メインコンテンツへスキップ
       

平成27年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した32項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は平成27年司法試験の民事系科目第1問(民法)を対象とし,公式の出題の趣旨・採点実感から32の評価項目を整理したものである。
評価項目,重み及び答案は本記事の分析であり,法務省の公式配点・公式解答ではない。

項目内容
対象問題平成27年司法試験・民事系科目第1問(民法)
公式問題文法務省・民事系問題PDFのPDF1頁~5頁
答案の基準時平成27年の出題当時。主な事実の発生時期は平成23年~24年。後の債権法改正等を遡及適用しない。
資料の状態問題(PDF1頁~5頁),出題の趣旨(全科目のPDFのうち3頁~7頁の第1問部分),採点実感(民事系科目のPDFのうち第1問の1頁~14頁)は法務省掲載のPDFで読んだ。
主要事項加工・付合・即時取得と償金,立木の公示,留置権,監督者責任,被害者側の過失
項目数と重み全32項目,重み5は11項目,重み合計130。独自の重みであり得点換算ではない。
答案の分量枠内答案は見出し・改行込み3730字,改行を除いて3636字。全小問合計5000字以内。
主要裁判例最高裁第三小法廷昭和33年7月29日判決(昭和32年(オ)第42号,民集12巻12号1879頁),最高裁大法廷昭和39年6月24日判決(昭和36年(オ)第412号,民集18巻5号854頁),最高裁第一小法廷昭和41年6月9日判決(昭和39年(オ)第550号,民集20巻5号1011頁),最高裁第三小法廷昭和42年6月27日判決(昭和40年(オ)第1056号,民集21巻6号1507頁),最高裁第二小法廷昭和49年3月22日判決(昭和47年(オ)第1067号,民集28巻2号347頁),最高裁第一小法廷昭和51年3月25日判決(昭和47年(オ)第457号,民集30巻2号160頁)
確認日令和8年10月31日。判例・条文の確認範囲は第7参照。

答案の結論は,材木①の返還を認め,材木②については付合時のDの間接占有を踏まえる価値即時取得構成により償金請求を否定する。
丸太③はFの確定取得によるEの所有権喪失を理由に返還請求を否定し,丸太④は本答案が採る牽連性を限定する見解から留置を否定する。
LのCに対する709条請求を認めつつ,Kの過失を被害者側の過失として減額に用いる。
これらは許容される構成の一例である。

第4で評価項目と重みを確認し,第5の答案と対応表を併せて読める。
重み5は,番号4・5・6・9・10・13・17・22・24・25・28であり,結論を分ける要件,制度間の接続及び具体的事情の評価を中心としている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一項目につき一つの判定対象とし,公式資料の検討事項を答案の評価に用いられる形に整理した。
頁は全科目又は全民事系を収めたPDFの通し頁である。
「直接」は当該事項を明示する記述,「間接」は関連記述から本記事が導くものを表す。
明示的な条文,補充説明,誤答への注意は,その出典ごとに分けて示す。

適用条件がある行は,その構成を採ったときに評価する。
Dの現存利益消滅構成と価値即時取得構成,Gの対抗要件の抗弁と所有権喪失の抗弁を,全ての答案へ累積要求しない。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は主ルートを成立させる決定的な構成・規範・事実評価,4は重要な要件又は規範と効果の接続,3は補充的な理由・限定・分岐,2は周辺的な注意又は記述上の改善,1は影響の小さい補足を表す。
重みは,項目の件数ではなく,本問での役割を基準とする。
注意事項も,避ける誤りの影響に応じて評価する。

重みと必須性は別であり,重み5でも適用条件を付けた行がある。
同じ誤りを注意事項と実体項目で二重に減点しない。
合格率から項目数・配点・合格可能性を逆算するものでもない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

詳しい事実と設問は法務省の問題PDFを参照されたい。
設問1では,Aの所有権留保付き丸太をBが製材してCに売り,Cが一部をDの建物に用いた。
設問2では,Eが立木の東側半分に明認方法を施した後,Fが土地と立木を取得して全て伐採し,Gに寄託した。
設問3では,Cの子Hが道路に置いた角材でKの自転車が転倒し,同乗する3歳のLが負傷した。

