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ファクタリング・債権流動化は倒産時に譲渡担保とされるか―東京高裁令和2年2月14日決定と,売買か融資かを分ける判断要素(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,事業者が売掛金や診療報酬債権等を業者に譲渡して資金を得る取引(ファクタリング,債権流動化)について,譲渡人が民事再生等の倒産手続に入ったときに,その譲渡が「真正な譲渡(売買)」として扱われるか,「譲渡担保(担保目的の譲渡)」として扱われるかを扱う。
あわせて,同じ取引が貸金業法や利息制限法の上で「貸付け」と扱われるかを判断した裁判例を整理する。
条文は令和8年9月29日現在の条文をe-Gov法令検索で確認し,裁判所ウェブサイトに掲載されていない裁判例は判例秘書で全文を確認した。

2 結論

①東京高裁令和2年2月14日決定は,医療法人の診療報酬債権の「流動化」の契約について,契約書に真正な譲渡である旨の文言があっても,取引全体の仕組みと機能を見ると融資の担保を目的とするものであり,譲渡担保の実質を有するとした。
その上で,民事再生法148条の担保権消滅の許可は,このような譲渡担保も対象とするとした。

②同決定が譲渡担保と評価した事情は,①将来の債権の先払いで常に約3か月分の金融を与えていること,②経済的には当初に約10億円の融資を受けて2年間は利息だけを払い,その後元本が減っていくのと「径庭がない」こと,③2年後は譲渡人の側から解約でき,その場合は買取債権残高相当額を支払うこと,④解約・解除のときは譲渡対象債権が担保債権に組み入れられること,⑤回収額の不足は原則として譲渡人の故意又は過失によるものとみなされ,譲受人に危険が移っていないこと,⑥譲受人自身が再生手続の債権届出で譲渡担保を主張し,譲渡人は受け取った金を長期借入金として会計処理していたことである。

③いわゆる給与ファクタリングについては,最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定が,譲受人が使用者に直接支払を求められず,労働者が事実上買い戻さざるを得なかったなどの事情の下では,形式的には債権譲渡の対価であっても貸金業法2条1項等の「貸付け」に当たるとした。
事業者の売掛金のファクタリングについても,大阪地裁平成29年3月3日判決は,譲受人が回収の危険をほとんど負わず,譲渡人が買戻しをせざるを得ない立場にあった取引を,金銭消費貸借に準じるものとして利息制限法を類推適用した。

④倒産手続の中で譲渡担保と評価されると,譲受人は債権の所有者ではなく担保権者として扱われ,担保権消滅の許可や担保権の実行手続の中止命令の対象になりうる。
契約を作る側も審査する側も,契約書の文言ではなく,危険の移転,買戻し・解約の条項,終了時の扱い及び会計処理を一体として見る必要がある。

第2 ファクタリングと債権流動化

1 取引の形

ファクタリングは,一般に,事業者が取引先に対して持つ売掛金等を業者に譲渡し,支払期日より前に代金(債権額から手数料等を差し引いた額)を受け取る取引をいう。
取引先に譲渡を通知して業者が取引先から直接回収する形と,通知をせずに譲渡人が回収して業者に渡す形がある。
債権流動化は,将来発生する債権を継続的に譲渡して,特別目的会社等を通じて資金を得る仕組みであり,診療報酬債権のように支払が確実な債権がよく使われる。

2 売買か担保かで何が違うか

真正な譲渡(売買)であれば,譲渡された債権は譲受人のものであり,譲渡人が倒産しても,譲受人は自分の債権として取引先から回収できる。
これに対し,譲渡担保であれば,譲受人は譲渡人に対する債権の担保を持つ担保権者にすぎず,民事再生では別除権者として扱われ,担保権消滅の許可(民事再生法148条)や担保権の実行手続の中止命令(同法31条の類推適用)の対象になりうる。
また,取引の実質が金銭の貸付けであれば,利息制限法の上限や,業として行う者についての貸金業法・出資法の規制が問題になる。

