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平成25年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―22項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成25年司法試験刑事系科目第2問の解答例と評価表である。
準現行犯逮捕の外形的要件,移動途中の差押え,実況見分調書の各部分の証拠能力を扱う。
評価項目は全22項目,重み5は5項目,重み合計は80であり,項目の抽出と重みは本記事独自の分析であって,法務省の公式配点ではない。

項目内容
対象問題平成25年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)
公式問題文法務省の問題PDFのPDF5~10頁,印刷頁2~7
答案の基準時平成25年の試験実施時。後年の法改正を当時の答案に置き換えない
資料の状態問題・出題趣旨・採点実感の本問部分を実読済み。範囲は第7に示す
主要事項甲乙の準現行犯逮捕,電話機の差押え,犯行再現と見通し確認
項目数と重みN=22,重み5=5,W=80
裁判例の位置付け公式資料が参照する現場移動・犯行再現の決定を踏まえた解釈。確認範囲は第7参照
答案分量3603字(改行除外,見出し・空白・末尾「以上」を含む)
試験後の法制度後年の改正内容を網羅する記事ではない
同年度への導線第6の1に法務省の平成25年司法試験問題一覧を示す
確認日令和8年11月2日

本答案は甲乙の逮捕及び電話機の差押えを適法とする。
乙の逮捕は,甲乙の具体的一体性を厳しく要求する解釈に基づくものであり,公式資料が適法の結論だけを指定したものではない。
別紙1のWの説明録取部分は証拠能力を欠き,写真は別途の要件を要する。
別紙2は,見通しの確認と見分対象の特定という使用目的に即して検討する。

中核は番号1の準現行犯の構造,5の甲乙の一体性,8の現場同視の理由,15のWの供述と犯行状況の関係,19の対象特定としての説明である。
第4に評価表,第5に答案全文と対応表・設問別解説を置く。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

出題の趣旨と採点実感の本問部分から,答案の記載により判定できる事項を抽出した。
番号は記事全体で連続し,出題の趣旨と採点実感の根拠を分けて示す。
「記載なし」は本問の関連範囲を読んだ結果であり,資料を未読であるという意味ではない。
表の短い文言は原文所在の手掛かりであり,評価項目の本文は本記事による要約・具体化である。

「通常」と「注意」は事項の性質であり,重要度の序列は重み1~5だけで示す。
注意事項にも個別に重みを付し,同じ誤りを別枠で二重に減点しない。
番号5は適法・違法の両構成を許容する。
番号6は乙の3号該当性を肯定する構成,10は途中地点の差押えを適法とする構成,17は写真の署名押印の扱いに応じた検討であり,不採用の構成を全答案へ累積要求しない。

読みやすい文字,筋道立った文章,手続全体の動的理解という採点実感の一般的指摘は,個別評価項目へ重複して加えていない。
逮捕の必要性,領置との区別及び別紙2の証明範囲についての短い留保は公式資料に明示のない補足として分け,独立の公式由来項目にはしていない。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

両資料に記載されている件数だけで重みを決めていない。
例えば番号6は採点実感の発展的指摘であり,肯定構成に応じて検討する事項として重み3とした。
重み合計から公式得点,合格可能性又は他の問題との難易度差を推測するものではない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

詳細は公式問題文を参照されたい。
Wは,男2の指示で男1がVを刺し,二人が共同で逃走する場面を目撃した。
Pらは約20分後,約800メートル離れた逃走方向で特徴の合う甲乙を発見し,甲には血痕があり,乙は自己の関与を説明した。

逮捕後,Pは抵抗・群衆・交通妨害のため甲を交番へ連行する途中,落下した電話機を差し押さえた。
乙の示した報酬メールの受信先は,後に甲の自宅のパソコンであったと判明する。
実況見分では,Wの説明に基づく警察官2名の犯行再現と,Wの指示した位置からP自身が確認した見通しの結果が一つの調書にまとめられた。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1逮捕①・②と甲の電話機の差押え準現行犯逮捕として検討。緊急逮捕での置換や電話機解析の適法性は独立の問いではない三処分の適法性
2不同意の実況見分調書及び別紙1・2立証趣旨に即してP・W・写真を区別。供述不能等の与件外事実を補わない各部分の証拠能力と必要な条件

