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金型保管料の覚書の作り方―過去分の精算と将来の保管条件(AI作成)

第1 過去分の精算と将来の保管を一通で整理する

金型や治具の無償保管を見直すときは,過去に生じた負担の精算と,これから保管を続ける条件を分けて決める必要がある。
一通の覚書にまとめる場合も,対象の型,期間,金額及び未確定事項を別紙で対応させると,合意した範囲が明確になる。

本記事は,令和8年10月27日に確認した公正取引委員会の公表資料を踏まえ,製造委託に伴う金型等の保管条件を協議する際の書面の作り方を説明する。
以下の条項例と管理方法は,法定のひな形ではなく,当事者が条件を具体化するための提案である。
無償保管の違反判断,費用請求及び返却・廃棄の詳しい説明は,金型・治具の無償保管を解消する実務を参照されたい。

公取委の取適法運用基準第4の7は,長期間発注しない等の事情がある型等について,費用を支払わず保管させる行為を問題としている。
受注者所有の型でも,廃棄に発注者の承認を要するなど,発注者が事実上管理している場合を含む。
適用関係は,当事者の規模,取引類型及び個別発注の時点を確認する。
書面に「双方合意」と書くだけで,実際の不利益な負担が解消されたとは扱わない。

第2 別紙の型一覧と精算明細を先に作る

1 対象物と権限を特定する

型番号,名称,対応部品,数量,保管場所及び写真を一つの一覧にする。
所有者,貸与者,費用を負担する者及び廃棄を承認できる者も別欄に記録する。
上流の完成品メーカーが所有し,直接の発注者には処分権限がない場合もあるため,「甲の金型」と一括して処分権限まで認めない。

同じ型を複数の顧客や製品に使う場合は,費用をどの範囲で配賦するかを定める。
型自体の所有権と,図面・CADデータ・製造ノウハウの利用条件も区別する。

2 過去分と将来分の明細を分ける

過去分には,型番号,対象期間,費目,単価・数量,算定根拠,既払額,今回支払額及び支払日を記載する。
将来分には,適用開始日,料金の単位,含まれる管理業務,別料金の作業,支払日及び見直し時期を記載する。

最終発注日,最終使用日,量産終了日及び廃棄を申し入れた日は同じとは限らない。
それぞれの資料を残し,今回合意する対象期間を明示する。
現在の締結日と過去分の対象期間を分けて書き,過去に合意があったように締結日を遡らせない。

第3 未確定の過去分を残したまま将来分を整える

過去分の金額がすぐに確定しない場合には,対象と金額について争いのない部分を先に支払い,残りを留保する方法が考えられる。
ただし,暫定的な支払いで過去の負担全体が解消したとは扱わず,残る対象,追加資料の提出日,再協議日及び担当者を記録する。

「本件に関し一切の債権債務がない」と広く書くと,確認していない型や期間まで精算したのかが争点になる。
精算の終局性を求める場合も,何を対象に合意したかを先に特定する。
将来分だけを合意するなら,過去分について何も合意していないことが分かる留保を置く。

取適法上の不利益回復と,裁判で請求できる金額・請求根拠・時効は別に検討する問題である。
例えば,当事者間の精算書を作成した事実だけで,当局の判断や第三者の権利まで確定するわけではない。

第4 保管料と管理業務を対応させる

1 料金の単位と費目を決める

面積単価,パレット単価,棚区画単価又は大きさ・重量等による区分単価など,現場で確認できる単位を選ぶ。
平置きと段積み,必要な通路,屋内・屋外及び特殊な保管条件による違いも調整する。
自社所有の施設について,固定資産税だけで使用料相当額を評価できるとは限らない。

公取委は,自社倉庫の使用料相当額,外部倉庫料,運送費及びメンテナンス費用等を保管費用として挙げている。
費目の範囲を確認し,同じ費用を賃料・設備費・管理費として重ねて計上しない。
製品単価に含めた費用がある場合は,対象期間と数量の前提を示す。

2 管理費率だけで必要な作業を曖昧にしない

管理費を10~20%加算する方法を採用する場合も,その率を公定の基準とは扱わない。
棚卸し,点検,防錆,移動等の作業内容・頻度・時間を確認し,率に含める費目を定める。
通常の月額料金に含まれる作業と,別途協議する修理・運送等を区別する。

発注量が少なくなったときや発注のない年に,製品代金への上乗せだけで保管費用を回収できるかも確認する。
補修部品の供給を続ける場合は,量産終了後の補修部品の供給期間・価格・金型の整理を併せて参照されたい。

第5 金型保管料と過去分精算の覚書の条項例

以下は,発注者を甲,保管する受注者を乙とする協議用の例である。
完成した契約としてそのまま使うのではなく,角括弧の項目と別紙を具体化し,製造委託の基本契約や実際の業務と照合する。
過去分に争いがある場合は,第3条の精算範囲と第4条の留保を特に調整する。

1 目的・対象と所有権

第1条 甲及び乙は,別紙1記載の金型,治具その他の物品(以下「対象型」という。)の保管に関し,過去分の費用の精算及び今後の保管条件を,この覚書により定める。

第2条 対象型の所有者,保管場所,数量及び廃棄・移転の承認権限者は,別紙1のとおりとする。
この覚書によって対象型の所有権又は図面・技術情報に係る権利を移転するものではない。
甲及び乙は,対象型の追加,返却,廃棄又は保管場所の変更を合意したときは,対象と適用日を特定した記録を作成し,別紙1を更新する。

