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証人が証言を拒んだときの刑事弁護―供述不能の立証・再尋問・調書採用への異議(AI作成)

第1 証言拒絶と供述不能は別々に判断する

証人が答えなかったからといって,その人の検察官調書を直ちに有罪認定に使えるわけではない。
一方,証言拒絶を理由とする供述不能が,常に否定されるわけでもない。
弁護人は,拒絶権の有無,拒絶が続く見込み,供述を得るための方法及び提出書面の証拠能力を分けて検討する必要がある。

1 被告人の黙秘と証人の証言拒絶

刑訴法311条1項は,被告人に,終始沈黙し,又は個々の質問に対して供述を拒むことを認めている。
これに対し,証人の自己負罪に関する証言拒絶権は同法146条によるものであり,自己が刑事訴追又は有罪判決を受けるおそれのある証言が対象である。
親族に関する147条及び業務上の秘密に関する149条等も,具体的な事項に即して確認する。
被告人としての全面的黙秘と,証人としての拒絶権を同じものとして扱ってはならない。

最高裁昭和54年11月12日決定・原文1頁によれば,共同被告人を弁論分離によって証人として尋問する場合も,自己負罪に関する証言拒絶権は保障される。
弁論分離をすれば必ず回答が得られる,という説明は適切でない。
共同被告人の調書については,共同被告人の検面調書をどう争うかも参照されたい。

2 最高裁が認めた供述不能の範囲

最高裁大法廷昭和27年4月9日判決・原文2頁~3頁は,刑訴法321条1項2号の死亡等の列挙を例示と解し,これらと同等以上に供述を得ることができない場合を含むとした。
重要な事項について証言を拒絶した証人の検察官調書を採用した事案である。
同判決から導けるのは,証言拒絶が供述不能に当たり得るという点であり,一度の拒絶で当然に調書を採用できるということではない。

第2 拒絶の理由・対象・継続見込みを具体化する

1 本人の刑事事件と恐怖を区別する

拒絶理由が自己の刑事責任への懸念なのか,家族への危害等への恐怖なのか,別の事情なのかを確認する。
本人の事件が係属している場合は,その審理状況,予定される被告人質問,証言しようとする事項との関係を整理する。
別件の判決が確定したという事実だけで,あらゆる質問について自己負罪のおそれがなくなったと断定してはならない。

刑訴規則122条1項は,証言を拒む者に拒絶事由を示すことを求めている。
同条2項は,その事由を示さない場合に,過料その他の制裁の可能性を告げて証言を命じることを定める。
ただし,適法な拒絶権の行使に対して,制裁を用いて回答を強いることはできない。
現在の刑訴法157条の2・157条の3による刑事免責の決定がある場合には,その内容及び146条との関係も別途確認する必要がある。

2 一時的な拒絶かを確かめる

東京高裁平成22年5月27日判決・原文2頁~4頁は,一時的な証言拒絶では足りず,相当程度継続する見込みを要するとした。
公判の迅速性だけでなく,証言の重要性,審理計画及び証人の態度等を踏まえ,供述不能を判断する必要がある。

同事件では,証人自身の被告人質問後なら証言する可能性が示されていたのに,その前に審理を終えて供述不能とした判断が問題となった。
弁護側が将来の証言可能性を確実に証明できないという理由だけで,検察官の立証不足を埋めることはできない。
この判断は,無期限に審理を延期すべきことを意味するものではない。

第3 供述を得る方法を検討する

再尋問,尋問期日の変更,遮蔽措置又はビデオリンク方式等が有効かを,拒絶理由に合わせて検討する。
各方法には法定の要件があり,恐怖があるというだけで,どの方法も当然に利用できるわけではない。
例えば,自己負罪への懸念と,被告人の面前で供述することへの恐怖では,必要となる検討が異なる。

広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決・原文8頁~11頁は,拒絶理由を十分明らかにせず,遮蔽措置等や再尋問によって証言を得る可能性を適切に検討しないまま,供述不能として検察官調書を採用した判断を是認しなかった。
証言拒絶が生じたという結果だけでなく,その後にどのような対応が行われたかが重要である。

弁護側としては,「再尋問を希望する」という抽象的な申出にとどめず,確認したい事項,想定する期日,提案する方法及び供述が得られると考える理由を具体化することが有用である。
これは上記裁判例を踏まえた実務上の提案であり,全事件に一定の回数の再尋問を義務づけるものではない。

第4 供述不能の立証責任と自由な証明

1 検察官の立証事項を明らかにする

東京高裁平成22年5月27日判決は,検察官調書の証拠能力を基礎づける供述不能について,検察官が立証責任を負うとした。
証人の将来の意向が不明であることを,そのまま供述不能が証明されたことに置き換えてはならない。
弁護側は,提出された資料が拒絶理由,継続見込み及び供述を得る可能性をどこまで示しているかを検討する。

