1 家事調停の期間を考える際の結論
① 夫婦関係調整調停について、令和6年の全国平均は、平均審理期間が6.8か月、平均期日間隔が1.9か月であった。ただし、これは既済事件の平均値であり、申立てから終局までの標準期限を示すものではない。
② 期日間の約2か月は、単なる待ち時間ではない。必要資料の収集、主張の整理、相手方提案の検討及び次回期日の進行準備に使う期間である。
③ 離婚、婚姻費用、面会交流、財産分与等の争点が重なる事件では、事実関係及び資料を争点ごとに分け、次回期日までの宿題を具体化することが長期化防止につながる。
④ 本記事の数値は、最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」(令和7年度実務協議会(冬季)、令和8年2月)の令和6年統計を基礎とする。同文書は裁判所自身の運用認識を示す司法行政資料であるが、法令でも判例でもない。
2 令和6年の平均審理期間及び平均期日間隔
同文書によれば、夫婦関係調整調停の平均審理期間は、平成20年の4.3か月から令和6年の6.8か月へ延びた。また、平均期日間隔は、平成20年の1.4か月から令和6年の1.9か月へ延びた。
平均審理期間は、申立てから成立、不成立、取下げ等による終局までに要した期間の平均である。平均期日間隔は、各期日の間隔を平均したものであり、「必ず2か月おきに指定される」という規則ではない。
実際の期間は、争点の数、当事者の出頭状況、提出資料の量、子に関する調査の要否、裁判所及び代理人の日程、ウェブ会議利用の可否等によって変わる。
3 申立てから第1回期日までに行うこと
申立人は、申立書を提出すれば準備が終わるわけではない。第1回期日までに、申立ての目的、争点及び希望する解決の優先順位を整理する必要がある。
- 申立書、事情説明書及び添付資料の記載が一致しているかを確認する。
- 離婚意思、別居時期、子の監護、婚姻費用、財産分与等を争点ごとに整理する。
- 相手方に開示されると危険な住所、勤務先、通院先等が含まれていないかを提出前に確認する。
- 早期に合意できる事項と、資料確認後でなければ判断できない事項を分ける。
- 第1回期日に確認したい事項及び裁判所に伝える安全上の事情をメモにする。
4 期日と期日の間に代理人が行うこと
家事調停では、期日の場で即興的に主張を重ねるより、期日間に資料と選択肢を整理することが重要である。
① 期日調書、自分のメモ及び裁判所から示された宿題を直ちに照合する。
② 次回までに提出する資料について、何を立証する資料かを一つずつ対応させる。
③ 相手方の提案を、法的評価、事実認識、金額、履行可能性及び安全面に分解する。
④ 財産資料は、対象財産、名義、基準時、評価額及び裏付け資料を一覧化する。
⑤ 合意案は、金額だけでなく、支払時期、支払方法、引渡し、登記、違反時の扱いまで検討する。
⑥ 次回期日で決めたい事項を代理人と依頼者の間で共有する。
5 事件を長期化させやすい事情
以下の事情があるから直ちに長期化するわけではないが、早期の交通整理が必要である。
- 離婚の成否と婚姻費用、親権、面会交流及び財産分与が同時に争われている。
- 不動産、退職金、保険、非上場株式、暗号資産又は国外財産がある。
- 特有財産か夫婦共有財産かについて争いがある。
- DV、ストーカー行為その他の安全上の問題があり、住所等の秘匿が必要である。
- 子の意向又は生活状況について家庭裁判所調査官の調査が検討される。
- 当事者の一方が期日に出席しない、資料を提出しない又は連絡が不安定である。
- 並行する訴訟、保全、刑事事件又は国外手続がある。
6 ウェブ会議と期日間隔
ウェブ会議は、遠隔地からの出席や移動負担の軽減に役立つ。しかし、ウェブ会議を利用すれば審理期間が当然に短くなるわけではない。本人確認、通信環境、周囲に第三者がいないこと及び秘密保持に配慮する必要がある。
また、離婚又は離縁の成立を含む調停についてウェブ会議を利用できる範囲は法改正により変化しているため、事件の種類、期日の目的及び担当裁判所の案内を確認すべきである。
7 平均値を依頼者への説明に使う際の注意
「平均6.8か月」という数値だけを示すと、依頼者が6.8か月で必ず終わると受け取るおそれがある。説明に当たっては、次の三つを分けるべきである。
① 全国統計上の平均値
② 当該家庭裁判所における期日指定の実情
③ 当該事件に固有の長期化要因
その上で、現時点で確定している次回期日、次回までの準備、未確定の争点及び調停不成立となった場合の手続を説明するのが安全である。
8 調停が成立しない場合の見通し
調停が不成立となった後の手続は事件類型により異なる。離婚調停は、原則として離婚訴訟を別途提起しなければ離婚の裁判を求められない。他方、婚姻費用、養育費、面会交流、遺産分割等は、調停不成立後に審判手続へ移行することがある。
したがって、調停段階から、合意形成だけでなく、不成立後に必要となる主張及び証拠を意識して準備する必要がある。
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10 一次資料その他
① 最高裁判所事務総局家庭局「家庭裁判所の現状と課題」(令和7年度実務協議会(冬季))
② 裁判所「司法統計年報」
③ e-Gov法令検索「家事事件手続法」
* ①は裁判所の司法行政資料であり、数値及び裁判所の課題認識の根拠として用いた。法的要件は③の現行法を確認すべきである。本記事では特定の判例を根拠としていないため、判例秘書による判例本文の確認は行っていない。