設問時点・事情法的な接続
14月25日C受領,7月25日までに工事完成・代金支払,8月5日A告知,8月10日鍵返却加工・C即時取得と,付合・Dの間接占有を区別する
21月17日F土地取得登記,1月25日標示発見,その後に伐採,2月2日寄託,2月9日保管料弁済期立木時の対抗要件と,留置権の被担保債権・占有開始時を分ける
3Hの従前の危険行為・学校からの呼出し,暗い道路,Kの無灯火・片手運転Cの具体的監督義務違反と,賠償額の減額を別々に判断する

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1⑴Aの材木①返還とCの反論加工後の材木を対象とするAの所有権とCの即時取得の成否
1⑵Aの材木②価額償還とDの反論請求内容・額も検討付合から償金,Dの抗弁へ接続
2⑴GがEの丸太③所有権を争う立木法の登記なし抗弁の根拠と主張立証事実・理由
2⑵Gの丸太④返還拒絶E所有・G占有を認める。契約保管料④部分民事留置権を採用要件ごとに判断
3⑴LのCに対する請求Hの親であるC自身の責任責任能力と監督義務違反・因果関係
3⑵Cの賠償額に関する反論幼児用シート利用は法的に問題がないKの過失をL側として考慮できるか

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1代金未払・所有権留保とAの返還請求。4直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF2頁・3⑴。
2加工の原則・例外と増価5万円の評価。4直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF2頁・3⑴。
3Cの即時取得の要件と推定。4即時取得はPDF4頁。推定の根拠条文の明示は記載なし。直接:PDF2頁・3⑴。
4Cの無過失を否定する具体的事情。5直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF2頁・3⑴。

2 設問1⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
5不動産付合の意義と材木②の所有権喪失。5直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。
6248条・703条の接続,受益・損失・原因。5直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。
7200万円と150万円の比較・請求内容。4直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。
8【適用条件:現存利益消滅構成を採る場合】現存利益消滅構成における善意・支払時期。3直接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。
9【適用条件:価値即時取得構成を採る場合】価値即時取得と償金請求拒絶の関係。5直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。
10【適用条件:価値即時取得構成を採る場合】Dの間接占有と付合時の善意無過失。5直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF3頁・3⑴。

3 設問2⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
11立木のAへの帰属とEへの譲渡。3直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF5頁・3⑵。
12立木の所有権が伐採後の丸太に及ぶこと。4直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF5頁~6頁・3⑵。
13Fの登記による確定取得とEの所有権喪失。5直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF6頁・3⑵。
14主張立証事実であるAF売買・土地移転登記。4直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF8頁・3⑵。
15【適用条件:対抗要件の抗弁を採る場合】対抗要件の抗弁による場合のGの第三者性・Fの地位援用。3直接:PDF5頁・民事系第1問。直接:PDF6頁・3⑵。

4 設問2⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16民事留置権・契約上の保管料④部分・弁済期。4直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF7頁・3⑵。
17Fの債務・Eの所有という不一致と制度趣旨からの要件解釈。5直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF7頁・3⑵。
18【適用条件:牽連性等を肯定して留置権の残る要件を検討する場合】占有開始の不法行為性とG自身の事情。4直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF7頁・3⑵。
19主張立証責任,肯定時の全要件・否定時の検討範囲。3直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF7頁・3⑵。

5 設問3⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20Hの責任能力と具体的事実。4直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF9頁~10頁・3⑶。15歳・中3の事実と責任能力の定義。
21714条の補充的責任と適用除外。4直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF9頁・3⑶。
22監督義務違反に基づく709条責任の規範。5直接:PDF6頁・民事系第1問。直接:PDF10頁・3⑶。
23親権者の監護教育義務の根拠。3間接:PDF6頁~7頁の親・監督義務者の責任。820条番号は記載なし。直接:PDF10頁・3⑶。
24Cの具体的な監督義務違反。5直接:PDF6頁~7頁・民事系第1問。直接:PDF10頁・3⑶。
25監督義務違反とLの損害の相当因果関係。5直接:PDF6頁~7頁・民事系第1問。直接:PDF10頁・3⑶。

