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従業員の窃盗・横領被害を受けた会社が捜査・刑事裁判の情報を確認する方法(AI作成)

第1 会社が確認できる情報と窓口

従業員による窃盗・横領の被害を受けた会社は,警察に相談した後も,事件が検察庁に送られたのか,起訴されたのか,裁判がいつ行われるのか,損害回復に使う記録を取得できるのかを確認する必要がある。

確認先と利用できる制度は,捜査中,検察処分,公判中,不起訴後及び裁判終了後で異なるため,まず現在の段階を把握した上で,経過の通知と記録の取得を分けて照会することが適切である。

本記事は,20歳以上の従業員による通常の窃盗・横領について,直接被害を受けた会社が情報を確認する方法を整理したものである。

少年法の対象となる20歳未満の従業員の事件は,本記事の対象外である。

基準日は令和8年10月3日である。

従業員による窃盗又は横領の被害にあった会社は,捜査の進み具合,起訴・不起訴の結果,刑事裁判の日程及び結果を知る方法と,損害回復に必要な刑事記録を入手する方法を分けて考える必要がある。

経過や処分結果の通知を受けられることは,従業員の供述調書や捜査機関の保有する資料全部を受け取れることを意味しない。

会社の金銭又は物が直接被害を受けた場合には,会社自身が被害者として情報提供や記録の閲覧・謄写を求めることを検討できる。

その際には,被害会社の名称,代表者,事件の概要及び会社の窓口を明確にし,代理人弁護士に依頼している場合には委任関係を示すことが適切である。

事情聴取を受けた担当社員が参考人として情報を受けることと,会社のために記録の取得を申し出ることは同じではないため,担当社員の権限をどの資料で確認するかは,担当する警察署,検察庁又は裁判所に確認する必要がある。

刑事記録の取得を待つ間も,会社が適法に保有する会計資料,振込記録,在庫資料,防犯カメラ映像及び業務用アカウントの操作ログについて,消失を防ぐための対応を並行して検討することが重要である。

社内の証拠保全や事情聴取の方法については,社内で窃盗・横領が疑われたときの社内調査-初動,証拠保全,事情聴取及び調査の限界(AI作成)で説明している。

1 5段階の見取り図

事件の段階主な確認先会社が求める事項と注意点
警察が捜査している段階担当捜査員・警察署捜査経過,送致の状況及び送致先を確認するが,捜査上の秘密等による回答制限がある
検察庁が処分を検討する段階担当検察官・検察庁の被害者支援窓口処分結果等の通知希望を伝え,告訴人に当たる場合は法定の通知・理由告知も区別して確認する
公判請求後担当検察庁・係属裁判所公判日時・結果の通知,公開法廷の傍聴,第一回公判期日後の公判記録の閲覧・謄写を検討する
不起訴処分後事件を扱った検察庁損害回復に必要な客観的証拠を特定して開示を求めるが,全記録の一律開示制度ではない
裁判の確定・事件終結後第一審裁判所に対応する検察庁の記録担当記録の保管状況,閲覧及びコピーの方法を確認する

公判請求と略式命令請求では手続が異なり,略式命令のみで第一回公判期日がない場合に,第一回公判期日後の公判記録閲覧制度を当然に利用できると考えてはならない。

第2 捜査中―警察から捜査の経過を知る方法

犯罪捜査規範10条の3は,被害者等に刑事手続の概要を説明するとともに,捜査の経過その他救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知することを定めている。

もっとも,捜査,警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし,又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれがある場合には例外がある。

会社としては,担当捜査員に連絡先を伝え,捜査経過の連絡を希望する旨と,送致先など今後の照会に必要な事項を具体的に伝えることが考えられる。

ただし,警察庁が説明する被害者連絡制度は,原則として身体犯や重大な交通事故事件の被害者等を対象とするものであるため,通常の窃盗・横領でも同じ頻度・範囲の連絡が当然に行われるとまではいえない。

このことから財産犯では一切連絡を求められないと考えるのも適切ではなく,当該事件について対応可能な範囲を確認することになる。

第3 検察処分―告訴人への通知と被害者等通知制度

1 告訴人に対する処分の通知と不起訴理由の告知

会社が告訴をした事件について,検察官が起訴又は不起訴の処分をした場合には,告訴人等に速やかにその旨を通知しなければならない(刑訴法260条)。

不起訴処分について告訴人等から請求があったときは,検察官は速やかにその理由を告げなければならない(同法261条)。

被害届を提出しただけで,当然にこれらの条文の告訴人として扱われるわけではないため,提出した書類とその取扱いを確認する必要がある。

告訴をすれば起訴や有罪判決が保証されるわけでも,理由の告知によって不起訴記録全部が交付されるわけでもない。

2 被害者等通知制度の利用

告訴人への法定通知とは別に,被害者等通知制度実施要領に基づく検察庁の通知制度がある。

会社が被害者として照会する場合には,担当検察庁へ通知を希望する旨を伝え,①事件の処理結果,②係属裁判所及び公判日時,③裁判の主文,裁判年月日,確定及び上訴についての情報を求めることが考えられる。

