◯被害者に関する犯罪捜査規範の条文は以下のとおりです。
(秘密の保持等)
第九条 捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。
2 捜査を行うに当たつては、前項の規定により秘密を厳守するほか、告訴、告発、犯罪に関する申告その他犯罪捜査の端緒又は犯罪捜査の資料を提供した者(第十一条(被害者等の保護等)第二項において「資料提供者」という。)の名誉又は信用を害することのないように注意しなければならない。
(関係者に対する配慮)
第十条 捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。
(被害者等に対する配慮)
第十条の二 捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。
2 捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用その他の被害者等にできる限り不安又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。
(被害者等に対する通知)
第十条の三 捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。
2 前項の規定は、資料提供者に後難が及ぶおそれがあると認められる場合について準用する。
(親告罪の要急捜査)
第七十条
警察官は、親告罪に係る犯罪があることを知つた場合において、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認めるときは、未だ告訴がない場合においても、捜査しなければならない。この場合においては、被害者またはその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、特に注意しなければならない。
(現場における負傷者の救護等)
第八十五条 警察官は、現場を臨検した場合において負傷者があるときは、救護の処置をとらなければならない。
2 前項の場合において、ひん死の重傷者があるときは、応急救護の処置をとるとともに、その者から犯人の氏名、犯行の原因、被害者の氏名、目撃者等を聴取しておかなければならない。
3 前項の重傷者が死亡したときは、その時刻を記録しておかなければならない。
(現場における捜査の要点)
第九十条 現場において捜査を行うに当たつては、現場鑑識その他の科学的合理的な方法により、次に掲げる事項を明らかにするよう努め、犯行の過程を全般的に把握するようにしなければならない。
一 時の関係
イ 犯行の日時及びこれを推定し得る状況
ロ 発覚の日時及び状況
ハ 犯行当時における気象の状況
ニ その他時に関し参考となる事項
二 場所の関係
イ 現場に通ずる道路及びその状況
ロ 家屋その他現場附近にある物件及びその状況
ハ 現場の間取等の状況
ニ 現場における器具その他物品の状況
ホ 指掌紋、足跡その他のこん跡並びに遺留物件の位置及び状況
ヘ その他場所に関し参考となる事項
三 被害者の関係
イ 犯人に対する応接その他被害前の状況
ロ 被害時における抵抗、姿勢等の状況
ハ 傷害の部位及び程度、被害金品の種別及び数量等被害の程度
ニ 死体の位置及び創傷、流血その他の状況
ホ その他被害者に関し参考となる事項
四 被疑者の関係
イ 現場についての侵入及び逃走の経路
ロ 被疑者の数及び性別
ハ 犯罪の手段、方法その他犯罪実行の状況
ニ 被疑者の犯行の動機並びに被害者との面識及び現場についての知識の有無を推定し得る状況
ホ 被疑者の人相、風体、特徴、習癖その他特異な言動等
ヘ 凶器の種類、形状及び加害の方法その他加害の状況
ト その他被疑者に関し参考となる事項
(資料を発見した時の措置)
第九十二条 遺留品、現場指掌紋等の資料を発見したときは、年月日時及び場所を記載した紙片に被害者又は第三者の署名を求め、これを添付して撮影する等証拠力の保全に努めなければならない。
(実況見分調書記載上の注意)
第百五条 実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。
2 被疑者、被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合には、刑訴法第百九十八条第三項 から第五項 までおよび同法第二百二十三条第二項 の規定によらなければならない。この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第二百条 第百九十八条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
一 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
二 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
三 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。