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民事再生の再生計画案が否決されたとき―再生手続廃止の確定前後の破産手続への移行,給料・租税・開始前借入れの扱い及び再度の再生手続開始の申立て(AI作成)

第1 この記事の対象

本記事は,法人の通常再生で再生計画案が否決されたときに,その後の手続がどう進むかを,民事再生法及び破産法の条文に沿って整理するものである。
扱うのは,①否決から再生手続廃止の決定まで,②廃止決定の確定前と確定後の破産手続への移行(いわゆる牽連破産),③破産手続に移った後の給料・租税・開始前借入れ等の扱い,④廃止後の再度の再生手続開始の申立てである。

条文は,令和8年10月時点でe-Gov法令検索に掲載されている民事再生法及び破産法により確認した(本記事で引用した条文は,令和7年1月1日時点の版と文言が同じであることも確認している。)。
本記事の素材は,令和7年司法試験の倒産法第2問の検討の過程で確かめた条文である。

第2 否決から再生手続廃止の決定まで

1 否決されると職権で廃止決定がされる

再生計画案が否決されたときは,裁判所は,職権で,再生手続廃止の決定をしなければならない(民事再生法191条3号)。
同号は,債権者集会の続行期日が定められた場合に,所定の期間内に可決されないときも廃止事由としている。

2 可決要件と棄権の効果

再生計画案の可決には,次の二つの同意がいずれも必要である(民事再生法172条の3第1項)。
①議決権者(債権者集会に出席し,又は書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
②議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意

①の頭数は,出席又は投票をした議決権者を分母とするが,②の金額は,議決権者全体の議決権の総額を分母とする。
そのため,投票を棄権した債権者は,①の分母からは外れるが,②では同意に数えられないまま分母に残り,結果として反対と同じ方向に働く。
反対する債権者の比率が2分の1に届かなくても,棄権が多ければ②を満たさずに否決されることがある。

3 書面投票では続行期日がなく,決議に付した後は修正できない

議決権行使の方法は,裁判所が,再生計画案を決議に付する旨の決定の中で,①債権者集会の期日で行使する方法,②書面等投票による方法,③議決権者が①②のいずれかを選ぶ方法のどれかに定める(民事再生法169条2項)。
債権者集会の続行期日の制度(同法172条の5第1項)は,①又は③が定められた場合に限られる。
②の書面等投票だけの方法で否決されたときは,続行期日で再び可決を目指すことはできない。

また,再生計画案は,裁判所の許可を得て修正できるが,決議に付する旨の決定がされた後は修正できない(民事再生法167条)。
書面投票の結果を見てから条件を改めることはできないので,再生債務者の代理人としては,計画案を提出して決議の方法について裁判所と協議する段階で,主要債権者の賛否の見込みと,否決された場合に続行期日を使えるかを比べておく必要がある。

第3 廃止決定の確定前後と破産手続への移行

1 廃止決定は確定するまで効力を生じない

再生手続廃止の決定は,確定しなければその効力を生じない(民事再生法195条5項)。
廃止決定は公告され(同条1項),即時抗告ができ(同条2項),公告があった場合の即時抗告期間は,公告が効力を生じた日(官報に掲載された日の翌日)から2週間である(同法9条,10条1項・2項)。

確定するまでは再生手続が続いているので,原則として,破産手続開始の申立てはできない(民事再生法39条1項)。
同項は再生手続開始の申立ても禁じているから,前の再生手続の廃止決定が確定する前に再度の再生手続開始の申立てをすることもできない(第5参照)。

2 確定前にできること

廃止決定があれば,確定前でも,再生裁判所に破産手続開始の申立てをすることができる(民事再生法249条1項)。
申立てをできる者は,破産法の原則どおり債権者又は債務者であり(破産法18条1項),株式会社であれば取締役も申し立てることができる(同法19条1項2号)。
ただし,この申立てに基づく破産手続開始の決定は,廃止決定が確定した後でなければすることができない(民事再生法249条2項)。

確定までの間の財産の散逸や事業価値の劣化を防ぐため,裁判所は,必要があると認めるときは,職権で,破産法上の中止命令,包括的禁止命令,保全処分,保全管理命令等を命ずることができる(民事再生法251条1項1号)。
保全管理人が選任されると,債務者の財産の管理処分権は保全管理人に専属し,常務に属しない行為には裁判所の許可が必要となる(破産法93条1項)。
事業の譲渡も,裁判所の許可を得れば保全管理人がすることができ,その許可に当たっては労働組合等の意見を聴く(同条3項による78条2項3号・4項の準用)。
裁判所が後に破産手続開始の決定をしないこととしたときは,保全処分等を取り消さなければならない(民事再生法251条2項)。

3 確定後は「職権で開始することができる」

廃止決定が確定した場合において,裁判所は,再生債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは,職権で,破産法に従い,破産手続開始の決定をすることができる(民事再生法250条1項)。
法人の破産手続開始の原因は,支払不能又は債務超過である(破産法15条1項,16条1項)。

