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盗品だと後から知ったとき―盗品等に関する罪の成立時期と,中古品の買取り・委託販売の注意点(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象

中古品の買取りや委託販売をしていると,買い取った物や預かった物が,後になって盗品やだまし取られた物であったと分かることがある。
刑法256条は,盗品等を運搬し,保管し,有償で譲り受け,又はその有償の処分のあっせんをする行為を処罰しているが,いつの時点で盗品等であることを知っていれば処罰されるのかは,条文だけでは分かりにくい。
本記事は,盗品等に関する罪の対象となる物の範囲,処罰の理由,盗品等であることを知った時期と各罪の関係,有償の処分のあっせんが成立する範囲及び古物営業法上の古物商の義務を,最高裁判所の判例と条文に基づいて整理するものである。
調査基準日は令和8年9月27日であり,条文はe-Gov法令検索で,判例は裁判所ウェブサイトの裁判要旨及び全文で確認し,裁判例の検索には判例秘書も用いた。

2 結論

①刑法256条の対象は,窃盗による盗品に限られず,詐欺や横領など「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」を含む。
②最高裁判所は,盗品等に関する罪の本質を被害者の返還請求権の行使を困難にする点に求める一方で,窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれも処罰の理由に挙げている(昭和23年11月判決,昭和26年判決,平成14年決定)。
③盗品等であることを知らずに保管を始めた者も,知った後になお本犯のために保管を続ければ処罰の対象となる(昭和50年決定)。
④買い受けて物を受け取った時点で盗品等であることを知らなかった者は,後で知っても,有償で譲り受けた罪には当たらないと考えられる(刑法38条1項)。
⑤有償の処分のあっせんは,売買が成立しなくても周旋行為をした時点で成立し(昭和23年11月判決,昭和26年判決),被害者を処分の相手方とする場合にも成立する(平成14年決定)。
⑥配偶者,直系血族等との間で盗品等に関する罪を犯した者は刑が免除されるが(刑法257条1項),最高裁判所は,この親族関係は本犯と盗品等に関する罪の犯人との間に必要であるとしている(昭和38年決定)。
⑦古物商には,取引の相手方の確認,不正品の疑いがあるときの警察官への申告(古物営業法15条),帳簿等への記録(同法16条),品触れを受けた物の届出(同法19条)等の義務がある。

第2 条文と対象となる物

1 刑法256条

刑法256条1項は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の拘禁刑に処する。」と定めている。
同条2項は,「前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の拘禁刑及び五十万円以下の罰金に処する。」と定めている。
2項の罪の法定刑は,拘禁刑と罰金の両方を科すものである。

2 「盗品等」の範囲

「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」には,窃盗によって得た物のほか,詐欺や横領によって得た物も含まれる。
古物営業法19条1項も,これらの物を「盗品等」と呼んでいる。
これに対し,民法193条の回復請求の対象は「盗品又は遺失物」であり,刑法256条の「盗品等」よりも狭い。
民法193条の「盗品」の範囲と会社の物品の取戻しについては,社員が会社の物品を買取業者に売ったときの取戻し―民法193条・194条と古物営業法20条,窃盗と業務上横領の区別で整理している。

第3 処罰の理由

1 被害者の返還請求権の行使を困難にすること

最高裁昭和23年11月9日第三小法廷判決(昭和23年(れ)第629号,刑集2巻12号1504頁)は,理由の中で,「贓物に関する罪の本質は、贓物を転々して被害者の返還請求権の行使を困難もしくは不能ならしめる点にある」と述べている。
最高裁昭和34年2月9日第二小法廷決定(昭和31年(あ)第3533号,刑集13巻1号76頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,「賍物に対する罪は、被害者が民法の規程によりその物の回復を請求する権利を失わない以上、その物につき成立し得る。」というものである(「規程」は同サイトの表記のままである)。
「賍物」「贓物」は,当時の条文や判決で用いられていた用語である。