第3 東京高裁令和2年2月14日決定

1 事案

東京高裁令和2年2月14日決定(令和元年(ラ)第2368号,判例秘書の判例番号 L07520187)の事案は,次のとおりである。

①再生債務者は88床の病院を営む医療法人社団であり,経営悪化で銀行から返済を求められ,資金調達の必要に迫られていた。
②証券化の組成を業とする会社の代表者の提案で,特定目的会社として譲受人(合同会社)が設立され,譲受人が再生債務者の将来の診療報酬債権の譲渡を受けて約10億円を融通するスキームが組まれた。
③平成28年1月の債権譲渡契約は,毎月の診療報酬債権を「譲渡対象債権」として譲り受け,それとは別に「担保債権」を無償で譲り受ける内容であり,再生債務者は,決定の認定によれば,「譲渡対象債権を抗告人に対して真正に譲渡することを意図しており、担保提供その他の意図を有していない」こと(抗告人は譲受人)を表明し保証していた。
④令和元年8月,債権者の申立てにより再生債務者について再生手続開始の申立てがされ(東京地方裁判所令和元年(再)第39号),管財人が選任された。
⑤管財人は,譲受人の権利を譲渡担保と捉えて,民事再生法148条1項に基づき,5000万円を納付して担保権を消滅させる許可を申し立て,原決定はこれを許可した。
⑥譲受人は,真正な譲渡であって担保権消滅の対象にならない,診療報酬債権は事業の継続に欠くことのできないものではない,評価額が不当であるなどと主張して抗告した。

2 譲渡担保と評価した理由

同決定は,契約書の文言を見る限り真正な譲渡であるとの評価が導かれ得ることを認めつつ,次の事情を挙げて,取引全体を譲渡担保と評価した。

(1) 経済的な機能

譲渡の目的債権は基本的に将来発生すべき債権であり,契約締結時には未発生又は支払期日未到来の3か月分の診療報酬債権を当初の譲渡対象とし,その代金とされる約10億円が当初に再生債務者に交付された。
以後,譲受人は最初に支払期日が来る債権から弁済を受け,それを原資に翌月分の債権の代金を支払う形で,常に3か月分の代金が支払われている状態が続いた。
同決定は,これを経済的に見れば,譲受人は「ほぼ常時3箇月分の買取債権金額の合計相当額(買取債権残高)について再生債務者に金融を与えていることとなる」とした。
そして,再生債務者が当初に約10億円の融資を受け,2年間は利息だけを払い,その後は元本が徐々に減っていくと捉えることと「径庭がない」とした。

(2) 解約と終了時の扱い

契約締結から2年を経た後は,再生債務者の側からも解約を申し入れることができ,その場合は買取債権残高に相当する額を支払うものとされていた。
同決定は,これにより譲渡対象債権の移転は再生債務者の意思で覆すことが可能な「いわば暫定的なもの」とされていたとし,買取債権残高の支払は融資残高の返済による買戻しと同じ経済的効果を持つとした。
また,契約が解除又は解約された場合には,譲渡対象債権が当然に担保債権に組み入れられるとされていたことも,譲渡が担保目的であることの表れとした。

(3) 当事者の認識と会計処理

譲受人は,会計処理上は譲渡対象債権を資産として計上していたが,再生手続の債権届出では買取債権残高相当の債権とその譲渡担保権を届け出ていた。
再生債務者は,当初の代金約10億円を長期借入金として処理していた。
同決定は,これらから,当事者双方が融資と担保と認識していたことがうかがわれるとした。

(4) 危険の移転

譲受人は,譲渡対象債権の回収不能等の危険は譲受人に移っていると主張した。
しかし同決定は,診療報酬債権は回収が確実な債権であり,現実の危険は再生債務者の経営状態によって債権額が変動することであるところ,回収額が買取債権金額に満たないときは,その不足は再生債務者の故意又は過失によるものとみなされ,不足額を譲渡代金から控除できるとされていたから,危険が譲受人に移っているとはいい難いとした。
譲渡代金の額が相当であることも,担保目的と評価することと直ちに矛盾しないとした。

3 担保権消滅の許可の要件

同決定は,民事再生法148条に規定する担保権消滅の許可は,このような譲渡担保も対象とすると解するのが相当であるとした。
事業の継続に不可欠かどうかについては,病院を営む医療法人では診療報酬債権が収益の大部分を占めることに加え,契約上の「債権基準額」が現実の診療報酬と無関係に固定されていたため,診療報酬が減る中で再生債務者の手元に入る金額がより少なくなり経営を圧迫していたことを考慮し,事業の継続に欠くことのできない財産であるとした。
担保の評価額(5000万円)の当否は,民事再生法149条1項の価額決定の請求手続で決せられるべき問題であり,許可の決定の違法を基礎づけないとした。