第4 評価項目と重み

1 逮捕①・②

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1212条2項各号と犯罪・犯人の明白性を区別し,無令状逮捕の客観的保障から順序立てる5PDF13頁・第2問。犯罪と犯人の明白性の保障…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。同項の構造を理解していない…という記述に対応。
2甲の血痕を本件の特定の殺人事件と結び付け,3号の証跡と評価する4PDF13頁・第2問。なぜ,Vに対する…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。特定の犯罪との関係で…という記述に対応。
330分・800メートル・逃走方向・特徴一致の意味を明白性に接続する4PDF13頁・第2問。時間的・場所的近接性が…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。漫然と羅列…という記述に対応。
4直接覚知以外の通報・供述を判断資料にできる理由と,その客観的裏付けを説明する4PDF13頁・第2問。通報内容等を犯罪と犯人の明白性の判断資料とすること…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。直接覚知した事情に限定されるの…という記述に対応。
5甲乙の一体性を示す具体的事実を抽出し,甲の血痕を乙の3号該当性に使えるか解釈する5PDF13頁・第2問。この状況を,乙との関係でも…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。甲と乙との一体性を…という記述に対応。
63号該当性を肯定する構成では,明白性の対象を実行行為・共謀,共謀の意味に分けて論じる(適用条件:乙の3号該当性を肯定する構成)3PDF13頁・第2問。乙と甲との間の共犯関係自体が明白であると判断できるのかという記述に部分的に対応(共謀の意味の区別は記載なし)PDF30頁・2 採点実感。謀議行為を意味するのか,意思の連絡を意味するのか…という記述に対応。
7自白だけで共犯性を明白とせず,逮捕時の外形状況に加える一資料と位置付ける3PDF13頁・第2問。あくまで逮捕時の状況に加味して…という記述に対応。PDF30頁・2 採点実感。乙の自白等から…という記述に対応。

2 差押え

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
8身体着衣の捜索・差押えでは対象と侵害範囲が移動で変わらないことから,現場同視の理論を示す5PDF13頁・第2問。なぜに「同視するこ…という記述に対応。PDF31頁・2 採点実感。捜索の対象が甲の身体着衣…という記述に対応。
9抵抗・群衆・交通妨害,速やかな移動,最寄りの適所という具体的条件を当てはめる4PDF13頁・第2問。できる限り速やかに…という記述に対応。PDF31頁・2 採点実感。適当な最寄りの場所…という記述に対応。
10移動途中では電話機の露出で追加捜索が不要となり,その地点が差押えに適することを説明する(適用条件:移動途中の差押えを適法とする構成)4PDF14頁・第2問。同交番に向かう途中…という記述に対応。PDF31頁・2 採点実感。重ねて捜…という記述に対応。
11乙の具体的供述と送信メール提示から,甲の電話機と被疑事実の関連性を判断する4PDF14頁・第2問。関連性の有無を論じる…という記述に対応。PDF29頁・1 採点方針等。関連性を判断する基準…という記述に対応。
12後発のメール不存在・自宅PC宛てという判明を処分時の合理的判断に遡及させない3PDF14頁・第2問。遡って差押えの適法性…という記述に対応。PDF31頁・2 採点実感。差押え時の事情から判断…という記述に対応。
13【注意・差押え】記録内容の事前確認を常に必要とせず,多量の媒体を対象とした判例との事案の違いを保つ2記載なし(第2問全体を確認)PDF32頁・2 採点実感。同判例の法理がそのまま該当する場合ではない…という記述に対応。