2 窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれ

最高裁昭和26年1月30日第三小法廷判決(昭和25年(れ)第194号,刑集5巻1号117頁)は,「賍物に関する罪を一概に所論の如く被害者の返還請求権に対する罪とのみ狹く解するのは妥当でない」と述べている。
そして,「法が賍物牙保を罰するのはこれにより被害者の返還請求権の行使を困難ならしめるばかりでなく、一般に強窃盗の如き犯罪を助成し誘発せしめる危險があるからである」としている。
後記の平成14年決定も,被害者の正常な回復を困難にすることと並べて,「窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれ」を挙げている。

第4 盗品等であることを知った時期と各罪

1 知っていることが必要な時点

刑法38条1項本文は,「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」と定めている。
盗品等に関する罪は故意犯であるから,運搬,保管,有償の譲受け又は有償の処分のあっせんの各行為の時に,盗品等であることを知っていることが必要である。
最高裁昭和23年3月16日第三小法廷判決(昭和22年(れ)第238号,刑集2巻3号227頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨一は,「賍物故買罪は賍物であることを知りながらこれを買受けることによつて成立するものであるが、その故意が成立する爲めには必ずしも買受くべき物が賍物であることを確定的に知つて居ることを必要としない或は賍物であるかも知れないと思いながらしかも敢てこれを買受ける意思(いわゆる未必の故意)があれば足りるものと解すべきである。」というものである。
また,最高裁昭和30年9月16日第二小法廷判決(昭和28年(あ)第3571号,集刑108号485頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,「賍物故買罪は、故買者にその物が財産罪によつて領得されたものであることの認識があれば足り、所論のように、それが何人の如何なる犯行によつて得られたかというような本犯の具体的事実までも知る必要はない。」というものである。
「故買」は,当時の条文の用語である。

2 保管の途中で知った場合(昭和50年決定)

最高裁昭和50年6月12日第一小法廷決定(昭和49年(あ)第1161号,刑集29巻6号365頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,「賍物であることを知らずに物品の保管を開始した後、賍物であることを知るに至つたのに、なおも本犯のためにその保管を継続するときは、賍物の寄蔵にあたる。」というものである。
「寄蔵」は,当時の条文の用語である。
保管は預かっている間続く行為であり,同決定によれば,保管を始めた時に知らなくても,知った後になお本犯のために保管を続けると処罰の対象となる。

3 買い取った後で知った場合

最高裁昭和59年12月20日第二小法廷決定(昭和59年(あ)第1073号,集刑238号379頁)は,詐欺の本犯者が所有権留保の特約付きで騙取した自動車を,情を知って買い受けた事案について,「刑法二五六条二項の賍物故買罪が成立するためには、情を知つて賍物の所有権を有償で取得する契約をし、かつ、右契約に基づいて賍物の現実の引渡を受けることで足り、その所有権を現実に取得することを要しないと解すべきである」と述べている。
有償の譲受けは,このように契約をして物の引渡しを受けることによって行われる行為であり,保管とは異なり,物を受け取った後も続く行為ではないと考えられる。
そのため,契約をして物を受け取った時点で盗品等であることを知らなかった買主は,後で知ったとしても,有償で譲り受けた罪には当たらないと考えられる。
もっとも,昭和59年決定は知った時期を判断したものではなく,買い受けた後に盗品等であると知った場合を正面から判断した裁判例は,裁判所ウェブサイトの最高裁判所判例の検索と判例秘書で検索した範囲(令和8年9月27日)では見当たらなかった。
ただし,民事上は,被害者から民法193条や古物営業法20条による回復を求められることがある。

4 委託販売の場合

委託販売は,持ち込んだ人のために物を預かって売る取引である。
そのため,途中で盗品等であると分かった後も持ち込んだ人のために保管を続ければ,昭和50年決定の判断が問題となる。
さらに,分かった後に持ち込んだ人のために買主を探して売却を周旋すれば,次に述べる有償の処分のあっせんが問題となる。
古物営業法も,売却の委託を受けようとするときの相手方の確認(15条1項)や,委託を受けた古物についての保管命令(21条)を定めている。

