メインコンテンツへスキップ
       

台湾関係者の相続人調査―戸籍謄本の取得,国籍変動と準拠法の確認(AI作成)

第1 最初に本人・国籍・親族関係を分ける

台湾に関係する相続では,日本の在留カードや住民票に「台湾」と表示されていることだけで,相続人や適用される法律を決めることはできない。
被相続人の同一性,死亡時の国籍,婚姻・親子・養子関係,相続財産及び手続を行う場所を分けて確認する必要がある。

本記事は令和8年10月18日に確認した日本・台湾の公的資料に基づき,日本から台湾関係者の相続人を調査する際の順序を整理するものである。
相続税額の計算,台湾の不動産取得制限及び中国大陸・香港・マカオに関係する特則は,個別の検討を要する。

調査は,①本人と死亡日の確認,②日台双方の身分資料の取得,③国籍変動と親族関係の復元,④準拠法の確定,⑤相続人・相続分の確定,⑥提出先及び税務の確認の順で進める。
資料を集める作業と,資料から法律上の結論を出す作業を区別すると,何が判明し,何が不足しているかを記録しやすい。

第2 日本側の資料と台湾側の資料をつなぐ

1 氏名・生年月日・住所を照合する

まず,氏名の漢字表記,日本での通称,旅券のローマ字表記,生年月日,死亡日,日本の本籍・住所及び台湾の戸籍上の住所を一覧にする。
台湾の国民身分証統一番号が確認できる場合も,氏名や生年月日と併せて同一人物かを照合する。

日本では,取得できる戸籍・除籍・改製原戸籍,出生・婚姻等の届書関係資料,住民票・除票,外国人登録原票,旅券及び帰化に関する記録を手掛かりとする。
台湾では,戸籍謄本,除戸の資料,婚姻・出生・認領・養子関係や国籍変動を示す資料を,調査目的に応じて確認する。

資料ごとに「対象者」「記録が対象とする期間」「確認できる事項」「前後の資料とのつながり」を記載する。
氏名が似ていることや住所の一部が一致することだけで,同一人物又は親子関係が証明されたと扱ってはならない。

2 日付と届出の食い違いを残す

台湾の資料に用いられる民国年は,民国年に1911を加えて西暦年へ換算できる。
調査表には原資料の日付を残し,換算した日付を別欄に記載すると,転記や換算の誤りを確認しやすい。

日本と台湾の一方だけに婚姻・出生等の届出が反映されている場合は,身分行為の日,届出日,受理日及び記録への反映日を分ける。
登録が見つからない理由には,未届,転記未了,別の登録先,請求範囲の不足等が考えられるため,記載がないことだけで身分関係が存在しないと結論付けない。

第3 台湾の戸籍謄本を誰が請求できるか

1 本人・利害関係人・受任者の区別

台湾の内政部戸政司は,戸籍謄本・戸籍資料の請求者として,本人,利害関係人及び受任者を案内している。
利害関係人には,配偶者・直系血族のほか,未履行の契約・未清算の債務がある者等が含まれるが,請求には身分証明及び利害関係を証する資料が必要となる。

兄弟姉妹や債権者についても,その呼称だけで全ての戸籍資料を取得できるわけではない。
誰の相続について,どの権利義務を確認するため,誰のどの事項が必要なのかを説明し,請求資格と取得範囲の審査を受けることになる。

戸政事務所が利害関係人に提供するのは,利害関係のある部分の資料である。
そのため,一人分の資料を取得できたことと,家族全員の記録を漏れなく確認できたことは区別する必要がある。

2 窓口と委任書の確認

戸政司の案内では,通常の戸籍謄本は全国のいずれの戸政事務所でも請求できる一方,戸籍登記の原始資料の閲覧は元の登録先の戸政事務所へ申請する。
現在の謄本で必要事項を確認できない場合は,対象期間・住所・氏名を示し,原始資料の所在と請求方法を確認する。

委任による請求では,受任者の身分証明と委任書が必要であり,委任者が利害関係人である場合には,その関係を証する資料も必要となる。
台湾の国外で作成した委任書・利害関係証明については,同案内が在外代表処等による認証を求めているため,日本で作成する書類の認証経路を受理先及び代表処に確認する。

日本の弁護士の職務上請求書だけで,台湾の戸籍資料を当然に取得できると考えてはならない。
依頼者本人の請求資格,委任の範囲,身分証明,必要な訳文・認証及び現地受任者の要否を,請求前に整理する。