一方,公訴事実の要旨,不起訴理由の骨子,勾留・保釈等の身柄状況及び公判経過などは,特に希望がある場合に通知することができる事項とされており,前記①から③までと同じ扱いではない。

通知が相当でない場合や困難な場合の例外もあるため,知りたい事項とその理由を具体的に伝えることが重要である。

事件が移送され,又は上訴された場合には通知制度の実施事項が引き継がれるが,会社の担当者又は連絡先が変わった場合には,照会先と連絡先が正しく登録されているか確認することが適切である。

第4 公判中―傍聴と公判記録の閲覧・謄写

1 被害者参加を利用できなくても情報を確認する方法はある

会社は自然人ではなく,法人である(会社法3条)。

通常の窃盗,横領又は業務上横領だけの事件は,刑訴法316条の33が列挙する被害者参加制度の対象犯罪には含まれず,被害者が会社であるか個人であるかにかかわらず,これらの罪だけを理由として被害者参加を申し出ることはできない。

本件では,法人であることを理由に被害者向けの制度を一括して排除するのではなく,対象犯罪の限定によって被害者参加を利用できないことと,通知や記録の閲覧・謄写を求めることを区別する必要がある。

会社の代表者や担当社員が,会社の財産被害だけを理由に,自分自身の被害者参加を申し出られることにもならない。

しかし,公開の法廷を原則として誰でも傍聴できることと,公判記録の閲覧・謄写は,被害者参加制度とは別に検討できる。

会社の担当者が傍聴を希望する場合には,公判日時及び裁判所を確認し,混雑が見込まれる事件では傍聴券等の扱いも確認することになる。

2 自社の被害が起訴されている場合

第一回公判期日後から事件の終結までの間は,被害者等又はその委託を受けた弁護士が,事件の係属する裁判所に公判記録の閲覧・謄写を申し出る制度がある(犯罪被害者等保護法3条)。

この制度は,被害者参加人になっていることを条件とするものではない。

犯罪被害者等保護法3条による閲覧・謄写は,法人の被害者も利用できる。弁護士法人トライデント編著『いますぐ使える 実践 法務・コンプライアンスドリル』(中央経済社,2024年)265頁も,同条の手続について「被害者は自然人に限られないので,法人でもこの手続を利用できる。」と説明している。

この説明は法人が同条の手続を利用できることの実務文献上の根拠であり,同法1条に「法人を含む」と明記されているという意味ではない。実際の閲覧・謄写には,同法3条の時期・対象記録・正当性及び相当性の要件が適用される。

ただし,求める理由が正当でない場合や,犯罪の性質,審理の状況その他の事情から相当でない場合には,閲覧・謄写が認められないことがある。

対象はその刑事事件の訴訟記録であり,検察官が保有していて裁判所に提出していない証拠まで,全部取得できる制度ではない。

3 他社分だけが起訴され,自社分は起訴されていない場合

同じ従業員の事件でも,会社が被害を受けた事実が起訴事実に含まれるかを確認する必要がある。

自社分が起訴されていない場合には,被告人又はその共犯者により,被告事件の犯罪行為と同様の態様で継続的又は反復して行われた,同一又は同種の犯罪行為の被害者等として,同法4条の閲覧・謄写を申し出られるかを検討する。

その申出は検察官を経由して行い,損害賠償請求権の行使への必要性を示す必要があるほか,犯罪の性質や審理の状況等から相当であることも求められる。

同じ被告人の事件というだけで,他社の公判記録を自由に取得できるわけではない。

第5 不起訴後―損害回復に必要な記録の取得

不起訴事件記録は原則として非公開であり,被害会社が希望する資料の全部について一般的な交付請求権があるわけではない(刑訴法47条及び法務省の開示方針)。

法務省は,被害者参加制度の対象ではない事件でも,民事訴訟等で被害回復のために権利を行使する上で必要な客観的証拠について,必要性と開示による弊害を個別に検討する運用を説明している。

会社としては,「横領に関する記録を全部見たい」と求めるより,どの損害について請求するのか,どの事実を証明する資料が不足しているのか,会社保管の資料ではなぜ足りないのかを具体化して照会することが適切である。

