合は該当者の区分(実刑・執行猶予・罰金)とその裁判が確定した日が記載される(法35条4項)。
罪名や判決主文は,法務大臣からこども家庭庁へ通知される事項であるが(法34条2項2号),確認書の記載事項としては掲げられていない。
5 交付までの期間の目安
Q&Aは,交付までの標準処理期間を,日本国籍者は2週間から1か月程度,外国籍者は1か月から2か月程度としている(Q&A基礎編6-5)。
標準処理期間の最長期間より前に申請したのに交付されない場合は,後に述べる「いとま特例」のやむを得ない事情に当たるものとして扱われる(同)。
採用の日程は,この期間を見込んで組む必要がある。
第6 該当する場合の事前通知と訂正請求
1 確認書の交付前に本人へ通知される
照合の結果,従事者が特定性犯罪事実該当者に当たる場合,こども家庭庁は,事業者に確認書を交付する前に,記載する内容を本人に通知しなければならない(法35条5項)。
これを「事前通知」という(Q&A基礎編6-13)。
事前通知は,記録の誤り等があった場合に,本人が訂正を求める機会を確保するための仕組みである。
2 本人が選べる三つの対応
事前通知を受けた従事者は,次のいずれかの対応をする(Q&A基礎編6-13)。
①通知確認済の連絡:通知内容に誤りがない場合に,その旨を連絡する。
②訂正請求:通知内容が事実でないと考える場合に,通知を受けた日から2週間以内に訂正を請求する(法37条1項・2項)。
③中止要請:内定辞退等により対象業務に従事しないこととなった場合に,手続の中止を求める。
中止要請をしても,それだけで事業者の交付申請が無効になるわけではない。
Q&Aは,中止要請をした従事者は,事業者に対象業務に従事しない旨を連絡し,交付申請を取り下げるよう伝える必要があるとしている(Q&A基礎編6-13)。
3 2週間が過ぎると確認書が交付される
事前通知を受けた日から2週間以内にいずれの手続も行われなかった場合は,通知の内容を記載した確認書が事業者に交付される(Q&A基礎編6-13)。
訂正請求があった場合は,その請求についての結果が通知されるまで,確認書は交付されない(法35条5項)。
システム上で訂正請求をしない旨の意思表示をした場合は,直ちに確認書が交付されると説明されている(施行ガイドライン186頁)。
4 事業者が確認書を受け取った後
該当する旨の確認書を受け取った事業者は,その者をこどもと接する対象業務に従事させないなどの防止措置を講じる必要がある(学校設置者等につき法6条)。
もっとも,配置転換,内定取消し,懲戒又は解雇の有効性は,就業規則,採用時の説明,配置の可能性及び労働法上の要件により別に判断される。
確認書とその記録は厳格な管理の対象であり,扱い方は日本版DBSの犯罪事実確認記録をどう扱うか―本人通知・訂正、保護者への説明、内部共有と保存・廃棄で説明している。
第7 いつまでに確認するか
1 従事者の区分ごとの期限
犯罪事実確認の期限は,従事者の区分によって異なる(Q&A基礎編6-6)。
| 区分 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新たに対象業務に従事する者 | 従事開始の日まで | 法4条1項 |
| 施行時現職者(学校設置者等) | 令和11年12月24日まで | 法4条3項,施行令4条 |
| 認定時現職者(認定事業者等) | 認定等の日から1年を経過する日まで | 法26条3項,施行令6条 |
| 5年ごとの再確認 | 前回の確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度の末日まで | 法4条4項 |
施行時現職者とは,施行日に現に対象業務に従事している者と,施行日の前日までに従事させることを決定していた者である(法4条1項括弧書)。
施行時現職者の申請時期は分散され,例えば公立学校では,令和9年4月以降,教育委員会が作成する申請工程表に従って順次申請する(施行ガイドライン340頁~342頁)。
施行時現職者は,割り当てられた申請対象月で確認を行うこととされ,それより前倒しすることは予定されていない(Q&A基礎編6-16)。
2 急な欠員の場合の「いとま特例」
急な欠員その他の内閣府令で定めるやむを得ない事情により,従事開始までに確認を行ういとまがなく,直ちに業務を行わせなければ運営に著しい支障が生ずる場合は,従事させた日から3か月以内に確認を行うことができる(法4条2項,施行令3条)。
大規模な災害が発生した場合など,確認の完了までに3か月を超える期間を要する見込みの場合は6か月である(施行令3条)。
この特例を使う場合でも,確認が終わるまでは,その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならない(法4条2項ただし書)。
Q&Aは,その例として,こどもと一対一にさせない対応を挙げている(Q&A基礎編6-7)。
第8 従事者が手続に応じない場合
従事者が戸籍等を提出せず,期限までに確認ができない場合,そのまま対象業務に従事させ続けることは犯罪事実確認義務の違反となる(施行ガイドライン205頁)。
ガイドラインは,事業者が施行前に,対象業務従事者の範囲に含まれること,期限までに戸籍等を提出する必要があること,提出がなければ対象業務に従事させられないこと,就業規則に手続への対応義務を定めること等を本人へ伝えておく「事前伝達」を求めている(同頁)。
その上で提出がない場合は,業務命令として提出を求め,口頭で拒否されたときは書面等の記録に残る形で指導し,それでも従わないときは対象業務に従事させないことを検討するとしている(施行ガイドライン205頁~206頁)。
労働法上は,まず人事権の行使としての配置転換を検討することが考えられ,対応拒否を抑止する観点から懲戒処分を検討することも考えられるとされている(同206頁)。
就業規則と誓約書の整え方は,こども性暴力防止法の就業規則・誓約書の見直し―公式参考例と施行前の準備作業で扱っている。
第9 確認書の廃棄・消去と罰則
