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契約書の危険負担条項―引渡し前後の滅失・損傷と民法536条・567条(AI作成)

売買の目的物が,当事者の責任ではない火災,水害,盗難その他の事故で滅失又は損傷したとき,代金を支払う必要があるかが問題になります。
契約書の危険負担条項を審査するときは,「どちらが危険を負担するか」という結論だけでなく,対象となる事故,危険が移る時点,代金請求,追完,解除及び保険との関係を分けて確認する必要があります。
本稿では,民法536条と567条の位置付けを確認し,契約条項を作る際の確認事項を整理します。

第1 危険負担とは何を決める問題か

1 当事者の責任によらず履行できなくなった場面を扱う

危険負担は,双務契約において,一方の債務が債務者の責任ではない事情により履行できなくなった場合に,反対給付をどう扱うかという問題です。
売買であれば,売主に責任のない事故で目的物を引き渡せなくなったとき,買主が代金支払を拒めるかが典型です。誰かの契約違反が原因である場合は,危険負担だけでなく,債務不履行,損害賠償,解除又は契約不適合責任を検討します。

2 所有権の移転時期と同じとは限らない

所有権がいつ移るか,物を誰が占有・管理しているか,危険を誰が負担するかは,それぞれ別の問題です。
契約書で「所有権は代金完済時に移転する」と定めても,危険負担まで当然に同じ時点になるとは限りません。引渡し,検収,代金完済,所有権移転及び保険開始の時点を別々に確認します。

第2 民法536条の基本構造

1 双方に責任がない履行不能では反対給付を拒める

民法536条1項は,当事者双方の責任によらない事由により債務を履行できなくなったとき,債権者は反対給付の履行を拒むことができると定めています。
例えば,特定の目的物を引き渡す債務が双方の責任によらず履行不能となった場合,反対給付である代金の支払を拒めるかを検討します。現行民法536条1項は,代金債務を当然に消滅させるのではなく,その履行を拒むことができると定めています。契約関係を解消するには,解除の要件を別に検討します。実際の結論は,契約類型,目的物の特定,引渡しの有無及び特約によって異なります。

2 債権者側の事情が原因なら扱いが変わる

民法536条2項は,債権者の責任による事由で履行できなくなった場合,債権者は反対給付を拒めないと定めています。他方,債務者が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,その利益を債権者へ償還しなければなりません。
契約書では,原因を単に「不可抗力」と表示するだけでなく,受領遅滞,保管指示,搬入場所の不備など,相手方側の事情をどう扱うかも確認します。

第3 売買目的物の引渡し後は民法567条を確認する

1 引渡し後の滅失・損傷では買主が代金支払を拒めない場合がある

民法567条1項は,売買の目的として特定した物について,売主が買主に引き渡した後,双方の責任によらない事由でその物が滅失又は損傷した場合,買主はその滅失又は損傷を理由として履行の追完,代金減額,損害賠償又は解除をすることができず,代金支払を拒むこともできないと定めています。
同条2項は,契約内容に適合する目的物について売主が履行の提供をしたにもかかわらず,買主が受領を拒み,又は受領することができない場合に,その後双方の責任によらず目的物が滅失又は損傷した場面を定めています。

2 「引渡し」の内容を契約で明確にする

目的物を運送人へ渡した時,買主の指定場所へ到着した時,荷下ろしが終わった時,受領書へ署名した時又は検収が完了した時のどこを引渡しと扱うかは,取引によって異なります。
契約書では,引渡場所と方法を定めた上で,危険が移る時点をそれと同じにするか,別の時点にするかを明記します。貿易条件,運送契約及び保険契約がある場合は,それらとの整合性も確認します。

第4 危険負担条項で定める事項

1 対象となる事故と責任原因を分ける

火災,地震,風水害,盗難,運送中の事故,停電又はサイバー攻撃を列挙しても,それだけで責任関係が決まるわけではありません。保管義務又は安全管理義務の違反があれば,双方の責任によらない事故とはいえない場合があります。
「不可抗力」の定義,通知義務,被害拡大防止,代替履行及び証拠保存を合わせて定めます。不可抗力,責めに帰すべき事由及び履行不能は同じ概念ではないため,条項ごとに要件と効果を確認します。

