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有価証券報告書の人的資本開示―2026年改正の追加項目・適用時期と女性活躍推進法との違い(AI作成)

第1 2026年改正で先に確認すること

有価証券報告書の人的資本開示は,SSBJ基準の法定適用を待って始まる制度ではない。
2026年2月20日公布の改正開示府令による人的資本開示の見直しは,2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用される。
したがって,SSBJ基準が自社にいつ適用されるかとは別に,人事部門と開示部門で改正後の様式を確認する必要がある。

この記事は,2026年11月3日時点で確認した金融庁の改正府令,公表資料及びパブリックコメント回答に基づき,追加項目と社内の確認事項を整理する。
企業ごとの人的資本の価値や,特定企業の開示の適法性を評価するものではない。

第2 従来の人的資本開示とのつながり

2023年の開示府令改正では,有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が設けられた。
人材育成方針及び社内環境整備方針については,人的資本に関する方針として開示し,これらに関する指標の内容,その指標による目標及び実績も記載する仕組みとされた。

2026年改正を確認するときも,追加された項目だけを抜き出して対応を終えることはできない。
従来の人材育成・社内環境整備の説明と,新たな企業戦略,人材戦略及び給与に関する説明が,読者に同じ会社の取組として理解できるかを点検することが実務上有用である。
この点検方法は,本記事の運用上の提案である。

第3 追加された開示項目

1 企業戦略と関連付けた人材戦略

金融庁の公表資料は,追加項目の一つとして,連結ベースの企業戦略と関連付けた人材戦略を挙げている。
改正後の第二号様式記載上の注意(58-2)a(有価証券報告書では第三号様式記載上の注意(39-2)により準用)は,連結会社の人材戦略を,連結会社の経営方針・経営戦略等に関連付けて具体的に記載することを求める。
連結財務諸表を作成していない場合には,ここでいう連結会社は提出会社を指す。

例えば,海外事業の拡大を掲げる会社であれば,必要とする人材の役割,育成又は採用の方針,従来の指標との対応を社内で説明できるようにする,という整理が考えられる。
これは説明の作り方の例であり,海外事業や特定の指標の採用が一律に義務付けられたという意味ではない。

2 従業員の給与等の決定に関する方針

給与等の決定に関する方針も追加項目である。
単に平均年間給与の数字を示すことと,給与等をどのような方針で決めるのかを説明することは,それぞれ役割が異なる。

給与等の決定に関する方針は,連結会社の従業員(事業活動の特性上,臨時従業員が果たす役割が重要である場合は臨時従業員を含む。)について具体的に記載するのが原則であるが,提出会社に係る方針に限ることもできる。
提出会社が子会社の経営管理を行うことを主たる業務とする会社である場合に限定するときは,提出会社だけでなく,提出会社及び最大人員会社に係る方針とする。
持株会社に当たるかは,提出会社の事業会社としての実態に即して実質的に判断するとされている(回答No.164)。
最大人員会社とは,外国の会社を除く連結子会社のうち,最近事業年度の従業員数(就業人員数)が最も多い会社をいう。
その従業員数が連結会社の従業員数の過半数を超えない場合には,次に従業員数が多い会社も含まれる。
最大人員会社については,平均年間給与及びその対前事業年度増減率等も,改正様式に従って会社ごとに区分して記載する。

3 平均年間給与の対前事業年度増減率

提出会社の従業員について,平均年間給与の対前事業年度増減率も開示項目に加えられた。
増減率の説明を用意するときは,その計算の基礎となる当年度・前年度の平均年間給与と,集計対象となる従業員の範囲を確認しておくことが有用である。

平均年間給与の変化を,そのまま同じ従業員全員の昇給率と読み替えることは適切でない。
人員構成や対象範囲の変化などがある場合には,数字と自社の説明が食い違わないかを点検する。
これは指標の誤解を避けるための本記事の提案であり,府令が特定の増減要因を全社一律に列挙するよう求めたという趣旨ではない。

第4 記載場所と適用時期

改正により,「第1 企業の概況」にあった「従業員の状況」は「第4 提出会社の状況」に移され,「5 従業員の状況等」の中に「⑴ 人材戦略に関する基本方針等」と「⑵ 従業員の状況」が置かれる。
前年の作業ファイルの位置をそのまま流用せず,改正後の様式で,どの情報をどの欄に記載するのかを確認する必要がある。

人的資本開示の見直しの適用は,2026年3月31日以後に終了する事業年度からである。
一方,SSBJ基準に従った法定開示の開始時期は,対象市場,平均時価総額等によって判断する。
両者の開始時期や対象範囲を一つの一覧だけで処理すると,人的資本開示の対応を遅らせるおそれがある。

第5 女性活躍推進法の情報公表との違い

有価証券報告書は投資者向けの法定開示書類であり,女性活躍推進法に基づく情報公表は,別の法令上の制度である。
男女間賃金差異など同じ名称に近い指標を扱う場合でも,対象となる事業主,公表項目,対象期間,算定対象及び公表場所を,それぞれの制度に従って確認する必要がある。

有価証券報告書に記載したことだけをもって,女性活躍推進法上の情報公表も全て完了したとは扱わない。
反対に,採用向けウェブサイトに数字を公表していることだけで,有価証券報告書の記載を省略できるとも判断しない。

女性活躍推進法の対象企業,算定方法及び公表方法は,令和8年4月施行の改正女性活躍推進法の記事で整理している。
個別制度の詳細は同記事と各制度の一次資料により確認されたい。

第6 人事部門と開示部門の確認手順

以下は,改正対応のための本記事の運用提案である。
第一に,適用する事業年度と有価証券報告書の様式を固定し,前年からの変更項目を洗い出す。
第二に,企業戦略,人材戦略,給与等の決定方針及び既存の人材育成・社内環境整備方針の関係を,説明責任者ごとに確認する。

第三に,各数値について,対象会社,対象従業員,対象期間,算定資料及び確認者を記録する。
第四に,有価証券報告書,女性活躍推進法の公表,統合報告書及び自社ウェブサイトを照合し,違いがある場合は,単位や対象範囲の違いで説明できるかを確認する。
第五に,最終記載案と算定根拠を対応させ,後日の訂正や照会に備えて保存する。

数値を無理に一致させることが目的ではない。
異なる制度に適合した数字を作成し,差がある理由を説明できる状態にすることが重要である。

第7 よくある質問

1 SSBJ基準の適用対象になるまで待てるか

人的資本開示の2026年改正については,SSBJ基準の適用時期とは別に判断する。
有価証券報告書等の提出者は,2026年3月31日以後に終了する事業年度について,改正後の様式と自社に適用される項目を確認する必要がある。

2 平均年間給与の増減率は賃上げ率と同じか

平均年間給与の対前事業年度増減率と,個々の従業員の賃上げ率は同じ概念ではない。
説明する際には,何を分母・分子とした数値なのかを明確にする。

3 金融庁の好事例をコピーすれば足りるか

金融庁の好事例集は,開示を検討する際の参考資料である。
その掲載自体が各記載に誤りがないことを保証するものではなく,抜粋には省略や体裁調整もあるため,利用する際は元の有価証券報告書と自社の事情を確認する。

第8 関連記事と出典

SSBJ基準の対象企業・適用時期等の総論は,SSBJ基準の記事を参照されたい。

本記事の制度説明の根拠は,金融庁の2026年2月20日公表資料,改正府令及びパブリックコメント回答である。
従来の人的資本開示は,2023年改正の概要及び改正府令を参照した。
好事例集の性質については,金融庁の好事例集の冒頭説明による。