第1 この記事の対象と結論
平成24年司法試験民事系科目第2問(商法)について,出題の趣旨と採点実感から独自に抽出した24の評価項目と,5000字以内の答案例を示す。
取締役の選任,危険な貸付けへの対応,監査役選任決議の取消しを,主体と時点を分けて検討する問題である。
| 項目 | 本稿の整理 |
|---|---|
| 設問1 | 4名選任・採決順を答案の主位とし,5名・6名選任,得票順等の別構成も比較する。 |
| 設問2 | Aは株主権,Fは監査役の独任権限と会社代表権により,事前差止め・事後の会社損害回復を図る。 |
| 設問3 | 否決決議の対象性と,Fの適格・意見陳述権,Aによる瑕疵の援用を区別する。 |
| 評価表 | 24項目,重み合計98。条件付き2項目を含み,公式配点ではない。 |
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
番号は記事全体の通し番号である。
出題趣旨と採点実感の該当頁を示し,一つの評価対象ごとに,答案に何が書かれていれば充足するかを整理した。
これは法務省の公式採点表ではなく,公式資料を基にした本稿独自の分析である。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
重み5は番号1・2の選任人数と決定方法,4・5・6の差止権限と共通の違反行為要件,12・13の主体別の責任追及経路,17の否決決議の対象性である。
これらは設問の入口と終点を分ける事項であり,個別の論証を支える重み4と区別した。
重みの件数や合計から,試験得点・合格可能性・難易度を逆算することはできない。
3 許容される構成と適用条件
設問1の選任人数・決定方法と,設問3の否決決議の対象性については,理由と当てはめが整合していれば,結論の方向を一つに固定しない。
番号23・24は,Q又はRを取締役とする構成を採る場合の条件付き項目である。
採用しない構成を全答案への累積要求にはしない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
上場会社甲社には,任期未了のHと,平成22年に任期満了となるA・B・C・Dがいる。
定款は取締役を6名以内と定め,4名の選任に対して7名が候補となった。
出席議決権は77万個で,A以外の6名が過半数の賛成を得ている。
Pの一人会社である乙社への15億円の無担保貸付けについて,監査役Fが異議を述べたが,取締役会は承認し,監査役会も不問方針を決めた。
翌年の監査役選任では,監査役会が提出を請求した議案①が否決され,株主乙社の議案②が可決される一方,Fの意見陳述は制止されている。
2 設問が求めること
設問1は選任の当否を問うものであり,議長の議事運営の瑕疵だけを挙げて終えてはならない。
議案提出の適法性と3か月以内に取消訴訟がないことは与件である。
設問2は事前と事後の救済をA・F別に示し,設問3は否決・可決の対象,適格,主張できる瑕疵を区別する。
配点割合は2:5:3である。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 任期未了のHと定款上限6名,会社提案4名を区別し,選任人数4名・5名・6名の考え方を比較して採用人数を理由付ける。 | 5 | 実頁6。取締役の員数は6名以内 | 実頁15。取締役として何名が選任され得るか |
| 2 | 採決順と得票順等の決定方法を比較し,341条から当然に結論が出ないことを踏まえ,自説で選任される者を確定する。 | 5 | 実頁6。採決順か得票順かなど | 実頁15。採決順か得票順 |
| 3 | 341条・定款の定足数及び出席77万個の過半数を計算し,Aは不足,B・C・D・P・Q・Rは要件を満たすと示す。 | 3 | 実頁6。第341条 | 実頁15。会社法第341条 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 4 | 株主Aの360条1項・3項の差止請求について継続保有・違反行為・回復不能損害を挙げて当てはめる。 | 5 | 実頁6。会社法第360条第1項 | 実頁15。株主の差止請求 |
| 5 | 監査役Fの385条1項の差止請求について違反行為・著しい損害を当てはめ,株主の回復不能損害と区別する。 | 5 | 実頁6。同法第385条第1項 | 実頁15。監査役の差止請求 |
