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フィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

本記事は,フィリピン共和国のFamily Code(家族法)による親から子への養育費と,日本・フィリピン間での請求,外国判断の承認及び強制執行を扱う。
イスラム身分法が適用される事件その他の特別法上の事件には別の規律があり得るため,本記事の一般論をそのまま当てはめない。

「フィリピン人の親であれば常にフィリピン法が適用される」「月収の一定割合で決まる」「18歳で必ず終了する」「外国の裁判があれば相手国で直ちに差し押さえられる」という理解はいずれも正確ではない。
子の常居所,親子関係,準拠法,既存の合意・裁判,請求日,父母の資力,子の具体的な必要及び財産所在地を順に確認する必要がある。

論点フィリピン法の基本線日比間の事件で追加確認する事項
金額義務者の資力・手段と権利者の必要に比例する日本の算定表又は固定割合を当然に用いない
対象費用生活,住居,衣服,医療,教育及び交通を含む既存合意が特別費をどう扱うか確認する
請求時期必要が生じた時から請求可能だが,支払は裁判上又は裁判外の請求日以後が原則である請求到達の証拠と未払額計算を保存する
支払終期18歳だけで一律に決まらず,成年後の教育・訓練や障害も問題となる準拠法と合意・裁判の文言を確認する
越境回収外国判断は相手国で承認・執行の手続を要する判断の種類,確定・送達,翻訳及び財産所在地を確認する

第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

フィリピン家族法195条は,父母とその子の間の扶養義務を定め,婚姻中に生まれた子と婚姻外で生まれた子をいずれも対象に含める。
父母が婚姻しているか,別居しているか又は婚姻の効力を争っているかだけで,子の養育費請求権が消滅するわけではない。

もっとも,親子関係が争われる事件では,養育費の金額に先立ち,出生証明書,認知,裁判その他の資料によりfiliation(親子関係)を確認する必要がある。
未成年の子について誰が手続上請求を行うか,日本の手続で誰が申立人又は法定代理人となるかも,準拠法と手続法を分けて検討する。

同法199条・200条は,複数の扶養義務者がいる場合の順位と,各人の資力に応じた負担を定める。
父だけ又は母だけが常に全額を負担するとの前提を置かず,父母双方の収入・財産,現実の監護及び他の扶養負担を確認する。

第3 養育費に含まれる費用

フィリピン家族法194条によれば,supportには,家族の経済力に応じた生活,住居,衣服,医療,教育及び交通に不可欠な費用が含まれる。
教育には,成年後であっても,職業,職種又は技能のための就学・訓練が含まれ,交通には通学又は通勤の費用が含まれる。

したがって,食費だけを養育費として計算するのは不十分である。
家賃又は住居費,衣服費,医療費,授業料・教材費,通学費その他の必要費を項目別に整理し,領収書,学校資料,診療資料及び送金記録で裏付ける。

通常の月額に何を含め,学費,入院費その他の臨時支出をどの割合で追加負担するかは,合意書又は裁判で具体化することが望ましい。
通貨,送金手数料,為替差及び支払日も,日比間の継続払いでは明記する。

第4 フィリピンの養育費はいくらか

フィリピン家族法201条は,養育費の額を,支払義務者のresources or means(資力又は手段)と受給者のnecessities(必要)に比例させる。
同条は,一律の金額又は給与に対する固定割合を定めていない。

金額を検討するときは,子の年齢,健康,教育,住居及び日常生活上の必要を積み上げるとともに,父母双方の給与,事業所得,資産,生活水準,他の扶養義務及び現実の監護負担を確認する。
収入資料が乏しい場合も,給与明細の有無だけで支払能力を判断せず,銀行取引,事業,資産及び生活実態を調査する。

同法202条により,受給者の必要又は義務者の資力が増減すれば,養育費も比例して増減し得る。
一度決めた月額が将来にわたり固定されるとは限らないため,進学,疾病,転職,失業又は収入増減が生じた場合の資料と再協議方法を保存する。

第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか

フィリピン家族法203条は,扶養を必要とした時から義務を請求できる一方,支払は裁判上又は裁判外の請求日からとする。
そのため,単に長期間支払がなかったという事実だけで過去の全期間分が当然に認められるとは扱わず,請求書,電子メール,メッセージ,内容,送信日及び相手方への到達を保存する。

