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内部通報・ハラスメント調査の進め方―独立性,通報者情報と事実確認の管理(AI作成)

第1 相談の受付と法律の適用を分ける

1 ハラスメント相談が全て公益通報になるわけではない

本記事は,令和8年10月4日現在の公開法令及び行政指針に基づき,企業の受付担当者,調査担当者及び外部弁護士が確認すべき事項を整理するものである。
令和7年改正公益通報者保護法の施行日は令和8年12月1日であり,施行前後を分けて検討する必要がある(消費者庁の制度概要)。

公益通報者保護法2条は,通報者,通報先,目的及び通報対象事実について要件を設けている。
したがって,「ハラスメント」という名称だけで,同法上の公益通報に該当すると判断することはできない。
具体的な行為と対象法令を確認し,社内規程に基づく相談の受付と,公益通報者保護法の適用判定を別々に行う。

2 公益通報の要件を満たさなくても相談対応は必要である

労働施策総合推進法31条は,職場のパワーハラスメントについて相談に応じる体制等を求め,相談又は相談対応への協力の際に事実を述べたことを理由とする不利益取扱いを禁止している。
厚生労働省のパワーハラスメント指針4(2)も,該当性が微妙な場合を含め,広く相談に対応することを求めている。
公益通報に該当しないという理由だけで,雇用管理上の相談対応まで終了させてはならない。

公益通報者保護法11条の従事者指定及び体制整備は,常時使用する労働者が300人を超える事業者には義務,300人以下の事業者には努力義務である。
この人数の区分を,パワーハラスメント防止措置の免除基準として用いることはできない。

第2 誰が調査し,誰が結果を受け取るかを先に決める

1 経営幹部が関係する場合の独立性

消費者庁の現行指針第4の1は,組織の長その他幹部が関係する案件での独立性確保と,事案関係者を対応業務に関与させない措置を求めている。
外部弁護士が窓口を担当するという形式だけで,調査や是正の独立性まで確保されたとはいえない。

実務上は,受付時に,①調査担当者と対象者の関係,②資料へのアクセス権限,③調査結果の報告先,④是正措置の決裁者,⑤通常の報告先が関係者だった場合の代替経路を確認しておくことが有用である。
関係者が調査資料を受け取ったり,調査範囲を事実上決めたりする運用が残っていないかも点検する。
これらは独立性を実際の業務に反映するための確認事項であり,全ての会社に同一の委員会構成を要求するものではない。

2 外部委託の役割と限界

外部弁護士への依頼では,受付,事実調査,法的評価,是正助言及び紛争代理のどこまでを担当させるのかを契約と窓口案内で一致させることが有用である。
調査対象の経営判断や過去の対応に助言していた者を起用する場合には,その関与を確認し,担当変更の必要性を検討する。
顧問弁護士の窓口利用とその限界は,外部窓口を顧問弁護士が担当する場合の制度設計で整理している。

第3 通報者情報と調査資料を分けて管理する

1 氏名を消すだけでは足りない

消費者庁の指針解説15頁~17頁は,範囲外共有を防ぐ考え方と情報管理の方法を示している。
氏名を伏せても,所属,担当業務,出来事の日時その他の情報の組合せから本人を特定できる場合がある。
調査担当者へ送る前に,受領者が既に知っている情報も踏まえ,特定につながる事項が含まれていないかを確認する。

運用としては,連絡先や本人とのやり取りを保管する領域と,調査に使う事実・資料を保管する領域を分け,閲覧できる担当者を定める方法が考えられる。
調査開始への同意と,本人を特定させる情報の共有への同意は別の確認事項として記録する。
必要な共有先,目的,範囲及び本人への説明を確認し,「調査に同意したから誰にでも実名を伝えられる」と扱わない。

2 従事者指定と守秘義務

公益通報者保護法12条は,従事者及び従事者であった者について,業務上知り得た通報者を特定させる事項を正当な理由なく漏らすことを禁止している。
現行指針第3による指定対象は,受付窓口で受け付ける内部公益通報の対応業務を行い,かつ,本人を特定させる事項を伝達される者である。
事情聴取を受ける全ての従業員を,当然に従事者とするわけではない。