3 実況見分調書

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
14P自身の見分結果につき検証調書に準じ321条3項の真正作成供述を要する4PDF14頁・第2問。実況見分調書としての性質…という記述に対応。PDF32頁・2 採点実感。検証調書に準じる書面…という記述に対応。
15犯行状況そのものの立証であることから,Wの説明録取部分に321条1項3号及び署名押印の問題を適用する5PDF14頁・第2問。Wの供述内容の真実性…という記述に対応。PDF32頁・2 採点実感。「犯行状況」という立証…という記述に対応。
16再現写真の機械的記録とWの記憶に基づく伝聞性を分け,写真の伝聞例外要件を検討する4PDF14頁・第2問。記録過程が機械的操作…という記述に対応。PDF32頁・2 採点実感。「非伝聞証拠」であるとして…という記述に対応。
17W本人でなく警察官が実演した点から,供述どおりに再現されたかの正確性を検討する(適用条件:写真の署名押印を不要とする構成又は必要性を留保する構成)3PDF14頁・第2問。供述どおりの再現になっていること…という記述に対応。記載なし(第2問全体を確認)
18Pが自ら確認した距離・遮蔽物・照明・見通しと写真を,場所の状態の検証結果として扱う4PDF14頁・第2問。具体的にいかなる事実が要証事実…という記述に対応。PDF32頁・2 採点実感。場所の状態を五官…という記述に対応。
19Wの説明を見分対象を特定する動機・手段と位置付け,内容の真実性を用いない理由を示す5PDF14頁・第2問。真実性が問題とならないと考えるのであればその理由…という記述に対応。PDF32頁・2 採点実感。対象を特定するに…という記述に対応。

4 設問ごとの注意事項

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20【注意・別紙1】立証趣旨の「犯行状況」を「犯行再現状況」に置き換えて判断しない2記載なし(第2問全体を確認)PDF32頁・2 採点実感。「犯行再現状況」と混同…という記述に対応。
21【注意・逮捕②】準現行犯逮捕の適否という指定を守り,緊急逮捕や現行犯逮捕で救済しない2記載なし(第2問全体を確認)PDF31頁・2 採点実感。緊急逮捕を論じる必要はない…という記述に対応。
22【注意・差押え】明白な「逮捕する場合」の要件に過大な分量を割かない1記載なし(第2問全体を確認)PDF31頁・2 採点実感。この点について相当の分量…という記述に対応。

5 重みの分布

重み1は1項目,重み2は3項目,重み3は4項目,重み4は9項目,重み5は5項目である。
合計22項目,重み合計80となる。
重み5の番号1・5・8・15・19は,各処分又は証拠の判断構造を分ける点にある。
重み4の項目は,その構造の下で結論を支える主要な規範・具体的評価に当たる。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

平成25年の試験実施時を基準とする一つの解答例である。
乙については一体性を厳しく要求した上で3号該当性を認める構成を採る。
写真については第三者再現の正確性を別途確認する限りで署名又は押印を不要とする見解を示しており,判例が本件を直接判断したという意味ではない。
答案は3603字(改行除外)であり,以下の見出し・段落を含め5000字以内である。

2 答案

第1 設問1

1 逮捕①

(1)刑訴法212条2項は,各号の外形的徴表を備え,かつ,罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者を現行犯人とみなす。
無令状逮捕が許されるのは,特定の犯罪及び犯人が明白で,誤認逮捕の危険が小さいからである。
各号該当性を独立に判断し,さらに,逮捕時に得られた事情から犯罪及び犯人の明白性を検討すべきである。

(2)甲の衣服及び靴には顕著な血痕がある。
Vは刃物で胸部を2回刺されて死亡しており,刺突者の衣服等には血液の付着が予想される。
甲は,約20分後に逃走方向の北西で発見され,身長,体格,年齢層,服装及び髪形もWの述べた男1の特徴と合致する。
したがって,単なる由来不明の汚れではなく,本件殺人の顕著な証跡と評価でき,3号に該当する。

(3)準現行犯は犯行から一定時間経過した後の逮捕を予定しているから,明白性の判断資料を逮捕者の直接覚知した事情だけに限定すべきではない。
ただし,他人の供述だけで外形的徴表を代替してはならず,その内容を逮捕時の客観的状況と照合する必要がある。

