第1 本記事の対象と要点
1 対象とする資料
本記事は,法務省民事局長が令和8年7月17日付けで法務局長及び地方法務局長に宛てて発出した「帰化事件処理要領について(通達)」(法務省民一第2134号)を対象とする。
この通達は,帰化の相談,申請の受付,提出書類,処理計画,調査,本省への進達,許可・不許可の通知,文書管理及び統計報告までを定めた,法務局の帰化事務の手引である。
通達自体は公表されておらず,本記事は,情報公開請求により部分開示された文書(帰化事件処理要領(令和8年7月17日付の法務省民事局長の通達),全119頁)に基づく。
同じ名称の旧通達として,平成24年3月22日付けの法務省民一第738号がある(帰化事件処理要領(平成24年3月22日付け・本文))。
本記事は,令和8年版と平成24年版の開示部分を項目ごとに突き合わせ,変わった点と変わっていない点を整理する。
黒塗りの位置は新旧で異なるため,令和8年版で初めて読めるようになった記載が,平成24年版で黒塗りだっただけという可能性もある。
そのような箇所は,本文でその旨を明記する。
本記事は,令和8年9月19日現在で確認できる法令(e-Gov法令検索),法務省の公表資料,裁判所ウェブサイト掲載の裁判例及び上記の開示文書に基づき,AIを用いて整理したものである。
2 要点
①住民税の課税証明書及び納税証明書は「最近1年分」から「最近5年分」になり,住民税を期限内に納めたことを示す資料(最近5年分)が新たに求められる。
②年金保険料の納付証明(最近1年分・2類型)は,健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険まで含む「社会保険料の納付証明書」(最近2年分・9類型)に広がり,ここでも期限内の納付を示す資料が求められる。
③これらは,令和8年4月1日から法務省が実施している帰化審査の厳格化(原則として10年以上の在留を必要とし,税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばすもの)と方向が一致する。
④もっとも,国籍法5条1項1号の住所条件は「引き続き五年以上」のままであり,10年は法律上の要件ではなく運用上の基準である。
⑤審査の中核を定める第5節(国籍・身分関係の認定)及び第6節(帰化事件の調査)は全面的に黒塗りであり,「原則10年」の基準がどこに書かれているかは開示文書からは分からない。
第2 帰化の法定条件と令和8年4月からの運用
1 国籍法5条の条件
国籍法4条は,外国人は帰化によって日本の国籍を取得することができ,帰化をするには法務大臣の許可を得なければならないと定める。
同法5条1項は,法務大臣は次の条件を備える外国人でなければ帰化を許可することができないとして,次の6つを掲げる(e-Gov法令検索で令和8年9月19日に確認)。
①「引き続き五年以上日本に住所を有すること」(住所条件)
②「十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること」(能力条件)
③「素行が善良であること」(素行条件)
④「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること」(生計条件)
⑤「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと」(重国籍防止条件)
⑥日本国憲法施行の日以後に,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て,主張し,又はそのような団体を結成し若しくはこれに加入したことがないこと(憲法遵守条件)
これらは帰化を許可するための最低限の条件であり,条件を満たせば必ず許可されるわけではない。
法務大臣の裁量の範囲と,不許可処分を争う方法は,帰化不許可処分を争う方法で扱う。
2 条件が緩和される場合
国籍法6条から8条までは,日本と特別な関係を持つ外国人について条件を緩和している。
例えば,日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し,又は父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたものは,住所条件を備えなくても帰化を許可することができる(6条2号)。