従事者指定の要否の確認と併せて,調査資料全般の保管場所,閲覧範囲及び外部委託先への受渡し方法を決めておくことが有用である。
法12条の保護対象と,調査資料全般について実施する秘密管理の範囲を同一視しない。

第4 事実確認を結論に合わせない

1 具体的な行為と双方の説明を確認する

厚生労働省の指針2は,パワーハラスメントの判断に際し,言動の目的,経緯,態様,頻度,関係性及び心身の状況等を総合的に考慮するものとしている。
同指針4(3)イは,迅速かつ正確な事実確認を求め,双方からの確認や,説明が一致せず確認が不十分な場合の第三者からの聴取を例示している。

聴取事項は,①日時と場所,②行為者と同席者,③実際の発言・行動,④その前後の経緯,⑤裏付け資料,⑥当事者への影響に分けて準備すると整理しやすい。
申告内容,確認できた事実,食い違う説明及び評価を記録上区別し,不明な点は追加確認の対象にする。
質問票や聴取順序は,資料の散逸や相談者の負担も考慮して案件ごとに決めるものであり,一律の法定順序として扱わない。

2 証拠の保全と保護措置を並行して検討する

受付担当者と調査担当者は,保存期間が短い資料や削除予定の記録があるかを早期に確認し,適切な権限のある担当者に保全を依頼する運用を検討する。
保全対象,依頼日時,実施者,取得元及び保管先を記録しておくと,後の調査担当者へ引き継ぎやすい。
この確認手順は,私物端末の無断閲覧や秘密録音の適法性を一律に認めるものではなく,個別の取得方法には別の検討が必要である。

録音を拒否された場合は,録音そのものへの不同意と,事情聴取又は書面回答への拒否を分けて確認することが望ましい。
録音なしの聴取,記録担当者の同席,聴取メモの本人確認等を検討し,拒否の対象,代替案及びなお確認できない事項を残す。
これらは調査を進めるための運用上の提案であり,録音拒否を理由に調査全体を直ちに終了する一般則ではない。
取得の適法性,証拠能力,調査協力義務及び録音禁止の区別は,秘密録音の適法性と証拠利用・拒否時対応で説明している。

また,心身への影響や接触継続の危険については,最終的な事実認定を待つ間の対応も検討する。
相談者の意向を確認し,措置の目的と見直し条件を残すことが有用であり,保護を名目に本人へ不利益を負わせないよう注意する。

第5 是正,通知及び事後確認までを一つの業務とする

1 認定できない場合にも確認事項が残る

厚生労働省の指針4(3)ニは,パワーハラスメントの事実を確認できなかった場合にも,再発防止措置を求めている。
事実の確認ができないことと,職場環境について何も対応しなくてよいことを混同しない。
相談者・関係者のプライバシー保護と不利益取扱いの防止も,同指針4(4)に沿って確認する。

2 調査終了後の記録と見直し

消費者庁の現行指針は,是正措置の機能確認,記録の適切な期間の保管及び体制の定期的な点検を求めている。
書面で受けた内部公益通報に関する通知は,適正な業務と関係者の秘密等の保護に支障のない範囲で行うものであり,関係者の供述や処分内容を無制限に開示する制度ではない。

担当者は,次回確認日と責任者を決め,措置の実施状況,通報後の不利益取扱いの有無及び追加情報を点検する運用を検討する。
記録には,受付,適用判定,体制選定,保全,聴取,認定理由,是正,通知及び事後確認の経過を結び付けて残すことが有用である。
グループ共通窓口の権限と民事責任は,親会社の相談窓口と調査・対応義務も参照されたい。

第6 出典

① 公益通報者保護法(e-Gov法令検索)2条,11条,12条。
② 消費者庁・現行法定指針第3,第4。
③ 消費者庁・現行指針の解説15頁~17頁。
④ 労働施策総合推進法(e-Gov法令検索)31条。
⑤ 厚生労働省・パワーハラスメント指針2,4。
⑥ 消費者庁・公益通報者保護法と制度の概要改正法の施行日。

法令・行政指針に基づく事項と,これを業務に落とし込むための運用上の提案を区別して記載した。
個別裁判例を根拠とする記事ではなく,秘密録音の適法性や具体的な懲戒処分の有効性は対象としていない。