2 手続的事実の証明と犯罪事実の証明

広島高裁岡山支部平成27年3月18日判決は,供述不能という訴訟法的事実の証明を自由な証明によるものとし,その判断資料に,犯罪事実を証明する場合と同じ伝聞例外の要件を要求しなかった(原文7頁)。
自由な証明であることは,立証を省略できることや,検察官の立証責任がなくなることを意味しない。

証言拒絶の理由を記した書面を,供述不能の判断資料として用いる場合と,その書面の供述内容を犯罪事実の証明に使う場合は別である。
前者について参照できたからといって,後者について当然に証拠能力が認められるわけではない。
証拠意見では,書面の名称だけでなく,使用目的と対象部分を明らかにする必要がある。

第5 提出書面ごとの要件を取り違えない

1 検察官調書の前段と後段

刑訴法321条1項2号前段は供述不能を問題とし,後段は,公判供述と以前の供述との相反又は実質的相違を問題とする。
後段の相対的特信情況を,前段にもそのまま要求するという整理は適切でない。
前段の特信情況をめぐる学説上の議論と,後段の条文上の要件は区別する。

全面的な黙秘を,当然に以前の供述と相反する供述と読み替えてはならない。
拒絶後に供述が得られた場合も,当初の請求根拠のままでよいかを再検討し,前段から後段への請求変更があれば,公判供述の内容と相対的特信情況について証拠意見を述べる。

2 警察官調書等との違い

同項3号の書面では,供述不能に加え,犯罪事実の存否の証明に欠くことができないこと及び特に信用すべき情況の下でされた供述であることが必要となる。
検察官調書についての判断だけで,警察官調書,供述書又は私的なメモまで採用できると結論づけてはならない。
一般的な判断順序は,刑事裁判の書証の証拠能力を参照されたい。

第6 証拠意見と公判記録に残す事項

1 証拠意見の記載例

架空の例では,「検察官調書について,犯罪事実の証明に用いることには不同意。刑訴法321条1項2号前段の供述不能を争う。拒絶理由及び継続見込みの立証資料を確認されたい。証人自身の被告人質問後の再尋問と期日変更を求める」というように,対象と理由を具体化する。
実際の意見は,事件記録,証言拒絶の内容及び検察官の請求根拠に即して作成する。

拒絶理由の判断資料として提出された別の書面については,犯罪事実の証明への使用にまで同意したのかが曖昧にならないよう,使用目的に関する意見も明示する。
採用後も,供述内容の信用性と証明力を争う余地は残る。

2 結審前の照合

確認すべき事項は,拒絶された質問と回答,拒絶理由,供述を得る方法の申出,裁判所の対応,供述不能の判断資料,採用の法的根拠及び取調べ対象の範囲である。
証拠等関係カードの採否欄だけでなく,公判調書等と合わせて確認する。
公判調書に必要な記載があるかについては,供述内容を記録する資料と,手続経過を証明する公判調書の役割を区別して点検する。

証拠等関係カードの読み方及び刑事公判調書の確認と異議申立ても参照されたい。

第7 部分的拒絶と資料確認の限界

1 拒絶された部分を特定する

一部の質問には答え,別の質問には答えなかった場合,少し答えたというだけで全体の供述不能を否定したり,一部を拒絶しただけで調書全体の供述不能を認めたりすることは避けるべきである。
実務上は,拒絶された事項,立証対象及び調書の該当部分を対照し,可分性や反対尋問の実効性を具体的に検討することが有用である。
これは検討手順の提案であり,部分的拒絶の全場面について最高裁が確立した一律の基準として述べるものではない。

山口直也「部分的証言拒絶と供述不能」立命館法学2012年第1号は,部分的拒絶と供述不能の関係を論じる研究論文である。
学説上の分析と裁判所の判示を混同しないことが必要である。
関連する昭和44年12月4日の最高裁裁判例の原文照合及び関連下級審裁判例の整理は,別途の調査課題として残る。

2 一次資料と確認日

本記事は,裁判所公開の上記4件の裁判例原文,令和8年10月3日にe-Govで確認した刑事訴訟法の現在施行版(令和8年8月13日施行)及び裁判所公開の刑事訴訟規則121条・122条を基礎とする。
条文の確認先は刑事訴訟法・e-Gov法令検索である。
今回,判例秘書での照合は行っておらず,関連裁判例を網羅したという意味ではない。
平成15年度の司法試験答案を評価する場合には,平成22年・平成27年の裁判例や,後に導入された刑事免責制度を当時の法として用いないことにも注意が必要である。