 犯行から逮捕までは約30分,現場から発見地点までは約800メートルである。
逃走者がその間に移動し得る範囲で,発見地点も通報された逃走方向にあり,時間と距離は本件犯人であることと整合する。
甲乙が行動を共にし,二人それぞれの特徴が通報内容と合致することは,無関係の別人を誤認する可能性を小さくする。
Pは殺人事件の発生とWの目撃内容等の手配情報を受け,血痕や二人の外観を自ら確認している。
乙の依頼・誘い出し・指示・刺突に関する供述も,これらの外形的事実と整合する一資料として加味できる。
以上を総合すれば,甲が本件殺人を行い終わってから間がないことは明白である。

 重大犯罪を実行して逃走しており,逮捕の必要性も認められる。
逮捕①は212条2項3号,213条により適法である。

2 逮捕②

(1)乙本人の身体・被服には血痕がない。
しかし,3号の趣旨は,逮捕時の外形的状況によって特定の犯罪との結び付きを客観的に担保することにある。
共同して犯行に及び,その直後も行動を共にすることが外形から明白な者については,一方の身体・被服に残る証跡を,その一体的行動の下で他方についても3号の徴表として評価できると解する。
共犯の疑い又は単なる同行だけで適用するものではない。

 Wは,男2の「やれ。」という指示に男1が応じてVを刺し,男2の「逃げるぞ。」という言葉で二人が一緒に逃げたことを目撃している。
甲乙はその逃走方向で行動を共にし,二人の特徴もそれぞれ一致する。
役割を分担した刺突と共同の逃走が一続きの外形として把握され,甲の血痕もその共同犯行の証跡と評価できるから,乙についても3号該当性を認める。

(2)乙の犯人性については,甲の実行行為だけでなく,乙との意思連絡及び共同実行の関係まで明白でなければならない。
ここで必要なのは,2日前の謀議だけを独立の犯罪行為として捉えることではなく,犯行時の意思連絡に基づく共同の殺人が終了して間がないことである。

 本件では,指示,これに応じた刺突及び共同逃走というWの通報内容が,直後の二人の同行,特徴一致及び甲の血痕によって裏付けられる。
乙の自白も,これらと整合する限りで加味するのであり,自白があるから共謀が明白とするものではない。
甲について述べた時間的・場所的接着性も併せれば,乙の共同関与及び犯罪終了直後であることは明白である。
逃走等を防ぐ必要もあり,逮捕②も適法である。

3 携帯電話機の差押え

(1)甲は落下した電話機を直ちに拾おうとしており,その占有は継続している。
遺留した物又は任意に提出した物ではないから,221条の領置ではなく,逮捕①に伴う無令状差押えとして220条1項2号・3項によることになる。

(2)同号の「逮捕の現場」は,逮捕の機会に証拠が存在する蓋然性の高い範囲で処分を許し,無令状捜索・差押えの範囲を限定する趣旨である。
しかし,身体着衣を対象とするときは,被逮捕者を必要な限度で移動させても,処分対象は同じ身体・所持品であり,捜索領域やプライバシー侵害の範囲は拡大しない。
現場での即時実施が不適当な場合,できる限り速やかに最寄りの適する場所へ移動して行う処分は,逮捕現場での処分と同視できる。
拘束が続けば場所を問わないという意味ではない。

 甲の抵抗,酔った学生らの包囲及び交通妨害のため,逮捕地点で身体捜索を続けることは不適当であった。
300メートル先の交番を選び,その旨を告げて移動したことは,適所を求める必要最小限の措置といえる。

 実際の差押えは,逮捕から約10分後,約200メートル移動した途中である。
予定した交番に未到達でも,甲のポケットから電話機が落ちて露出したため,身体着衣をさらに捜索することなく,その物だけを確保できる状況に変わった。
身体捜索を行うには不適当な路上でも,この差押えを直ちに行うには適するから,その地点を最寄りの適所と評価できる。
距離が短いことだけでなく,処分の態様がこのように変わった点を踏まえれば,現場同視の根拠と限界を満たす。

