第1 公開範囲とAI利用の経路を別々に確認する
法律事務所がnoteを使う場合,有料記事や会員限定記事であることだけを理由に,AI学習への提供も制限されると考えるべきではない。
noteの公式説明では,外部事業者による公開ページの収集と,noteが契約に基づいて提供するAI学習対価還元プログラムは別の経路である。
公開前には,読者に対する公開範囲,プログラムの参加設定,検索時の参照,本文及び添付資料を提供できる権限をそれぞれ確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月3日に確認したnote等の公開公式資料に基づく確認手順である。
事業者の仕様説明と,本記事が提案する事務所内の管理方法を区別している。実際の提供先との契約,個別記事の提供履歴又は運用の監査まで確認したものではない。
第2 有料・会員限定でもプログラムの対象になり得る
1 外部の収集とnoteからの提供
noteの公式FAQは,外部のAI事業者が無料の公開ページを収集する場合と,noteがプログラムを通じてデータを提供する場合を区別している。
後者では,公開済みのテキスト記事について,有料記事やメンバーシップ特典記事も対象になり得ると説明されている。
したがって,読者向けの課金や会員制を,契約に基づく学習データ提供の停止設定の代わりにしてはならない。
同FAQによれば,プログラムの対象はテキストであり,画像・音声・動画,コメント及び下書きは対象外とされている。
これは当該プログラムの対象の説明であり,公開画像等が別の経路で取得される可能性まで否定するものではない。
2 事務所内で区別する資料
無料の一般解説,有料の独自解説及び会員向けの資料について,公開URL,本文の作成者,転載元,添付資料,公開範囲及び参加設定を一覧にすることが望ましい。
有料化している資料ほど,原資料の利用条件と第三者への提供権限を別に確認する必要がある。
閲覧のために購入した判例解説や資料について,購入又は閲覧できることだけから,再掲載や学習データとしての提供まで認められると扱わない。
第3 アカウント設定だけで確認を終えない
1 記事別設定の優先
参加設定の公式案内では,全体設定とは別に記事ごとの設定を設け,記事別設定を優先すると説明している。
また,FAQは,データを提供する時点の設定を参照する旨を説明している。
過去の記事についても,全体設定を変更したという記録だけで終えず,各記事の個別設定と現在の公開範囲を確認するべきである。
実務上は,設定変更の日時,変更前後の画面,対象記事のURL及び確認したヘルプの更新日を保存すると,後の問い合わせや事実確認に役立つ。
設定後の将来の提供を制御する説明と,既に提供されたデータの削除・モデルからの除去が保証されることは別である。後者は個別に確認する必要がある。
2 学習拒否機能の限界
学習拒否意向を示す機能の公式説明は,すべての外部AI事業者による遵守を保証するものではない旨を示している。
学習拒否の表示,noteのプログラムへの不参加,読者に対するアクセス制限を同じ設定として扱わないことが重要である。
秘密として管理すべき資料は,拒否表示に依存せず,掲載の必要性自体を見直すべきである。
第4 FAQと規約の文言差は確認事項として残す
公式FAQは,不参加の場合に学習データとして提供しない旨を説明している。
他方,クリエイター規約6条10項は,学習データの第三者提供について無償又は有償という表現を用い,設定による停止については有償での提供という表現を用いている。
この文言差だけから,不参加の記事が実際に無償提供されているとも,直ちに違法であるとも断定できない。
利用の可否を判断するためには,適用される規約の版,FAQとの関係,設定が制御する提供経路及び実際の運用を確認する必要がある。
提供先,提供時点,過去提供分の扱い及び削除対応が重要な資料を載せる場合には,その資料に即した回答を事業者に求め,回答を保存することが望ましい。
FAQによれば,提供先の具体的な名称や個別記事の貢献度等について開示の限界がある。
また,対価還元は,すべての記事について確定額の支払を約束する制度として扱うべきではない。
契約と対価還元一般の整理は,生成AIの学習データ契約とクリエイターへの対価還元を参照されたい。
第5 検索時の参照はモデル学習と異なる
1 noteのllms.txtの対象
noteのllms.txtの公式案内は,クリエイターページの公開プロフィール及びSNS情報をAIが参照しやすくする取り組みを説明している。
記事本文を対象とする学習データ提供の仕組みとしては説明されていない。
同じllms.txtという名称であっても,サービスごとに対象情報と用途を確認する必要がある。
2 NAVERの引用と閲覧数