同条は,原則として各月の最初の5日以内に支払うことも定める。
未払額表には,請求日,支払開始月,各月の支払期,合意又は裁判の月額,支払済額,現物給付,送金手数料及び残額を記載する。

フィリピン民事訴訟規則Rule 61は,本案の係属中にsupport pendente lite(暫定的な扶養)を求める手続を定める。
申立てでは,請求の根拠と双方の経済状況を示し,宣誓供述書,供述録取書その他の真正な資料を添付する。

第6 フィリピンの養育費は何歳までか

フィリピン最高裁判所のRules on Action for Supportは,childを18歳未満の者又は身体・精神の障害により自らを十分に扶養できない18歳以上の者と定義する。
しかし,同規則及びフィリピン家族法194条は,教育のための就学又は職業訓練が成年後に及ぶ場合もsupportに含める。

したがって,「18歳になれば必ず終了する」とも,「大学卒業まで必ず支払う」とも一律にはいえない。
子の障害,教育・職業訓練の内容,生活維持能力,父母の資力,既存の合意又は裁判の終期を個別に確認する。

日本で手続をする場合は,日本の成年年齢だけから終期を決めない。
どの国の法が準拠法となるかを先に判断し,合意又は外国判断の文言と併せて検討する。

第7 離婚の成立,婚姻外の子及び不払い

2021年のRules on Action for Supportは,父母の婚姻状態にかかわらず子に適用される。
フィリピンで離婚又は婚姻無効の手続が完了していないことだけを理由に,子の養育費請求を待つ必要があるとは限らない。

養育費の不払いは,まず家族法上の扶養請求,暫定扶養,外国判断の承認及び民事執行の問題として整理する。
他方,女性及び子に対する暴力防止法(RA 9262)は,法定の関係と要件の下で,経済的虐待として扶養の撤回又は拒絶を問題とすることがある。

Cumigad v. Peopleは,扶養の意図的な拒絶又は著しく不十分な給付が同法上問題となり得ることを示す。
もっとも,支払遅滞又は金額争いがあれば常に刑事責任が成立するわけではなく,行為,故意,法定関係及び証拠を個別に確認する。

第8 日本で新たに請求する場合の管轄と準拠法

日本の裁判所で新たに養育費を請求できるかは,家事事件手続法3条の10その他の国際裁判管轄規定により判断する。
日本の裁判所に管轄があることと,日本法が養育費の内容を定めることは同じではない。

扶養義務の準拠法に関する法律2条は,第一に扶養権利者の常居所地法を適用し,その法で扶養を受けられないときは当事者の共通本国法,さらに扶養を受けられないときは日本法へ進む。
子がフィリピン国籍であること,父又は母がフィリピン人であることだけで,当然にフィリピン法が適用されるわけではない。

子の常居所がフィリピンにあり同法2条1項本文によりフィリピン法が準拠法となる場合は,フィリピン家族法194条・201条以下に基づいて請求内容を構成する。
常居所の事実認定,重国籍,共通本国法,権利行使者及び適用時点は,生活実態を示す資料から確認する。

第9 フィリピンで新たに請求する場合

2021年のRules on Action for Supportは,フィリピン家族法その他の法令により扶養を受ける者の本案請求と,外国の扶養判断の承認・執行を対象とする。
手続を選ぶ前に,新たな扶養請求なのか,既存の外国判断をフィリピンで使うのかを分ける。

新たな請求では,親子関係,請求日,子の必要,父母の資力,既払額及び求める支払方法を資料化する。
Family Courts Act(RA 8369)に基づくFamily Courtその他の権限ある裁判所,管轄及び送達を現地法により確認する。

Rules on Action for Supportによる本案判断は直ちに執行可能とされ,控訴だけでは執行が停止しない。
もっとも,実際の回収には,給与控除,預金・財産の特定,債務者の所在,現地の執行手続及び現地代理人を個別に確認する必要がある。

第10 フィリピンの判断を日本で使う場合

フィリピンの裁判所が養育費を命じても,日本国内の給与,預金又は不動産に対して直ちに強制執行できるわけではない。
判断の作成主体,法的性質,確定又は執行可能性,債権者・債務者,給付内容,対象期間及び送達・応訴の記録を確認する。