(3)差押対象は証拠物と思料される物であることを要する(222条1項,99条1項)。
関連性は差押時の具体的事情に基づいて合理的に判断する。
乙は,当日朝に報酬100万円を提示するメールを甲へ送ったと述べ,送信メールを提示している。
甲の所持する電話機に対応するメールがあると考える具体的根拠があり,共謀を裏付ける証拠物と思料できる。
このように関連性を判断できる場合,内容を先に確認しなければ差し押さえられないとはいえない。

 後に電話機内のメールが見つからず,実際には自宅のパソコン宛てであったと判明しても,処分時の合理的判断は遡って失われない。
以上から,差押えは適法である。

第2 設問2

1 調書の構造

 公判外供述を内容の真実性の証明に用いる場合,知覚・記憶・叙述を反対尋問で吟味できないから,原則として証拠能力を欠く(320条1項)。
本件は不同意であり,326条による採用もできない。
要証事実との関係で,Pの見分結果,Wの説明及び写真を分けて検討する。

 実況見分は,検証と同じく五官の作用によって対象の状態を認識・記録するものである。
P自身の見分結果には321条3項を準用し,Pが公判期日に証人として尋問を受け,真正に作成したことを供述することを要する。
ただし,これだけでWの供述の真実性まで担保されるものではない。

2 別紙1

(1)立証対象は,再現が行われたこと自体ではなく,現実の犯行状況である。
Wの説明及びそれに基づく再現は,Wが過去に知覚した犯行の真実性を問題とするから,Pの記録に関する321条3項に加え,Wの原供述について同条1項3号を検討する。

 説明録取部分にはWの署名又は押印がなく,同項柱書の要件を欠く。
Pの押印では補えないから,この部分に証拠能力はない。

(2)写真もWの記憶・説明を基礎にする以上,単に機械的撮影だから非伝聞とはいえない。
他方,正確に再現された状態を撮影する段階には,文章に録取する場合のような叙述の変容の危険がなく,その正確性を担保する署名又は押印は不要と解する。

 もっとも,本件の実演者はW本人ではなく警察官2名であり,Wの説明を演技に移す段階の誤りは,機械的撮影によって除去されない。
本件ではWが現場で説明し,再現位置を指示しているが,それだけで細部まで供述どおり再現されたと確定してはならない。
署名不要の扱いを及ぼすとしても,Pの真正作成に関する尋問等において,Wの説明と実演の一致を具体的に確認できることが前提となる。

 さらに,Wの原供述について,死亡等による供述不能,犯罪事実の存否の証明に不可欠であること,特に信用すべき情況の下でされたことという321条1項3号の要件が必要である。
与件からはこれらの充足を認められず,写真に無条件の証拠能力を認めることはできない。

3 別紙2

 要証事実は,Wの指示した位置から犯行現場を視認できたという場所の見通し状況である。
Pは自らその位置に立ち,約8メートル先まで遮蔽物がなく,街灯により再現役の警察官の様子を十分見られることを確認した。
Pの説明及びその位置からの写真は,場所の状態を直接認識した検証結果に準じるから,321条3項の要件で証拠能力を認め得る。

 この立証におけるWの説明は,Pが見分対象を特定するに至った動機・手段を示すものである。
見通し自体はPが独立に確認しており,Wの説明内容の真実性に依存しないから,その説明について同条1項3号を重ねて要求しない。
ただし,これはWが犯行時に実際にその位置にいたことや,現実に犯行を目撃したことまで,署名又は押印のない説明録取部分で証明できるという意味ではない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案第1の1は番号1~4,第1の2は5~7・21,第1の3は8~13・22に対応する。
第2の1は14,第2の2は15~17・20,第2の3は18・19に対応する。
中核の番号1は第1の1(1),5は第1の2(1),8は第1の3(2),15は第2の2(1),19は第2の3で論じている。
重み3以下の通常項目も,番号7は第1の2(2),12は第1の3(3)で扱っている。

