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前妻・前夫との子がいる場合の法定相続情報一覧図―前配偶者の表示,線の引き方,前婚の子の戸籍と現住所の集め方(AI作成)

第1 前婚の子がいる相続で一覧図に載せる人

1 前婚の子は相続人であり,前配偶者は相続人ではない

(1) 本記事の対象と前提

本記事は,被相続人に,離婚した前配偶者との間の子(以下「前婚の子」という。)がいる場合について,法定相続情報一覧図の書き方と,前婚の子の戸籍及び現住所の集め方を説明するものである。
令和8年9月18日現在の法令,法務局の記載例及び手続案内を前提とし,戸籍の基本的な読み方と一覧図全般の作り方は,「法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認」で説明している。

(2) 前婚の子と前配偶者の法的地位

被相続人の子は相続人となり,被相続人の配偶者は常に相続人となる(民法887条1項・890条)。
子が数人あるときの各自の相続分は相等しいとされているから,前婚の子と,現在の配偶者との間の子(以下「後婚の子」という。)との間で,どの婚姻から生まれたかによって法定相続分は変わらない(民法900条4号)。

他方,離婚によって婚姻関係が終了した前配偶者は,被相続人の配偶者ではないから,相続人とならない。
一覧図に記載するのは,被相続人の氏名,生年月日,最後の住所及び死亡の年月日と,相続開始の時における同順位の相続人の氏名,生年月日及び被相続人との続柄であり(不動産登記規則247条1項),前配偶者の氏名や生年月日は記載事項に含まれない。

(3) 一覧図を申し出ることができる人

一覧図の保管及び写しの交付を申し出ることができるのは,相続人又は相続人の地位を相続により承継した者であり(不動産登記規則247条1項),前婚の子も後婚の子も,現在の配偶者も申出人になれる。
もっとも,申出には,前婚の子を含む相続人全員の戸籍の謄本,抄本又は記載事項証明書を添付する必要があるため(同条3項4号),前婚の子と連絡を取っていない相続人が申し出る場合でも,前婚の子の戸籍を取得する作業は省略できない。

2 前婚の子が相続人とならない場合と別の整理が要る場合

(1) 前婚の子が特別養子縁組をしている場合

前婚の子が特別養子縁組をしているときは,養子と実方の父母及びその血族との親族関係は終了する(民法817条の9本文)。
同条ただし書が親族関係を残すのは,民法817条の3第2項ただし書に規定する「他の一方」,つまり養親の配偶者であって子の実親である者とその血族に限られる。
したがって,例えば前配偶者の再婚相手が前婚の子と特別養子縁組をした場合,前配偶者との親族関係は残る一方,被相続人との親子関係は終了し,前婚の子は被相続人の相続人とならない。

これに対し,普通養子縁組は,養子と養親及びその血族との間に親族関係を生じさせるものであり(民法727条・809条),民法817条の9のように実方との親族関係を終了させる規定は置かれていない。
前婚の子の戸籍に縁組の記載があるときは,普通養子縁組か特別養子縁組かを身分事項から読み分けてから,一覧図に載せるかを判断する。

(2) 前婚の子が死亡している場合

前婚の子が被相続人の相続開始以前に死亡しているときは,その子(被相続人の孫)が代襲して相続人となり得る(民法887条2項)。
これに対し,被相続人の死亡後に前婚の子が死亡したときは数次相続となり,前婚の子を被相続人とする相続関係は別に整理する。
代襲相続の線の引き方と数次相続の扱いは,前記の一覧図作成の記事の第4の2及び第5の3で説明している。

第2 前配偶者の表示と線の引き方

1 法務局の記載例から読み取れること

(1) 前婚の子を題名とする記載例はない

法務局の「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」(令和8年9月18日確認時点の更新日は2024年4月1日)には,配偶者及び子,子のみ,配偶者及び親,配偶者及び兄弟姉妹,代襲相続,旧民法下の相続,養子を含む場合等の記載例が掲載されている。
しかし,前婚の子がいる場合を題名とする記載例は掲載されていない。

(2) 嫡出でない子がいる場合の記載例の注記

これに最も近い構図の記載例は,「嫡出でない子がいる場合」の記載例である。
この記載例には,次の三つの注記が付されている。
①相続人が子であって,嫡出子と嫡出でない子が混在する場合に,嫡出子を示すときは,その両親の関係を表す線は二本線とする。
②同じ場合に,嫡出でない子を示すときは,その両親の関係を表す線は一本線とする。
③相続人でない者については,氏名等の記載はせず,例えば性別のみとする。