6 設問3⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
26L自身の過失不存在と事理弁識能力の区別。4L自身の過失の問題はPDF7頁。事理弁識能力・責任能力の区別の明示は記載なし。直接:PDF11頁・3⑶。
27Kの無灯火・片手運転と事故原因。4直接:PDF7頁・民事系第1問。直接:PDF12頁・3⑶。
28被害者側の過失の判断基準とKLの一体性。5直接:PDF7頁・民事系第1問。直接:PDF11頁・3⑶。
29【適用条件:被害者側の過失法理を採る場合】被害者側の過失法理の公平・求償循環の趣旨。3間接:PDF7頁の被害者側の過失。求償循環の趣旨は記載なし。直接:PDF11頁・3⑶。
30722条2項による効果と減額,418条との区別。3間接:PDF7頁の過失相殺。722条2項・418条の番号の明示は記載なし。直接:PDF11頁・3⑶。

7 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
31制度間の法律効果を接続し,請求・抗弁の筋道を示す。4間接:PDF4頁・民事系第1問。直接:PDF1頁・2採点方針。
32全6小問の分量・構成を保ち,後半まで読みやすく論述する。2間接:PDF4頁の論旨展開。後半の分量への注意は記載なし。直接:PDF13頁・3⑷全体補足。

8 重みの分布

重み1は0件,2は1件,3は7件,4は13件,5は11件である。
総項目数は32,重み合計は130となる。
条件付きの行を含む表の集計であり,全てを一つの答案の必須得点へ合算しない。

重み5の事項は,Cの確認義務,付合と償金,Dの価値即時取得・間接占有,Fの確定取得とEの喪失,第三者所有物の留置,Cの709条責任と具体的義務違反・因果関係,被害者側の過失の一体性である。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

答案は平成27年の出題当時の民法を前提とする答案例であり,公式解答そのものではない。
民事系の論文式試験の実施日は平成27年5月14日である。
判例の紹介内容は,公式資料及び第7の3の判決全文で確認した範囲に限る。

平成29年法律第44号により,令和2年4月1日から86条3項の削除,418条及び722条1項の改正等がされた。
答案で用いた86条1項及び722条2項の文言は変わらず,418条は本問で適用しない条文として触れるにとどまる。
令和7年法律第56号(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律)も,答案の前提としていない。

答案の「第1~第3」は設問1~3を表し,各「1・2」は小問⑴・⑵である。
Dについて価値即時取得構成を,丸太④については制度趣旨から牽連性を限定する見解を採る。
後者を確立した判例の結論として示すものではない。
字数は本文の見出し・記号・句読点と末尾の「以上」を含み,改行込み3730字である。

2 答案

平成27年出題当時の民法による。
以下,条文は当時の民法を指す。

第1 設問1

1 小問⑴

 Aは,材木①の所有権に基づき,占有者Cに引渡しを請求する。
AB間では代金完済まで丸太の所有権を留保しており,Bは代金を支払っていないため,丸太はAの所有に属する。

 製材は他人の動産への工作である加工に当たる。
加工物は原則として材料所有者に帰属し,工作による価格が材料価格を著しく超える場合に限り加工者に帰属する(民法246条1項)。
1本15万円の丸太から20万円の材木ができても,工作による増価は5万円であり,材料価格を著しく超えない。
したがって,加工後の材木①もAに帰属する。

 Cは即時取得(192条)を反論する。
材木は動産であり,Cは取引行為であるBC間の売買に基づき,4月25日に平穏,公然と占有を取得した。
善意は186条1項,無過失は188条による権利の適法性の推定から認められ得る。
しかしCは,Aが通常所有権を留保することと,最近のBの無断転売をめぐる紛争を知っていた。
Bが受注を渋ったのに強く求め,完済したと思っただけで確認しなかった以上,Bの所有権を信じるにつき過失があり,推定は覆る。
即時取得は成立せず,Aの請求は認められる。

