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死亡した共犯者の警察官調書は使えるか―不可欠性・特信情況・任意性を争う方法(AI作成)

共犯者が死亡し,その警察官調書を他の被告人の有罪立証に用いる場合,死亡したという事実だけで証拠能力が認められるわけではない。
刑事訴訟法321条1項3号の供述不能,不可欠性及び特に信用すべき情況を検討し,供述者の任意性も確認する必要がある。
本記事は,同意のない供述録取書について,争点の整理と記録の確認方法を説明する。

第1 誰の事件で何を証明する調書か

1 供述者と対象被告人を分ける

例えば,乙が甲との共犯を認めた警察官調書を作成した後に死亡し,検察官が甲の公判でその調書を提出したとする。
乙の供述が乙自身に不利益な自白であっても,甲の事件では,被告人以外の者の供述として証拠能力を検討する。
本人の不利益承認を含む供述についての同法322条1項を,そのまま甲に対する採用根拠にすることはできない。

最高裁昭和36年12月12日第三小法廷判決も,共同被告人の検察官調書について,本人に対する同法322条による採用と,他の被告人に対する同法321条1項2号による採用を区別している。
この判決は検察官調書の事案であり,死亡した者の警察官調書について3号の各要件を直接判断した判例ではない。
本記事では,対象被告人ごとに条文を分けるという判断の手順を参照する。

2 立証趣旨と書面の種類を特定する

供述内容の真実性を証明するために公判外の供述調書を用いる場合,同法320条の伝聞法則と例外が問題となる。
警察官に対する供述を録取した書面は,裁判官面前調書又は検察官面前調書についての同法321条1項1号・2号には当たらず,通常は3号を検討する。
供述録取書については,同項柱書の署名又は押印の有無も確認する。
調書全体を一括して扱わず,甲の関与,共謀,実行行為等のどの事実を,どの記載で証明しようとしているかを明確にする。

第2 死亡は供述不能の要件に関わる

同法321条1項3号は,供述者が死亡等により公判で供述できないことを要件の一つとしている。
死亡が確認できればこの要件を検討できるが,それにより不可欠性,特信情況及び任意性まで認められるわけではない。
公判で反対尋問ができないという事情がある以上,調書の作成経過を確認する必要は残る。

供述者が死亡したことと,別の証人や客観証拠も存在しないことは別の事実である。
死亡の根拠資料を確認するとともに,作成者の取調べ状況,録音録画の有無,前後の調書及び供述と対応する物証を確認する。
供述不能を理由に,他の要件の検討を省略しないことが重要である。

第3 不可欠性を他の証拠との関係で争う

3号は,当該供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないことを要求する。
「共犯者が甲の関与を述べている」「有罪立証に役立つ」「調書を加えれば立証が強くなる」という説明だけでは,この要件を検討したことにならない。
どの犯罪事実について,どの証拠の不足を埋める供述なのかを具体化し,既存の証拠との関係で検討する。

検討対象確認する事項弁護側の記録
証明する事実甲の現場所在,共謀,実行行為等のどの事実か。訴因・立証趣旨と調書の該当頁を対応させる。
他の証拠目撃供述,映像,通信,位置・移動記録及び物証が何を証明できるか。各証拠の証明対象と限界を整理する。
当該供述の役割他の証拠に欠ける具体的な事実を補うのか,既存の立証を重ねるのか。「不可欠」とする理由と反論を事実ごとに記載する。
供述の範囲不可欠とされる部分と,周辺事情の記載が区別できるか。調書全体を必要とする説明の有無を確認する。

不可欠性と供述内容の信用性は別の検討である。
信用できそうな内容だから不可欠とは限らず,他の証拠が弱いことだけで特信情況が認められるものでもない。
なお,この表は争点整理のための案であり,「ほかに証拠が一つでもあれば必ず不可欠性が否定される」という形式的な基準を示すものではない。

第4 絶対的特信情況を取得過程から点検する

1 内容の詳しさだけで判断しない

3号の特信情況は,検察官調書と公判供述を比べる2号後段の相対的な特信情況と区別され,絶対的特信情況と呼ばれる。
供述がされた当時の事情について,特に信用すべき情況があったかを検討する。
内容が詳しいことや警察官が信用したことだけで,この要件を満たすと即断してはならない。