ただし,この記載例は,様式・記載例のページで「平成25年9月4日以前に相続が開始している場合に限る。」とされている。
現行の民法900条4号は,子の相続分を嫡出子か否かで区別していないから,この記載例は,現在の相続の前婚の子について作図の方法を直接定めたものではない。
それでも,③の「相続人でない者」を性別だけで表示する方法と,婚姻関係を二本線で表す方法は,前配偶者を図に表す場合の参考になる。

2 前配偶者を図に表す三つの方法

(1) 記載例の注記に沿って性別だけを表示する方法

本記事では,法務局の記載例の注記に最も沿う方法として,前配偶者を「(女)」又は「(男)」と性別だけで表示し,被相続人との間を二本線で結ぶ形を基本形とする。
前婚の子は,その二本線から引いた線で結び,現在の配偶者は別の二本線で被相続人と結んで,後婚の子をその線から結ぶ。
前配偶者の氏名,生年月日,住所及び死亡の有無は書かない。

(2) 「前妻」等と表示する方法と,前配偶者を表示しない方法

実務解説には,性別以外の表示を紹介するものもある。
オリーブの木司法書士事務所の解説記事「離婚再婚した人の法定相続情報一覧図」(2024年9月26日)は,元配偶者の氏名,生年月日及び死亡年月日は記載できないとした上で,「元配偶者」「男」「女」という表示であれば書き直しにはならないと説明している。
遺言相続相談室ひまわり行政書士事務所の解説記事「法定相続情報一覧図の記載方法-妻と前妻の子が相続人の場合」(2025年9月18日)は,「前妻」と表示する図のほか,前妻を記載せず空欄にする方法を紹介し,空欄にする場合も縦の二重線に✕を入れることはできないとしている。

同じ行政書士事務所の記事は,前配偶者を一切表示せず,被相続人から直接子へ線を引く図も示している。
ただし,この図は,子が被相続人の非嫡出子であるかのような印象を持たれるおそれがあると指摘し,法務局に何パターンか持参したところ,絶対に正しいというものがあるわけではないようだったと述べている。
これらは事務所の解説記事であって法務局の基準ではないから,性別以外の表示や前配偶者を省く図を使うときは,申出先の登記所に確認しておくのが安全である。

(3) 前婚の子の側から見た表示への配慮

前婚の子から見ると,自分の親が「前妻」「前夫」と表示されることに違和感を持つことがあると,前記の行政書士事務所の記事は指摘している。
一覧図の写しは,前婚の子が自分の相続手続に使うこともある書面であるから,性別だけの表示にしておくことで,こうした表示の問題を避けやすいと考えられる。

3 続柄と作成日の書き方

(1) 続柄は戸籍の記載どおりに書く

一覧図の続柄は,戸籍に記載された続柄のほか,申出人の選択により「子」とすることもできるが,「子」とした場合は相続税の申告等に使えない手続があると法務局は案内している(様式及び記載例のページ)。
戸籍の続柄は実父母との続柄であり,戸籍の記載は戸籍法施行規則33条1項により附録第六号のひな形に従って行う。
平成12年6月6日の政府答弁書(内閣参質147第30号)は,この規定を挙げて,「実父母との続柄は,戸籍の実父母との続柄欄に,男女の別,嫡出である子と嫡出でない子の別及び出生順に従って,嫡出である子については,『長男』,『二男』,『長女』,『二女』等と記載」するとしている。

続柄が実父母との関係を示すものである以上,父母の組合せが異なる前婚の子と後婚の子は別々に数えられることになり,一つの一覧図に「長男」「長女」が二人ずつ並ぶことがある。
嫡出でない子について,法務省民事局が,平成16年11月1日から「母が分娩した嫡出でない子の出生の順に」記載すると案内しているのも,同じ考え方によるものと考えられる(法務省「戸籍における嫡出でない子の父母との続柄欄の記載の変更について」)。
前記のオリーブの木司法書士事務所の記事も,再婚歴がある場合には複数の長男や複数の長女がいることがあり,戸籍謄本に記載してあるとおりに記載すると説明している。

前婚の子と後婚の子を申出人の側で通し番号に振り直さず,各人の戸籍に記載された続柄を転記する。
数が重なることを理由に「二男」を「三男」へ書き換えると,戸籍の記載と合わなくなる。

(2) 作成日と作成者の記名

一覧図には,作成の年月日を記載し,申出人が記名するとともに,作成をした申出人又は代理人が記名する必要がある(不動産登記規則247条3項1号)。
法務局の記載例も,作成者は作成した日を記載し,自身の住所を記載の上,記名すると注記しているから,作成日を空欄のまま,又は作成日より後の日付を入れたまま提出しない。