同条1項の文言は「することができる」であり,裁判所の判断に委ねられている。
これに対し,同条2項は,破産手続開始後の再生債務者について再生計画認可の決定の確定で破産手続が効力を失った後に再生手続廃止等の決定が確定した場合について,「破産手続開始の決定をしなければならない」と定めている。
令和7年司法試験倒産法第2問の出題の趣旨及び採点実感は,確定後について「職権で破産手続開始の決定をしなければならないこと(同法第250条第1項)」と記載しているが,平成27年5月1日施行の版,令和7年1月1日時点の版及び令和8年10月時点の版のいずれでも,同条1項は「することができる」である。

確定前に申立てがされていれば,確定後にその申立てに基づいて破産手続開始の決定がされる。
確定後に新たに破産手続開始の申立てをすることもできる。

第4 破産手続に移った後の調整

1 否認・相殺禁止の基準時

再生手続の終了に伴い破産手続開始の決定があった場合,否認・相殺禁止等に関する破産法の規定(破産法71条,72条,160条,162条〜164条,166条,167条の該当部分)の適用については,再生手続開始の申立て等を破産手続開始の申立てとみなす(民事再生法252条1項)。
ただし,再生手続開始の申立て等の前に破産手続開始の申立てがないときに限られる(同項)。
破産管財人は,再生手続開始の申立ての時点を基準として,偏頗行為の否認や相殺禁止を検討することになる。

2 共益債権は財団債権となる

再生手続廃止等に伴い破産手続開始の決定があった場合には,共益債権は財団債権となる(民事再生法252条6項)。
この共益債権には,再生手続が開始されなかった場合における同法120条1項・4項の請求権も含まれる(同項括弧書き)。

ここで注意を要するのが,再生手続開始の申立て後,開始決定前の借入れである。
開始後の借入れは共益債権となる(民事再生法119条5号)が,開始前の借入れが共益債権となるのは,裁判所の許可(同法120条1項)又はその許可に代わる監督委員の承認(同条2項)を得た場合である(同条3項)。
監督命令で監督委員の同意を要する行為に指定された借財について同意を得たこと(同法54条2項・4項)は,その行為を有効にするための要件であり,それだけでは共益債権にはならない。
スポンサー候補等が開始前に運転資金を貸し付ける場合,貸し手の代理人は,同意とは別に,120条の許可又は承認を得ていることを確かめておかないと,牽連破産の際に財団債権として扱われず,破産債権にとどまるおそれがある。

3 給料の財団債権の範囲は「再生手続開始前3月間」に読み替わる

破産法149条1項は,破産手続開始前3月間の破産者の使用人の給料の請求権を財団債権とする。
再生手続の終了に伴って破産手続開始の決定があった場合には,この「破産手続開始前三月間」は,破産手続開始の日前に再生手続開始の決定があるときは「再生手続開始前三月間」と読み替えられる(民事再生法252条5項)。
再生手続中の給料等は,一般の先取特権のある部分が一般優先債権(同法122条)又は共益債権(同法119条2号)として扱われてきたので,牽連破産の場面では,どの期間の給料がどの区分になるかを,再生手続開始日を基準に組み直す必要がある。
なお,同条2項(退職手当)の「破産手続開始前三月間の給料の総額」には,民事再生法252条5項の読替えは及んでいない。

4 租税は「破産手続開始当時」を基準に財団債権かどうかが決まる

再生手続中の租税等の請求権は,一般の優先権がある債権として一般優先債権となり,再生手続によらないで随時弁済される(民事再生法122条1項・2項)。
再生手続開始決定によって中止されるのは再生債権に基づく強制執行等であり(同法39条1項),一般優先債権である租税の滞納処分は,これによっては中止されない。
同法122条4項が準用する121条3項の中止・取消しの命令は,強制執行又は仮差押えを対象としている。

牽連破産となった場合,破産手続開始前の原因に基づく租税等の請求権が財団債権となるのは,破産手続開始当時,納期限が到来していないもの又は納期限から1年(包括的禁止命令により国税滞納処分をすることができない期間を除く。)を経過していないものに限られる(破産法148条1項3号)。
民事再生法252条には,この「破産手続開始当時」を再生手続開始時に読み替える規定がない(同条5項の読替えは破産法149条1項だけである。)。
そのため,再生手続中に納めずにいた租税のうち,破産手続開始の時点で納期限から1年を経過したものは,財団債権ではなく優先的破産債権(破産法98条1項)として扱われることになる。
税理士・弁護士が再生会社の納税計画を立てる際には,一般優先債権として随時弁済すべき租税の納期限を一覧にし,再生計画が否決された場合の破産手続での区分まで見込んでおく必要がある。

