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スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住(AI作成)

第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する

スコットランドの子の扶養には,Child Support Act 1991に基づくChild Maintenance Service(CMS)のchild maintenanceと,Family Law (Scotland) Act 1985に基づくalimentという二つの法的な仕組みがある。
CMSは,支払親の所得,対象となる子の人数及びshared care等に基づき定期養育費を算定し,必要に応じて徴収する英国の行政制度である。
これに対し,alimentは,子の必要,父母の資力・稼働能力その他の事情を踏まえてスコットランドの裁判所が定める扶養であり,CMSを利用できない国外居住事案,大学等の教育中の子,高所得者の上乗せ,教育費又は障害費用等で問題となる。

確認事項CMSのchild maintenanceスコットランド法のaliment
主な根拠Child Support Act 1991Family Law (Scotland) Act 1985
決定主体CMSsheriff court又はCourt of Session
金額の考え方法定算式による週額計算必要・資力・稼働能力その他の事情
年齢の基本線原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満18歳未満,又は教育・職業訓練中の18歳以上25歳未満
国外居住三者の英国常居所を原則とし例外ありCMSの権限がない場面でも裁判所の検討余地あり

したがって,「スコットランドの養育費はいくらか」「何歳までか」「不払いをどう回収するか」という質問には,最初にCMSの管轄と対象年齢を確認し,次にaliment又は国際回収の経路が必要かを判定する必要がある。

第2 スコットランドの養育費はいくらか

1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する

CMSは,通常,支払親の年間総所得を週額へ換算し,私的年金拠出,支払親が扶養する他の子,対象となる子の人数及びshared careの宿泊日数等を順に反映する。
年収だけから一律額を答えることはできず,税引前所得,年金拠出,他の子,対象となる子及び宿泊日数をそろえて計算する必要がある。

調整後の週額総所得CMSの主な率
7ポンド未満nil rateとなる場合がある
7ポンド以上100ポンド以下又は一定の給付受給通常はflat rate
100.01ポンド以上200ポンド未満reduced rate
200ポンド以上800ポンド以下basic rate
800ポンド超3000ポンド以下basic rateにbasic plus rateを加える

basic rateは,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%である。
週額総所得が800ポンドを超える部分には,3000ポンドを上限として,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を加える。
例えば,調整後の週額総所得が1000ポンドで対象となる子が2人なら,shared care等を反映する前の週額は,800ポンドの16%である128ポンドと,残り200ポンドの12%である24ポンドの合計152ポンドとなる。
この例は算式の説明にすぎず,個別事件の確定額ではない。

2 shared careで減額される場合がある

子が支払親のもとに年間52泊以上する場合,CMSの計算額はshared careとして減額されることがある。

年間宿泊日数子1人ごとの減額割合
52泊から103泊7分の1
104泊から155泊7分の2
156泊から174泊7分の3
175泊超2分の1に加えて週7ポンド

日常の養育を父母が同等に分担し,non-resident parentが存在しないと評価される場合は,その子についてCMSのchild maintenanceは生じない。
単に「共同親権」「共同監護」と呼ばれているだけでなく,実際の日常養育と宿泊実績を確認する必要がある。

3 alimentはCMSの割合表では決まらない

alimentの額は,Family Law (Scotland) Act 1985第4条により,子の必要,父母双方の資力,稼働能力及び事件の全事情を考慮して定められる。
16歳未満の子については,子を養育する者が負担する養育費用を裁判所が合理的な範囲で含めることもできる。
そのため,日本の養育費算定表又はCMSの割合を,alimentの法定算式としてそのまま用いることはできない。

第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか

1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である

CMSの対象となるqualifying childは,原則として16歳未満である。
16歳以上でも,承認された水準の全日制教育又は訓練を続ける場合は,20歳になるまで対象となり得る。
スコットランド政府の案内では,対象となる教育水準は原則としてSCQF level 7以下であるが,Higher National Certificate及びCertificate of Higher Education等は除外される。