日本国民の配偶者は,引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し,かつ,現に日本に住所を有するとき,又は婚姻の日から3年を経過し,かつ,引き続き1年以上日本に住所を有するときは,住所条件及び能力条件を備えなくても帰化を許可することができる(7条)。
日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの等は,住所条件,能力条件及び生計条件を備えなくても帰化を許可することができる(8条)。
3 令和8年4月1日からの運用の見直し
法務大臣は,令和8年3月27日の閣議後記者会見で,同年1月23日に取りまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に基づき,永住許可の審査との整合性の観点から,帰化の審査の在り方を検討してきたと述べた。
その上で,同年4月1日から,帰化の審査において「『日本社会に融和していること』の要件につき、原則として10年以上在留し、日本社会に融和していることを必要とするとともに、素行の善良性・生計条件につき、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばす旨の厳格化を実施します。」と発表した(法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要」令和8年3月27日)。
同じ会見の質疑で,大臣は,帰化は「永住許可よりも安易に認められており問題ではないかとの指摘」があったとし,今回の見直しは「帰化申請者が国籍法の定める5年以上の住所条件を満たしていることを前提とした上で」,「法務大臣の裁量の範囲内で一定の在留期間を要するとするもの」であると説明した。
つまり,国籍法5条1項1号は改正されておらず,5年の住所条件を満たした上で,運用上,原則10年以上の在留を求めるという構造である。
法務省の「国籍Q&A」のQ9も,6つの法定条件を説明した後に,「日常生活を営むのに十分な日本語能力(会話及び読み書き)を有することや10年以上在留していることなど、日本社会に融和していることが必要です。」と記載している(令和8年9月19日に確認)。
4 永住許可の審査との関係
永住許可の「原則として引き続き10年以上本邦に在留していること」という基準と,公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付等)を期限内に履行していることを求める考え方は,永住許可の要件で扱っている。
令和8年4月の帰化審査の見直しは,大臣の説明のとおり,この永住許可の審査との整合を図るものである。
後記第4の1及び2の提出書類の変更も,期限内の納付を確認する点で,永住許可の審査と同じ方向を向いている。
第3 帰化事件処理要領の構成と開示の範囲
1 通達の構成
令和8年版の帰化事件処理要領は,本文が第1節(定義)から第11節までと附則から成り,付録として第1号様式から第35号様式までを備える。
開示文書から読める節の題名は次のとおりである。
①第1節 定義
②第2節 帰化の相談
③第3節 申請の受付
④第4節 処理計画・進行管理
⑤第5節 国籍,身分関係の認定
⑥第6節 帰化事件の調査
⑦第7節 書類の整理及び進達
⑧第8節 帰化事件の終結
⑨第9節 行政文書及び行政文書ファイルの管理
⑩第10節 統計・報告
⑪第11節(題名を含め黒塗り)
附則は,この要領を令和8年7月17日から施行するとしている。
通達の本文は,この通達と抵触する従前の取扱いは,この通達によって変更し,又は廃止するとしている。
2 開示されていない部分
開示文書の表紙には,「取扱注意」の表示とともに「不開示文書:情報公開法第5条第6号」と記載されている(同号は,事務又は事業に関する情報を不開示情報とする規定である)。
第5節(原本の15頁~21頁)と第6節(原本の22頁~39頁)は全面的に黒塗りであり,国籍・身分関係をどのように認定し,申請者をどのように調査するかは読めない。
付録の第17号様式から第23号様式まで及び第27号様式も,ほぼ全面的に黒塗りである。
開示された様式の題名からは,第17号様式が申請者調査書,第24号様式が本省への進達文書,第25号様式が帰化申請者調査表であることが分かる。
