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令和5年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和5年司法試験租税法第2問について,法務省の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した35項目と,2500字以内の模範解答を示す。
法人への遺贈から遺留分侵害額請求,代物弁済,役員への住宅利用利益までを,主体・課税年度・金額・根拠条文に分けて読む。

第1 この記事の対象と結論

対象は令和5年司法試験・租税法の問題の第2問(PDF物理11・12頁)である。
E社の受贈益6000万円と各土地の取得価額3000万円,Aのみなし譲渡所得,E社の遺留分負担と代物弁済の区別が前半の中心となる。
後半では,住宅の無償利用による益金と役員給与の損金,E社の源泉徴収義務を別々に検討する。

評価項目は35件,重み合計は123である。
重み5は番号4・16・24・25・31の5件であり,取得価額の根拠,損失と費用の条文上の区別,設問2の両要素,無償役務の益金,特則不適用後の損金通則への接続を扱う。
重みは本記事の分析によるものであり,法務省の配点・公式採点基準ではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

表の番号は記事全体を通した公開番号である。
一項目につき一つの判定対象を置き,必須・高評価・負例・許容分岐の区分と適用条件を評価項目欄に示す。
負例は避けるべき記載であり,許容分岐は採用した枝にだけ適用するため,全項目を全答案へ累積要求しない。

出典欄の頁はPDF先頭を1頁とする物理頁である。
「記載なし」は対象問題の関連範囲を実読してその事項の明示がないという意味である。
引用は所在を確かめる短い抜粋であり,引用の文言だけが判定基準の全文という意味ではない。
具体的な基準・区分・重みの選択は本記事の分析である。

2 5段階の重み付けの基準

重み5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの。
重み4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
重み3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。
重み2=一方が軽い表現で触れる補強又は典型的な誤り。
重み1=一方が控えめに触れるだけの事項。

重み4では両公式資料の対応箇所を確認するが,すべてを「高く評価された事項」と呼ぶものではない。
区分と重みは独立し,重み5でも高評価項目を当然の最低限へ格上げしない。
各重みへの件数割当ては行わず,無重みの一般的な指摘や補足は35項目の集計へ混ぜない。

第3 本問の概要

Aは令和3年10月1日に死亡し,全財産をE社へ包括遺贈した。
甲・乙土地はそれぞれ2000万円で取得され,死亡時の時価は各3000万円であった。
相続人Bは令和4年3月15日に遺留分侵害額請求を行い,同年6月10日の合意でE社が3000万円の金銭支払義務を認め,同月25日に乙土地を代物弁済として移転した。

E社の事業年度は4月1日から翌年3月31日までである。
代表取締役Dは,株主総会決議に基づき報酬の一部として,甲土地上の丙家屋を令和4年3月1日から令和5年3月31日まで無償利用した。
通常賃料は月額10万円であり,設問3は令和5年3月期の扱いを尋ねる。

租税特別措置法は適用せず,設問1では指定された土地以外の財産を考慮しない。
記載のない費用等を足さず,金銭請求の発生,負担額の具体化,代物弁済の履行をそれぞれ分ける。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴:受贈益

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1法人への遺贈を法人税法22条2項の無償譲受けとして処理する。【必須】4物理22頁・設問1⑴:「遺贈を受けた法人の受贈益課税」物理11頁・設問1⑴:「「無償による資産の譲受け」」
2死亡時・遺贈時の時価により土地2筆の受贈益6000万円を算定する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理11頁・設問1⑴:「土地の遺贈時の」
3受贈益を令和4年3月期の益金と特定する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理11頁・設問1⑴:「「どの事業年度の」」

2 設問1⑵:土地の取得価額

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
4土地の取得価額の直接規定を確認した上で法人税法22条4項の公正処理基準を根拠に説明する。【高評価】5物理22頁・設問1⑵:「取得費ないし取得価額の機能」物理11頁・設問1⑵:「法人税法第22条第4項が依拠する公正処理基準」
5土地の取得価額を取得時時価各3000万円・合計6000万円とする。【必須】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑵:「取得時時価6000万円が取得価額」
6公正処理基準を知らない場合,みなし譲渡との関係で含み益の二重課税回避を理由として取得時時価を説明する。【許容分岐】適用:公正処理基準による説明を採らず,二重課税回避から説明する枝に限る。本答案は採らない。3物理22頁・設問1⑵:「取得費ないし取得価額の機能」物理11頁・設問1⑵:「土地の含み益に対する二重課税を」
7個人に適用される所得税法60条をE社の取得価額へ直接適用しない。【負例】2記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑵:「同条は「居住者」すなわち個人」