2 alimentは教育・訓練中なら25歳未満まで対象となり得る

Family Law (Scotland) Act 1985第1条でいうchildは,18歳未満の者に加え,教育機関で合理的かつ適切に学ぶ者又は就労・職業のための訓練を受ける18歳以上25歳未満の者を含む。
大学,Higher National Certificate又はHigher National Diploma等のadvanced educationはCMSの対象外となり得る一方,alimentでは対象となる余地がある。
したがって,「20歳で必ず終了する」とも「25歳まで当然に続く」ともいえず,CMSとalimentのどちらを問題にするか,教育・訓練の内容及び個別の必要と資力を確認する。

第4 スコットランドでは12歳以上の子どもが自分でCMSへ申請できるか

Child Support Act 1991第7条は,スコットランドに常居所を有する12歳以上のqualifying childに,自分に関するmaintenance calculationを申請する権利を認める。
ただし,person with care又はnon-resident parentから同じ申請がされていないこと等の法定要件がある。
これはイングランド及びウェールズにはないスコットランド特有の仕組みであり,親による申請と子自身による申請を混同してはならない。

第5 子どもに会えなくても養育費を支払うのか

原則として支払う。
スコットランド政府は,親が子に会っていなくても,父母双方が子の養育費を負担すると説明している。
contact又はresidenceの争いと,child maintenance又はalimentの支払義務は別の法的問題であり,面会が実現しないことだけを理由に一方的に支払を停止すべきではない。
ただし,実際のshared careの宿泊日数又は日常養育の分担はCMSの額又は支払義務の有無に影響し得るため,面会の権利論とは分けて事実を記録する。

第6 父母間の合意はどのように扱われるか

父母は,金額,支払日,送金方法,教育費・医療費等の分担及び見直し時期を私的に合意できる。
口頭又は非公式の合意だけでなく,合意内容と支払履歴を文書で残すことが重要である。
スコットランドでは,solicitorが作成するminute of agreementをBooks of Council and Sessionへ登録し,裁判所命令と同様に執行できる形にする方法がある。
もっとも,私的合意又は登録合意がある場合でも,後にCMSを利用できるか,裁判所承認後12か月の制限があるか,国外で承認・執行できるかは別に確認する。

第7 CMSとsheriff courtのどちらを使うのか

1 CMSの権限がある通常の定期養育費はCMSが出発点となる

Child Support Act 1991第8条は,CMSの制度が適用される範囲で,裁判所が定期的な子の扶養命令をする権限を制限する。
そのため,父母が別居したというだけで,CMSとsheriff courtのいずれにも自由に同じ定期養育費を請求できるわけではない。
まず,子,受領親及び支払親の常居所並びにCMSの法定管轄を確認する。

2 aliment又は裁判所の追加命令を検討する場面がある

CMSが権限を有しない国外居住事案,advanced education中の18歳以上25歳未満の子,支払親の週額総所得がCMS上限を超える場合のtop-up,教育費及び障害に伴う費用等では,裁判所の権限を検討する。
alimentだけを求める請求は,Family Law (Scotland) Act 1985第2条により,Court of Session又はsheriff courtに提起でき,子自身も請求主体となり得る。
裁判所は,同法第3条に基づき,定期金のほか,教育費等のための臨時又は特別の支払を命じ,special causeがあれば請求前の期間へ遡らせることができる場合がある。

第8 養育費が支払われない場合にCMSはどう回収するか

CMSのDirect Payで支払が遅れ又は不足した場合,受領親はCMSへ報告し,Collect and Payへの変更を求めることができる。
Collect and Payでは,CMSが支払親の給与,銀行口座,給付又は年金等から徴収して受領親へ送金することがある。
現行の案内では,Collect and Payの通常支払には支払親側へ20%が加算され,受領親側では4%が控除される。

給与又は口座からの行政徴収が不適切又は奏功しない場合,Child Support Act 1991第33条は,Secretary of Stateがスコットランドのsheriffへliability orderを申請する仕組みを定める。
sheriffは未払の有無を審査するが,その手続で元のmaintenance calculation自体を問い直すことはできない。
liability orderがある場合,同法第38条に基づき,attachment,arrestment,furthcoming又はsale,inhibition等のスコットランド法上のdiligenceによる回収が可能となる。

