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裁判官の倫理―贈答・会食・講演依頼と利害関係者の考え方(AI作成)

第1 裁判官の倫理を定める枠組み

裁判官の倫理では,事件当事者等との関係で,裁判の公正に対する疑惑や不信を招かないことが重要となる。
贈答,会食,講演依頼等の判断では,相手が誰かだけでなく,担当事件との関係,利益の内容,費用負担及び依頼の経緯を検討する必要がある。
裁判官の倫理上の問題と,有償の職務に従事する際の兼職許可は,別々に確認すべき事項である。

本記事は,裁判官ハンドブックの倫理の章と,令和7年度新任判事補研修の「裁判官の倫理について」に基づき,日常の具体的場面を説明する。
裁判所法49条・52条の法律上の制約と,平成12年の高等裁判所長官申合せ及び人事局による参考事例は,根拠の性質が異なる。
参考事例を,個別の行為をあらかじめ許可する規定として扱うことはできない。

第2 国家公務員倫理法は裁判官に直接適用されるか

裁判官には,国家公務員倫理法等が一般の国家公務員と同じ形で直接適用されるわけではない。
平成12年6月15日の高等裁判所長官申合せは,事件当事者等との関係において,同法,政令及び最高裁判所規則の定める倫理規範を尊重することを申し合わせている。
「直接適用されないこと」と,「倫理規範を尊重すること」は両立する。

令和7年度の説明資料は,国家公務員倫理法6条から8条までの贈与等の報告を,この申合せの対象外としている。
また,裁判官について倫理監督官制度を設けず,個々の裁判官の自律的判断に委ねると説明している。
そのため,一般職員の届出や倫理監督官の承認を,裁判官にもそのまま必要な手続として説明するのは適切ではない。

同資料は,申合せで参照する禁止行為に当たらないという理由だけで,従来から裁判官倫理上相当でないと考えられる行為が許されることにはならないとも説明している。
法令や例示の形式的な該当性だけでなく,裁判の公正に対する信頼を損なうかという観点が残る。

第3 利害関係者とは誰か

1 自分の担当事件の当事者等

研修資料は,自己の担当事件の当事者,代理人,被告人,弁護人,起訴検事及び公判立会検事を,利害関係者として説明している。
該当性は,個々の裁判官の担当する職務に即して判断する。
弁護士又は検察官という職業だけで,すべての裁判官との関係で一律に利害関係者となるわけではない。

同資料は,事件の係属から,確定又は上訴による移審等によって担当する可能性がなくなるまでという期間を説明している。
また,通常の注意によれば将来その事件の当事者となろうとしていることが明らかな者も,判断の対象となる。
担当事件が終わったという形式だけで,相手との関係におけるあらゆる倫理問題が消えるという意味ではない。

2 司法行政や官職上の影響力に関わる相手

事件の当事者以外にも,司法行政事務に従事する裁判官と,不利益処分の名宛人又は契約相手との関係が問題になる。
物品納入,役務調達及び工事請負等の契約事務に携わる場合には,その契約の相手方との関係を確認する必要がある。
他の職員や裁判官の利害関係者が,官職に基づく影響力を利用させて自らの利益を得ようと接触していることが明らかな場合についても,資料に説明がある。

3 弁護士会と個々の弁護士を区別する

研修資料は,日弁連や各単位弁護士会等について,団体自体が利害関係者となる要件を満たす場合と,構成員の一部だけが利害関係者となる場合を区別している。
団体の会合に担当事件の代理人が参加しているからといって,団体自体の該当性まで当然に同じになるわけではない。
団体との関係と,参加する構成員一人ひとりとの関係を分けて検討する必要がある。

4 破産管財人・債権者・後見人等としての関係

令和7年度研修資料89頁(PDF7頁)の別紙1「利害関係者該当性一覧表」は,自己の担当事件との関係で,破産管財人,破産債権者及び財団債権者を,利害関係者に該当するものとして掲げている。
破産管財人については裁判所の監督権があること,破産債権者及び財団債権者については手続上の権利を行使する者であることが,考慮された要素として示されている。

家事事件については,後見人,保佐人,後見監督人,保佐監督人及び補助監督人等が掲げられ,裁判所が職権で解任できることが考慮された要素とされている。
したがって,弁護士が当事者の代理人を務めていない場合でも,管財人や後見人等としての職務により,担当裁判官との関係を検討する必要がある。

これらの説明は,職業名だけで相手を分類するものではない。
会食,贈答又は講演の依頼を考える際には,どの事件のどの職務に関わる相手なのか,事件の係属状況,会合の目的及び費用負担を分けて確認する必要がある。
利害関係者に該当するという説明だけで,あらゆる接触の禁止,忌避事由,懲戒事由又は犯罪の成立まで一律に決まるものではない。