第3 前婚の子の戸籍を探す

1 離婚しても子の戸籍は当然には移らない

(1) 離婚で除かれるのは氏を改めた親である

戸籍は,一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編製され,父母の氏を称する子は父母の戸籍に入る(戸籍法6条・18条1項)。
婚姻によって氏を改めた者が離婚によって婚姻前の氏に復するときは,婚姻前の戸籍に入り,又は新戸籍を編製する(戸籍法19条1項)。
この規定によって戸籍から出るのは氏を改めた親であり,子は,別の届出等がない限り,離婚後も筆頭者の戸籍に残る。

(2) 被相続人の古い戸籍に前婚の子が載っていることがある

そのため,被相続人が婚姻時の戸籍の筆頭者であった場合には,前婚の子が,被相続人の戸籍に離婚後もしばらく記載されていることがある。
また,戸籍の改製前に婚姻等で除籍された子は新しい戸籍に移記されないため(前記の一覧図作成の記事の第2の1参照),前婚の子は,被相続人の現在戸籍には載らず,改製原戸籍や除籍にだけ記載されていることもある。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を読むときは,前配偶者との婚姻と離婚の記載だけでなく,その婚姻中に生まれた子の欄を一人ずつ確認する。

2 子が別の戸籍へ移る主な原因

(1) 子の氏の変更による入籍

子が父又は母と氏を異にする場合には,家庭裁判所の許可を得て,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,その父又は母の氏を称することができる(民法791条1項)。
この届出では,その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載し(戸籍法98条1項),母の氏を称する子は母の戸籍に,父の氏を称する子は父の戸籍に入る(同法18条2項)。
離婚で婚姻前の氏に戻った親が戸籍の筆頭者でないときは,その親について新戸籍が編製されることもあるから(同法17条),子の移動先の戸籍は,届出前の親の戸籍と同じとは限らない。
子が15歳未満であるときは,法定代理人が子に代わってこの手続をすることができる(民法791条3項)。

(2) 婚姻と分籍

前婚の子が婚姻したときは,夫婦について新戸籍が編製されるのが原則であり(戸籍法16条1項),成年に達した者は,分籍をして新戸籍を編製することもできる(戸籍法21条)。
いずれの場合も,被相続人の戸籍の前婚の子の欄で,除籍の原因と移動先の本籍・筆頭者を読み取り,それを手がかりに前婚の子の次の戸籍を請求する。
移動先の戸籍でさらに婚姻,分籍又は転籍があれば,同じ作業を現在の戸籍まで繰り返す。

3 前婚の子の戸籍の取り方

(1) 必要なのは死亡日以後に証明された現在の戸籍

申出に添付する相続人の戸籍は,前婚の子についても,被相続人が死亡した日以後の証明日の現在の戸籍謄本又は抄本が必要である(不動産登記規則247条3項4号,法務局「あなたの相続手続を応援します!」PDF2頁)。
被相続人の戸籍に記載された前婚の子の欄は,出生と親子関係の確認には使えても,相続開始時に生存していることの証明にはならない。

(2) 現在の配偶者や後婚の子が請求する場合

戸籍謄本等を本人等として請求できるのは,その戸籍に記載されている者又はその配偶者,直系尊属若しくは直系卑属である(戸籍法10条1項)。
前婚の子が既に被相続人の戸籍から出ている場合,被相続人の現在の配偶者と後婚の子は,前婚の子の現在の戸籍に記載されておらず,前婚の子の配偶者,直系尊属又は直系卑属でもないから,その戸籍については同項の本人等に当たらない。
その場合は,自己の権利行使等のために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合等に当たることと,同条の2第1項各号に定める事項を明らかにして請求することになる(戸籍法10条の2第1項)。

戸籍証明書等の広域交付は,戸籍法10条1項の請求について本籍地以外の市区町村長に請求できるとするものであるから(戸籍法120条の2第1項1号),同項の本人等に当たらない者が前婚の子の戸籍を広域交付で取得することはできない。
前婚の子から自分の戸籍を取得して提供してもらえるなら,それが最も確実である。
弁護士等の資格者が受任事件のために請求する場合の要件と注意点は,「戸籍謄本・住民票の職務上請求――要件,DV等支援措置,不正取得の責任及びオンライン化」で説明している。

第4 前婚の子の現住所を確かめる

1 住所の証明に使う書類の違い

(1) 住民票の写し,除票,戸籍の附票及び印鑑証明書

一覧図に相続人の住所を記載したときは,申出書にその住所を証する書面を添付しなければならない(不動産登記規則247条4項)。
法務局の手続案内は,住所を記載する相続人について住民票記載事項証明書(住民票の写し)を挙げた上で,各相続人の印鑑証明書や戸籍の附票でも代用できるとしている(法務局「あなたの相続手続を応援します!」PDF2頁)。
各書類で分かる住所の違いは,次のとおりである。