| 6 | 法令違反行為の要件について善管注意義務等の違反を具体的事実から論じ,貸付けだけで会社目的外と断定しない。 | 5 | 実頁6。法令に違反する行為 | 実頁15。法令違反を論じないで |
| 7 | 本件貸付けを365条1項・356条1項2号の利益相反取引に位置付け,重要事実開示・承認と責任を区別する。 | 4 | 実頁6。利益相反取引 | 実頁15。利益相反取引 |
| 8 | Hについて423条3項2号の任務懈怠推定と貸付決定・実行時の調査判断を踏まえて423条1項責任を論じる。 | 4 | 実頁6。第423条第3項各号 | 実頁15。第423条第3項各号 |
| 9 | Dについて承認決議への賛成を423条3項3号に対応させ,推定の反証と423条1項責任を論じる。 | 4 | 実頁6。第423条第3項各号 | 実頁15。第423条第3項各号 |
| 10 | Pについて利益相反取引当事者として423条3項1号の任務懈怠推定と423条1項責任を検討する。 | 4 | 実頁6。第423条第3項各号 | 実頁15。第423条第3項各号 |
| 11 | Pについて428条1項の自己のための取引の厳格責任を,乙社の一人会社性に照らして検討する。 | 4 | 実頁6。第428条第1項 | 実頁15。第428条第1項 |
| 12 | Aによる甲社への提訴請求と847条の株主代表訴訟を示し,甲社の損害回復のための権限として説明する。 | 5 | 実頁6。株主代表訴訟 | 実頁15。株主代表訴訟 |
| 13 | Fが386条1項により甲社を代表してH・D・Pへの責任追及訴訟を提起できることを示す。 | 5 | 実頁6。第386条第1項 | 実頁15。提訴権限 |
| 14 | 390条2項但書の監査役の独任性から,監査役会の不問方針がFの権限行使を妨げないと説明する。 | 4 | 実頁6。監査役の独任 | 実頁16。監査役の独任性 |
| 15 | 381条2項の監査役の調査権限を具体的な貸付調査や責任判断につなげる。 | 2 | 実頁6。第381条第2項 | 実頁16。第381条第2項 |
| 16 | 実行前の救済として仮処分に言及し,385条2項の監査役差止めの担保特則を区別する。 | 2 | 実頁6。仮処分 | 実頁15。仮処分 |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 17 | 議案①の否決が取消訴訟の対象になるかを問題にし,制度趣旨から理由付きの自説を示す。 | 5 | 実頁6。否決の決議 | 実頁16。否決の決議 |
| 18 | 否決対象論の理由付けで取消判決の対世効と304条の再提案制限の関係を検討する。 | 4 | 実頁6。対世効 | 実頁16。理由が適切に述べられて(理由付け一般の指摘からの間接対応。) |
| 19 | Fが取消しにより346条1項の権利義務監査役となることを831条1項後段の原告適格に結び付ける。 | 4 | 実頁6。明文で | 実頁16。原告適格 |
| 20 | Fの345条4項・1項の監査役選任に関する意見陳述権の侵害を決議方法の取消事由として論じる。 | 4 | 実頁6。意見陳述の機会 | 実頁16。意見陳述の権利 |
| 21 | AがFに関する手続上の瑕疵を主張できるかを,取消訴訟の制度趣旨と条文から理由付きで論じる。 | 4 | 実頁6。主張することができるか否か | 実頁16。手続上の瑕疵をA |
| 22 | 議案②は株主提案であるため343条1項・3項の監査役会同意を要しないと説明する。 | 3 | 関連範囲に明示なし。 | 実頁16。同意がなくても |
| 23 | 設問1でQ又はRを取締役とする構成では,23年総会招集に係る取締役会の構成・招集の瑕疵と決議への影響を検討する。(条件:設問1でQ又はRを取締役とする構成。) | 4 | 実頁7。取締役会決議の瑕疵 | 実頁16。23年総会の招集 |
| 24 | 設問1でQ又はRを取締役とする構成では,335条2項の取締役と監査役の兼任禁止を23年の監査役就任へ適用する。(条件:設問1でQ又はRを取締役とする構成。) | 4 | 実頁7。QやR | 実頁16。QやR |
4 重みの分布
| 重み1 | 重み2 | 重み3 | 重み4 | 重み5 | 総項目数・重み合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 2 | 2 | 12 | 8 | 24項目・98 |