家事事件手続法79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判等について,その性質に反しない限り民事訴訟法118条を準用する。
外国裁判所の裁判権,敗訴者への適法な呼出し又は応訴,裁判内容・手続の公序及び相互の保証を確認する。

承認され得ることと,日本で給付部分を強制執行できることも別である。
民事執行法24条の執行判決と管轄を確認し,日本国内の財産に対する執行へ進む。

第11 日本の判断をフィリピンで使う場合

日本の審判又は判決を得ても,日本の執行手続をフィリピン国内の給与,預金又は不動産へ直接及ぼすことはできない。
2021年のRules on Action for Supportに基づく外国扶養判断のrecognition and enforcement(承認・執行)の申立てを検討する。

同規則19条・20条は,確認済みの申立書に,当事者・子の情報,判断の根拠・執行可能性,双方の経済状況,義務者の勤務先・資産その他の所在情報を記載し,外国判断の全文,作成国で執行可能であることの証明,適切な通知と争う機会があったことの確認,未払額資料等を添付する枠組みを定める。
外国判断と関係書類には認証又はアポスティーユを要し,英語でない場合は英語又はフィリピノ語の翻訳と所定の確認を要するため,提出先に最新要件を確認する。

同規則23条は,当事者の一方が判断国に常居所を有していた場合又は相手方が明示若しくは本案応訴により判断国の管轄へ服した場合等を承認・執行の基礎とする。
同規則24条は,法又は公序への反触,手続上の詐欺,競合する係属又は判断,通知・争う機会の欠如及び既払等の拒絶事由を定める。

日本の調停調書,私的合意書又は公正証書が,同規則のforeign judgment or decisionに当たるかは文書の法的性質ごとに確認する。
判決の承認手続と私的合意に基づく請求を同一視しない。

第12 2007年ハーグ扶養条約を日比間で利用できるか

2007年ハーグ扶養条約の締約国表によれば,フィリピンについて同条約は令和4年10月1日に発効している。
しかし,令和8年10月16日現在,日本は締約国表に掲載されていない。

したがって,日本とフィリピンの間で同条約の中央当局を通じた申請ルートを当然に利用できるとは扱わない。
日本以外の締約国とフィリピンの間の事件では条約が適用され得るが,フィリピンの宣言・留保,子の年齢,判断の種類及び相手国との発効関係を確認する。

条約ルートを使えないことは,日比間で養育費を請求できないことを意味しない。
日本又はフィリピンでの新たな請求,外国判断の承認・執行及び財産所在地国の執行を,事件の状況に応じて選ぶ。

第13 相談時にそろえる資料

① 子,直接養育する親及び支払義務者の氏名,生年月日,国籍,重国籍,住所,居所及び常居所の変遷をそろえる。
② フィリピンの出生証明書,日本の戸籍,認知,婚姻・別居・婚姻無効等の資料及び親子関係を争う資料をそろえる。
③ 養育費の合意書,調停調書,審判,判決,保護命令その他の原本又は正式な謄本をそろえる。
④ 判断の確定・執行可能性,適法な通知,送達,応訴及び不服申立ての記録をそろえる。
⑤ 父母双方の収入,事業,資産,生活水準,他の扶養義務及び現実の監護負担を示す資料をそろえる。
⑥ 子の生活費,住居費,衣服費,医療費,教育費,交通費及び特別支出を月別・項目別に整理する。
⑦ 裁判上又は裁判外の請求書,送信・到達記録,支払開始月,各月の支払期,既払額及び未払額表をそろえる。
⑧ 義務者の勤務先,銀行口座,不動産その他の財産が日本又はフィリピンのどちらにあるかを確認する。
⑨ 提出先ごとに翻訳,公証,アポスティーユ,領事確認及び原本提出の要否を確認する。

同じ未払分について複数国で手続を進める場合は,二重回収を避けるため,請求額,入金及び各手続の進行を一つの表で管理する。
相談時には,「日本で新たに請求する」「フィリピンで新たに請求する」「フィリピンの判断を日本で使う」「日本の判断をフィリピンで使う」のどの経路を検討しているかを明記する。