2 危険が移る基準時を客観的に定める

「納品時」「受領時」「検収時」という用語を使う場合,それぞれの意味を定義します。日付,場所,受領書,システム上の記録など,後から確認できる基準を選びます。
分割納品,仮置き,試運転,設置作業又は買主による受領拒否がある取引では,例外も定めます。

3 費用と契約上の効果を具体化する

危険を負担する当事者について,代金請求の可否だけでなく,修理,再製作,再納品,運送,撤去,廃棄及び保険免責額を誰が負担するかを確認します。
一部損傷の場合,契約を継続するか,代替品を納入するか,代金を減額するか,解除できるかも定めます。

第5 条項例を使うときの注意点

1 当事者の表示と負担の方向を一文ずつ読む

ひな形の甲乙を入れ替えたのに,危険負担条項だけを直し忘れると,意図と反対の当事者が負担することになります。
「引渡し前は売主,引渡し後は買主が負担する」という設計なら,条項の各文について,事故が起きる時点,原因,負担者及び法的効果を表にして確認します。甲乙という記号だけでなく,売主・買主などの役割名を用いると,方向の誤りを発見しやすくなります。

2 民法と異なる合意かどうかを明示する

任意規定と異なる危険配分を合意することは考えられます。しかし,条項が民法上の原則を確認するものか,取引上の事情により異なる負担を定める特約かを区別しなければ,審査理由を説明できません。
保管・管理能力,価格,保険,運送手配,検収期間及び原因調査に必要な情報を持つ者を考慮し,特約の必要性を判断します。消費者契約その他の強行法規が適用される場合は,特約の有効性を別に確認します。

契約当事者の表示方法は,契約書の甲乙とは―どちらが上か,順番の決まり及び売主・買主など役割名の使い分け(AI作成)で整理しています。

第6 不可抗力・債務不履行・解除との関係

1 不可抗力条項だけで危険負担は完成しない

不可抗力条項は,履行遅滞や損害賠償責任を免除する条件,通知及び契約終了を定めることがあります。他方,目的物が失われた後に代金を支払うかという危険負担の問題が明記されていないこともあります。
不可抗力,危険負担,解除,損害賠償及び保険の各条項を横断して読み,重複又は矛盾がないか確認します。

2 売買以外の契約へそのまま転用しない

民法567条は売買の目的として特定した物に関する規定です。請負,準委任,ライセンスその他の契約では中心となる給付や報酬請求の要件が異なり,売買の条項をそのまま転用できません。本稿は売買を中心に説明しており,売買以外の契約では各契約類型に関する規定と特約を別に確認します。

第7 審査時の確認表

確認事項確認内容
契約類型売買,請負,賃貸借その他のどの給付が中心か
目的物・成果物特定物か,代替物か,一部履行又は分割納品があるか
原因双方の責任によらない事故か,どちらかの義務違反があるか
基準時引渡し,受領,検収,所有権移転及び代金完済の時点が定義されているか
法的効果代金,追完,減額,損害賠償,解除及び再履行をどう扱うか
費用修理,再製作,運送,撤去,廃棄及び調査費用を誰が負担するか
保険保険契約者,被保険者,保険期間,免責及び保険金の帰属が合っているか
関連条項不可抗力,検収,契約不適合,解除,損害賠償及び通知と矛盾しないか

契約書全体の確認方法は,契約書審査の進め方とチェックポイントを参照してください。具体的な業務委託契約の審査例として,77期二回試験の業務委託契約書の審査結果報告書もあります。

第8 結論

危険負担条項では,事故の名称だけでなく,誰の責任による事故か,危険が移る時点,代金その他の反対給付及び再履行の費用を具体的に定める必要があります。
売買では民法536条に加えて567条を確認し,所有権移転,検収及び保険と危険移転を混同しないことが重要です。ひな形を流用するときは,甲乙又は売主・買主の対応を確認し,関連条項との整合性まで点検します。

第9 出典・参考資料

1 e-Gov法令検索・民法(536条,567条等)
2 法務省・民法(債権関係)の改正に関する説明資料「危険負担」
3 LAWGUE「契約書での『甲乙』の使い方とは?意味やメリットをわかりやすく解説」(危険負担条項例の検討対象とした二次資料)