noteによるNAVERの生成AI検索の説明では,無料公開記事を検索時の引用元として参照する取り組みが案内されている。
noteからの直接のデータ提供及びモデル学習とは区別され,学習拒否や自動翻訳の停止では引用対象から外れないと説明されている。
また,引用元として表示されただけでは記事のPVに反映されず,実際に記事へアクセスがあった場合に計上されるという説明である。
これらはnoteが説明する個別の仕組みであり,すべてのAIサービスに共通する仕様ではない。
Google検索については,Search Consoleの生成AI機能の表示制御と,モデル学習の制御を別に確認する必要がある。
具体的な設定の使い分けは,robots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるかで整理している。
第6 公開資料,独自解説及び依頼者情報を分ける
1 原資料の確認と利用権限
裁判所が公開した判決本文,出版社が付した要旨・解説,データベースの編集情報及び自分の解説は,出所と利用条件を分けて管理するべきである。
官公庁が公開しているという事情だけで,あらゆる資料の複製・再配布が無条件に許されると扱わない。
原資料へのリンクで足りる場合は,必要性を検討せず全文転載する運用を避け,転載が必要な場合には対象部分と適用条件を確認する。
判例秘書等で判決本文を確認した場合も,判決の識別情報,判断の対象,該当箇所及び事案の前提を記録する。
検索結果,要旨又はブログの解説だけを読んだ状態を,判決本文の確認済みとして扱わない。
資料の発見と一次資料の確認の関係は,AIが参照しやすい司法情報アーカイブとしての山中弁護士ブログでも説明している。
2 事例紹介に含まれる情報
本記事の運用上の提案として,依頼者の相談内容,未公開の訴訟資料,相手方の個人情報及び秘密として扱うべき事情は,一般向け発信の原稿から切り分けるべきである。
氏名を削除しても,地域,時期,職業,事件経過等の組合せで本人が分かることがあるため,匿名化の確認を氏名の有無だけで終えない。
有料・会員限定であることや,事業者のマスキングの説明だけに依存して掲載を判断しない。
個人情報保護委員会の生成AIに関する注意喚起は,個人データを入力する際,機械学習等に利用されるかについて十分確認する必要性を示している。
これはnoteの個別運用の適法性を認定した資料ではないが,外部サービスへ情報を渡す前に利用目的と取扱いを確認するという検討の参考になる。
第7 読者が訪れる理由を検証可能な情報で作る
法律記事では,結論だけでなく,結論を変える事実,必要な証拠,例外,判断の手順及び一次資料へのリンクを示すと,読者が自分の状況を検討しやすくなる。
例えば,公開裁判例を題材にする場合は,裁判所が認定した事実と筆者が設定した仮定を区別し,どの前提が変われば検討が必要になるかを説明することが考えられる。
これは記事作成上の提案であり,架空の出来事を事務所の受任実績又は筆者の体験として表現する理由にはならない。
見出しや目次は資料を探すために設け,特定の字数に合わせること自体を目的にしない。
AI回答内での表示,実際の訪問,問い合わせ,相談及び受任を分けて計測し,表示されたという事実だけから業務上の成果を推定しない。
詳しくは,法律事務所のLLMO・GEO対策を参照されたい。
第8 公開前と公開後の確認手順
公開前には,次の事項を記事単位で記録することが望ましい。
– 原資料のURL,版,確認日及び引用・転載する範囲。
– 本文,画像及び添付資料の作成者と提供権限。
– 無料・有料・会員限定等の公開範囲と,載せる必要性。
– 全体設定と記事別設定,学習拒否意向,翻訳・検索時参照の違い。
– 個人情報・秘密情報の除去と,複数の事情から本人が分かる可能性。
– 公開後の表示,リンク,更新日及び問い合わせ先。
公開後は,規約・ヘルプの変更時に,過去記事の公開範囲と設定も再点検する。
問題を把握した場合には,問題となる資料,URL,設定,時点及び事業者の回答を保存し,公開停止,修正又は個別の法的検討の必要性を判断する。
第9 裏付けの範囲と追加検討
本記事のサービス仕様に関する記載は,リンクした事業者の公式ヘルプ・規約によるものである。読者の実アカウントの設定や個別のデータ提供を確認したものではない。
資料管理や記事構成については,これらの説明を踏まえた実務上の提案である。
noteのFAQと規約の文言差について,その法的意味又は実際の無償提供を直接判断した判決本文は,今回確認できていない。判例秘書の検索も,そのような裁判例が存在しないことの証明として用いていない。
提供停止の契約上の範囲,過去提供分の削除,海外提供先の取扱い及び実際の提供履歴が問題になる場合には,適用規約・個別回答・実処理の証拠を得て,別途検討する必要がある。