3 相続案件のオンライン申請は利用条件を確認する

戸政司には「網路申辦繼承案件戶籍謄本」の制度がある。
案内上の申請者は相続権を有する相続人本人であり,自然人憑証を利用する仕組みであるから,日本の代理人が誰でも利用できる一括取得手段とは異なる。

同制度では,一親等の直系血族又は配偶者と,兄弟姉妹・祖父母等とで,利害関係証明の添付の扱いが異なる。
また,案件番号と授権コードを必要機関へ渡して資料を読み取る方式であるため,日本の提出先で必要な証明書の形を満たすかは別に確認する必要がある。

第4 日本統治期からの記録を調べる場合

1 現在の戸籍だけで過去の身分を即断しない

内政部の戸籍資料保存年限表には,戸籍登記簿・除戸簿に加え,日本統治期の戸口調査簿・除戸簿・寄留調査簿等が掲げられている。
古い身分関係が争点となる場合には,現在の戸籍へ直ちに結論を求めず,どの時期・どの種類の資料に記録されているかを確認する必要がある。

保存制度上の取扱いと,特定人の資料が現存し,請求により交付されることは別である。
旧住所,転居先,氏名の変更,父母・配偶者の氏名を手掛かりに,受理先へ調査対象を具体的に示す。

2 婚姻と日本国籍の変動を個人別にたどる

最高裁大法廷昭和37年12月5日判決(昭和33年(あ)第2109号,刑集16巻12号1661頁)は,当時の日本国内法上,台湾人としての法的地位を有した者について,日華平和条約が発効した昭和27年8月5日の日本国籍喪失を判断した。
その対象には,現実の台湾戸籍への登載がなくても,適式な婚姻によって内地戸籍から除かれるべき者が含まれるとした。

したがって,歴史的な事案では,日本の戸籍に氏名が残っていることだけで,日本国籍が継続していたとは判断できない。
出生,婚姻・認知・養子縁組,当時の法律上の所属,条約発効時の地位及びその後の帰化等を,個人別の時系列にして検討する必要がある。

同判決は,当時の法制度と具体的な婚姻を前提とする判断である。
現在,台湾関係者と婚姻した日本人が当然に日本国籍を失うという規則として用いてはならず,奥野健一裁判官の補足意見も多数意見と分けて読む必要がある。

第5 日本で相続準拠法を確定する

1 死亡時の国籍と適用される地域の法

法の適用に関する通則法36条は,相続を被相続人の本国法によるとしている。
日本の裁判所で手続を行うこと,日本に長く居住していたこと又は日本国内に預金があることだけで,日本の民法が適用されるとは限らない。

複数国籍の場合には通則法38条1項を確認し,日本国籍を含む場合の取扱いと,それ以外の場合の本国法の決定方法を区別する。
また,地域によって法を異にする国の国籍が問題になる場合は,同条3項により適用される地域の法を確認するため,行政書類の「中国」「台湾」という表示だけで判断を終えない。

婚姻・親子・養子関係の成立が相続人の確定の前提となる場合は,その法律関係に適用される法も区別して検討する。
相続開始の時期や身分行為の時期が古い事案では,現在の条文だけでなく,当時の規定と経過措置の確認が必要となる。

2 反致は台湾側の抵触規則まで確認する

通則法41条は,本国法によるべき場合に,その国の法が日本法を指定するときの反致を定めている。
台湾法を適用する前提がある場合にも,台湾の実体相続法だけでなく,涉外民事法律適用法の規定を確認する。

同法58条本文は,被相続人の死亡時の本国法によるとし,ただし書には中華民国国民の相続人と域内の遺産に関する特則がある。
この規定は単に最後の住所地法を指定するものではないため,日本に居住していたことから当然に日本法へ反致すると考えてはならない。

第6 台湾法が適用される場合の相続人と相続分

1 父母・兄弟姉妹・祖父母の順位を確認する

台湾の民法1138条は,配偶者以外の相続人の順位を次のように定めている。
日本法の直系尊属・兄弟姉妹の順序をそのまま当てはめず,台湾法が適用される事案として確認する必要がある。

順位相続人調査で確認すること
第1順位直系血族の卑属親等の近い者を優先し,先死亡・相続権喪失による代襲も確認する。
第2順位父母父母の生死と,法律上の親子関係を確認する。
第3順位兄弟姉妹父母双方の身分資料から兄弟姉妹の範囲を確認する。
第4順位祖父母先順位者の不存在等と,父方・母方の祖父母を確認する。