3 設問1⑶:Aのみなし譲渡所得

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
8法人への遺贈に所得税法59条1項1号のみなし譲渡課税を適用する。【必須】4物理22頁・設問1⑶:「遺贈した個人のみなし譲渡所得課税」物理12頁・設問1⑶:「「法人に対する」「遺贈」」
9死亡時の価額で各3000万円・合計6000万円を譲渡収入とする。【必須】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑶:「遺贈者死亡時の時価相当額6000万円」
10各2000万円・合計4000万円の取得費を控除して合計譲渡益2000万円を求める。【必須】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑶:「取得費その他譲渡所得金額の算定に必要な要素」
11平成元年頃の取得から死亡まで5年を超えることを示して長期譲渡所得と判定する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑶:「これが長期譲渡所得であると判断するのか」
12所得税法33条4項の特別控除50万円を合計譲渡益から一度控除する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑶:「特別控除額(所得」
13特別控除後の長期譲渡所得に所得税法22条2項2号を適用し総所得金額算入額975万円とする。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問1⑶:「どのような順序で適用されるか」
1459条1項1号で処理できる事項について清算課税説を長く展開して分量を費やさない。【負例】2記載なし(第2問関連範囲実読)物理15頁・設問1⑶:「端的に所得税法第59条第1項第1号を挙げれば済む」

4 設問2:遺留分侵害額請求と代物弁済

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
15改正後の遺留分侵害額請求を金銭債権として扱い,旧減殺制度による遺贈財産の帰属論へ置き換えない。【必須】4物理22頁・設問2:「遺留分の金銭債権化」物理12頁・設問2:「遺留分の金銭債権化」
16遺留分負担による財産流出を法人税法22条3項3号の損失として認識する。【必須】5物理22頁・設問2:「同法第22条第3項第3号の「損失」」物理12頁・設問2:「「損失」(同3号)」
173号の損失に債務確定要件が明文で置かれていないことを踏まえ,損失実現の時期を解釈により説明する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問2:「これを解釈で導く必要がある」
18請求の私法上の性質と具体的金額の確定時点を区別して損失の年度帰属を理由付ける。【高評価】4物理22頁・設問2:「どの課税年度に帰属するか」物理12頁・設問2:「損失額の具体的な金額が確定するのはどの時点か」
19採用した金額確定基準に対応する課税事業年度と損失額を示す。【必須】適用:金額確定を合意時とする本答案の枝。公式は損失年度の唯一の結論を明示指定していない。3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問2:「損失の帰属年度を論じればよい」
20乙土地の移転を債務消滅という対価を伴う代物弁済・有償譲渡として構成する。【必須】4物理22頁・設問2:「債務の消滅を伴う有償による資産の譲渡」物理12頁・設問2:「「有償による資産の譲渡」」
21代物弁済で消滅する債務3000万円を法人税法22条2項の益金とする。【必須】4物理22頁・設問2:「益金と損金それぞれを算定する構造」物理12頁・設問2:「消滅した」
22E社の取得価額3000万円を法人税法22条3項1号の譲渡原価として損金に算入する。【必須】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理12頁・設問2:「原価(法人税法第22条第3」
23合意に基づく引渡し・債務消滅の令和4年6月25日を捉え,譲渡の益金と原価を令和5年3月期へ対応させる。【必須】4物理22頁・設問2:「どの課税年度に帰属するか」物理12頁・設問2:「合意に基づき引渡しがなされ債務消滅の利益が生じた令和4年度」
24譲渡損益零と遺留分負担の損失3000万円を別の要素として回収し,取引全体の純資産減少を説明する。【高評価】5物理22頁・設問2:「第1の要素と併せて」物理13頁・設問2:「上記①・②両方の要素に言及できていた答案」

