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家族や代表者が税金を肩代わりした後の破産―租税債権への代位の可否,求償権の扱い及び国税通則法41条(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,会社の代表者,親会社,保証をした金融機関,同居の家族などが,本人(会社又は個人)に代わって税金を納めた後に本人が破産した場合に,納めた人が本人にどのような請求をでき,その請求が破産手続でどう扱われるかを整理する。
法令は,令和8年9月29日現在の条文をe-Gov法令検索(法令API)で確認した。
最高裁判所の判決は裁判所ウェブサイトの判決全文で確認し,裁判所ウェブサイトに掲載されていない下級審の裁判例は判例秘書で判決本文を確認した。

2 結論

①税金は本人以外の者も納めることができる(国税通則法41条1項,地方税法20条の6第1項)。
②しかし,税法が納めた人に代位を認めているのは,その税金を担保する抵当権がある場合の抵当権だけである(国税通則法41条2項,地方税法20条の6第2項)。
③下級審の裁判例は,税金を納めた人が租税債権そのものの優先的な地位を引き継ぐことを認めていない。
租税債権は性質上私人に移転しないとして代位そのものを否定したもの,代位で取得しても一般の破産債権にとどまるとしたもの,再生手続で一般優先債権として代位することはできないとしたものがある。
④そのため,肩代わりした人が本人に求めることができるのは,原則として求償権(破産債権)だけであり,破産手続の配当を受けるにとどまる。
⑤この求償権は,租税等の請求権ではないので,本人が個人で免責許可決定を受けると免責の対象になる。
⑥未払賃金や前渡金の返還請求権を代位弁済した場合には,最高裁判所が優先的な地位の行使を認めているので,税金の場合と結論が逆になる。

第2 第三者納付の制度

1 本人以外の者も納付できる

国税通則法41条1項は,「国税は、これを納付すべき者のために第三者が納付することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第1項も,「地方団体の徴収金は、その納税者又は特別徴収義務者のために第三者が納付し、又は納入することができる。」と定めている。

2 代位できるのは抵当権だけ

国税通則法41条2項は,「国税の納付について正当な利益を有する第三者又は国税を納付すべき者の同意を得た第三者が国税を納付すべき者に代わつてこれを納付した場合において、その国税を担保するため抵当権が設定されているときは、これらの者は、その納付により、その抵当権につき国に代位することができる。」と定めている。
地方税法20条の6第2項も,地方団体の徴収金について同じ趣旨を定めている。
これらの規定は,代位の対象を,税金を担保する抵当権に限って定めている。
国税の場合,代位しようとする第三者は,正当な利益を有すること又は本人の同意を得たことを証する書面を,納付の日の翌日までに国税局長,税務署長又は税関長に提出しなければならない(国税通則法施行令11条)。
税法には,納めた人が租税債権そのものを取得し,国と同じ優先的な地位で行使できるとする規定はない。

第3 民法の弁済による代位との関係

民法499条は,「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。」と定め,同法501条1項は,代位した者は「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。」と定める。
代位した者が原債権を行使できるのは,自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内に限られる(同条2項)。
最高裁判所第三小法廷昭和59年5月29日判決(昭和55年(オ)第351号,民集38巻7号885頁)は,弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,原債権とその担保権を代位弁済者に移転させ,求償権の範囲内で行使することを認める制度であるとしている。
問題は,この民法の一般規定によって,税金を納めた人が租税債権を取得し,破産手続で財団債権や優先的破産債権として行使できるかである。

第4 裁判例

1 東京地方裁判所平成17年4月15日判決(民事再生)

東京地方裁判所平成17年4月15日判決(平成16年(ワ)第22073号,判例秘書の判例番号 L06031567)は,再生手続中の会社の関税等を,保証をしていた者が代わりに納めた事案である。
同判決は,求償権は再生手続開始前の原因に基づく再生債権であり,共益債権ではないとした。
また,租税債権が一般優先債権とされる趣旨である租税収入の確保は,保証人による代位弁済によって既に達成されているから,代位債権を一般優先債権として扱う必要はないとして,保証人は代位弁済によって租税債権に一般優先債権として代位することはできないとした。

