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証明責任を負わない側の訴訟対応―否認・反証・抗弁・証拠協力をどう分けるか(AI作成)

第1 証明責任を負わないことと,何もしなくてよいことは違う

1 本記事の対象と基準日

民事訴訟で,相手方が証明責任を負う事実を争う場合にも,認否,反証,自分の抗弁の立証及び証拠収集への対応を検討する必要がある。
本記事は令和8年10月3日時点の民事訴訟法と裁判所公表の民事訴訟規則を基準に,これらを区別して説明するものである。
以下の貸金の例は説明のための仮例であり,具体的な要件事実は請求の内容,契約の種類及び特約によって確認する。

2 最終的な不利益と,審理中の対応を分ける

客観的証明責任とは,裁判所が証拠調べを経ても,ある事実が存在するかどうかを確定できない場合に,その事実を要件とする法律効果を認めないことによる不利益を誰が負うかという問題である。
証明責任を負わない側は,その事実について相手方の証明が成功しなければ有利な判断を受け得るが,相手方の証拠によって裁判所が事実の存在を認めれば,証明責任の配分だけで防御することはできない。

相手方に有利な証拠が出たため反証が必要になっても,それだけで客観的証明責任が移転したわけではない。
最終的な真偽不明の処理と,現在の証拠関係の下で何を追加すべきかという訴訟上の判断を分けることが重要である。

第2 否認,不知及び抗弁を区別する

1 認否は事実ごとに具体化する

相手方が主張する事実について,認めるのか,否認するのか,知らないのかを明らかにする。
民事訴訟法159条は,相手方の主張事実を争うことを明らかにしない場合の自白の擬制を定めているが,弁論の全趣旨により争ったと認めるべき場合を除いている。
不知の陳述は争ったものと推定されるが,自分が関与した取引については,記録や担当者への確認を踏まえて認否を具体化するのが適切である。

民事訴訟規則79条3項・80条は,準備書面で否認する場合の理由の記載や,答弁書での具体的な認否・抗弁の記載を求めている。
「原告が証明すべきである」とだけ記載せず,例えば,借入れの申込みをしていない,署名をしていない,振込みは別取引の代金であるなど,争う内容と理由を示す。
認否のための調査と,結論を相手方に有利にする虚偽の説明をしないことは,証明責任の配分とは別の問題である。

2 否認と弁済の抗弁は別の防御である

貸金返還請求について「借りていない」と争う場合は,相手方の請求を基礎付ける事実を否認する場面である。
これに対して「借入れはあったが,既に返済した」という主張は,弁済という別の事実に基づく抗弁であり,通常は弁済を主張する側がその事実の証明責任を負う。
被告であるというだけで,事件中のすべての事実について証明責任を負わないわけではない。

弁済の抗弁を提出するなら,支払日,金額,相手先及びどの債務への支払かを明確にし,領収書,送金記録及び関連する連絡を対応させる。
口座から現金を引き出した事実だけでは,相手方へ支払ったことまで当然には分からないため,資料が直接示す事実と,そこから推認する事実を区別する。

第3 反証の目的と,相手方提出証拠の利用

1 本証と反証

自分が証明責任を負う事実の存在を裁判所に認めてもらうための立証が本証であり,相手方が証明責任を負う事実について,その証明を揺るがすための立証が反証である。
反証では,常に反対の事実を積極的に証明し尽くす必要があるわけではなく,相手方の証明が成功したといえない状態にすることが目標となる。

例えば,相手方がメールを根拠に合意成立を主張する場合,後続のメールに未合意の条件が残っていることを示す,送信者に権限がなかったことを争う,抜粋の前後を提出するなどが考えられる。
単に「疑わしい」と述べず,どの証拠のどの部分から,どの推認が妨げられるのかを準備書面で説明する。
証拠の種類や量だけでなく,作成時期,作成者,取引経過との整合性及び反対証拠を検討する。

2 相手方の証拠も利用できる

取り調べられた証拠の評価は,その証拠を提出した側だけに有利な方向へ限定されない。
最高裁昭和35年11月1日第三小法廷判決(昭和33年(オ)第418号,裁判集民事46号43頁)は,被告提出の乙第11号証の記載を相手方に有利な認定に用いることを認めており,証拠共通の原則の具体例である。
本判決は今回の検討で判例秘書L01510780の理由全文を確認したものであり,一般的な事案解明義務を判示した判決として引用するものではない。