総項目数N=0+2+2+12+8=24,重み合計W=1×0+2×2+3×2+4×12+5×8=98である。
分布には条件付きの番号23・24を含む。
個々の答案の集計では,採用構成を先に定め,適用外項目を分母から除く。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下は,設問1では4名選任・採決順,設問3では否決決議を取消訴訟の対象としない立場による答案例である。
平成24年の問題を対象とし,事後の判例・改正から当時の答案要求を逆算していない。
以下の枠内が答案本文であり,調査記録や解説は含めない。
2 答案
第1 設問1
1 Hの任期は選任後2年以内に終了する最終事業年度に関する定時総会終結までであり,短縮もないから,22年総会では満了しない(会社法332条1項)。
定款上は取締役6名以内なので,今回新たに選任できる人数の上限は5名である。
出席77万個は定款の定足数である総議決権100万個の3分の1以上を満たす。
341条及び定款上,賛成は出席議決権の過半数,すなわち38万5000個を超える必要がある。
したがって,Aはこれを満たさず,B,C,D,P,Q,Rの6名が満たす。
問題は,何名を選任し,超過候補をどう処理するかである。
2 定款の「6名以内」は上限であり,常に上限まで選任する趣旨ではない。
会社提案が4名の選任であり,乙社の提案も候補者の追加であって選任人数の増員ではないことから,今回は4名を選任する趣旨と解する。
上限を根拠に5名を選ぶ見解も考えられるが,定款上の許容人数と総会で選ぶ人数を混同すべきでない。
決定方法には採決順と得票順がある。
得票順なら株主の支持の強さを反映でき,4名ならD,C,P,Qとなる。
しかし,累積投票は排除されており,342条4項の得票順を当然には適用できない。
通常の選任では,各候補について過半数の賛成があればその都度選任決議が成立すると考えられる。
定めた順に各候補を採決する方式は,各株主が候補ごとに賛否を判断できるから,合理性を欠くとはいえない。
ここでは採決順による4名選任を採り,Aの否決後,B,C,D,Pが選任されたと解する。
4名に達した後のQ,Rの得票は,この選任を覆さない。
なお,6候補全員について選任決議が成立し,定款員数超過は決議の瑕疵にとどまるとする見解もある。
その場合は定款違反による取消し(831条1項2号)と3か月の提訴期間を検討すべきであり,当然に一部候補を排除することはできない。
以上の結論は341条から一義的に出るものではないが,本答案の立場によればB,C,D,Pの選任は適法である。
Aは任期満了により退任し,員数欠缺もないから権利義務取締役にはならない。
第2 設問2
1 貸付実行前の対応
(1) Aは株主として360条1項・3項によるHの行為の差止めを求め得る。
6か月の継続保有,法令・定款違反等の行為又はそのおそれ,甲社に回復することができない損害が生ずるおそれが必要である。
Aの取締役としての権限によるものではない。
他方,監査役Fは385条1項により,同じ行為要件の下,甲社に著しい損害が生ずるおそれがあれば差止めを請求でき,回復不能性までは要しない。
(2) Pは乙社を代表して甲社と貸付取引をするから,第三者のためにする直接の利益相反取引であり(356条1項2号),重要事実を開示した取締役会承認を要する(365条1項)。
特別利害関係人Pが議決に加わらなかったことは369条2項に沿う。
ただし,Fの異議を単に無視して形式的承認だけを得ればよいわけではない。
返済能力等の重要事実の開示がなければ適法な承認を欠く。
また,承認があってもHには善管注意義務・忠実義務が残る(330条,民法644条,会社法355条)。
甲社は情報サービス会社だが,貸付けというだけで直ちに目的の範囲外とはいえない。
むしろ,事業活動のほとんどない乙社へ15億円もの金員を無担保で貸し付ける合理性が問題である。
乙社は借入金で甲社株を買い集めた会社であり,返済原資や資産の換価可能性の調査が特に必要である。
Fが説明不足を指摘したにもかかわらず,十分な調査・検討をせず実行するなら上記義務に違反する。
Fの発言それ自体を客観的な非開示の確定事実とはせず,調査の有無・内容を検討する。
巨額の無担保貸付けの回収危険は,Fについて著しい損害のおそれを基礎付ける。