1 確認書の廃棄・消去の期限
確認書の交付を受けた事業者は,確認日から5年を経過した日の属する年度の末日から30日を経過する日までに,確認書を廃棄し,記録を消去しなければならない(法38条1項)。
従事者が離職した場合は離職の日から,事業者がその者を任命・雇用しなかった場合は従事予定日(交付がそれより遅いときは交付の日)から,それぞれ30日以内に廃棄・消去する(法38条2項)。
2 確認書の情報に関する罰則
確認書の情報の扱いには,次の罰則がある。
①業務で知った確認書の情報を,自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供したとき:2年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科(法43条)
②偽りその他不正の手段で確認書の交付を受けたとき:1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法44条)
③業務で知った確認書の情報をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に利用したとき:1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金又は併科(法45条2項)
④帳簿の不備や確認書の廃棄・記録の消去をしなかったとき等:50万円以下の罰金(法46条)
法人の従業者等が業務に関して①②④の違反行為をしたときは,行為者のほか法人等にも罰金刑が科される(法48条)。
第10 よくある質問
1 こども性暴力防止法の確認方法は?
事業者が,こまもろうシステムで対象従事者について犯罪事実確認書の交付を申請し,従事者が戸籍等を提出して,こども家庭庁が法務大臣に照会する方法で行う。
該当しなければその旨の確認書が交付され,該当すれば本人への事前通知と2週間の訂正請求期間を経て確認書が交付される。
手続の詳細は第5と第6のとおりである。
2 不起訴や示談になった場合も対象になるか
対象にならない。
Q&Aは,不起訴や示談になった者は刑事裁判による事実認定を受けていないため,特定性犯罪事実該当者に当たらないとしている(Q&A基礎編2-10)。
3 執行猶予の期間が終われば対象外になるか
猶予期間の満了だけでは対象外にならない。
全部の執行猶予の場合は,裁判が確定した日から10年を経過するまで特定性犯罪事実該当者に当たる(法2条8項2号)。
4 事業者は罪名まで知ることになるか
確認書に記載されるのは,該当する場合でも,該当者の区分(実刑・執行猶予・罰金)と裁判が確定した日であり,罪名は記載事項として掲げられていない(法35条4項)。
ただし,確認書の情報は極めて機微な情報であり,記載事項が限られていても,目的外利用・第三者提供の制限と厳格な管理の対象となる(学校設置者等につき法12条・14条)。
5 内定前や採用面接の段階で確認できるか
できない。
Q&Aは,本人の承諾があっても,対象業務に従事することが決定していなければ確認はできないとしている(Q&A基礎編6-4)。
6 犯罪事実確認の対象となる罪や期間は今後変わるか
法附則6条は,政府が施行後3年を目途として,学校設置者等,教員等,民間教育保育等事業者,教育保育等従事者及び特定性犯罪事実該当者の範囲を含め,制度の在り方を検討し,必要があれば措置を講ずると定めている。
本記事の基準日の時点で,施行前に対象となる罪や期間を変更する改正の内容は確認していない。
第11 出典
1 法令
①e-Gov法令検索「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号。令和8年12月25日施行時点)2条7項・8項,4条,6条,12条,14条,26条3項,33条~35条,37条,38条,43条~46条,48条,附則2条・3条・6条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000069
②e-Gov法令検索「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律施行令」(令和7年政令第440号)2条~4条,6条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/507CO0000000440
2 こども家庭庁の資料
①こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月改訂)29頁~35頁,184頁,186頁,205頁~206頁,340頁~342頁。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/abc50df0/20260901_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_72.pdf
②こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年9月29日改訂)基礎編2-9~2-11(23頁),6-1~6-13(44頁~50頁),6-16(51頁),応用編6-1・6-2(92頁),6-18・6-20(100頁),6-21・6-22(101頁)。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/379c2e9b/20260929_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_100.pdf
③こども家庭庁「こども性暴力防止法」(最新資料の掲載ページ)。
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou
3 個別の判断で確認が必要な事項
特定の罪や裁判が対象に当たるか,期間の計算,いとま特例の要件,防止措置と労務上の処分の当否は,具体的な事実と最新の公式資料に即して判断する必要がある。