実務では,相手方提出証拠中の有利な箇所についても,号証,ページ,日時等を特定し,どの主張を裏付けるかを記載する。
相手方が提出したことと,書面の成立や記載内容が真実であることも区別して検討する。
証拠共通の原則は,当事者が主張していない主要事実を裁判所が自由に認定できるという意味ではないから,必要な事実は自分の主張としても明確にする。

第4 証明責任を負わない側にも関係する個別の規律

1 文書提出と当事者本人の尋問

民事訴訟法220条の文書提出義務は,本案の証明責任を負う側だけを対象にするものではない。
相手方が証明責任を負うという理由だけで,提出命令への対応を不要とすることはできず,提出義務の根拠と除外事由を具体的に検討する必要がある。

当事者が提出命令に従わないときの224条1項と,使用妨害目的で提出義務のある文書を使用不能にしたときの同条2項は,文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることを可能とする。
同条3項は,文書の記載について具体的な主張をすることと,他の証拠によってその文書で証明すべき事実を証明することの双方が著しく困難な場合に,その事実についての主張を真実と認めることを可能とする。
いずれも当然に相手方の主張が真実になるという規定ではない。

当事者本人の尋問では,正当な理由なく出頭せず,宣誓又は陳述を拒んだとき,裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる(208条)。
当事者照会への不回答と,裁判所による本人尋問への対応は異なる制度として扱う。

2 当事者照会と一般的な事案解明義務の議論

163条の当事者照会については,主張又は立証の準備に必要か,具体的な照会か,同条の除外事由に当たるかを項目ごとに確認する。
研究会資料11の3頁~4頁は,適法な照会への回答義務を認める説明を紹介する一方,法的義務としての回答義務を否定する考え方も紹介している。
現行法には,不回答それ自体への過料等の直接的制裁は設けられていない。

民事訴訟法2条の信義誠実の原則や事案解明義務の議論から,証拠を持つ側の協力を論じることはできるが,それを根拠に一切の資料の一般的な開示を強制できると断定すべきではない。
個別の提出義務,照会の要件,秘密の保護及び利用できる手続を順に検討する。
無制裁だからすべて無視してよいと処理することも,照会者が当然に回答命令を得られると処理することも適切ではない。

第5 依頼を受けたときの整理と行動

1 争点ごとの内部管理表を作る

代理人の内部資料として,①相手方の主張する主要事実,②認否と理由,③証明責任の所在,④甲乙双方の証拠と該当箇所,⑤相手方の証明に対する疑問,⑥自分の抗弁の不足証拠,⑦照会・提出・尋問への対応期限を対応させることが有用である。
これは事件管理上の提案であり,裁判所提出用の証拠説明書に法定されていない必須欄を加えるという意味ではない。

2 記録の保存と提出前の確認

本人と代理人は,関連する契約書,連絡,入出金記録,元データ及びバックアップの所在を早期に確認し,通常の自動消去や上書きが続かないよう必要な保存を検討する。
証拠を選別して提出する判断と,証拠そのものを消して相手方の利用を妨げる行為は区別しなければならない。
保存指示や対象範囲を記録に残すことは,本記事の実務上の提案である。

提出前には,否認と抗弁が混在していないか,反証の狙いが明確か,相手方証拠中の有利な記載を見落としていないかを確認する。
照会又は提出命令を受けた場合は,証明責任の所在だけで結論を出さず,対象を特定し,拒絶理由や期限の調整が必要な部分と,対応できる部分を分けて検討する。

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第7 出典と確認範囲

e-Gov法令検索「民事訴訟法」(2条,159条,163条,179条,180条,208条,220条~225条,231条の3,247条。令和8年10月3日確認)
裁判所「民事訴訟規則」(79条,80条,84条)
最高裁昭和35年11月1日第三小法廷判決(昭和33年(オ)第418号,裁判集民事46号43頁。判例秘書L01510780の理由全文を確認。裁判所ウェブサイトでは今回原文を再取得できていない。)
商事法務研究会「証拠収集手続の拡充等を中心とした民事訴訟法制の見直しのための研究会」資料11(令和4年12月22日,3頁~4頁。解釈論と制度改正の議論を区別して参照)

本証・反証及び証明責任の説明は一般的な訴訟法上の整理であり,上記最高裁判決の判示事項は証拠共通に関する部分に限定して用いた。
電磁的記録や電子提出については,事件の開始時期等による経過措置を確認する必要がある。