ただし,捜査機関がその資料を保有しているか,開示できるか,閲覧とコピーのどちらに対応するかは別途確認を要する。

従業員や参考人の供述調書は客観的証拠と同じ扱いではなく,民事裁判所からの文書送付嘱託に対応する運用にも,対象人物の特定,重要争点についての代替困難性,証言困難等の事情及び捜査・公判や関係者保護への弊害がないことという厳しい条件がある。

民事裁判所から嘱託すれば,すべての供述調書が提出されるという理解は適切ではない。

第6 裁判終了後―保管検察官への閲覧請求

刑事事件が終結すると,訴訟記録は原則として第一審裁判所に対応する検察庁の検察官が保管するため,会社は同検察庁の記録担当に事件と求める資料を特定して照会する(刑事確定訴訟記録法2条・4条)。

同法には閲覧の原則と制限があり,被害会社としての立場や損害回復のための正当な理由を具体的に示すことが重要である。

事件終結後3年という閲覧制限の規定は,すべての記録を3年で廃棄するという意味ではなく,終局裁判の裁判書には同じ3年経過の制限を適用しないという条文上の区別もある。

もっとも,判決書についても他の閲覧制限があり得るほか,実際の保存状況は確認を要する。

コピーも必要な場合には,閲覧と区別して,必要書類,許可の範囲,費用及び謄写方法を確認する必要がある。

最高裁第一小法廷平成14年6月4日決定(平成13年(し)第299号,集刑281号515頁)は,保管記録の謄写不許可は,同法8条1項の「閲覧に関する処分」に当たらないとして,準抗告の申立てを不適法とした原判断を是認している。

したがって,閲覧を拒否された場合の不服申立てと,コピーを拒否された場合の対応を同じ手続として扱ってはならない。

第7 会社が照会・申請前に整理する事項

会社が準備する事項は,次のとおりである。

①会社名,代表者及び担当窓口と,代表・委任関係を示す資料。

②従業員の氏名,被害発生時期・場所,被害対象及び把握している事件番号。

③担当警察署,送致先検察庁,係属裁判所及び現在の手続段階。

④被害届か告訴かの別と,その受理・処理状況。

⑤通知を希望する具体的事項と,申出先に伝えた連絡先。

⑥閲覧又はコピーを求める記録,利用目的及び会社保管資料では不足する点。

⑦損害回復のために使う場合の,請求対象の被害と証明すべき事実。

⑧申請書式,権限証明,記録の保管状況,費用,日時及び取得方法について窓口で確認した内容。

これらは申請準備のための整理事項であり,全国共通の必須添付書類を一律に定めるものではない。

取得した記録については,裁判所が付した使用条件を確認し,閲覧できる担当者と利用目的を定めることが適切である。

公判記録の閲覧・謄写によって知った事項を用いる際には,関係者の名誉や生活の平穏を不当に害し,又は捜査・公判に支障を生じさせないよう注意する必要があり,取得できたことから広い社内配布や外部公表が当然に許されるわけではない(犯罪被害者等保護法3条2項・3項)。

通常の窃盗・横領は損害賠償命令制度の対象犯罪にも含まれないため,刑事情報の取得と,示談又は民事手続による損害回復は別に検討することになる(同法24条)。

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第9 出典・参考資料

①刑事訴訟法:47条,230条,240条,241条,260条,261条,316条の33(2026年8月13日施行版)。https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131

②犯罪捜査規範:10条の3(2026年5月21日施行版)。https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002

③犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律:1条,3条,4条,24条(2026年5月21日施行版)。https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000075

④刑事確定訴訟記録法:2条,3条,4条,8条(2026年5月21日施行版)。https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000064

⑤法務省「被害者等通知制度実施要領」第2~第4,第7,第8(令和7年5月29日最終改正,同年6月1日施行)。https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji11-10.html

⑥法務省「不起訴事件記録の開示について」第1の2,第2。https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji23.html

⑦警察庁「公的機関【刑事・民事手続関係】」被害者連絡制度の説明。https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/portal/search/madoguchi/04/index.html

⑧裁判所「刑事手続における犯罪被害者のための制度」傍聴の説明。https://www.courts.go.jp/about/hogosisaku/seido/Index.html

⑨最高裁第一小法廷平成14年6月4日決定(平成13年(し)第299号,集刑281号515頁),決定原文1頁~1頁。https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-57839.pdf

現行条文と公的ページ本文を令和8年10月3日に確認したが,各庁の申請書式・費用・保存実態及び個別記録の存否・開示結果は未確認である。

法務省の不起訴記録案内には過去の制度説明が含まれるため,被害者参加の対象犯罪は現行刑訴法の列挙によって判断した。

⑩会社法3条。https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

⑪弁護士法人トライデント編著『いますぐ使える 実践 法務・コンプライアンスドリル』(中央経済社,2024年)265頁。法人の被害者による犯罪被害者等保護法3条の閲覧・謄写について。