5 再生債権の届出を破産債権の届出として扱う決定

破産手続開始の決定をする場合において相当と認めるときは,裁判所は,再生手続で届出があった再生債権を有する破産債権者は破産債権の届出をすることを要しない旨の決定をすることができる(民事再生法253条1項)。
この決定があると,再生債権としての届出をした者は,破産法の債権届出期間の初日に破産債権の届出をしたものとみなされる(同条3項)。
ただし,届出をした者が債権届出期間内に破産債権の届出をした場合には,このみなし届出は適用されない(同条6項)。

第5 再度の再生手続開始の申立て

1 禁止規定はなく,25条3号・4号で判断する

民事再生法には,再生計画案が否決され再生手続が廃止された後の再度の再生手続開始の申立てを禁止する規定はない。
濫用的な再度の申立ては,再生計画案の作成・可決・認可の見込みがないことが明らかであるとき(民事再生法25条3号)又は不当な目的で申し立てられたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき(同条4号)に当たるとして棄却される。
これらに当たらず,開始原因(同法21条1項)があれば,再生手続開始の決定がされる(同法33条1項)。

ただし,前の再生手続の廃止決定が確定するまでは,再生手続開始の申立てはできない(民事再生法39条1項,195条5項)。
前の手続で破産手続が開始されていれば,その破産手続によることが債権者の一般の利益に適合するときは,再度の申立ては棄却される(同法25条2号)。

2 判断の視点

再度の申立てが誠実にされたものかどうかは,前の手続で否決された原因に対応した事情の変化があるか,その変化を債権者に説明しているか,及び事業価値が失われる前に迅速に申し立てているか等から判断することになる。
例えば,スポンサーへの事業譲渡を内容とする計画案が譲渡価格を理由に否決された後,スポンサーが譲渡価格を引き上げ,債権者説明会で経緯と新しい条件を説明した上で申し立てた場合には,否決の原因に応えて改めて債権者の判断を求めるものといえる。
可決の見込みについては,前回反対した債権者の議決権の比率,その債権者の態度の変化,反対していない債権者の比率を,第2の2の可決要件に当てはめて検討する。

個人再生の事案であるが,名古屋高裁平成26年1月17日決定(平成25年(ラ)第441号)は,1度目の給与所得者等再生手続が再生計画不認可決定により,2度目の小規模個人再生手続が不同意廃止により終了した債務者が,3度目に給与所得者等再生手続開始の申立てをした事案について,第1次の手続の後に収入の状況に変動が生じていること等から,民事再生法25条4号に当たるとはいえないとして,開始決定を維持した。
同決定は,同条2号について,破産手続によることが債権者の一般の利益に適合するかは,債権者が再生計画に同意する見込みの有無ではなく,想定される弁済率,弁済期及び弁済期間等を総合的に検討して判断すべきであるとも述べている。

第6 実務上の確認事項

1 再生債務者の代理人

①決議の方法について裁判所と協議する前に,主要債権者の賛否と棄権の見込みを,頭数と議決権総額の二つの要件で試算する。
②書面等投票だけの方法になると,否決されたときに続行期日を使えないことを依頼者に説明しておく。
③開始前の借入れは,監督委員の同意とは別に,120条の許可又は承認の有無を記録に残す。
④否決に備え,廃止決定の確定までの資金繰り,保全処分の要否及び事業譲渡の継続可能性を整理しておく。
⑤再度の申立てを検討するときは,否決の原因と,それに対応して変えた条件を債権者に説明できる形で整理する。

2 債権者・スポンサー・労働者側

①スポンサーとして開始前に貸し付けるときは,120条の許可又は承認の書面を確認する。
②給料の財団債権の範囲は,牽連破産では再生手続開始日から3か月さかのぼって数える。
③再度の申立てに反対するときは,「否決されたこと」だけでなく,事情の変化がないこと又は可決の見込みがないことを具体的に示す必要がある。

3 税理士

①再生手続中の租税は一般優先債権として随時弁済の対象であり,滞納処分は再生手続開始決定によっては止まらない。
②納期限ごとに,破産手続に移った場合に財団債権(納期限から1年以内)と優先的破産債権のどちらになるかを見込んでおく。
③牽連破産の場合,財団債権かどうかの基準は破産手続開始当時であり,再生手続開始時ではない。

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第8 出典

①民事再生法(平成11年法律第225号):9条,10条,21条,25条,33条,39条,54条,119条,120条,121条,122条,167条,169条,172条の3,172条の5,191条,195条,249条〜253条(e-Gov法令検索。令和7年1月1日時点の版及び令和8年10月時点の版)
②破産法(平成16年法律第75号):15条,16条,18条,19条,78条,93条,98条,148条,149条(同)
③名古屋高裁平成26年1月17日決定(平成25年(ラ)第441号)(裁判所ウェブサイトの全文で確認)
④法務省「令和7年司法試験の論文式試験出題の趣旨」PDF26頁〜27頁,「令和7年司法試験の採点実感(選択科目)」PDF1頁〜4頁