帰化事件処理要領(当時のもの)の不開示が争われた事件で,東京地方裁判所平成14年12月25日判決(平成14年(行ウ)第271号)は,帰化を許可するか否かの判断は法務大臣の広範な自由裁量にゆだねられているとした上で,要領を公開すれば調査の方法や留意点が知られ,帰化の許否の適正な判断に支障を生ずるおそれがあるとして,改正前の情報公開法5条6号の不開示事由に当たると判断した(裁判所ウェブサイト)。
第4 新旧対照で分かる主な改正点
1 住民税の証明書は最近5年分になった
提出書類のうち「課税証明書及び納税証明書」の表は,申請者を①給与所得者で確定申告義務があるもの,②給与所得者で確定申告義務がないもの,③個人事業経営者,④法人経営者,⑤それ以外の者に分けて,提出させる書類を定めている。
住民税に関する部分を新旧で比べると,次のとおりである。
| 書類 | 平成24年版 | 令和8年版 |
|---|---|---|
| 住民税の課税証明書(総所得金額の記載のあるもの) | 最近1年分(①②③⑤) | 最近5年分(①②③⑤) |
| 住民税の納税証明書 | 最近1年分(①②③) | 最近5年分(①②③) |
| 住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料 | 規定なし | 最近5年分(①②③⑤。特別徴収されている期間を除く。) |
所得税の納税証明書(最近3年分),消費税の納税証明書(最近3年分)及び法人に関する納税証明書(最近1年分~最近3年分)は,新旧で変わっていない。
新設された「適正な時期に納めていることを証明する資料」は,最終的に納めたかどうかではなく,納期限までに納めたかどうかを確認するためのものと考えられる。
滞納した住民税を後から完納していても,納付が遅れた事実は資料に残る。
給与から天引きされる特別徴収の期間は除かれているので,実際に問題になるのは,個人事業経営者や,転職・退職の前後で普通徴収に切り替わった期間であることが多いと考えられる。
2 年金保険料から社会保険料全体へ
平成24年版の「公的年金保険料の納付証明書」は,①国民年金の第1号被保険者について最近1年分の年金記録(ねんきん定期便,年金保険料の領収書等)の写しを,②厚生年金保険の適用事業所の事業主について最近1年分の年金保険料の領収書等の写しを提出させるだけだった。
令和8年版は,項目名を「社会保険料の納付証明書」に改め,まず申請者全員について,マイナポータル内の健康保険証の資格情報・医療保険の資格情報の画面の写し又は資格確認書の写し(被保険者資格情報等)を提出させる。
申請者が被扶養者であれば扶養する者の分,配偶者がいれば配偶者の分も提出させる。
その上で,次の9類型に当たる場合には,最近2年分の記録と,社会保険料を適正な時期に納めていることを証明する資料(最近2年分。特別徴収されている期間を除く。)を提出させ,原本と照合する。
①国民年金の第1号被保険者
②第1号被保険者が属する世帯の世帯主
③第1号被保険者の配偶者
④厚生年金保険の適用事業所の事業主
⑤国民健康保険の被保険者の属する世帯の世帯主
⑥後期高齢者医療の保険料の納付義務者
⑦健康保険の適用事業所の事業主
⑧前記⑤から⑦までに当たらない者で公的医療保険料の納付義務を負うもの(国民健康保険組合の被保険者等)
⑨介護保険料の納付義務者
年金だけでなく医療保険と介護保険まで対象が広がり,期間が1年から2年に延び,ここでも期限内の納付が問われる。
事業主は,自分の保険料だけでなく,適用事業所として納める厚生年金保険料及び健康保険料の納付状況も確認されることになる。
3 在留歴の提出書類と閉鎖外国人登録原票の指示がなくなった
平成24年版には「在留歴を証する書面」という項目があり,日本に入国した時から申請時までの在留資格の許可・不許可の履歴及び法定の住所期間の出入国の履歴が記載された出入国記録を提出させるとしていた。
令和8年版の開示部分では,「身分関係を証する書面」の次が「居住歴を証する書面」であり,これに当たる項目は見当たらない。
令和8年版の「居住歴を証する書面」は,「出入国記録により過去の居住歴が確認できる場合、過去の住所に係る住民票の写しの提出は要しない」としている。
また,平成24年版は,法定の住所期間の始期が改正入管法の施行日(平成24年7月9日)より前であれば閉鎖外国人登録原票の写しも提出させるとしていたが,令和8年版にはこの指示がない。
出入国の記録は法務局の側で確認できることを前提とした変更と考えられるが,通達自体は理由を書いていない。
4 身分関係を証する書面の対象者の入替え