2 東京高等裁判所平成17年6月30日判決(旧破産法)

東京高等裁判所平成17年6月30日判決(平成17年(ネ)第1910号,判例秘書の判例番号 L06020175)は,会社の依頼で関税等の支払を保証していた金融機関が,会社の再生手続中に関税等を納め,その後会社が破産した事案である。
第1審は,国税通則法41条及び同法施行令11条は抵当権に限って代位を認める趣旨であり,保証債務の履行として租税を納めても租税債権を代位によって取得することはできないとした。
控訴審の同判決は,旧破産法47条2号が租税等の請求権を財団債権とした趣旨は,租税を公平確実に徴収するという公益的な要請によるもので,倒産手続上の優先的な効力は租税債権の固有の権利内容ではなく立法政策によって創設的に付与されたものであるとした。
そして,私人が代位によって租税債権を取得した場合には,もはやその私人に優先的な効力を与える理由はなく,代位取得した租税債権は一般の破産債権に当たるとした。
一般の破産債権は破産手続によらなければ行使できないから,破産管財人に支払を求める訴えは不適法であるとして,訴えを却下した。
同判決は,再生手続中の納付によって生じたとする不当利得返還請求権についても,保証に基づく事後求償権が再生債権にすぎないのに,同じ事実関係から生じる不当利得返還請求権を共益債権とすると,事後求償権に必要以上の効力を与え,再生債権者全体との衡平を害するとして,共益債権には当たらないとした。

3 東京地方裁判所平成27年11月26日判決

東京地方裁判所平成27年11月26日判決(平成26年(ワ)第9596号,判例秘書の判例番号 L07031151)は,破産者の所得税・住民税等を第三者が立て替えて納めたとして,代位取得した租税債権を財団債権として請求した事案である。
同判決は,債権の性質上譲渡が許されない債権については弁済による代位が否定されるとしたうえで,租税債権は,税額の確定や強制的な徴収が行政処分によって行われ,減免や和解も認められないなど私法上の債権とは異なる特色を持つ公法上の債権であり,私人に対する譲渡が許されないから,弁済による代位の対象とはならないとした。
また,国税通則法41条2項は,第三者納付をした者が租税債権ではなく抵当権に直接代位することを定めたものであるとした。

4 東京地方裁判所平成27年11月12日判決(確認の訴え)

東京地方裁判所平成27年11月12日判決(平成26年(ワ)第20312号,判例秘書の判例番号 L07031150)は,破産者の租税債務を第三者として納めた者が,代位によって取得した租税債権のうち財団債権に当たらない部分について,優先的破産債権を有することの確認を破産管財人に求めた事案である。
同判決は,破産法100条1項は破産債権の破産手続外での行使を禁止しており,強制執行や保全執行だけでなく,給付訴訟や積極的確認訴訟も破産債権の行使として許されないとして,訴えを却下した。
破産債権の存否や優先権は,債権届出と債権調査,破産債権査定の手続で争うことになる。

第5 賃金や前渡金の代位弁済との違い

最高裁判所第三小法廷平成23年11月22日判決(平成22年(受)第78号,民集65巻8号3165頁)は,財団債権である給料債権を代位弁済した者は,求償権が破産債権にすぎない場合でも,破産手続によらないで原債権を行使できるとした。
最高裁判所第一小法廷平成23年11月24日判決(平成22年(受)第1587号,民集65巻8号3213頁)も,民事再生法上の共益債権である前渡金返還請求権を代位によって取得した者について,同じ結論をとった。
これに対し,租税債権については,第4の下級審の裁判例のとおり,代位そのものを否定するか,代位しても優先的な効力は引き継がれないとされている。
賃金の立替払いについては,未払賃金を第三者が立替払いした場合―求償権と代位取得した財団債権で整理している。

第6 肩代わりした人の求償権

1 破産手続での扱い

破産手続開始の前に本人に代わって税金を納めた人は,本人に対して求償権を取得する。
この求償権は,破産手続開始前の原因に基づく請求権として,一般の破産債権になる。
破産債権は,破産手続によらなければ行使できない(破産法100条1項)ので,債権届出をして配当を待つことになる。

