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平成25年度最高裁民事破棄判決等の実情―34件の破棄判決・7件の破棄決定から学ぶ手続・証拠・差戻し実務(AI作成)

平成25年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」は,平成25年中に言い渡された民事・行政・労働関係の破棄判決34件と破棄決定7件を整理した年次論文です。通読から得られる中心的な教訓は,本案の法律論へ進む前に,手続,基準時,証拠の出所,計算過程及び判決効を受ける第三者を別々の台帳で固定することです。

第1 この記事の結論と資料の性格

基礎資料は,伊藤正晴・上村考由「最高裁民事破棄判決等の実情―平成25年度―」判例時報2224号・2225号です。同論文は,破棄事件の所在,原審の判断及び破棄理由を把握するための有力な二次資料ですが,裁判所が言い渡した判決・決定そのものではありません。

本記事では,年度論文で把握した事件のうち,裁判所公式PDFで全文を確認できた代表事件と,年度論文の記載までしか確認できていない事件を区別します。また,判例秘書については収録メタデータを確認した事件番号を示しますが,今回の調査では判例秘書本文との逐語照合まではしていません。裁判所公式データベースは全裁判例を掲載するものではないため,検索で見つからないことから事件不存在又は判例秘書未収録を推論しません。

第2 平成25年度の件数と「0.9%」の読み方

区分新受既済
上告2807件2871件
上告受理申立て3280件3356件
単純合計6087件6137件
並行申立て等の調整後3795件3858件

破棄判決は34件,破棄決定は7件であり,許可抗告は新受42件,既済46件でした。年度論文が示す破棄判決割合約0.9%は,調整後既済3858件を基礎とする年度集計です。個別事件の当事者,代理人又は特定分野について「最高裁で勝つ確率が0.9%」と読むことはできません。上告と上告受理申立ての重複調整,事件類型及び許可抗告の分母が異なるからです。

また,本ブログの最高裁の破棄判決等一覧表にある「平成25年分」は同年4月から12月までの一覧であり,暦年全体を扱う年次論文とは対象期間と目的が異なります。

第3 破棄事例から作る六つの実務台帳

  1. 手続台帳:審級,申立ての種類,職権調査事項,公開,裁判体,中断,送達,不服申立ての範囲及び主文を記録する。
  2. 主張台帳:請求原因,抗弁,再抗弁,予備的主張,判断の有無及び理由相互の整合性を記録する。
  3. 証拠・推論台帳:基礎資料,直接事実,中間推論,経験則,反対仮説及び反証を分ける。
  4. 時間・金額台帳:弁済期,時効,契約時,相続開始時,配当時,控除,充当及び遅延損害金を時系列と計算式で管理する。
  5. 第三者影響台帳:判決効を受ける者,通知,参加機会,代表当事者の訴訟活動及び再審の可能性を確認する。
  6. 法源台帳:当時法,現行法,施行日,経過措置,公式本文,判例秘書,二次資料及び未確認点を分ける。

第4 本案前に閉じるべき手続問題

1 不利益変更は最終額で比べる

年度論文によれば,最高裁平成25年2月15日第二小法廷判決(平成23年(受)第302号)は,被告だけが控訴した不法行為事件で,控訴審が過失割合を被告に有利に変更しながら,過失相殺前の損害額を増額した結果,被告の最終負担額を第一審より増やした事案を扱いました。過失割合の一要素だけを見れば被告に有利でも,主文上の支払額が増えるなら民事訴訟法304条の不利益変更禁止が問題となります。

第一審主文,控訴の趣旨,損害項目,基礎額,過失割合,既払額及び最終認容額を一つの対照表にし,「誰の不服申立てにより,最終的な権利義務がどう変わったか」を確認します。この事件は年度論文で事件番号,判決日,法廷,結論及び事案の概要を確認しましたが,裁判所公表全文及び判例秘書全文は未確認です。

2 送達報告書と事務所記録が食い違う場合

年度論文によれば,最高裁平成25年7月18日第一小法廷判決(平成23年(受)第1552号)は,送達報告書が3月8日送達と記載する一方,事務所職員の説明,担当ローテーション表,連絡メモ,内部記録及び3月9日付け受付印等が3月9日受領の可能性を示していた事案を破棄差戻しとしました。控訴状は3月23日に提出されており,1日の違いが控訴期間内か否かを左右しました。

送達報告書は重要な公的記録ですが,記載が反証不能というわけではありません。封筒,受付印,受領簿,勤務表,郵便受箱からの回収記録,担当者間のメモ,事件管理システムへの入力時刻及びその後の相談・起案・提出行動を直ちに保全します。この事件も裁判所公表全文及び判例秘書全文は未確認であり,具体的訴訟で用いるときは原典の追加確認が必要です。

第5 証拠・計算・基準時を元資料へ戻す

平成25年度の破棄事例には,経験則,金額計算又は契約時点の評価が結論を左右するものが含まれます。集計表や主張書面だけでなく,通帳,取引履歴,契約書,説明資料,施工資料,配当表及び納税記録等の基礎資料へ戻ります。

特に,主債務と保証債務,自働債権と受働債権,配当前と配当後の債権額を同じ欄で処理すると,充当又は残額計算の誤りが見えにくくなります。時間軸と金額軸を分け,計算式の各入力値に対応する証拠を特定します。後に賦課金又は損失が生じたことだけから,契約締結時の瑕疵又は説明義務違反をさかのぼって認定しないことも重要です。