第9 aliment又は登録合意の不払いはどう扱うか

alimentの判決又は登録されたminute of agreementは,CMSのCollect and Payとは別の執行名義・執行経路を検討する。
支払条項,滞納額,送達・登録状況,支払親の財産及び所在地を確認し,スコットランドのsolicitor又は執行担当者とdiligenceの種類を選ぶ。
CMS calculationの未払とaliment decree又は登録合意の未払を同じ債権としてまとめず,発生根拠,期間及び未払額を分けて整理する。

第10 親の一方が日本その他の国外に住む場合

1 CMSを当然に利用できるとは限らない

Child Support Act 1991第44条の原則では,子,受領親及び支払親が英国に常居所を有することがCMSの管轄に関係する。
支払親が英国外へ常居所を移した場合,英国公務に関係する一定の例外等を除き,CMSが既存計算を終了し又は新規申請を扱えないことがある。
この場合は,スコットランドのaliment,既存の裁判所命令若しくは登録合意,又は相手国での新たな命令の取得を検討する。

2 国際回収では相互執行の根拠を国ごとに確認する

スコットランドは,2007年ハーグ扶養条約等に基づく国外回収について独自の中央当局を有する。
相互執行の対象国では,裁判所命令又は登録合意の承認・執行について中央当局を通じた支援を受けられる場合がある。
私的な非公式合意だけでは,国外の支払親が支払を停止したときにそのまま強制執行できない。

令和8年10月16日に確認した2007年ハーグ扶養条約の公式締約国表には英国が掲載される一方,日本は掲載されていない。
したがって,日本とスコットランドの間で同条約又はREMOの中央当局ルートを当然に利用できるとは扱わない。
具体的事件では,判断又は合意の種類,子及び父母の常居所,支払親の雇用主,財産所在地,送達・確定の証明,翻訳並びに相手国の承認・執行要件を個別に確認する。

第11 相談時に確認する資料

①子及び父母の氏名,生年月日,国籍,現在と過去の住所及び常居所の経過。
②子の学校・大学・訓練の名称,課程,教育水準,在籍期間及び修了見込み。
③父母の雇用主,給与,自営業所得,年金拠出,給付,資産及び他の扶養児童。
④子の年間宿泊日数,日常養育の分担及びその裏付けとなる日程表・通信記録。
⑤CMSの申請書,maintenance calculation,annual review,Direct Pay又はCollect and Payの通知及び支払履歴。
⑥裁判所命令,minute of agreement,Books of Council and Sessionの登録記録及び既存の執行記録。
⑦未払額を月別に示す一覧,銀行明細,送金通貨,為替手数料及び支払親の財産所在地。
⑧日本その他の国の審判・判決・調停調書,確定証明,送達証明及び翻訳。

第12 関連記事及び出典

関連記事は,①イギリスの養育費の法制度―CMSの計算・対象年齢・不払い・日本からの請求(イングランド及びウェールズ),②国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行,③国際扶養の準拠法―常居所地法・共通本国法・日本法である。

主な一次資料は,①Child Support Act 1991,②Family Law (Scotland) Act 1985,③Child Support Maintenance Calculation Regulations 2012,④Child Support Fees Regulations 2014である。
主な公式資料は,⑤mygov.scot「Child maintenance」,⑥GOV.UK「How we work out child maintenance」,⑦Scottish Parliament Information Centre「Financial support for children from parents: cross-border cases」,⑧HCCH「2007年ハーグ扶養条約の締約国表」である。

本記事は,令和8年10月16日現在の法令及び公的資料に基づく制度の概説である。
スコットランド判例の網羅的な検索及び個別事件における日本の判断の承認・執行可能性までは確認していないため,具体的事件ではスコットランド法の有資格者及び関係する中央当局への確認を要する。