第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
15212条2項各号と犯罪・犯人の明白性を区別し,無令状逮捕の客観的保障から順序立てる第1の1(1)・2
24甲の血痕を本件の特定の殺人事件と結び付け,3号の証跡と評価する第1の1(2)
3430分・800メートル・逃走方向・特徴一致の意味を明白性に接続する第1の1(3)
44直接覚知以外の通報・供述を判断資料にできる理由と,その客観的裏付けを説明する第1の1(3)
55甲乙の一体性を示す具体的事実を抽出し,甲の血痕を乙の3号該当性に使えるか解釈する第1の2(1)。一体性を条件として肯定する自説
633号該当性を肯定する構成では,明白性の対象を実行行為・共謀,共謀の意味に分けて論じる(適用条件:乙の3号該当性を肯定する構成)第1の2(2)。肯定構成を採るため適用
85身体着衣の捜索・差押えでは対象と侵害範囲が移動で変わらないことから,現場同視の理論を示す第1の3(2)
94抵抗・群衆・交通妨害,速やかな移動,最寄りの適所という具体的条件を当てはめる第1の3(2)
104移動途中では電話機の露出で追加捜索が不要となり,その地点が差押えに適することを説明する(適用条件:移動途中の差押えを適法とする構成)第1の3(2)。露出後の差押えの適所性
114乙の具体的供述と送信メール提示から,甲の電話機と被疑事実の関連性を判断する第1の3(3)
144P自身の見分結果につき検証調書に準じ321条3項の真正作成供述を要する第2の1
155犯行状況そのものの立証であることから,Wの説明録取部分に321条1項3号及び署名押印の問題を適用する第2の2(1)
164再現写真の機械的記録とWの記憶に基づく伝聞性を分け,写真の伝聞例外要件を検討する第2の2(2)
173W本人でなく警察官が実演した点から,供述どおりに再現されたかの正確性を検討する(適用条件:写真の署名押印を不要とする構成又は必要性を留保する構成)第2の2(2)。第三者再現の一致確認を留保する自説
184Pが自ら確認した距離・遮蔽物・照明・見通しと写真を,場所の状態の検証結果として扱う第2の3
195Wの説明を見分対象を特定する動機・手段と位置付け,内容の真実性を用いない理由を示す第2の3

(2) 設問1

公式資料は,準現行犯の各号該当性と明白性を分け,特定の犯罪との結び付きを事実から説明することを求める。
本答案は甲の血痕を刺殺という犯行態様へ結び付け,逃走方向・時間・距離・二人の特徴一致が誤認の危険を低下させる理由を示した(番号1~4)。
他人の通報や供述を利用できることと,それだけで各号要件を置換できることは別である。

乙の逮捕について,公式資料は適法・違法の結論自体より,甲乙の一体性を示す具体的事実と条文の趣旨を踏まえた論述を求めている。
本答案の肯定構成は,一方の血痕を他方に当然に転用するものではなく,指示・応答・共同逃走と特徴一致から一体的行動が外形的に明白であることを条件とする(番号5・7)。
3号を本人の身体・被服に厳格に限定する否定構成も考えられるが,一体性に基づく反対構成への応答が必要となる。
番号6については,2日前の謀議だけでなく,犯行時の意思連絡に基づく共同実行とその終了を捉えた。
これは本答案が採用した解釈であり,公式資料が一義的な解答を示したものではない。

差押えでは,公式資料は身体着衣という対象と現場同視の根拠を結び付け,判例との相違である移動途中の処分を検討するよう求める。
本答案は対象・侵害範囲の不拡大を理由とし,電話機の露出で追加の身体捜索が不要となったため,途中地点が差押えに適することを説明する(番号8~10)。
これは単なる距離比較ではない。

関連性は処分時の具体的根拠から判断し,後のメール不存在で遡って違法にはならない(番号11・12)。
採点実感は,多量のフロッピーディスクについての決定を,関連性が既に具体的に判断できる本件へそのまま適用しないよう指摘している(番号13)。
本答案も,電子媒体なら常に内容を先に確認するという規則にはしていない。
逮捕必要性と領置との区別は,公式資料に記載のない補足である。