2 小問⑵

 材木②も同じ理由でAに帰属していたが,乙建物の柱として組み込まれ,独立性を失って建物の構成部分となった。
不動産の構成部分として一体化する付合に当たり,242条本文によりDが所有権を取得し,Aはこれを失う。

 Aは248条,703条に基づき償金を請求する。
Dには柱の価値に相当する受益,Aには材木②の所有権喪失という損失があり,両者は同じ付合によって生じた。
付合による所有権取得だけで価値移転の法律上の原因も当然に認められるわけではない。

 額について,Aの留保所有権が担保する丸太10本の代金は150万円であるため,実質的損失を150万円と捉える余地がある。
しかし246条により加工後もAが所有したのは,1本20万円の材木そのものであり,その10本を失ったのである。
AB間の代金債権額と失った所有物の価値を区別し,ここでは200万円を基礎とする。

 Dは,Cに工事代金600万円を支払済みであり,善意の間に支払った分は現存利益がないと反論する。
もっとも,他人の動産の代金を無権利者に支払っただけで所有者の返還請求を排斥できないこととの均衡上,支払だけで償金請求を免れるとするのは適切でない。
むしろ,材木②の価値を即時取得したと評価できる場合には,Dの受益に法律上の原因があると解する。

 CD間の請負も取引行為に当たる。
Dは建物の鍵1本をCに渡して退去したが,所有者としてCに工事のための占有をさせており,Cを介する間接占有まで失ったわけではない。
したがって,材木②が付合した時にDへ引き渡されたのと同視でき,善意無過失も付合時を基準に判断する。
8月10日の鍵返却時ではない。

 DはCが在庫材木を使う旨の説明を受けており,付合時にはAの権利を知らず,無権利を疑わせる事情も示されていない。
Aの告知は工事完成・代金支払後の8月5日であって,付合時の善意無過失を覆さない。
Dは材木②の価値を即時取得したと評価でき,上記構成によればAの償金請求を拒める。

第2 設問2

1 小問⑴

 Gは,対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を主張する。
立木は土地の定着物(86条1項)ないし土地への付合物(242条)として,もともとAに帰属した。
EはAとの売買でその所有権を取得し,立木が切り出されても,立木の所有権は丸太③に及ぶのが出発点である。

 もっとも,立木の独立した所有権の譲渡について,立木法上の登記によらない本問では,明認方法が対抗要件となる。
他方,土地とともに立木を取得する者は,土地の所有権移転登記により対抗要件を備える。
丸太③に対応する西側の立木にはEの明認方法がなく,Fは1月17日に甲土地及び立木を買い受け,土地の所有権移転登記を得た。
これによりFがその立木の所有権を確定的に取得し,Eは所有権を失う。
切り出された丸太③もFに帰属するため,EのGに対する所有権に基づく返還請求は認められない。

 Gが主張・立証すべき中心的事実は,AF間の甲土地及び本件立木の売買と,それに基づくAからFへの甲土地の所有権移転登記である。
請求対象の丸太③が当該立木から切り出されたものであることも,これらの効果を当該丸太に結び付ける。
伐採後の丸太の動産譲渡に178条を適用する問題ではない。

 G自身が177条の第三者であると主張する必要もない。
単に「EはGに対抗できない」とする対抗要件の抗弁とは区別される。
Fは購入前の訪問時にはEの標示を見る機会がなく,契約及び登記の時点でEへの売却を知らなかったから,背信的悪意者にも当たらない。

2 小問⑵

 Gの根拠は,Fに対する保管料債権を担保する民事留置権(295条)である。
年金暮らしのGについて商事留置権を論じる必要はない。
E所有の丸太④はGにとって「他人の物」であり,Gはこれを占有する。
契約上の保管料は2月9日に弁済期が到来した。
被担保債権はそのうち丸太④に対応する額であり,GのEに対する必要費償還請求権ではない。