第5 有償の処分のあっせん

1 売買が成立しなくても成立する

前記の昭和23年11月判決は,「いやしくも贓物たるの情を知りながら贓物の売買を仲介周旋した事実があれば、既に被害者の返還請求権の行使を困難ならしめる行為をしたといわなければならないから、其周旋にかかる贓物の売買が成立しなくとも、贓物牙保罪の成立をさまたげるものではない」とした。
前記の昭和26年判決も,盗品の売買を周旋した者が売買の完成前に逮捕された事案について,売買が完成していなくても,その行為は賍物牙保罪の成立に必要な周旋行為に当たるとした。

「牙保」は当時の条文の用語であり,後記の平成14年決定は,現在の条文の「有償の処分のあっせん」に当たるかを判断する際に,昭和26年判決を参照している。

2 被害者を処分の相手方とする場合(平成14年決定)

最高裁平成14年7月1日第一小法廷決定(平成13年(あ)第1728号,刑集56巻6号265頁)は,盗品等を被害者に買い取らせる形のあっせんが問題となった事案である。
同決定は,「盗品等の有償の処分のあっせんをする行為は,窃盗等の被害者を処分の相手方とする場合であっても,被害者による盗品等の正常な回復を困難にするばかりでなく,窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれのある行為であるから,刑法256条2項にいう盗品等の『有償の処分のあっせん』に当たると解するのが相当である」とした。

3 被害者の家へ運んだ場合の運搬(昭和27年決定)

最高裁昭和27年7月10日第一小法廷決定(昭和26年(あ)第1580号,刑集6巻7号876頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,「窃盗の被害者から賍物の回復を依頼されて、これを被害者宅に運搬返還したとしても、結局窃盗犯人に協力してその利益のために賍物の返還を条件に被害者をして多額の金員を交付せしめる等賍物の正常なる回復を困難ならしめた場合には賍物運搬罪が成立する。」というものである。
もっとも,同決定の本文は,運搬は「被害者のためになしたものではなく、窃盗犯人の利益のためにその領得を継受して賍物の所在を移転したもの」であるとした原判決の認定を前提としている。
被害者の依頼で運んだという外形だけで運搬罪の成否が決まるわけではなく,誰の利益のための行為であったかが問われたものと読める。

第6 親族等の間の特例(刑法257条)

1 条文

刑法257条1項は,「配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。」と定めている。
同条2項は,「前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」と定めている。

2 誰と誰との間の関係か(昭和38年決定)

最高裁昭和38年11月8日第二小法廷決定(昭和38年(あ)第1310号,刑集17巻11号2357頁)について,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判要旨は,「刑法第二五七条第一項は、本犯と賍物に関する犯人との間に同条項所定の関係がある場合に、賍物に関する犯人の刑を免除する旨を規定したものであり、賍物に関する犯人相互の間に右所定の関係があつてもその刑を免除すべき事由とはならない。」というものである。
同決定は,原判決が,盗品等に関する罪の犯人相互の間に配偶者の関係があってもその刑を免除すべきでないと判示したのを,「なお」として正当としたものであり,当時の刑法257条1項を対象としたものである。
同決定の考え方によれば,たとえば窃盗をした本人の配偶者がその盗品を保管した場合は同条の対象となり得るが,盗品を運搬した者どうしが夫婦であるというだけでは,刑は免除されないと考えられる。

第7 古物商の義務

1 相手方の確認と不正品の申告

古物営業法15条1項は,古物商が古物を買い受け,若しくは交換し,又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは,相手方の真偽を確認するため,相手方の住所,氏名,職業及び年齢を確認する等の措置をとらなければならないと定めている。
同条3項は,「古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとする場合において、当該古物について不正品の疑いがあると認めるときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。」と定めている。
同法16条は,取引の年月日,古物の品目及び数量,古物の特徴,相手方の住所・氏名・職業・年齢等を帳簿等に記録することを求めている。