第6 未登記通行地役権と担保不動産競売

最高裁平成25年2月26日第三小法廷判決(平成23年(受)第1644号,民集67巻2号297頁)は,担保不動産競売による買受人との関係では,競売による売却時ではなく,最先順位抵当権の設定時を基準にしました。

その時点で未登記の通行地役権が既に存在し,継続的な通路使用が土地の位置・形状・構造等から客観的に明らかで,抵当権者がこれを認識し又は認識可能であったときは,特段の事情がない限り,地役権は競売によって消滅せず,買受人に対抗できます。買受人が売却時に通路を知っていたという事情だけでは足りません。

最先順位抵当権設定日,地役権の成立時期,その時点の現況写真・航空写真・地図,評価資料,現況調査報告書及び抵当権者の現地確認資料を時系列でそろえます。詳しくは,私道をめぐる法律関係―通行権・2項道路・掘削・駐車・税金を参照してください。

第7 行政基準だけで要件判断を終えない

最高裁平成25年4月16日第三小法廷判決(平成24年(行ヒ)第245号)は,水俣病認定について,客観的な罹患の有無を確認する行為であり,処分行政庁の裁量に委ねられる性質ではないとしました。裁判所は行政上の判断基準の合理性だけを審査するのではなく,諸般の事情と関係証拠を総合し,症候と原因物質との個別的因果関係を具体的に判断します。

専門的な行政基準に該当しないことと,法律上の要件を満たさないことは同じではありません。行政事件では,①法令上の要件,②行政基準の位置付け,③基準が想定する典型例,④基準外事例を拾う証拠及び⑤個別的因果関係の評価を分けます。

第8 新株発行無効判決と第三者の手続保障

最高裁平成25年11月21日第一小法廷決定(平成24年(許)第43号,民集67巻8号1686頁)は,新株発行無効判決の効力を受ける第三者について,独立当事者参加と再審原告適格の関係を整理しました。

第三者は当然に再審原告適格を有するわけではありませんが,確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることにより,再審開始後の訴訟行為を通じて合一確定の要請を介し判決を左右できるため,再審原告適格を得ます。また,会社の訴訟活動が著しく信義に反し,第三者に判決効を及ぼすことが手続保障の観点から看過できない場合には,民事訴訟法338条1項3号の再審事由となる余地があります。

単に第三者へ訴訟係属を知らせなかっただけで直ちに再審事由となるわけではありません。会社が第三者の反対意思を知りながら請求を全く争わず,むしろ相手方の主張を裏付ける書証を提出し,容易に通知できたのに知らせなかったという一連の訴訟活動が問題となりました。詳しくは,新株発行無効判決の効力を受ける第三者の再審を参照してください。

第9 家族・相続では基準時と制度効果を分ける

最高裁平成25年9月4日大法廷決定(平成24年(ク)第984号・第985号)は,旧民法900条4号ただし書前段について,遅くとも平成13年7月当時,憲法14条1項に違反していたとしました。他方,法的安定性との調和から,裁判,合意等により既に確定的となった法律関係まで覆すものではないとしました。相続開始時と法律関係が確定した時を別に記録する必要があります。

最高裁平成25年12月10日第三小法廷決定(平成25年(許)第5号,民集67巻9号1847頁)は,特例法により男性への性別の取扱いの変更を受けた夫についても,妻が婚姻中に懐胎した子は民法772条により夫の子と推定されるとしました。大法廷決定ではなく第三小法廷決定であり,補足意見と反対意見があります。

戸籍上の性別,婚姻,嫡出推定,血縁及び生殖補助医療を一つの事実評価にまとめず,各制度の入口,効果及び争い方を分けます。後続法改正及び後続判例がある分野であるため,現行事件へ用いるときは現在法を別に確認してください。

第10 一次資料・判例秘書・年度論文の確認状況

事件裁判所公式全文判例秘書今回の扱い
平成24年(ク)第984号・第985号確認済みL06810046の収録確認公式PDFを一次資料として使用
平成25年(許)第5号確認済みL06810061の収録確認公式PDFを一次資料として使用
平成24年(許)第43号確認済みL06810058の収録確認公式PDFを一次資料として使用
平成24年(行ヒ)第245号確認済みL06810028の収録確認公式PDFを一次資料として使用
平成23年(受)第1644号確認済み今回未照会公式PDFを一次資料として使用
平成23年(受)第302号今回未確認今回未確認年度論文に基づく概要のみ
平成23年(受)第1552号今回未確認今回未確認年度論文に基づく概要のみ

判例秘書の「収録確認」は,識別番号で収録メタデータを確認したという意味であり,同データベースの本文を裁判所公式PDFと逐語照合したという意味ではありません。公式DBで全文を確認できない事件は,年度論文による確認の範囲を超えて判旨を断定しません。

第11 実務チェックリスト

  • 本案へ入る前に,裁判体,公開,中断,送達,不服範囲及び主文を確認したか。
  • 事務所内の受領記録,受付印,勤務表及び事件管理システムの時刻を保全したか。
  • 第一審と控訴審の最終認容額を,損害項目ごとの計算式で比較したか。
  • 集計表を通帳,契約書,配当表その他の基礎資料と照合したか。
  • 契約時,抵当権設定時,相続開始時及び法律関係確定時を混同していないか。
  • 判決効を受ける第三者を洗い出し,通知と参加機会を検討したか。
  • 行政基準の不該当だけで,法令上の要件不該当と結論付けていないか。
  • 年度論文,裁判所公式全文,判例秘書及び現行法の確認状態を法源台帳に残したか。

第12 出典及び関連記事