 問題は,保管料の債務者Fと所有者Eが異なる場合の牽連性である。
保管料は客観的には丸太④の保管から生じている。
しかし留置権は,物の返還とその物に関する債務の履行を結び付けて公平を図る制度であり,物から債権が生じたことだけで,所有者の意思や帰責事情と無関係に他人の債務の担保を課すのは相当でない。
本答案は,このような場合には295条1項の牽連性を否定する見解を採る。

 Eは立木に明認方法を施しており,Fに丸太④の伐採や処分を認めた事情もない。
FがEの標示を見て切り出し,事情を伏せてGに寄託したもので,Eと無関係なFの債務をEの物で担保させるべき事情はない。
したがって,牽連性を欠き,Gの留置権は成立せず,返還拒絶は認められない。
この構成では,占有開始の不法行為性をさらに否定理由とする必要はない。

第3 設問3

1 小問⑴

 LはC自身の監督義務違反を理由として,709条により30万円の損害賠償を請求する。
まずHが責任無能力者なら714条が問題となるが,712条の責任能力とは,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能をいう。
Hは15歳の中学3年生で,暗い道路に角材を置けば注意深く見なければ気付けないことも認識しており,責任能力を欠く事情はない。
したがって,責任無能力者の監督者についての補充的責任を定める714条は適用されない。

 それでも監督義務者自身に故意又は過失による監督義務違反があり,それと損害との間に相当因果関係があれば,709条の責任が成立する。
Cは同居する未成年の子Hの親であり,820条の監護教育義務を負う。

 Hは中学2年の終わり頃から乱暴になり,同級生との喧嘩で相手に怪我をさせ,自転車のブレーキワイヤーを切るいたずらもした。
Cは学校から何度も呼出しを受け,Hが他人の生命身体や交通の安全を害する行為を繰り返す危険を把握できた。
一般的な注意だけで改善せず,反抗的で対応に迷ったとしても,学校との連携,生活状況の把握等の具体的な監督措置を採らなかったのは不十分であり,監督義務違反の過失がある。

 暗い道路に角材を置く行為は,従前の他人を害する行為や危険ないたずらと連続する。
具体的な監督を継続すれば同種行為を抑止できたと評価でき,Cの不作為と,角材に自転車が乗り上げて転倒しLが骨折した損害との相当因果関係も認められる。
よってCの責任は成立する。
Kの運転上の過失は後記の賠償額調整の問題であり,それだけで因果関係を切断しない。

2 小問⑵

 Cは722条2項による過失相殺を主張する。
Lは幼児用シートに乗っていただけで,事故に寄与する行動はなく,3歳で事理弁識能力も認め難い。
L自身の過失による減額はできない。
過失相殺に必要な事理弁識能力は,加害者の責任能力と区別される。

 しかし公平な損害分担のため,被害者と身分上・生活関係上の一体性がある者の過失は,被害者側の過失として考慮できる。
被害者と一体の親への求償によって損害負担が循環することを避ける趣旨もある。
Kは3歳のLの母であり,事故当日も保育所へ迎えに行き,自宅へ連れて帰る途中であった。
母に養護される幼児という関係から,両者には上記の一体性が認められる。

 Kは,暗くなった道で前照灯の故障を放置し,携帯電話を使い片手で自転車を運転した。
いずれも危険の発見・回避を妨げ,現に事故原因と確認されているため過失に当たる。
よってKの過失をL側の過失として考慮し,30万円を基礎に相応の減額をすることができる。
具体的割合を確定できる事情はない。
契約責任の418条を適用したり,直ちにC自身の寄与割合だけに責任を限定したりするものではない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案第1の1は番号1~4,第1の2は番号5~10,第2の1は番号11~15,第2の2は番号16~19,第3の1は番号20~25,第3の2は番号26~30に対応する。
番号31・32は答案全体に関わる。