(3) 設問2

公式資料は,調書の名称だけでなく,要証事実との関係でPの説明,Wの説明及び写真の性質を分析することを求める。
本答案は,Pの独立の見分結果に321条3項を用い,別紙1では犯行状況そのものの立証にWの原供述の真実性が必要であることを示した(番号14~16・20)。

写真の機械的記録は,Wの知覚・記憶の誤りや,説明を警察官の演技へ移す際の誤りまで消すものではない。
出題趣旨は,第三者が供述どおり再現したことの担保も問題となり得るとする(番号17)。
本答案は再現の一致を具体的に確認する限りで署名不要論を及ぼす見解であり,この確認方法を最高裁が直接定めたものとは扱っていない。
署名押印を要求すべきだとする別の理解もあり得るため,採用した構成とその理由を明示する必要がある。

別紙2では,見通しはP自身が確認した場所の状態であり,Wの説明は対象特定の動機・手段として用いられる(番号18・19)。
同じWの「私が犯行を目撃した時に立っていた場所はここです。」という説明でも,Wが犯行時に現実にその位置にいたことの証明に用いるなら,別の伝聞問題になる。
この末尾の留保は本記事による証明範囲の補足であり,公式資料に別の必答事項として明示されたものではない。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

乙の3号該当性を肯定する解釈は,条文の外形的保障を弱めない限定が必要である。
単なる同行や共犯の疑いだけでは足りないという条件を落とすと,本答案の結論を維持できない。
写真の再現一致についても,問題文の事実だけで確認済みとはせず,採用のための留保を残した。
緊急逮捕による置換,電話機解析の独立した適法性,違法収集証拠排除の派生問題は本問の独立した問いではない。

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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

① 平成25年司法試験問題・刑事系科目:PDF5~10頁の第2問と付属資料。
② 平成25年司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDF12頁の第2問開始から14頁の次科目直前まで。
③ 平成25年司法試験の採点実感等に関する意見:PDF29~33頁の刑事系科目第2問。
採点方針,設問別指摘,答案評価及び末尾の教育上の指摘を含めて確認した。

2 法令

法務省・刑事訴訟法の日本語原文(平成23年法律第74号対応版)の99条,197条,212・213・217・218・220~222条,320~322条及び326条を確認した。
あわせて,e-Gov法令検索の刑事訴訟法の改正履歴で表示される最も古い版(平成28年法律第54号による平成28年12月1日施行時点)と照合し,上記各条の文言が同一であることを確認した。
平成25年の試験実施日時点の版はe-Gov法令検索で表示されないため,その間の改正の有無を版ごとには照合していない。
令和8年11月2日時点の現行法でも,212条,213条,220条,221条,320条,321条3項及び326条の文言は同じであり,321条1項の柱書と3号の要件も実質的に変わっていない。
未施行の令和7年法律第39号による改正後は,320条,321条及び326条に電磁的記録の定めが加わり,321条1項には署名押印に代わる措置も加わる。
本記事は現在の捜査・公判実務について網羅的な現行法案内をするものではない。

3 裁判例

出題趣旨が挙げる最高裁平成8年1月29日決定(平成5年(あ)第518号,刑集50巻1号1頁)は現場から移動した後の身体等の捜索・差押えに,最高裁平成17年9月27日決定(平成17年(あ)第684号,刑集59巻7号753頁)は犯行再現を記録した調書の証拠能力に関する参照資料である。
採点実感が挙げる最高裁平成10年5月1日決定(平成10年(し)第45号,刑集52巻4号275頁)は,多量の記録媒体と本問との事案の違いを考えるために紹介されている。
3件の決定の書誌及び判示は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索に掲載された全文で確認した。
いずれも本問と事案を異にし,本問への適用と追加の理由付けは本記事の推論として区別する。

4 確認状態

問題と両公式資料の対象範囲を読み,評価項目の原文所在と答案への対応を照合した。
問題の付属資料は図の頁を含めて確認している。
公式資料に直接記載された要求,記事独自の分析,採用した許容分岐及び原典確認の限界は上記のとおり区別する。
本記事は法務省の模範解答又は公式採点表ではなく,法的内容に誤りがないことや採点者が同じ評価をすることを保証するものではない。