2 免責との関係

破産法253条1項1号が非免責債権として挙げているのは「租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)」である。
本人に代わって税金を納めた人の求償権は,租税等の請求権ではないので,本人が個人で免責許可決定を受ければ,原則として免責の対象になる。
他方,本人が滞納していた税金そのものは,納められた範囲で消滅している。
結果として,家族が税金を肩代わりした分は,家族の負担として残ることになる。

3 破産手続開始の後に納めた場合

破産手続開始の後に家族等が本人の税金を納めた場合は,本人又は破産財団に対する事務管理・不当利得の請求権が問題になり得る。
事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権は財団債権とされている(破産法148条1項5号)が,第4の2の東京高等裁判所平成17年6月30日判決は,再生手続中に保証の履行として納めた者の不当利得返還請求権を,事後求償権との関係で再生債権者全体との衡平を害するとして,共益債権と認めなかった。
開始後の納付が財団債権になるかは,誰のために,どの財産に係る税金を,どのような合意の下で納めたかによって判断が分かれ得る。

第7 相談を受けたときの注意点

①本人の破産を検討している段階で,家族等が本人の税金を肩代わりしても,その分を破産手続で優先的に取り戻すことは,原則としてできない。
②肩代わりした分の求償権は,本人が免責許可決定を受ければ免責される可能性が高い。
③税金を担保する抵当権が設定されている場合は,国税通則法41条2項・地方税法20条の6第2項により,その抵当権に代位できる余地がある。
国税の場合は,納付の日の翌日までに書面を提出する必要がある(国税通則法施行令11条)。
④税金は破産手続でも財団債権又は優先的破産債権として扱われ,免責もされない(破産法253条1項1号)ので,本人の破産の見通しを立てた後に,誰がいつ納めるかを判断するのがよい。
⑤納付の名義や資金の出所によっては,第三者納付ではなく本人への貸付けとみられることもあるので,納付書の名義と資金の流れを記録しておく。

第8 関連記事

補助金の返還金が破産手続でどう扱われるかは,補助金・助成金を受けた会社の破産で,雇用保険の不正受給の返還金については,雇用保険(失業給付)の不正受給と自己破産で整理している。
破産手続における租税等の請求権の分類全般は,倒産事件の実務メモ―破産・個人再生・私的整理を参照されたい。

第9 出典

1 法令

①国税通則法(e-Gov法令検索)41条
②地方税法(e-Gov法令検索)20条の6
③民法(e-Gov法令検索)499条から501条まで
④破産法(e-Gov法令検索)97条4号,100条1項,148条1項3号・5号及び253条1項

2 裁判例

①最高裁判所第三小法廷昭和59年5月29日判決(昭和55年(オ)第351号,民集38巻7号885頁)
②最高裁判所第三小法廷平成23年11月22日判決(平成22年(受)第78号,民集65巻8号3165頁)
③最高裁判所第一小法廷平成23年11月24日判決(平成22年(受)第1587号,民集65巻8号3213頁)
④東京地方裁判所平成17年4月15日判決(平成16年(ワ)第22073号,判例秘書の判例番号 L06031567)
⑤東京高等裁判所平成17年6月30日判決(平成17年(ネ)第1910号,判例秘書の判例番号 L06020175)
⑥東京地方裁判所平成27年11月26日判決(平成26年(ワ)第9596号,判例秘書の判例番号 L07031151)
⑦東京地方裁判所平成27年11月12日判決(平成26年(ワ)第20312号,判例秘書の判例番号 L07031150)

第10 確認状態

国税通則法41条,地方税法20条の6,民法499条から501条まで及び破産法の各条は,e-Gov法令検索(法令API)で令和8年9月29日現在の条文を確認した。
最高裁判所の3判決は,裁判所ウェブサイトで確認した。
東京地方裁判所・東京高等裁判所の4判決は,裁判所ウェブサイトに掲載されておらず,判例秘書で判決本文を確認した。
租税債権の代位について判断した最高裁判所の判例は,確認できていない。
国税通則法施行令11条も,e-Gov法令検索(法令API)で同日現在の条文を確認した。
第6の2・3と第7は,条文と裁判例から本記事が導いたものである。