Aについては,乙社からの回収や責任者による填補が困難で,事後救済では回復できない具体的危険を示す必要がある。
これが認められれば,Aも差止めを請求できる。
実行が迫る場合は仮処分も求め得る。
Fの385条の仮処分には担保を立てさせない(同条2項)。
(3) Fは381条2項により,取締役等に報告を求め,甲社の業務・財産を調査し,貸付けの目的,乙社の返済能力,担保の要否等を明らかにして差止めに結び付けることができる。
監査役は独任の機関であり,監査役会の監査方針は個々の権限行使を妨げない(390条2項但書)。
E,Gの賛成による不問方針は,Fの調査・差止めの障害にならない。
2 実行後の責任追及
(1) 回収不能による損害は甲社に生じたものであり,H,D,Pの甲社に対する423条1項の責任を検討する。
本件は利益相反取引であるから,取引当事者となる取締役P,甲社が取引することを決定したH,承認決議に賛成したDには,423条3項1号,2号,3号によりそれぞれ任務懈怠が推定される。
承認を受けたことは,当然の免責事由ではない。
Hは乙社の返済能力等を十分調査せずに貸付けを決定・実行し,Dは合理的な調査・検討なしに承認したのであれば,上記推定を覆せない。
倒産という後発結果だけで判断せず,決定時点の情報収集・判断過程と内容を評価する。
合理的な調査及び貸付判断を尽くしたとの反証がなければ,両者は任務懈怠により生じた未回収額について賠償責任を負う。
Pについては,乙社の名義であっても,乙社はPの一人会社であり,その取引利益が実質的にPに帰属する。
「自己のため」の取引について厳格な責任を負わせる428条1項の趣旨から,その実質に着目して同項を適用すると解する。
したがってPは,自己に帰責事由がないとの主張によって免責されない。
これを第三者のための取引にとどまると解しても,423条3項の推定は残り,自ら支配する乙社への危険な貸付けを提案したPがこれを覆すのは困難である。
同一損害について責任を負う者は430条により連帯する。
(2) Aは847条により,甲社にH,D,Pに対する提訴を請求し,原則として60日以内に提訴されなければ,甲社のために株主代表訴訟を提起できる。
提訴請求の受領については監査役が甲社を代表する(386条2項)。
60日を待つことで甲社に回復不能の損害が生ずるおそれがあるときは直ちに提訴できる。
賠償金はA個人でなく甲社へ支払わせる。
Fは386条1項により甲社を代表し,取締役H,D,Pに対する責任追及訴訟を提起できる。
これは株主代表訴訟とは異なる甲社自身の訴訟である。
Fは調査権限で責任の有無を確認でき,監査役会の不問方針にも拘束されない。
第3 設問3
1 議案①の否決については,そもそも831条の取消訴訟の対象になるかが問題となる。
否決も総会の意思決定であり,取消判決の対世効によって瑕疵を統一的に除去する利益や,304条但書の再提案制限との関係を重視すれば,対象とする考え方もあり得る。
しかし,取消訴訟は決議により生じた法律関係を形成的に覆す制度である。
否決を取り消しても,議案①が可決されE,F,Gが選任されたことにはならない。
また,再提案制限は株主提案に関する固有の要件の下で働くもので,本件の監査役会の提案が否決されたというだけで,直ちにその制限が生じるわけではない。
この利益だけから否決取消しを一般に認める必要もない。
よって本答案は,議案①の否決は取消訴訟の対象にならないと解する。
2 議案②について,Aは株主として適格を有する。
Fも,同決議が取り消されれば監査役の法定員数3名(335条3項)を欠き,346条1項により監査役の権利義務を有することになるので,831条1項後段により適格を有する。
両者は3か月以内に甲社を被告として提訴できる。
議案②は乙社の株主提案であり,取締役による監査役選任議案の提出ではないから,343条1項・3項の監査役会同意は不要である。
監査役会の議案①提出請求(同条2項・3項)を尊重することと,株主が別候補を提案することは両立する。
Fは345条4項・1項により,監査役の選任について独立に意見を述べることができる。
Hがその機会を奪ったことは決議方法の法令違反であり,831条1項1号に該当する。
現任監査役の意見は取締役から独立した監査体制を選ぶ重要な判断材料であるから,軽微な違反とはいえず,同条2項による裁量棄却は相当でない。
Aもこの瑕疵を主張できる。