売却予定の財産についての不可欠性の考え方は,民事再生の担保権消滅許可―売却予定財産も「事業継続に欠くことのできないもの」といえるかで整理している。

第4 売買か貸付けかを判断した裁判例

1 給与ファクタリング(最高裁令和5年2月20日決定)

最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定(令和4年(あ)第288号,刑集77巻2号13頁)は,労働者が使用者に対する賃金債権を業者に譲渡して金銭を受け取る取引について,貸金業法違反等の罪の成否が争われた事件である。
裁判所ウェブサイトの裁判要旨は,債権譲渡の対象が労働者の使用者に対する賃金債権であり,譲受人は自ら使用者に支払を求めることは許されず,実際には債権を買い戻させることなどにより労働者から資金を回収するほかなく,労働者は事実上自ら債権を買い戻さざるを得なかったなどの事情の下では,譲受人から労働者への金銭の交付は,形式的には債権譲渡の対価としてされたもので,使用者の不払の危険を譲受人が負担するとされていたとしても,貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たるとしている。
労働基準法24条1項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めており,賃金債権の譲受人が使用者に直接請求できないことが,この判断の前提になっている。

貸金業法2条1項は,「貸金業」を「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に『貸付け』という。)で業として行うもの」と定めている。
形式が債権の買取りであっても,「これらに類する方法」による金銭の交付として「貸付け」に当たることがある。

東京地裁令和3年2月9日判決(令和2年(ワ)第11883号)も,給与ファクタリングの取引を貸金業法及び出資法の「貸付け」に当たるとし,年109.5%を超える利息の契約をした消費貸借の契約を無効とする貸金業法42条1項により契約を無効とした。
ただし,同判決は,被告が口頭弁論期日に出頭しないまま言い渡されたものである。

2 事業者の売掛金のファクタリング(大阪地裁平成29年3月3日判決)

大阪地裁平成29年3月3日判決(平成26年(ワ)第11716号)は,事業者間の売掛金のファクタリング取引が,実態に照らし,債権の売買及びその買戻しではなく金銭消費貸借とその返済であるとして,利息制限法所定の制限利率で引き直すと過払いが生じているとし,不当利得の返還を認めた事例である(裁判所ウェブサイトの判示事項の要旨による)。
同判決は,譲受人が債権回収の危険をほとんど負っていないこと,譲渡人が買戻しを行わざるを得ない立場にあり,金銭消費貸借契約の要素である返還合意があったものと同視できることを理由に,利息制限法1条の類推適用を認めた。
同判決は,反訴の判断の中で,債権の譲渡を譲渡人の債務を担保するものと解している。

3 判断要素のまとめ

以上の裁判例から,売買か貸付け(担保)かを分ける要素は,本記事では次のように整理する。

要素売買に傾く事情貸付け・担保に傾く事情
回収の危険取引先が払わないときの損失を譲受人が負う不足を譲渡人が補う,買戻義務がある
回収の方法譲受人が取引先から直接回収できる譲受人が直接請求できず,譲渡人から回収するほかない
契約の終了譲渡が確定し,譲渡人が覆せない譲渡人が解約して残高を払えば債権が戻る
終了時の扱い未回収債権はそのまま譲受人に残る担保債権に転化する,残高の返還義務が生じる
取引の反復個別の債権の単発の売買継続的に先払いの金融を与え続ける
会計・届出双方が売買として処理する借入金として処理する,担保権として届け出る

どれか一つで決まるのではなく,取引全体の仕組みと機能を見て判断されている。

第5 倒産手続の中での扱い

1 担保権消滅と中止命令

譲渡担保と評価されると,民事再生では,担保権消滅の許可(民事再生法148条)により,目的債権の価額に相当する金銭を納付して担保権を消滅させることができる。
担保権者は,申立書の送達を受けた日から1か月以内に,財産の価額の決定を請求することができる(同法149条1項)。
また,集合債権譲渡担保については,大阪高裁平成21年6月3日決定(平成21年(ラ)第408号,判例秘書の判例番号 L06420395)が,民事再生法31条1項を類推適用して担保権の実行手続の中止命令を発することができるとしている。
中止命令と担保権消滅の使い方は,在庫・売掛金を担保にした借入れ(ABL)と民事再生で扱う。