重み5は,Cの具体的過失(4),付合から償金への接続(5・6),Dの価値保護と間接占有(9・10),F取得によるE喪失(13),留置権の解釈(17),Cの責任の規範・義務違反・因果関係(22・24・25),KLの一体性(28)に対応する。
その他の重み3以下の事項は,同じ答案部分と以下の解説でまとめて扱う。

第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
14代金未払・所有権留保とAの返還請求。答案第1の1
24加工の原則・例外と増価5万円の評価。答案第1の1
34Cの即時取得の要件と推定。答案第1の1
45Cの無過失を否定する具体的事情。答案第1の1
55不動産付合の意義と材木②の所有権喪失。答案第1の2
65248条・703条の接続,受益・損失・原因。答案第1の2
74200万円と150万円の比較・請求内容。答案第1の2
83【適用条件:現存利益消滅構成を採る場合】現存利益消滅構成における善意・支払時期。答案第1の2。本答案は価値即時取得構成を採るため,現存利益消滅構成は採用しない。
95【適用条件:価値即時取得構成を採る場合】価値即時取得と償金請求拒絶の関係。答案第1の2
105【適用条件:価値即時取得構成を採る場合】Dの間接占有と付合時の善意無過失。答案第1の2
124立木の所有権が伐採後の丸太に及ぶこと。答案第2の1
135Fの登記による確定取得とEの所有権喪失。答案第2の1
144主張立証事実であるAF売買・土地移転登記。答案第2の1
153【適用条件:対抗要件の抗弁を採る場合】対抗要件の抗弁による場合のGの第三者性・Fの地位援用。答案第2の1。本答案は所有権喪失の抗弁を採り,G自身の第三者性を根拠としない。
164民事留置権・契約上の保管料④部分・弁済期。答案第2の2
175Fの債務・Eの所有という不一致と制度趣旨からの要件解釈。答案第2の2。本答案の限定解釈。第三者所有物だから当然に否定するのではなく,要件と趣旨を接続する。
184【適用条件:牽連性等を肯定して留置権の残る要件を検討する場合】占有開始の不法行為性とG自身の事情。答案第2の2。本答案は牽連性を否定するため,占有開始の不法行為性まで累積して論じない。
204Hの責任能力と具体的事実。答案第3の1
214714条の補充的責任と適用除外。答案第3の1
225監督義務違反に基づく709条責任の規範。答案第3の1
245Cの具体的な監督義務違反。答案第3の1
255監督義務違反とLの損害の相当因果関係。答案第3の1
264L自身の過失不存在と事理弁識能力の区別。答案第3の2
274Kの無灯火・片手運転と事故原因。答案第3の2
285被害者側の過失の判断基準とKLの一体性。答案第3の2
293【適用条件:被害者側の過失法理を採る場合】被害者側の過失法理の公平・求償循環の趣旨。答案第3の2
314制度間の法律効果を接続し,請求・抗弁の筋道を示す。答案全体

(2) 設問1⑴

趣旨PDF4頁と実感PDF2頁は,丸太から製材品へ対象が変わることを踏まえた加工の検討を求める。
実感は,売買対象を材木と誤読して加工を落とす答案を指摘する。
答案は留保所有権から246条,192条へ進み,Cの認識と確認しなかった事情を使う(番号1~4)。
無過失の推定は,最高裁第一小法廷昭和41年6月9日判決(昭和39年(オ)第550号,民集20巻5号1011頁)が188条から導くものであり,実感PDF2頁も186条及び188条の参照に触れている。

(3) 設問1⑵

趣旨PDF4頁~5頁と実感PDF2頁~4頁は,不動産付合と不当利得の接続,Dの反論の理由を求め,額の検討も期待している。
答案は柱の構成部分化からAの所有権喪失を示し,200万円と150万円の見方を比較した(番号5~7)。
Dの請負代金支払だけで当然免責とせず,公式資料が考えられる構成として示す価値即時取得構成を採り,鍵1本の交付がDの間接占有の喪失を意味しないと評価した(番号9・10)。
現存利益消滅構成は公式資料が反論の例として挙げる別の考え方であり,本記事は両者を累積要求しない(番号8)。