日本国民と一定の関係にある者に,その日本国民の戸籍謄本を提出させる規定のうち,平成24年版のイは「日本国民の婚約者又は子(養子を含む。)」だったが,令和8年版のイは「日本国民の子(養子を含む。)」になった。
婚約者はこの列挙から外れたが,付録第7号様式「親族の概要」の注は,記載する親族の範囲に引き続き「婚約者」を含めている。
日本国民の配偶者(内縁関係にある者を含む。)がその日本国民の戸籍謄本を提出する点は変わっていない。
5 個人番号(マイナンバー)等のマスキング
令和8年版は,相談の段階から,個人番号,住民票コード,基礎年金番号,被保険者証の保険者番号・被保険者記号・番号,ねんきん定期便の照会番号及びアクセスキー(個人番号等)が記載された書面を出す場合にはマスキングした写しを出す必要があること,取得の段階で記載を省けるもの(住民票の写し等)は最初から記載のないものを出すべきことを説明するとしている。
提出された書類に個人番号等が記載されていれば,法務局の側でマスキング等の措置を講ずるとしている。
平成24年版には,これらの規定はない。
6 帰化後の氏名の振り仮名
令和8年版は,帰化後の氏名の振り仮名について,氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならず,帰化後は戸籍法107条の3又は107条の4の手続を経なければ変更できないことを説明した上で記載させるとしている。
戸籍法107条の3は,やむを得ない事由によって氏の振り仮名を変更しようとするときは家庭裁判所の許可を得て届け出なければならないとし,107条の4は,正当な事由によって名の振り仮名を変更しようとする者は家庭裁判所の許可を得て届け出なければならないとする(e-Gov法令検索で確認)。
相談の段階で,帰化後の氏名に用いることができる文字を説明し,申請の受付後に帰化後の本籍又は氏名を変更することのないよう十分に検討した上で申請書に記載するよう伝える規定も置かれた。
付録第26号様式(帰化者の身分証明書)にも,氏及び名の振り仮名の欄がある。
平成24年版の同じ位置は黒塗りなので,旧版に振り仮名の規定があったかどうかは比較できない。
7 その他の改正
①定義に「法務局等」(法務局又は地方法務局)が加わった。
②申請者本人の確認資料に,個人番号カードとしての機能を付加した特定在留カード及び特定特別永住者証明書が加わった。
③不許可の通知について,本人に手交した場合は受領書を徴し,送付した場合は封書が到達したことを確認できる書類を保存するという記載が開示された(平成24年版の同じ位置は黒塗り)。
④申請者本人からの情報の開示要求に応じる根拠法令の名称が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律から個人情報の保護に関する法律に改められた。
⑤帰化許可申請書受付証明書を例外的に交付する場合の例は,平成24年版では「本省の指示を受けて申請者に重国籍防止条件を備えることを証する書面を提出させる場合など」と読めたが,令和8年版では同じ箇所が黒塗りになった。
8 平成24年版から変わっていないもの
令和8年版の記載には,新しく厳しくなったように見えても,平成24年版に既にあったものがある。
①帰化の動機書に,日本に入国するに至った経緯及び動機,日本での生活についての感想,日本に入国した後に行った社会貢献,本国に対する思い,帰化が許可された後に行う予定の社会貢献等を書かせること
②自動車運転免許証を有し,又は有していたことがある者には,違反歴の有無にかかわらず運転記録証明書又は運転免許経歴証明書を提出させること
③郵便等で申請書類を提出した場合は受け付けず,出頭して提出するよう説明して返戻すること
④帰化に必要な条件を備えていないと明らかに認められる者でも,申請しようとする場合には受け付けること
⑤第三者からの照会には,法令上の根拠があるときを除き,申請の受付の有無すら回答しないこと
第5 申請の流れ
1 相談
帰化の相談では,帰化の意義(永住許可との異同等),帰化の許否の性質,帰化に必要な条件,提出すべき書類等を説明することとされている。
申請書類の偽造,記載の欠落・虚偽,調査への非協力・虚偽の供述又は不実の身分関係の作出があれば帰化が許可されないことも,相談の段階で説明するとされている。
申請時に条件を備えていないと認められる者には,条件を備えるときを待って申請するよう助言し,届出による国籍取得の条件を備える者には,届出による国籍取得ができることを説明する。
2 本人の出頭と書面による申請