第14 よくある質問

1 フィリピンの養育費は給与の何%ですか

フィリピン家族法は固定割合を定めていない。
子の具体的な必要と義務者の資力・手段に比例して決めるため,費用明細と父母双方の経済資料を確認する。

2 養育費には学費や医療費も含まれますか

含まれる。
生活,住居,衣服,医療,教育及び交通に不可欠な費用が対象となるが,通常の月額と臨時支出の分け方は合意又は裁判で具体化する。

3 過去の未払分はいつから請求できますか

フィリピン家族法203条は,支払を裁判上又は裁判外の請求日からとする。
請求の内容,送信日及び到達を示す資料を保存し,個別事件の未払期間を確認する。

4 子が18歳になれば必ず養育費は終わりますか

必ずではない。
成年後の教育・職業訓練や,障害により自らを十分に扶養できない場合が問題となるため,準拠法,子の状況及び既存文書の終期を確認する。

5 父母が結婚していない子も請求できますか

婚姻外で生まれた子も対象となる。
ただし,親子関係が争われるときは,認知その他のfiliationを示す資料を先に確認する。

6 養育費を払わなければ直ちに逮捕されますか

直ちに逮捕されるとは限らない。
民事上の扶養請求・執行と,RA 9262の経済的虐待に関する要件を分け,意図的な拒絶,法定関係及び証拠を個別に確認する。

7 フィリピンで離婚していなければ養育費を請求できませんか

離婚等の成立が養育費請求の一律の前提ではない。
親子関係,子の必要,請求日及び手続の管轄を確認する。

8 日本に住む親からフィリピンにいる子が請求できますか

国籍や居住地だけでは結論が出ない。
日本又はフィリピンのどちらで本案手続を行うか,日本の国際裁判管轄と準拠法,送達及び義務者の財産所在地を確認する。

9 日本とフィリピンの間ではハーグ条約で回収できますか

令和8年10月16日現在,日本は2007年ハーグ扶養条約の締約国ではないため,日比間で中央当局ルートを当然に使えるとは扱わない。
新たな請求又は相手国での外国判断の承認・執行を検討する。

第15 関連記事と出典

日比間を含む国際養育費の管轄,準拠法及び外国裁判の承認・執行の全体像は,国際養育費の請求と回収を参照されたい。
準拠法の段階的な決め方は,国際扶養の準拠法で整理している。
日本国内の不払いへの回収方法は,養育費を払わない場合の回収方法を参照されたい。
外国にいる当事者への訴訟書類等の送達は,外国送達の方法,送達条約及び公示送達を参照されたい。

本記事は,令和8年10月16日現在の次の法令,裁判規則,最高裁判所資料,HCCH締約国表及び日本法を基礎とする。
フィリピンの裁判所における最新の提出方法,費用,送達及び執行運用,日本の調停調書・公正証書・私的合意書のフィリピンでの取扱い並びに個別事件の管轄は,現地弁護士及び提出先へ追加確認を要する。

① フィリピン家族法(Executive Order No. 209) https://elibrary.judiciary.gov.ph/thebookshelf/showdocs/5/95173
② Rules on Action for Support and Petition for Recognition and Enforcement of Foreign Decisions or Judgments on Support(A.M. No. 21-03-02-SC) https://elibrary.judiciary.gov.ph/assets/dtSearch/document_repository/sc/circular/OCA%20Circulars%20PDF/2021/OCA-Circular-No.-70-2021.pdf
③ Rule 61, Rules of Civil Procedure(Support Pendente Lite) https://lawphil.net/courts/rules/rc_1-71_civil.html
④ Family Courts Act of 1997(Republic Act No. 8369) https://elibrary.judiciary.gov.ph/thebookshelf/showdocs/2/4354
⑤ Anti-Violence Against Women and Their Children Act of 2004(Republic Act No. 9262) https://pcw.gov.ph/republic-act-9262-anti-violence-against-women-and-their-children-act-of-2004/
⑥ Cumigad v. People https://elibrary.judiciary.gov.ph/thebookshelf/showdocs/18/68008
⑦ HCCH「2007年ハーグ扶養条約の締約国表」 https://www.hcch.net/en/instruments/conventions/status-table/?cid=131
⑧ 扶養義務の準拠法に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/361AC0000000084/
⑨ 家事事件手続法 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052
⑩ 民事訴訟法 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
⑪ 民事執行法 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004