(4) 設問2⑴

趣旨PDF5頁と実感PDF5頁~8頁は,G自身の第三者性を当然肯定せず,抗弁の構造と主張立証事実を説明することを求める。
答案は立木時のFの確定取得によりEが所有権を失う構成を採り,AF売買・土地登記を中心に丸太への効果を説明する(番号11~14)。
立木当時に明認方法の欠缺を主張する正当な利益を有していた第三者に対し,伐木の所有権を対抗できないことは,最高裁第三小法廷昭和33年7月29日判決(昭和32年(オ)第42号,民集12巻12号1879頁)が判示する。
同判決は,二重譲受人の双方が明認方法を施さないうちに伐採された事案であり,本問のE・Fの関係と同一ではない。
対抗要件の抗弁を採るならGの第三者性又はFの地位援用を説明する必要があるが,本答案はそのルートを採らない(番号15)。
Fが背信的悪意者に当たらないとの指摘は,問題文の【事実】8に基づく本記事の補足であり,公式資料は背信的悪意者に言及していない。

(5) 設問2⑵

趣旨PDF6頁と実感PDF7頁~9頁は,Fの債務をEの所有物で担保してよいかを,留置権の要件に位置付けることを求める。
答案は保管料④部分を被担保債権とし,第三者所有物との公平を牽連性の解釈へ結び付けて否定する(番号16・17)。
これは本答案が採る一つの見解である。
公式資料は,ある要件を必要十分に検討して否定した場合,残る要件を論じないことを不利に扱わないと説明しているので,本答案では295条2項の不法行為性をさらに論じない(番号18・19)。
留置を肯定するなら,G自身の占有開始の事情を含む残る要件も検討する。

(6) 設問3⑴

趣旨PDF6頁~7頁と実感PDF9頁~10頁は,Hの責任能力,714条の不適用,C自身の709条責任を区別し,具体的な監督義務違反と因果関係を求める。
答案は820条に接続した上で,従前の暴力・危険ないたずらと学校からの呼出しを踏まえ,それ以上の具体的措置を採らなかった点を評価した(番号20~25)。
因果関係は,具体的監督が同種の危険を抑止できたという本記事の事実評価であり,親だから当然に負う責任とするものではない。
公式資料が述べる判例に当たるものとして最高裁第二小法廷昭和49年3月22日判決(昭和47年(オ)第1067号,民集28巻2号347頁)があり,同判決は,監督義務の懈怠と未成年者による殺害の結果との相当因果関係を肯定した原審の判断を是認した。
公式資料は,判例に依拠する検討が唯一の解答ではなく,適切な理由付けによる異なる論じ方も排除されないと説明する。

(7) 設問3⑵

趣旨PDF7頁と実感PDF10頁~12頁は,L自身の過失と,Kの過失をL側として扱えるかを区別する。
答案は責任能力と事理弁識能力を分け,母子関係と当日の保育所への迎え・帰宅という事情から一体性を評価し,Kの無灯火・片手運転と事故原因を結び付けた(番号26~30)。
両能力の区別は,実感PDF10頁が挙げる最高裁大法廷昭和39年6月24日判決(昭和36年(オ)第412号,民集18巻5号854頁)による。
被害者側の過失について,最高裁第三小法廷昭和42年6月27日判決(昭和40年(オ)第1056号,民集21巻6号1507頁)は,幼児の監督者である父母等のように被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいうとし,保育園の保母の過失はこれに当たらないとした。
最高裁第一小法廷昭和51年3月25日判決(昭和47年(オ)第457号,民集30巻2号160頁)は,夫婦の事案で,特段の事情のない限り夫の過失を被害者側の過失として斟酌できるとし,求償関係を一挙に解決できる合理性にも触れている。
公式資料は,この法理の妥当性を疑問視する見解も有力であり,判例と異なる構成も適切な理由付けがあれば相応に評価されると説明する。
具体的な減額割合は創作せず,722条2項による調整として閉じる。