帰化の許可の申請は,帰化をしようとする者の住所地を管轄する法務局又は地方法務局の長を経由してしなければならず,申請をしようとする者が自ら法務局又は地方法務局に出頭して,書面によってしなければならない(国籍法施行規則2条1項・2項)。
15歳未満の者は,法定代理人が出頭して申請する。
弁護士や行政書士が本人に代わって申請書類を提出することはできず,郵便等で提出された申請書類は受け付けられずに返戻される。
在留手続の申請取次ぎとの違いは,申請取次者制度で扱っている。
数人の親族が同時に申請する場合,管轄の異なる親族の申請も,申請者の利便と迅速な処理を考慮して相当と認められるときは,まとめて受け付けてよいとされている。
3 提出書類
令和8年版は,提出書類を1から21までの項目に分けて定めている。
開示部分から読める項目は次のとおりであり,9,19及び20の項目は題名を含めて黒塗りである。
①帰化許可申請書(項目1)
②法定代理人の資格を証する書面(項目2)
③写真(項目3。申請の日前6か月以内に撮影した約5センチメートル正方のもの)
④帰化の動機書(項目4。申請者の自筆)
⑤宣誓書(項目5。担当官の面前で署名)
⑥履歴書(項目6。学歴・職歴・身分関係を漏れなく記載し,出入国歴,技能・資格及び賞罰を含む)
⑦在勤,在学を証する書面(項目7)
⑧国籍を証する書面(項目8。本国官憲発給の国籍証明書)
⑨身分関係を証する書面(項目10。出生から現在までの全ての身分行為を証するもの)
⑩居住歴を証する書面(項目11。住民票の写し)
⑪親族の概要(項目12)
⑫生計の概要(項目13)
⑬事業の概要(項目14)
⑭給与証明書(項目15)
⑮課税証明書及び納税証明書(項目16)
⑯社会保険料の納付証明書(項目17)
⑰添付書類の訳文(項目18)
⑱担当官が提出を求めた書類(項目21)
15歳未満の申請者は,帰化の動機書,履歴書及び宣誓書を提出する必要がない。
付録第5号様式(履歴書)の注は,出入国歴を法定の住所期間について記載し,最短でも最近1年間を記載するとし,賞罰は過去から現在までの全てを記載するとしている。
4 受付後の処理計画と進行管理
申請を受け付けると,直ちに担当官を決め,担当官は処理計画表を作成する。
本局では戸籍課長又は国籍課長,支局では支局長等が進行管理者となって担当官を指揮し,処理が正当な理由なく遅れている場合は改善を図るとされている。
本省も,処理が正当な理由なく遅れている場合には改善を指示するとされている。
5 処理期間と件数
法務省が参議院に提供した資料によれば,申請から許可(不許可)までの期間は,申請者の国籍や身分関係等により異なるが,許可するに問題ない事案であれば,平成26年~令和5年の資料では「申請してから6か月ないし10か月程度」,平成27年~令和6年の資料では「申請してから8か月ないし10か月程度」とされている。
同じ資料による最近の件数は次のとおりである。
| 年 | 帰化許可申請者数 | 帰化許可者数 | 帰化不許可者数 |
|---|---|---|---|
| 令和2年 | 8,673人 | 9,079人 | 900人 |
| 令和3年 | 9,562人 | 8,167人 | 863人 |
| 令和4年 | 9,023人 | 7,059人 | 686人 |
| 令和5年 | 9,836人 | 8,800人 | 813人 |
| 令和6年 | 12,248人 | 8,863人 | 639人 |
令和6年の帰化許可者8,863人の国籍別の内訳は,韓国・朝鮮2,283人,中国3,122人,その他3,458人であり,不許可者639人の内訳は,韓国・朝鮮68人,中国193人,その他378人である。
令和8年4月の運用の見直し後の件数は,この資料には含まれていない。
第6 許可・不許可・取下げの後
1 許可された場合の手続
帰化が許可されると,官報に告示され,帰化は告示の日から効力を生ずる(国籍法10条)。
法務局は,帰化者に帰化者の身分証明書と「帰化後の手続について」(付録第28号様式)を交付し,帰化届の提出と在留カードの返還を指導する。
付録第28号様式と関係法令によれば,帰化後の主な手続は次のとおりである。
①帰化届:告示の日から1か月以内に,帰化後の本籍地又は所在地の市区町村長に届け出る(戸籍法102条の2)。帰化者の身分証明書を添付する。