別紙1では,甲が所有者なのか,上流企業所有の型を管理しているのかを区別する。
権限が確認できない欄を便宜的に甲の承認事項として埋めず,確認の担当者を決める。

2 過去分の精算と未確定分の留保

第3条 甲は乙に対し,別紙2に定める対象型,対象期間及び費目に係る過去分の精算金として,同別紙の既払額を控除した[金額]を,[支払日]までに乙の指定口座へ支払う。
算定根拠及び支払対象は別紙2のとおりとし,振込手数料は甲が負担する。

第4条 前条の精算対象は別紙2に記載した範囲に限る。
別紙3記載の未確認の対象型,対象期間又は費目については,この覚書によって精算又は請求権放棄の合意をしたものではない。
甲及び乙は,[資料提出日]までに必要な資料を確認し,[再協議日]までに追加精算の要否及び金額を協議する。

別紙3を空欄のまま締結せず,留保がない場合もその旨を確認する。
暫定精算なのか,特定範囲を最終精算するのかを,表題と本文で一致させる。
協議する旨の記載だけを,民事上の時効への対応が済んだものとして扱わない。

3 将来の保管料と業務範囲

第5条 甲は乙に対し,[適用開始日]以降の保管料を,別紙4の単価,数量又は面積,対象期間及び端数処理の定めに従って支払う。
締日,支払日,請求・明細の確認方法及び税額の表示は,同別紙に定める。
数量又は保管条件に変更がある場合は,変更内容と適用日を特定して協議する。

第6条 通常の保管料に含む棚卸し,点検,防錆その他の作業の内容及び頻度は,別紙4のとおりとする。
これに含まれない修理,特別な検査又は運送等は,作業内容,費用及び実施時期を別途合意する。
安全確保等のため事前協議が困難な緊急の措置については,連絡先,対応範囲及び事後の記録・精算方法を同別紙に定める。

型を保管するだけなのか,再使用できる性能を維持する作業まで委ねるのかで,費用と責任の前提は異なる。
既存の傷・さび,点検の限界及び必要な補修も記録する。
紛失・破損等が起きた場合の通知,原因調査,損害の負担及び保険は,基本契約の条項と重複・矛盾がないか確認する。

4 回収・廃棄と契約終了

第7条 甲及び乙は,対象型ごとに,保管継続,回収又は権限ある者の承認による廃棄を協議し,実施日,実施者,搬出・運送・廃棄の費用及び完了確認の方法を記録する。
回答がないことだけをもって,廃棄の承認又は所有権の放棄があったとは扱わない。

第8条 保管条件の見直し日及び回収・廃棄の協議期限は,別紙1及び別紙4に定める。
製造委託の基本契約又は個別の製造取引が終了する場合も,対象型の引渡し等が完了するまでの保管条件及び費用を協議し,その内容を記録する。

処分承認の期限だけでなく,実際の搬出・廃棄日まで決める。
補修部品の供給義務が残る型を処分する場合は,必要な在庫・代替製造手段及び供給条件も先に調整する。
無回答が続く場合の返還・処分の検討は,金型・治具の無償保管を解消する実務の第6を参照されたい。

5 基本契約との優先関係

第9条 対象型の保管料及び過去分の精算について,この覚書と甲乙間の[基本契約名・締結日]が抵触する場合は,この覚書を優先する。
この覚書で変更する範囲は別紙5に特定し,それ以外の事項の取扱いは当該基本契約及び別途の合意による。

無償保管条項を残したまま,どの条項を変更したのか不明な書面を追加しない。
基本契約の終了時の清算条項,貸与品返還条項及び責任条項とも照合する。
条項間の接続は,製造委託の取引基本契約書を受注者側から審査するポイントの第7・第8を参照されたい。

第6 将来分の合意だけで過去の是正を終えない

令和8年10月22日の王子コンテナーに対する勧告では,将来の保管費用の支払合意があり,127事業者へ計341万355円が支払われていた後も,残る費用相当額の支払等が求められた。
同件は経過措置による改正前の下請法の事案であり,支払額を型数で割って保管料の相場を作ることはできない。
将来の契約を整えたことと,過去の不利益を必要な範囲で回復したことは分けて確認する。

また,公取委・中小企業庁の取適法テキスト印字150頁は,自発的申出により勧告をしなかった事案における過去1年分以上の返還例を紹介している。
これは,どの金型保管料も1年分の精算で足りるという説明ではない。
調査着手前の申出,違反停止,不利益回復,再発防止及び調査・指導への協力という制度上の事情を確認する必要がある。
調査票等を受領している場合は,発出元,対象,受領日及び回答内容も整理する。

第7 締結と支払いを台帳へ反映する

締結前には,次の事項を担当部署で照合する。

① 購買・営業:対象部品,発注見通し,単価への保管費の組込み及び取引先との合意
② 製造・設計・品質保証:型の状態,保管条件,補修部品の供給及び再使用の条件
③ 資産管理:所有者,貸与台帳及び回収・廃棄の承認権限
④ 経理:過去分と将来分の区分,既払額,支払日及び実際の入金・支払確認
⑤ 法務:精算対象,未確定分の留保,基本契約との優先関係及び紛争への対応

覚書を締結した後は,料金の支払い,型一覧の更新,見直し日及び回収・廃棄の実施を確認する。
契約書を保存しただけで,未払費用や現物の保管が解消したことにはしない。
全体の取引終了も予定している場合は,継続的取引を終了するときの確認事項の第3・第4と対応させて整理する。

第8 出典

① 公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」第4の7。

② 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q119。保管費用の範囲,事実上の管理及び保管期間について参照した。

③ 公正取引委員会・王子コンテナー株式会社に対する勧告(令和8年10月22日),PDF実頁8頁~10頁。

④ 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月),印字150頁・PDF実頁155頁。

別紙の構成,条項例,費用の配賦方法及び部署別の確認方法は,本記事の提案である。

制度全体の社内対応は,取適法の企業実務の第7章を参照されたい。