5 設問3⑴:無償住宅利用の法人税

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
25無償住宅利用を法人税法22条2項の無償による役務の提供として益金認識する。【必須】5物理22頁・設問3⑴:「無償による役務の提供から益金が生じ」物理13頁・設問3⑴:「「無償による役務の提供」」
26無償役務の認定収益を正常対価で取引する法人との課税上の均衡から説明する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理13頁・設問3⑴:「正常対価で」
27令和5年3月期の通常賃料月10万円×12か月=120万円を益金に計上する。【必須】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理13頁・設問3⑴:「年間の賃料相当額120万円」
28役員の労務と住宅利用を交換した有償役務と構成して労務受入れ自体を益金にしない。【負例】2記載なし(第2問関連範囲実読)物理13頁・設問3⑴:「これは正しくない」
29代表取締役Dに供与する住宅利用利益を法人税法34条4項の役員給与とする。【必須】4物理22頁・設問3⑴:「法人税法上の役員給与」物理13頁・設問3⑴:「役員給与に当たる」
30毎月おおむね一定の継続利益を法人税法34条1項1号・施行令69条1項2号の定期同額給与に当てはめる。【必須】4物理22頁・設問3⑴:「損金算入要件について条文に則して」物理13頁・設問3⑴:「同法施行令第69条第1項第2号」
3134条1項の損金不算入特則が適用されないため,通則22条3項2号の費用として損金算入するという規定間関係を説明する。【高評価】5物理22頁・設問3⑴:「同法第22条3項2号の「費」物理13頁・設問3⑴:「「費用」として」

6 設問3⑵:源泉徴収義務

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
32住宅利用の経済的利益がDの所得税法28条1項の給与所得に当たると示す。【必須】4物理22頁・設問3⑵:「ある経済的利益が給与所得に該当」物理13頁・設問3⑵:「給与所得(所得税法第28条第1項)」
33金銭の支払がなくても経済的利益の供与が所得税法183条1項の給与等の支払となると明示する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理14頁・設問3⑵:「事実行為としての金銭の支払がなくともなお」
34E社を所得税法183条1項の徴収義務者として特定する。【必須】4物理22頁・設問3⑵:「源泉徴収義務」物理13頁・設問3⑵:「給与を支払う者であるE社」
35給与所得と源泉徴収の根拠を28条1項・183条1項まで正確に特定する。【高評価】3記載なし(第2問関連範囲実読)物理13頁・設問3⑵:「条文を項まで適切に引用すること」

7 重みの分布

重み1=0件,2=3件,3=16件,4=11件,5=5件。
N=0+3+16+11+5=35,W=0+2×3+3×16+4×11+5×5=123である。
負例3件及び許容分岐1件も一覧の実数には含めるが,個別答案の正の網羅率の分母とは区別する。

重み5・番号4:土地の取得価額の直接規定を確認した上で法人税法22条4項の公正処理基準を根拠に説明する。
適用条件:全答案に適用重み5とした理由:採点実感で優秀答案と下位区分を分ける構造又は答案の骨格。
取得価額の結論だけでなく根拠・理由が優秀の分岐となる。

重み5・番号16:遺留分負担による財産流出を法人税法22条3項3号の損失として認識する。
適用条件:全答案に適用重み5とした理由:採点実感で優秀答案と下位区分を分ける構造又は答案の骨格。
遺留分による損失を落とすと取引全体の純資産減少を回収できない。

重み5・番号24:譲渡損益零と遺留分負担の損失3000万円を別の要素として回収し,取引全体の純資産減少を説明する。
適用条件:全答案に適用重み5とした理由:採点実感で優秀答案と下位区分を分ける構造又は答案の骨格。
採点実感が①②双方の回収を優秀答案の分かれ目とする。

重み5・番号25:無償住宅利用を法人税法22条2項の無償による役務の提供として益金認識する。
適用条件:全答案に適用重み5とした理由:採点実感で優秀答案と下位区分を分ける構造又は答案の骨格。
益金を落として給与損金だけ処理する主要な失敗を防ぐ骨格。

重み5・番号31:34条1項の損金不算入特則が適用されないため,通則22条3項2号の費用として損金算入するという規定間関係を説明する。
適用条件:全答案に適用重み5とした理由:採点実感で優秀答案と下位区分を分ける構造又は答案の骨格。
通則と損金不算入特則の関係が評価の分かれ目と明記される。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

令和5年7月12日の試験実施時を基準とし,問題が指定した取引時点・除外事項を守る。
枠内答案は見出し・句読点・空白・「以上」を含め,改行のみを除いて1930字である。
損失額が合意時に具体化したという構成を採るが,公式資料が損失計上年度の唯一の結論を指定したという意味ではない。