②在留カード又は特別永住者証明書の返納:帰化の日から14日以内に出入国在留管理庁長官に返納する(出入国管理及び難民認定法19条の15第1項,入管特例法16条1項)。個人番号カードを失効させずに使い続けたい場合は,返納の前に市区町村へ帰化届を出すと手続を併せて行うことができるとされている。
③国籍の選択:帰化により重国籍となった者は,帰化の日から2年以内(18歳未満であれば20歳に達するまで)に国籍を選択しなければならず(国籍法14条1項),期限内に選択しないと法務大臣から催告を受け,催告を受けた日から1か月以内に選択しなければ日本の国籍を失う(同法15条)。
2 不許可の場合
本省から不許可と判断された者には,「帰化許可申請の結果について(通知)」(付録第30号様式)により,不許可の旨が通知される。
通知には不許可の理由は書かれておらず,取消訴訟の出訴期間が教示されている。
申請書類の返還を求められた場合は,事後に再取得できない書類の原本(再取得が困難な本国官憲発給の国籍・身分関係証明書等)だけを返還するとされている。
不許可の理由が示されない根拠,取消訴訟の出訴期間及び裁判例は,帰化不許可処分を争う方法で扱う。
3 取下げと申請者の死亡
申請者が取下げの意思を表明した場合は,取下書(付録第32号様式)を提出させて処理を終える。
取り下げた者から申請書類の返還を求められた場合は,申請書を除く添付書類の原本を返還するとされており,不許可の場合より返還の範囲が広い。
申請者が死亡した場合は,死亡を証する書面を提出させて処理を終える。
4 受取人指定届
令和8年版の付録第31号様式は「受取人指定届」であり,法務局からの結果の通知及び返還書類等の受取人と受取場所を指定するものである。
様式には,「受取人が書類を受け取ると申請者が書類を受け取ったこととなります」,「受取場所としての住所は,日本国内のものに限ります」と注記されている。
平成24年版の開示文書には様式が含まれていないため,この様式が新設されたものかどうかは確認できない。
第7 相談を受けたときの確認事項
帰化の相談では,次の事項を早い段階で確認することが考えられる。
①国籍法5条1項の各条件と,6条から8条までの緩和規定に当たるかどうか。
②日本での在留期間が,令和8年4月以降の運用の基準(原則10年以上)に達しているか。住所条件の5年とは別に確認する。
③住民税について,最近5年分の課税・納税の状況と,普通徴収の期間に納期限を過ぎた納付がないか。
④年金・医療保険・介護保険について,最近2年分の加入と納付の状況。事業主であれば,事業所として納めるべき保険料の状況。
⑤自動車運転免許の保有歴と違反歴(違反の有無にかかわらず運転記録証明書等が求められる)。
⑥日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)。
⑦本国の国籍証明書,出生から現在までの身分行為を証する書面を取得できるか,身分関係に不整合がないか。
⑧提出書類に個人番号等が記載されていないか。取得の段階で省けるものは省いて取得する。
第8 出典
1 法令
①e-Gov法令検索「国籍法」4条~8条,10条,14条,15条。
②e-Gov法令検索「国籍法施行規則」2条。
③e-Gov法令検索「戸籍法」102条の2,107条の3,107条の4。
④e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」19条の15,22条。
⑤e-Gov法令検索「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」16条。
2 通達・公的資料
①法務省民事局長「帰化事件処理要領について(通達)」(令和8年7月17日付け法務省民一第2134号,開示文書)。
②法務省民事局長「帰化事件処理要領について(通達)」(平成24年3月22日付け法務省民一第738号,開示文書(本文))。
③法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要」(令和8年3月27日)。
④法務省「国籍Q&A」Q9。
⑤法務省が参議院に提供した資料「帰化申請数・許可数・不許可数の推移(国籍別),申請から許可(不許可)までの期間(平成26年~令和5年)」(令和7年2月提供)。
⑥法務省が参議院に提供した資料「帰化申請数・許可数・不許可数の推移(国籍別),申請から許可(不許可)までの期間(平成27年~令和6年)」(令和8年3月提供)。
3 裁判例
①東京地方裁判所平成14年12月25日判決(平成14年(行ウ)第271号,裁判所ウェブサイト)。