取消訴訟は総会決議の適法性を確保する制度であり,831条は各原告自身の権利侵害だけに取消事由を限定していない。
監査役の意見が株主に伝わらなかったことは,株主全体の適切な意思形成にも関係する。
したがって,A及びFは議案②の可決決議の取消しを求め得る。
3 設問1で採った立場では,取締役はH,B,C,D,Pであり,23年総会の招集を決めた取締役会に構成上の瑕疵はなく,Q,Rも取締役との兼任禁止には触れない。
これに対し,得票順等によりQ又はRが取締役に選任されたと解する場合は,取締役会の招集・構成の瑕疵と,その瑕疵の決議への影響を検討しなければならない。
また,その者を監査役に選任しても取締役との兼任は335条2項で禁止され,退任等がない限り適法に就任できない。
設問1の構成を変えてもこの後続問題を省くことはできない。
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の第1は番号1~3,第2の1は番号4~7・14~16,第2の2は番号7~14,第3は番号17~24に対応する。
重み3以下の番号3・15・16・22は,計算,調査権,仮処分,株主提案の同意不要という各段落で処理している。
次の表は重み5・4と条件付き項目の全件を示している。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | 任期未了のHと定款上限6名,会社提案4名を区別し,選任人数4名・5名・6名の考え方を比較して採用人数を理由付ける。 | 第1 |
| 2 | 5 | 採決順と得票順等の決定方法を比較し,341条から当然に結論が出ないことを踏まえ,自説で選任される者を確定する。 | 第1 |
| 4 | 5 | 株主Aの360条1項・3項の差止請求について継続保有・違反行為・回復不能損害を挙げて当てはめる。 | 第2の1 |
| 5 | 5 | 監査役Fの385条1項の差止請求について違反行為・著しい損害を当てはめ,株主の回復不能損害と区別する。 | 第2の1 |
| 6 | 5 | 法令違反行為の要件について善管注意義務等の違反を具体的事実から論じ,貸付けだけで会社目的外と断定しない。 | 第2の1 |
| 7 | 4 | 本件貸付けを365条1項・356条1項2号の利益相反取引に位置付け,重要事実開示・承認と責任を区別する。 | 第2の1 |
| 8 | 4 | Hについて423条3項2号の任務懈怠推定と貸付決定・実行時の調査判断を踏まえて423条1項責任を論じる。 | 第2の2 |
| 9 | 4 | Dについて承認決議への賛成を423条3項3号に対応させ,推定の反証と423条1項責任を論じる。 | 第2の2 |
| 10 | 4 | Pについて利益相反取引当事者として423条3項1号の任務懈怠推定と423条1項責任を検討する。 | 第2の2 |
| 11 | 4 | Pについて428条1項の自己のための取引の厳格責任を,乙社の一人会社性に照らして検討する。 | 第2の2 |
| 12 | 5 | Aによる甲社への提訴請求と847条の株主代表訴訟を示し,甲社の損害回復のための権限として説明する。 | 第2の2 |
| 13 | 5 | Fが386条1項により甲社を代表してH・D・Pへの責任追及訴訟を提起できることを示す。 | 第2の2 |
| 14 | 4 | 390条2項但書の監査役の独任性から,監査役会の不問方針がFの権限行使を妨げないと説明する。 | 第2の1・2 |
| 17 | 5 | 議案①の否決が取消訴訟の対象になるかを問題にし,制度趣旨から理由付きの自説を示す。 | 第3 |
| 18 | 4 | 否決対象論の理由付けで取消判決の対世効と304条の再提案制限の関係を検討する。 | 第3 |
| 19 | 4 | Fが取消しにより346条1項の権利義務監査役となることを831条1項後段の原告適格に結び付ける。 | 第3 |
| 20 | 4 | Fの345条4項・1項の監査役選任に関する意見陳述権の侵害を決議方法の取消事由として論じる。 | 第3 |
| 21 | 4 | AがFに関する手続上の瑕疵を主張できるかを,取消訴訟の制度趣旨と条文から理由付きで論じる。 | 第3 |
| 23 | 4 | 設問1でQ又はRを取締役とする構成では,23年総会招集に係る取締役会の構成・招集の瑕疵と決議への影響を検討する。(条件:設問1でQ又はRを取締役とする構成。) | 第3の3。主位では適用外。別構成の帰結として説明。 |