2 答案

1 包括遺贈について
(1) E社の受贈益
 法人税法22条2項は,資本等取引以外の無償による資産の譲受けに係る収益を益金に算入する。
遺贈はAの死亡時に効力を生じ(民法985条1項),E社は甲・乙土地を無償で取得した。
AがかつてE社の株主であったとしても,本件遺贈は資本金等を増減させる取引ではなく,資本等取引に当たらない。
したがって,令和4年3月期に,各土地の時価3000万円,合計6000万円の受贈益を益金に算入する。

(2) 土地の取得価額
 甲・乙土地は棚卸資産でも減価償却資産でもなく,贈与等による取得価額の個別規定は直接適用されない。
そこで法人税法22条4項の公正処理基準による。
無償取得資産は公正な評価額を取得原価とするから,各土地の取得価額は,取得時の時価である各3000万円となる。
Aの含み益にみなし譲渡課税がされる一方で,その取得費を引き継いで同じ含み益を重ねて課税することも避けられる。
所得税法60条は個人の資産取得に関する規定であり,E社には適用されない。

(3) Aの所得税
 所得税法59条1項1号により,法人への遺贈で譲渡所得の基因となる資産が移転すると,その時の価額による譲渡があったものとみなされる。
法人への遺贈は包括遺贈も含み,無償であることは適用を妨げない。
したがって,Aには令和3年10月1日,各土地を3000万円で譲渡したものとして,令和3年分の譲渡所得が生じる。
 各土地の取得費は2000万円であり,譲渡益は各1000万円,合計2000万円である。
取得後5年を超えるから長期譲渡所得であり,特別控除50万円を合計額から一度控除して1950万円となる(同法33条3項2号・4項)。
租税特別措置法は適用しないため,その2分の1の975万円を総所得金額に算入する(同法22条2項2号)。
死亡年分の所得として準確定申告の対象となる。

2 遺留分侵害額請求と乙土地の譲渡について
 現行民法1046条1項の請求は金銭請求であり,遺贈の効力を遡及的に失わせるものではない。
よって,E社の受贈益や取得価額を遺贈時に遡って減額することはできない。
 Bの請求によって金銭債務が生じ,令和4年6月10日の合意でE社の支払義務の額が3000万円と確定した。
この負担は純資産を減少させる損失であって,資本等取引ではない(法人税法22条3項3号)。
同号は費用を定める2号と異なり債務確定を明文で要求しないが,公正処理基準に従い,損失額が具体的に確定して実現した年度に認識すべきである(同条4項)。
請求時に金銭債務が生じるとしても,本件では交渉を経た合意により具体額が確定したから,3000万円を令和5年3月期の損金とする。
 同年6月25日の乙土地の引渡し・所有権移転は,金銭債務に代わる給付による代物弁済である(民法482条)。
土地の返還でも無償譲渡でもなく,3000万円の債務を消滅させる有償譲渡として,令和5年3月期に3000万円を益金に算入し(法人税法22条2項・22条の2第1項),取得価額3000万円を譲渡原価として損金に算入する(同法22条3項1号)。
したがって譲渡自体の損益は零となるが,前記の侵害額負担による損失3000万円とは区別する。

3 Dによる丙家屋の無償利用について
(1) E社の法人税
 家屋の無償利用は無償による役務の提供に当たり,法人税法22条2項により通常得べき対価を収益として計上する。
正常な賃料を得た後に給与を支払う法人との課税上の均衡を図るためである。
令和5年3月期では月額10万円の12か月分である120万円を益金に算入する(同法22条の2第4項)。
 他方,Dは代表取締役であり,株主総会で無償利用を報酬の一部とする決議がされている。
利用による経済的利益は役員給与に当たる(同法34条4項)。
毎月同額の利用利益を継続的に受けているため,定期同額給与に当たる(同条1項1号,法人税法施行令69条1項2号)。
したがって34条1項の損金不算入特則は適用されず,通則である22条3項2号の費用として120万円を損金に算入する。
不相当に高額な部分等を示す事情もない。
よって,この利益供与による所得への純影響は零となる。

(2) 源泉徴収義務
 Dの住宅利用利益は職務の対価としての給与所得となり,金銭以外の経済的利益も収入に含まれる(所得税法28条1項・36条)。
現金の授受がなくても,経済的利益の供与は「給与等の支払」に当たる。
E社は給与等の支払者として,利益供与の際に所定の所得税を徴収し,原則として徴収月の翌月10日までに国へ納付しなければならない(同法183条1項)。
法人税で損金算入できることは,この義務を免れさせない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