第4 贈答・香典・金銭やサービスの提供

利害関係者から金銭,物品又は不動産の贈与を受けることは,研修資料が示す禁止行為の原則に含まれる。
祝儀,香典,供花等も,名称だけで贈与の問題から除かれるわけではない。
広く一般に配る宣伝用物品や記念品等の例外は,その要件を満たすかを別に確認する必要がある。

香典については,別の親族との関係で持参したものか,裁判官本人に対するものかが問題となる。
研修資料は,利害関係者からの香典を受け取った後,別の親族との関係によるものと判明した場合を除き,速やかに返却する取扱いを説明している。
葬儀の受付で受領したことから,当然に問題がなくなるわけではない。

無償の物品・不動産の貸付け,サービスの提供,未公開株式の譲渡等にも注意が必要である。
金融機関が利害関係者に当たる場合でも,一顧客として通常の条件で借りる場合と,無利子又は著しく低い利率で便宜を受ける場合は区別される。
第三者を介して利益を受ける場合にも,実質的な費用負担者との関係を確認する必要がある。

第5 裁判官は事件関係者と会食できるか

1 費用負担と会合の性質を確認する

利害関係者から供応接待を受けることは,研修資料では原則として避けるべき行為として説明されている。
職務として出席した会議での茶菓や簡素な飲食物,多数の者が出席する立食パーティー等については,例外となる場合の説明がある。
私的な飲み会を,職務上の会議の例外として扱うことはできない。

裁判官としての身分にかかわらない私的な関係がある場合でも,職務上の利害関係,私的関係の経緯・現在の状況及び行為の態様を考慮する必要がある。
旧友や知人であるという事情だけで,常に供応接待が許されるわけではない。
公正な職務の執行に対する疑惑や不信を招くおそれがないかを検討することが必要である。

2 割り勘なら必ず問題がないか

自分の飲食費を自分で負担することは,利害関係者による供応接待との区別において意味がある。
しかし,令和7年度研修資料は,倫理規程上問題がない場合でも,事件関係者との飲食は裁判官倫理上別に考えるべきであると説明している。
したがって,「割り勘なら必ず問題がない」と結論付けることはできない。

相手との事件上の関係,会合の目的,時期,参加者及び外部から見た裁判の公正への影響を併せて検討する必要がある。
自費負担であることと,裁判官倫理上相当であることは,同じ判断ではない。

第6 講演・執筆の依頼と兼職許可

利害関係者からの講演・執筆等の依頼について,研修資料は,公正な職務の執行への疑惑や不信を招くかどうかを判断し,原則として断ることが望ましいと説明している。
相手が公的団体か,原因となる事件の性格,依頼の経緯,便宜供与への期待の有無及び研修的な内容か等が,検討事項として挙げられている。
報酬額だけでなく,依頼の目的と事件との関係が重要となる。

同資料には,講演1時間当たり2万円程度,執筆400字当たり4000円程度という参考基準が記載されている。
これらは資料が参照する報酬基準であり,その金額以下ならあらゆる依頼が許されるという安全な上限ではない。
現在の個別依頼の可否を,金額だけで決めることはできない。

報酬のある他の職務への従事については,裁判所法52条2号の兼職許可が別に問題となる。
無報酬の場合にも,兼職通達上の許可が必要となる類型がある。
大学等の講師,委員会への参加及び申請の時期・期間については,裁判官の兼職を参照されたい。

第7 株式取引と職務上知った情報

令和7年度研修資料には,令和6年11月15日付け人事局長連絡文書が収録されている。
同文書は,出向中かどうかにかかわらず,株式等の取引で国民の疑惑や不信を招く行為を慎み,インサイダー取引規制に抵触する行為をしないよう求めている。
職務の遂行中に機微な情報へ接する場合には,一層留意することも示されている。

これは,株式の保有や取引を一律に禁止する説明ではない。
また,同文書が発出されたことは,報道で言及された個人の違法行為が確定したことを意味しない。
具体的な取引の法的評価は,情報の内容,取得経緯及び取引時点等によって別に検討される。

第8 主な根拠資料

① 裁判官の倫理について(令和7年度新任判事補研修の資料)83頁から91頁まで(PDF1頁から9頁まで)。
② 裁判官ハンドブック(令和3年3月)47頁から54頁まで(PDF49頁から56頁まで)。
③ 裁判所法49条及び52条。
④ 国家公務員倫理法(裁判官への直接適用と,申合せによる倫理規範の尊重は区別する)。

SNSを含む私的活動の一般的な説明と,具体的な懲戒判断との関係は,堀田眞哉最高裁人事局長の国会答弁第4及び第5で整理している。
本記事の法令の確認日は,令和8年10月14日である。