(8) 答案の弱点と扱わなかった事項

丸太④では,客観的に保管料が生じていることから牽連性を肯定する見方もあり得る。
本答案の限定解釈だけが正解ではなく,肯定するなら占有開始の不法行為性を含む全要件を,否定するなら否定した要件と理由を説明する必要がある。
Cの監督義務違反と結果の因果関係にも事実評価の余地があり,措置を講じれば必ず防げたという事実を追加してはならない。

本答案では,設問が考慮不要とする立木法の登記,公式資料が検討不要とする商事留置権,本問で適用の余地がない418条,保管料に代えて196条の必要費を被担保債権とする構成を展開しない。
答案は出題当時の民法によるものであり,平成29年法律第44号その他の後の改正を前提としない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

①平成27年司法試験・憲法(公法系第1問)の模範解答と評価項目28個(AI作成)
②平成27年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した21項目と5段階の重み付け(AI作成)
③平成27年司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目―競業・事業譲渡・新株予約権(AI作成)
④平成27年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑤平成27年司法試験刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した32項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑥平成27年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―秘密録音・約束による自白・伝聞法則(AI作成)

2 同じ科目の別の年度の記事

①平成28年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目
②令和7年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目

いずれも別年度の記事であり,その法令・判例を本問へ遡及適用するものではない。

3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事

①司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク
②法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①平成27年司法試験論文式試験問題(民事系科目)
②平成27年司法試験論文式試験問題出題趣旨
③平成27年司法試験の採点実感等に関する意見(民事系科目第1問を含むPDF)

2 法令

民法(e-Gov法令検索)の公開履歴で遡れる最も古い版は,平成28年10月13日施行の版である。
平成27年5月14日の試験時点の統合本文は公開履歴になく,この版で答案に用いた条文を確認した。
この版の附則によれば,試験日からこの版までの民法改正は平成28年法律第27号(成年後見の事務の円滑化)及び平成28年法律第71号(再婚禁止期間)であり,答案で用いた条文に及ばない。
対象は86条,177条,178条,186条,188条,192条,196条,242条,243条,246条,248条,295条,418条,703条,704条,709条,712条,714条,722条,820条である。
現行の条文と比べると,86条,418条及び722条1項が平成29年法律第44号により改められ,他の条文は同じである。

3 裁判例

①最高裁判所第三小法廷昭和33年7月29日判決(昭和32年(オ)第42号,民集12巻12号1879頁)
②最高裁判所大法廷昭和39年6月24日判決(昭和36年(オ)第412号,民集18巻5号854頁)
③最高裁判所第一小法廷昭和41年6月9日判決(昭和39年(オ)第550号,民集20巻5号1011頁)
④最高裁判所第三小法廷昭和42年6月27日判決(昭和40年(オ)第1056号,民集21巻6号1507頁)
⑤最高裁判所第二小法廷昭和49年3月22日判決(昭和47年(オ)第1067号,民集28巻2号347頁)
⑥最高裁判所第一小法廷昭和51年3月25日判決(昭和47年(オ)第457号,民集30巻2号160頁)

②は採点実感PDF10頁が名を挙げる判例である。
④~⑥は,公式資料が判決名を挙げずに述べる判例の内容に対応するものとして本記事が特定した。
①及び③は,本記事が補足として掲げた。

4 確認状態

問題は,民事系科目のPDF(15頁)の1頁~5頁を全て読んだ。
出題の趣旨は,全科目を収めたPDF(35頁)のうち民事系第1問の部分(3頁~7頁)を全て読んだ。
採点実感は,民事系科目のPDF(30頁)のうち第1問の部分(1頁~14頁)を全て読んだ。
上記3の裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの詳細画面で書誌を確認し,判決全文を読んだ。
条文は,上記2の版で確認した。
評価項目の抽出と重み,採用した構成,個々の事実の評価と結論は,本記事独自の分析である。

採点実感PDF8頁~9頁には「目的物の所有者G」という表記があるが,問題文及び出題の趣旨PDF6頁では丸太④の所有者はEとされているので,本記事はEとして扱った。