2 否認

最高裁平成16年7月16日第二小法廷判決(平成13年(受)第1797号,民集58巻5号1744頁)は,債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法(旧法)の否認権行使の対象になるとした。
倒産の直前になって初めて譲渡の効力を生じさせる型の契約は,担保としても否認の危険がある。

3 将来の債権と倒産

将来発生する債権の譲渡について,最高裁平成11年1月29日第三小法廷判決(平成9年(オ)第219号,民集53巻1号151頁)は,契約締結時に目的債権の発生の可能性が低かったことは契約の効力を当然には左右しないとした。
同判決は,他の債権者に不当な不利益を与えるものと見られるなどの特段の事情がある場合には,公序良俗に反するなどとして効力の全部又は一部が否定されることがあるとも述べている。
倒産手続が始まった後に発生する債権に譲渡の効力が及ぶかについては,令和8年9月29日現在,裁判所ウェブサイトでは直接判断した裁判例を確認できなかった。

第6 譲渡担保法の施行後

「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(令和7年法律第56号。以下「譲渡担保法」という。)は,公布の日(令和7年6月6日)から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される(附則1条)。
同法2条1号は,「譲渡担保契約」を,「金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権…その他の財産…を債権者に譲渡することを内容とする契約」と定義している。
施行後も,契約書の形式が債権の売買であれば当然に同法の対象外になるわけではなく,東京高裁令和2年決定のような実質の判断によって「金銭債務を担保するため」の譲渡かどうかが問われることになると考えられる。
譲渡担保と評価された集合債権譲渡担保には,再生手続開始の決定後に発生した債権には原則として担保権が及ばないとする規定(同法107条2項。特約で及ぼすことはできる)や,再生手続開始の申立て等を理由に取立てをできなくする特約を無効とする規定(同法105条)が適用される。
ただし,これらの規定は,施行日前に締結された契約・特約には適用されない(同法附則13条,14条2項)。
また,同法53条1項は,集合債権譲渡担保契約に,設定者が債権を取り立てることができる旨の定めがあるときに,設定者が取り立てることができるとしている。
継続的に売掛金をまとめて譲渡し,譲渡人が回収を続ける取引が集合債権譲渡担保と評価された場合には,この定めの有無が問題になり得る。
再生手続開始の決定があると,別段の定めがない場合には,94条本文の通知があったものとみなされ,設定者は取り立てることができなくなる(同法107条3項)。

第7 契約を作る・審査するときの確認事項

①回収不能の危険をどちらが負うか(償還請求権,不足額の補填,買戻義務の有無)
②取引先への譲渡の通知の有無と,譲受人が取引先から直接回収できるか
③譲渡人の解約権と,解約・解除のときの残高の返還義務,担保債権への転化の条項
④取引が単発か,継続的な先払いか
⑤代金の計算方法(掛目,割引率,手数料)を年率に直したときの水準(利息制限法,出資法,貸金業法の上限との比較)
⑥譲渡人・譲受人の会計処理(売却か借入金か)と,倒産時にどう届け出るか
⑦倒産を条件にして初めて効力を生じる条項がないか(否認の危険)
⑧譲渡担保法の施行日との前後

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第9 出典

1 法令

①民事再生法31条・148条・149条(e-Gov法令検索)
②貸金業法2条・42条(e-Gov法令検索)
③出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律5条(e-Gov法令検索)
④労働基準法24条(e-Gov法令検索)
⑤譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律2条・53条・94条・105条・107条,附則1条・13条・14条(e-Gov法令検索。未施行)

2 裁判例

①東京高裁令和2年2月14日決定(令和元年(ラ)第2368号,判例秘書の判例番号 L07520187)
②最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定(令和4年(あ)第288号,刑集77巻2号13頁)
③東京地裁令和3年2月9日判決(令和2年(ワ)第11883号)
④大阪地裁平成29年3月3日判決(平成26年(ワ)第11716号)
⑤大阪高裁平成21年6月3日決定(平成21年(ラ)第408号,判例秘書の判例番号 L06420395)
⑥最高裁平成16年7月16日第二小法廷判決(平成13年(受)第1797号,民集58巻5号1744頁)
⑦最高裁平成11年1月29日第三小法廷判決(平成9年(オ)第219号,民集53巻1号151頁)