| 24 | 4 | 設問1でQ又はRを取締役とする構成では,335条2項の取締役と監査役の兼任禁止を23年の監査役就任へ適用する。(条件:設問1でQ又はRを取締役とする構成。) | 第3の3。主位では適用外。別構成の帰結として説明。 |
(2) 設問1
公式資料は,選任人数と,人数を超えて要件を満たす候補者の決定方法という二つの問題を分けている(番号1・2)。
採点実感も,議事運営・決議瑕疵だけに終始した答案や,理由なく4名を得票順で選ぶ答案を不十分としている。
本答案は定款上限と議案の人数を区別し,通常投票の成立の捉え方から採決順を採用した。
4名・5名・6名,採決順・得票順のいずれを採る場合も,選任者と後問の地位まで整合させる必要がある。
(3) 設問2
事前差止めでは,Aの回復不能損害とFの著しい損害の違いだけでなく,共通の違反行為要件を具体的に論証することが重要である(番号4~6)。
本答案は貸付けを直ちに会社目的外とせず,返済能力・担保・情報収集の問題から善管注意義務違反を検討している。
事後の責任ではP・H・Dを423条3項各号に対応させ,Pには428条の射程を論じる(番号7~11)。
Aは株主代表訴訟,Fは会社を代表する訴訟という区別が終点である(番号12・13)。
監査役会の不問方針は,Fの独任権限を妨げない(番号14)。
調査権限と仮処分は公式資料が望ましいとした補強として位置付け,救済の主要経路と同じ重みにはしていない(番号15・16)。
(4) 設問3
公式資料は否決決議の対象性について結論を固定せず,制度趣旨に戻った理由付けを求めている(番号17・18)。
本答案の否定説は記事独自の採用構成であり,公式が否定説を指定したという意味ではない。
Fの原告適格は取消後の権利義務監査役という条文連鎖から説明し,意見陳述権の侵害とAの援用可能性を分けた(番号19~21)。
株主提案の議案②に監査役会同意が不要な点は,採点実感の指摘である(番号22)。
番号23・24は設問1の結論に依存する。
Q又はRを取締役と認める答案では,招集に係る取締役会の瑕疵と監査役との兼任禁止を省けない。
本答案は主位では当該条件を満たさないことを説明したうえ,別構成を採った場合の帰結を枠内にも付記している。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
本答案は採決順を採用する一例であり,議案と投票方法の理解によって異なる構成が可能である。
Pの428条についても,一人会社への利益帰属を重視する解釈を採り,会社名義の第三者取引と捉える反対構成を示している。
取消訴訟の管轄・執行等の周辺手続や,会社法以外の請求は,設問の中核との分量関係から詳述していない。
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1 同年度の問題
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3 評価項目の読み方
令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目
第7 出典及び確認状態
法務省の論文式試験問題集(民事系科目)の第2問(PDFの7頁~9頁。印字頁は2頁~4頁),出題趣旨の同問部分(5頁途中~7頁冒頭),採点実感の同問部分及び末尾の教育上の指摘(15頁~17頁)を参照している。
表の「実頁」を含め,頁はPDFファイルの先頭を1頁とした数え方である。
評価項目の重みと,公式が許容する範囲での解釈・答案構成は本稿独自の判断である。
答案で用いた会社法の条項は,衆議院の制定時本文(平成17年法律第86号)で文言を確認し,平成26年法律第90号の改正規定とe-Gov法令検索で取得できる最も古い版(平成29年4月1日施行版)とを対比して,答案が依拠する部分が試験当時も同じであったことを確認した。
同改正後の現行条文では,取締役との訴えにおける監査役の会社代表の規定は386条1項1号となり,360条3項の「委員会設置会社」の文言は「監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社」に改められている。
後年導入された機関類型を本問へ当てはめず,否決対象論の結論も後発判例を当時の必須知識として示していない。