取得価額を公正処理基準へ結び付ける部分は番号4,損失に債務確定の明文がないという区別は番号16,損失と代物弁済を別計上する部分は番号24に対応する。
無償役務の益金は番号25,定期同額給与に当たり損金不算入特則が適用されないため通則へ戻る部分は番号31に対応する。

(2) 遺贈と取得価額

法人の受贈益,法人の資産取得価額,個人Aのみなし譲渡を区別する。
土地へ減価償却資産の取得価額の規定を直接適用したり,個人の取得費引継ぎ規定をE社へ適用したりしない。
番号6の二重課税回避による説明は公正処理基準を知らない場合にも認められた代替理由であり,本答案では番号4の法源から説明し,二重課税回避は補強として置く。

(3) 損失の年度と代物弁済

番号16・17・18では,金銭債務の発生と金額が具体的に確定する時点を分ける。
損失には費用のような債務確定の明文要件がないため,22条3項2号をそのまま当てはめず,公正処理基準から年度帰属を理由付けする。
合意時帰属を採る答案でも請求時帰属を採る答案でも,条文・基準・事実評価の接続が必要であり,年度の結論だけを独立の全答案共通要求としない。

乙土地による支払は金銭債務の代物弁済である。
損失3000万円の計上と,債務消滅額3000万円を対価とする譲渡収益及び取得原価3000万円の計上を別々に書くことで,譲渡損益零だけを述べて侵害額負担を消してしまう不足を避ける。

(4) 住宅利用利益と源泉徴収

無償役務の収益と役員給与の費用は,同じ金額でも別の法的要素である。
34条1項は損金算入を直接認める規定ではなく損金不算入の特則なので,定期同額給与への該当後に通則22条3項2号へ戻る接続を落とさない。
Dの経済的利益が給与所得となることと,E社に給与等の支払者の徴収義務が生じることも分けて論じる。

(5) 答案の限界と補足

採点実感は清算課税理論を長く展開する必要がないと指摘する。
改正前の遺留分減殺制度の物権的効果を現行の金銭請求へ持ち込まない。
源泉徴収の具体額は問われておらず,固定資産税評価額等の与えられていない事実から数値を作らない。

一般的な指摘として,条文は必要な項・号まで特定し,誰の所得をどの年・事業年度に認識するかを当てはめまで閉じる。
準確定申告への短い言及は実務上の補足であり,公式評価項目を増やす根拠にはしていない。

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旧法の遺留分記事は制度の違いを比較するための関連記事である。
本問の答案及び評価の法的根拠は,以下の公式資料と法令による。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省:令和5年司法試験問題(租税法第2問・物理11~12頁)
法務省:令和5年司法試験論文式試験問題の出題趣旨(租税法第2問・物理22頁)
法務省:令和5年司法試験論文式試験の採点実感等に関する意見(選択科目)(租税法総論・物理9頁の関連部分,第2問・物理11~14頁,関連注記・物理14~15頁)

2 法令

e-Gov法令検索:法人税法:22条・22条の2・34条
e-Gov法令検索:所得税法:22条・28条・33条・36条・59条・60条・183条
e-Gov法令検索:民法:482条・985条・1046条
e-Gov法令検索:法人税法施行令:54条・69条

試験時の履歴版を確認し,死亡時・代物弁済時の履歴版とも対象条項を照合した。
無償取得土地の公正評価額については国税庁・税務大学校論叢76号掲載論文(平成25年)の物理70頁(印刷頁284)も参照する。
これは研究論文の説明であり,法令又は本件への行政処分ではない。

3 裁判例

本答案では裁判例の判旨を直接の根拠として引用していない。
改正前の遺留分減殺をめぐる判例を現行の侵害額金銭請求へ転用しない。
判決原文を確認していない事項を,公式資料の言及だけで確認済みの判旨とは扱わない。

4 確認状態

法務省資料の対象問題及び関連総論・末尾注記と,e-Govの歴史的法令本文を確認した。
資料に記載された内容と,そこから抽出した評価項目・重み・本件への法的適用は区別する。
とくに遺留分負担の損失計上年度は,本答案の理由付けによる選択であり,法務省が唯一の年度を指定したという主張ではない。