書類分かる住所前婚の子の住所確認で注意する点
住民票の写し請求先の市区町村に現在住民登録している住所前婚の子が転出していれば,転出先の市区町村で取る必要がある
住民票の除票転出等で住民票から除かれた時点までの住所除かれた後の住所は反映されないので,現住所の証明にはならない
戸籍の附票の写しその戸籍に在籍する間の住所と,住所を定めた年月日の履歴前婚の子の現在の戸籍の附票を取り,住所を定めた年月日が最も新しい住所を確認する
印鑑証明書印鑑登録をしている市区町村の住所法務局の手続案内が代用できるとしている書類である

(2) 除票の住所を現住所として転記しない

前婚の子が以前の住所地から転出していれば,その市区町村で取得できるのは住民票の除票であり,そこに記載された住所は現住所ではない。
戸籍の附票には,戸籍の表示,氏名,住所及び住所を定めた年月日等が記載されるから(住民基本台帳法17条),前婚の子の現住所を確かめるには,前婚の子の現在の戸籍の附票が手がかりになる。
附票は戸籍ごとに作られるので,前婚の子が既に出た古い戸籍の附票からは,その戸籍を出た後の住所は分からない。

2 戸籍の附票を請求できる人

戸籍の附票の写しを本人等として請求できるのは,その附票に記録されている者又はその配偶者,直系尊属若しくは直系卑属である(住民基本台帳法20条1項)。
現在の配偶者や後婚の子がこれに当たらない場合は,自己の権利行使等のために附票の記載事項を確認する必要がある者等として申し出る方法があり,その場合に交付される写しは,同法17条2号から6号までの事項のみが表示されたものとされている(同条3項)。
弁護士等の特定事務受任者も,依頼者が同項各号に掲げる者に当たることを理由として申し出ることができる(同条4項)。

3 住所を一覧図に書くかの判断

(1) 住所の記載は任意であり,書くなら証明書を添付する

相続人の住所の記載は任意であり,法務局の記載例は,記載しない場合は「住所」の項目を削除するとしている(配偶者及び子の記載例の注記)。
前婚の子の現住所を確かめる作業に時間がかかる場合には,住所を記載しない一覧図にする選択肢もある。

(2) 住所を書く利点と書いた後の住所変更

他方,法務局は,相続人の住所を記載することにより,その後の相続登記等の申請や遺言書情報証明書の交付の請求等で,各相続人の住所を証する書面の提供が不要となることがあると案内している(様式及び記載例のページ)。
同じページは,一覧図の写しの交付を受けた後は,住所が変わったことによる再申出はできないとしている。
遺言書情報証明書の請求で住所入りの一覧図がどう使われるかは,「遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書の郵送請求―必要書類と手順」で説明している。

第5 住民票と戸籍の附票の「本籍」「筆頭者」「世帯主」欄

1 「本籍」「筆頭者」は戸籍の表示であり,世帯主とは別である

(1) 住民票の記載事項の区別

住民票には,世帯主についてはその旨,世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄が記載され,これとは別の号で,戸籍の表示が記載される(住民基本台帳法7条4号・5号)。
戸籍は,その筆頭に記載した者の氏名及び本籍で表示するとされているから(戸籍法9条),住民票の「本籍」欄と「筆頭者」欄は,その人の戸籍を特定する記載であり,同じ世帯に誰が住んでいるかを示すものではない。

(2) 同じ本籍に別の戸籍があることへの注意

前婚の子の住民票の筆頭者欄に本人の氏名があれば,本人が筆頭者の戸籍に在籍していることを示すにとどまり,本人が世帯主であることまでは分からない。
また,戸籍は筆頭者の氏名と本籍の組合せで表示されるから,同じ本籍に筆頭者の異なる別々の戸籍が置かれていることがあり,戸籍を請求するときは,本籍と筆頭者の両方で対象を特定する。

2 本籍や筆頭者を省略した証明書でよいか

(1) 省略して交付される仕組み

本人等の請求による住民票の写しは,特別の請求がない限り,世帯主・続柄,戸籍の表示等の記載の全部又は一部を省略して交付することができる(住民基本台帳法12条5項)。
戸籍の附票の写しについても,同じ規定が読み替えて準用され,戸籍の表示等を省略して交付することができる(同法20条5項)。
住民票や附票の本籍・筆頭者欄が「省略」となっているのは,この取扱いによるものである。