取調べの方法,供述に至る経緯,利害関係,情報が与えられた可能性,初期供述からの変遷及び作成時の心身の状態等を確認する。
乙が自己の責任を軽くし甲に責任を向ける利害を持っていたか,捜査側が甲の関与を前提とする情報を示したかも具体的に調べる。
他方,利害関係があることだけで全ての供述を排除するのではなく,その利害が当該供述の作成にどのように作用したかを示す。

2 公判供述がない場合の比較資料

死亡により公判供述が得られなくても,初回の聴取,別の日の警察官調書,検察官調書,録音録画及び第三者に話した内容等の資料が存在する場合がある。
各資料の証拠としての使用可否は別に判断しつつ,情報が示された時点と供述の変化を確認する端緒とする。
録音録画に記録された取調べが一部だけの場合は,その前の働き掛けや録画されていない時間帯を未確認事項として残す。
記録が見当たらないことと,その働き掛けがなかったことを同一視しない。

第5 第三者供述でも任意性を検討する

1 特信情況とは別の問題である

乙の供述を甲の事件で用いる場合にも,乙に対する取調べの強制,威迫又は偽計等を確認する。
乙本人の事件から甲の事件に利用先を変えたことにより,不任意供述の問題が消えると扱うべきではない。
特信情況の存在と,供述が任意にされたかは,別々に主張・検討する。

同法325条は,321条から324条までにより供述書等を証拠とする場合,裁判所があらかじめ供述者の任意性を調査すべきことを定めている。
同条は調査の規定であり,それだけを第三者の不任意供述を直接排除する条文として説明するのは適切でない。
第三者の不任意供述の排除は,319条の趣旨を及ぼす解釈として説明される。
司法協会『刑事訴訟法講義案(再訂版)』(平成15年7月)248頁も,第三者の任意性のない供述は,自白と同一の理由で証拠能力を否定すべきことと,325条の調査規定との関係を説明している。

2 最高裁決定が直接判断した範囲

最高裁昭和54年10月16日第三小法廷決定(昭和53年(あ)第1861号,刑集33巻6号633頁)は,任意性の乏しい供述等による不当な心証形成を防ぐという325条の趣旨を示し,適当な方法で任意性を調査することを求めている。
調査は証拠調べ前にするのが通常であるが,必ずその時点で行わなければならないとはせず,証拠調べ後の証明力の判断時にもできるとしている。
この決定の直接の判断は調査の方法・時期であり,第三者の全ての不任意供述に関する排除の要件を網羅的に示したものではない。
条文,決定の判示及び講義案による解釈の説明を混同しないことが必要である。

第6 証拠意見と結審前の確認

証拠意見では,甲に対する乙の調書であること,立証趣旨,同意の有無及び3号のどの要件を争うかを特定する。
例えば,「供述者の死亡は争わないが,当該供述の不可欠性及び特信情況を争う。併せて,供述作成時の虚偽の証拠情報の提示と供述変更について任意性の調査を求める」と分けて記載する。
任意性を争う場合は,対象となる働き掛けと調書の部分,必要な調査資料及び調査方法を具体的に示す。

結審前には,対象被告人ごとの採否,採用根拠の条文,調書の採用範囲,任意性について行われた調査及びその結果を記録と照合する。
調書が採用された場合にも,内容の信用性と有罪立証に足りるかを別に争う。
偽計と供述変更の記録については,偽計による自白をどう争うかで詳しく説明する。

第7 資料確認の範囲と出典

法令は,令和8年10月3日にe-Gov掲載の現行刑事訴訟法の319条から326条までの関係条文を確認した。
裁判例は,裁判所掲載の昭和36年12月12日第三小法廷判決全文PDF及び昭和54年10月16日第三小法廷決定全文PDFを確認した。
不可欠性等の構造については,前記『刑事訴訟法講義案(再訂版)』275頁から277頁も参照した。

本記事の作成に当たり,判例秘書での新たな検索及び本文照合は行っていない。
死亡した共犯者の警察官調書について,ここで挙げた裁判例が本記事の全論点を直接判断したと扱うものではない。
近時の下級審を網羅した調査は行っておらず,証拠意見と記録項目は当ブログによる実務上の整理である。
共同被告人の検察官調書の問題は,共同被告人の検面調書をどう争うかを,書証の判断の全体像は,刑事裁判の書証の証拠能力を参照されたい。

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