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外国政府の関与を隠した動画制作依頼―米国の起訴状から考える契約時の確認事項(AI作成)

動画の制作依頼で,契約書に書かれた依頼者と,実際の資金提供者や編集方針の指示者が違っていたら,どのような確認が必要になるのか。米国で令和6年に公表された起訴状は,この問題を具体的に考える材料になる。

本記事は,米司法省が公表したRT関係者2名に対する起訴状を読み,そこに記載された主張と,日本の契約実務に向けた本記事の提案を分けて整理する。起訴は有罪判決ではなく,以下の事件経過は,起訴状に記載された訴追側の主張を紹介するものである。

第1 どのような事件として起訴されたのか

米司法省は令和6年9月4日,ロシアのRTに関係する2名が,米国のコンテンツ制作会社へ資金を提供し,その関与を隠して動画等の制作・配信を指示したとする起訴を公表した。

起訴状は,外国代理人登録法(FARA)への違反に関する共謀及び資金洗浄の共謀を訴追している。これは米国法に基づく訴追であり,同じ事実関係が直ちに日本で同じ名称の犯罪になるという意味ではない。

出典:米司法省の発表,起訴状(PDF1~3頁,28~30頁)

第2 起訴状が主張する資金と指示の仕組み

1 架空の投資家を用いた説明

起訴状は,コンテンツ制作会社の資金源を説明するため,架空の投資家の人物像や経歴資料が用意されたと主張している。出演者への説明や投資家の本人確認をめぐるやり取りも記載されている。

ここで重要なのは,資料の体裁が整っていることだけで,その人物の実在や資金の出所まで確認できたことにはならないという点である。後者は,起訴状の事実主張を踏まえた本記事の読み取りである。

出典:起訴状(PDF9~16頁,14~20項)

2 契約相手と異なる送金者

起訴状は,約970万米ドルが複数の送金者から制作会社へ送金され,その送金者はいずれも制作会社の契約当事者ではなかったと主張している。また,動画制作等の対価であるのに,送金の説明に電子機器の購入に関する記載が使われたとも主張している。

金額や送金者に関するこれらの記載は,訴追側が主張する資金の流れであり,本記事が銀行記録を独自に検証した結果ではない。

出典:起訴状(PDF26~28頁,39~44項)

3 出演者まで一括して共犯と扱わない

起訴状の冒頭は,一部の出演者について,資金提供者等に関して欺かれたとの主張を含む。制作会社,指示を出す者,資金提供者,出演者の認識を区別して読む必要がある。

ある会社の番組に出演していたという事情だけで,出演者全員が関与を知っていた,あるいは全員が起訴されたと読み替えることはできない。個々人の認識と訴追の対象を確認することが大切である。

第3 契約締結前に確認しておきたいこと

以下は,日本の動画制作者,広報会社,出演者及び顧問弁護士に向けた本記事の提案である。起訴状にそのまま書かれた法的義務や,日本で一律に課される本人確認義務の一覧ではない。

1 四つの立場を分ける

依頼の窓口となる者,契約当事者,実際の支払者,内容を指示・承認する者を分けて記録する。同じでない場合には,それぞれがどのような権限や関係に基づいて関与するのか,説明を求めることが考えられる。

送金者が違うことだけで違法と決め付ける必要はないが,説明が曖昧なまま,請求書の名目を実態と異なるものにする依頼に応じることは避けたい。

2 資金源・指示者の説明を確かめる

資金提供者の実在や事業内容,説明に用いられた経歴資料の作成者,担当者の連絡先等を確認することが考えられる。確認ができなかった事項は,確認できたことにせず,契約判断の材料として残す。

出演者や再委託先にも説明する必要がある案件では,誰がどの範囲の説明を担うのかを決めておく。秘密保持の要請がある場合にも,その対象と理由を具体化することが有用である。

3 編集・配信の指示と開示方針

テーマ,台本,出演者,配信時期,修正,削除を誰が決めるかを確認する。単なる制作費の提供と,発信内容への継続的な指示を,契約書や連絡記録から区別できるようにすることが考えられる。

スポンサーや資金提供関係を視聴者等へどう示すかも,制作開始前の確認対象になる。個別の表示義務の有無は,媒体,広告の内容及び適用される法令に即した別の検討を要する。

第4 契約に書いておきたい事項

本記事の提案として,契約当事者及び支払者の情報,第三者が関与する場合の説明,内容の承認者,資金提供関係の表示方針,契約後に事情が変わった場合の通知を明確にすることが考えられる。

説明と実態が食い違った場合の制作停止,追加確認,契約終了及び制作済み成果物の取扱いも,報酬や権利帰属と併せて検討対象になる。具体的な条項は,制作の進み具合,権利関係及び双方の負担に応じて調整すべきであり,確認条項があるだけで全ての法的リスクが解消するわけではない。

第5 日本の制度検討と比較するときの注意点

令和8年10月26日の警察庁提出資料は,外国との関係を隠した情報発信等を検討対象として示している。海外の事件は,関係を隠した依頼や資金提供がどのような形を取り得るかを考える材料になる。

しかし,米国の起訴状から,日本の将来の登録対象,処罰要件及び専門職の例外を確定することはできない。国内の検討状況を説明する記事と,海外の個別事件を紹介する記事を分けて読む必要がある。

外国との通常の取引や制作依頼を一律に不当な干渉と扱うことも適切ではない。関与を明らかにする制度の目的と,具体的な行為の違法性は,それぞれ確認すべき問題である。

出典:第2回警察庁提出資料(PDF3~8頁)

第6 依頼内容に疑問が生じた場合

まず,契約書,請求書,送金者の説明,発信内容の指示及び変更履歴を,適法に扱える範囲で整理することが考えられる。出演者や従業員への疑いと,資料から確認できた事情を分け,未確認の関与を公表して断定しないようにする必要がある。

会社の情報や連絡記録を確認する場合の留意点は,私用LINE・私物USB・個人メールによる情報取扱いの記事も参照されたい。

第7 出典

– 米司法省の令和6年9月4日発表
– Kalashnikov及びAfanasyevaに対する起訴状(全32頁)
– 警察庁「外国による不当な干渉を防止するための法制度について」