2 品触れと保管命令

古物営業法19条1項は,警察本部長等が,必要があると認めるときは,古物商に対して盗品等の品触れを書面により発することができると定めている。
同条3項は,「古物商は、品触れを受けた日にその古物を所持していたとき、又は前項の期間内に品触れに相当する古物を受け取つたときは、その旨を直ちに警察官に届け出なければならない。」と定めている。
同法21条は,「古物商が買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けた古物について、盗品等であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察本部長等は、当該古物商に対し三十日以内の期間を定めて、その古物の保管を命ずることができる。」と定めている。

3 盗品・遺失物の無償回復

古物営業法20条は,古物商が買い受け,又は交換した古物のうちに盗品又は遺失物があった場合には,古物商が公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けたときでも,被害者又は遺失主は,盗難又は遺失の時から1年を経過するまでは,古物商に対し無償で回復を求めることができると定めている。

第8 司法試験での出題

平成14年度の旧司法試験論文式試験の刑法第2問は,詐欺により取得した宝石の売却を依頼された者が,受領した当初は事情を知らず,その後に事情を知った上で,そのことを秘して売却した事例について,その罪責を問うものであった。
法務省が公表した出題趣旨は,同問が「財産犯,殊に盗品等に関する罪,横領罪,詐欺罪の成立要件の理解を問うもの」であり,「成立する犯罪の相互関係の把握も重視している」としている。
問題と出題趣旨は,法務省ウェブサイトの論文式試験問題・出題趣旨のページに掲載されている。

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第10 出典

1 法令

①e-Gov法令検索「刑法」38条1項,256条及び257条
②e-Gov法令検索「古物営業法」15条1項及び3項,16条,19条1項及び3項,20条並びに21条
③e-Gov法令検索「民法」193条
(いずれも令和8年9月27日確認)

2 裁判例

①最高裁昭和23年3月16日第三小法廷判決・昭和22年(れ)第238号・刑集2巻3号227頁(裁判所ウェブサイト)
②最高裁昭和23年11月9日第三小法廷判決・昭和23年(れ)第629号・刑集2巻12号1504頁(裁判所ウェブサイト)
③最高裁昭和26年1月30日第三小法廷判決・昭和25年(れ)第194号・刑集5巻1号117頁(裁判所ウェブサイト。同サイトの書誌では「決定」と表示されているが,判決文は「主文の通り判決する」とし,平成14年決定も「第三小法廷判決」として引用している)
④最高裁昭和27年7月10日第一小法廷決定・昭和26年(あ)第1580号・刑集6巻7号876頁(裁判所ウェブサイト)
⑤最高裁昭和30年9月16日第二小法廷判決・昭和28年(あ)第3571号・集刑108号485頁(裁判所ウェブサイト)
⑥最高裁昭和34年2月9日第二小法廷決定・昭和31年(あ)第3533号・刑集13巻1号76頁(裁判所ウェブサイト)
⑦最高裁昭和38年11月8日第二小法廷決定・昭和38年(あ)第1310号・刑集17巻11号2357頁(裁判所ウェブサイト)
⑧最高裁昭和50年6月12日第一小法廷決定・昭和49年(あ)第1161号・刑集29巻6号365頁(裁判所ウェブサイト)
⑨最高裁昭和59年12月20日第二小法廷決定・昭和59年(あ)第1073号・集刑238号379頁(裁判所ウェブサイト)
⑩最高裁平成14年7月1日第一小法廷決定・平成13年(あ)第1728号・刑集56巻6号265頁(裁判所ウェブサイト)

3 判例秘書による検索

①「故買」又は「有償譲受」の語と,「買受後」,「買い受けた後」又は「買受けた後」の語を含む刑事の裁判例=3件(令和8年9月27日検索)
その内訳は,最高裁昭和30年9月16日第二小法廷判決(本犯についての認識の内容),最高裁昭和32年7月19日第二小法廷決定(没収・追徴の附加)及び東京高裁昭和29年6月30日判決(関税法上の没収・追徴)であり,いずれも買い受けた後に知った場合を判断したものではなかった。

4 試験問題

①法務省「論文式試験問題・出題趣旨」のうち平成14年度の問題及び出題趣旨(令和8年9月27日閲覧)