(2) 一覧図の申出での扱い

不動産登記規則247条4項は,相続人の住所を「証する書面」とだけ定め,本籍の記載を要件としていない。
申出人の確認書類についても,同条3項6号は申出書と「同一の氏名及び住所」が記載された証明書を求めるにとどまる。
法務局の手続案内も,住所の証明について印鑑証明書や戸籍の附票での代用を認め,申出人の確認書類として運転免許証やマイナンバーカードの写しを挙げており,本籍の記載を条件としていないから(法務局「あなたの相続手続を応援します!」PDF2頁),相続人の住所の証明や申出人の確認には,本籍を省略した住民票の写しで足りると考えられる。

被相続人の最後の住所を証する書面(同規則247条3項3号)についても,法務局の手続案内は「被相続人の住民票の除票」とするだけで,本籍の記載を求めていない。
札幌法務局や東京ブロック管内法務局の案内も同様であり,本籍に触れるのは,最後の住所を証する書面が交付されないときに一覧図へ最後の本籍を記載するという場面に限られている。

もっとも,同じ除票を相続登記にも使う予定であれば,本籍の記載があるものを取っておく方がよい。
法務局の「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」は,被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票について,備考欄で「登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの」とし,被相続人の登記上の住所が戸籍謄本等に記載された本籍と異なる場合に必要となるとしている。
本籍を省略した除票で一覧図の申出をした後に,相続登記のために取り直すことになれば二度手間になる。

第6 申出前の点検

前婚の子がいる一覧図は,通常の図より確認事項が多いため,本記事では,申出の前に次の点を点検することを基本形とする。
①被相続人の出生から死亡までの戸籍(改製原戸籍・除籍を含む。)に記載された子を一人ずつ拾い,前婚の子を漏らしていないか。
②前婚の子に特別養子縁組の記載がないか,普通養子縁組と読み違えていないか。
③前婚の子が相続開始以前に死亡していれば代襲者を,相続開始後に死亡していれば別の相続関係を整理したか。
④前婚の子について,被相続人の死亡日以後に証明された現在の戸籍を取得したか。
⑤前配偶者の氏名,生年月日等を記載していないか,前配偶者の表示方法を性別以外にした場合は登記所に確認したか。
⑥続柄を戸籍の記載どおりに転記したか。
⑦住所を記載した相続人について,除票ではなく現住所を示す住民票の写し,戸籍の附票又は印鑑証明書を添付したか。
⑧作成日を空欄や作成日より後の日付にしていないか。

第7 出典・参考資料

1 法令

民法(明治29年法律第89号)727条・791条・809条・817条の3・817条の9・887条・890条・900条。
戸籍法(昭和22年法律第224号)6条・9条・10条・10条の2・16条・17条・18条・19条・21条・98条・120条の2。
住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)7条・12条・17条・20条。
不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)247条。
戸籍法施行規則(昭和22年司法省令第94号)33条1項及び附録第六号。
いずれもe-Gov法令検索で令和8年9月18日に現行条文を確認した。

2 法務局の記載例と手続案内

①法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」(更新日2024年4月1日)の注意事項及び記載例一覧。
②法務局「嫡出でない子がいる場合(平成25年9月4日以前に相続が開始している場合に限る。)」記載例PDF1頁の注記。
③法務局「配偶者・子(1人~4人まで対応)である場合」記載例PDF1頁の注記。
④法務局「あなたの相続手続を応援します!~法定相続情報証明制度の手続の3STEP!~」令和8年3月1日改訂,PDF2頁(STEP1の必要書類)。
⑤法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」PDF1頁~3頁(被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票の備考欄)。
⑥札幌法務局「法定相続情報証明制度」PDF5頁(必要な書類の収集),東京ブロック管内法務局・地方法務局相続登記促進プロジェクト「相続登記ガイドブック」PDF7頁~9頁(法定相続情報証明制度の必要書類と記載例の注記)。

3 国会の答弁書及び法務省の案内

①参議院「戸籍の続柄欄の記載に関する質問に対する答弁書」(答弁書第三〇号,内閣参質一四七第三〇号,平成12年6月6日)の二から四までについて。
②法務省「戸籍における嫡出でない子の父母との続柄欄の記載の変更について」(平成16年11月1日,法務省民事局)。

4 実務家の解説記事

①オリーブの木司法書士事務所「離婚再婚した人の法定相続情報一覧図」2024年9月26日。
②遺言相続相談室ひまわり行政書士事務所「法定相続情報一覧図の記載方法-妻と前妻の子が相続人の場合」2025年9月18日。
いずれも事務所の解説記事であり,法務局の基準を示す資料としては用いていない。