台湾民法1140条が定める代襲は,第1順位の相続人が相続開始前に死亡し,又は相続権を失った場合に,その直系血族の卑属が承継するものである。
兄弟姉妹の子も日本法と同じ条件で当然に代襲するという説明は避ける必要がある。

2 配偶者と子の割合も日本法と異なる

台湾民法1144条では,配偶者が第1順位の相続人と共同相続する場合,相続分をその相続人らと均等にする。
例えば,台湾法が適用され,配偶者と子2人が相続し,遺言・相続放棄その他の修正事由がない場合,法定相続分は各3分の1となる。

配偶者が父母又は兄弟姉妹と共同相続するときは2分の1,祖父母と共同相続するときは3分の2であり,これらの血族相続人がいないときは配偶者が全部を相続する。
親族関係図を作成した後に,適用法,先順位者の有無,配偶者の存否及び各人の相続資格を確認して相続分を計算する。

第7 相続放棄と期間を早期に確認する

台湾民法1174条は,相続できることを知った時から3か月以内に,書面で裁判所へ相続放棄をするものとし,放棄により相続することになる者への書面通知も定めている。
戸籍調査が終わるまで期間が進まないと考えず,誰がいつ相続できることを知ったのかを,資料の取得と並行して確認する。

放棄後に誰が相続するかは,同法1176条による。
近い親等の第1順位者全員が放棄した場合には,次の親等の直系卑属が相続する規定もあるため,日本法の放棄後の順序をそのまま用いず,相続関係図を見直す必要がある。

日本の家庭裁判所に提出した書類がある場合も,台湾側の手続でどのような効力を認められるかは別の問題である。
申立先の管轄,期間,提出書類,台湾側での必要な手続及び翻訳・認証を確認し,債務がある事案では財産調査や管理も並行して進める。

第8 訳文・認証・提出先の確認

台湾で取得する戸籍資料を日本の裁判所・登記所・金融機関等で使用する場合は,提出先が求める対象者,対象期間,記載事項,訳文,原本・写し及び認証の要否を確認する。
台湾で交付されたことだけを理由に,全ての日本の手続で同じ形のまま使えるとは限らない。

訳文には,原文の氏名,身分番号,日付,住所及び身分事項を対応させ,原文にない親族関係や法律上の結論を補わない。
氏名の表記揺れや日付の不一致があるときは,原文を直して訳すのではなく,対応表や追加証明によって説明する。

調査中の親族関係図と,証明資料によって確定した相続関係図も分けて管理する。
未確認者がいる段階の図を確定版として遺産分割・預金払戻し等に使用しないことが重要である。

第9 相続税の判定は準拠法と別に行う

誰が相続人となるかという民事上の問題と,日本の相続税がどの財産に及ぶかという問題は,別に判定する必要がある。
国税庁の案内でも,国外居住者が取得した国外財産に日本の相続税が及ぶ場合が示されている。

税務の確認には,被相続人と取得者それぞれの国籍,住所の履歴,在留資格,取得財産の種類・所在等を整理して引き継ぐ。
「台湾法で相続する」「相続人が台湾に住んでいる」「台湾の銀行にある」という一つの事情だけで,日本の相続税の対象外と判断してはならない。

第10 関連記事

国籍・地域表示の基本は,次の記事で整理している。
台湾人の国籍・地域表示――在留カード・住民票・戸籍,台湾旅券及び中華民国国籍の違い
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/08/29/taiwanjin-kokuseki/

昭和27年の国籍喪失と個人別の調査は,次の記事を参照されたい。
朝鮮人・台湾人はいつ日本国籍を失ったのか――外国人登録令,平和条約,昭和27年通達及び最高裁判例
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/08/29/tyousenjin-taiwanjin-kokusekisoushitsu/

韓国の家族関係登録資料を用いる相続調査は,次の記事で扱っている。
在日韓国・朝鮮人の相続人調査
https://yamanaka-bengoshi.jp/2023/02/18/zainichi-kankokujin-souzokutyousa/

第11 主な一次資料

①法の適用に関する通則法36条・38条・41条及び附則。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078

②台湾内政部戸政司「請領(閱覽)戶籍謄本及戶籍檔案原始資料」。
https://www.ris.gov.tw/documents/html/2/3/5/390.html

③同「申請戶籍謄本及閱覽戶籍登記資料處理原則」第1~3点。掲載PDFは2021年10月18日改正。
https://www.ris.gov.tw/documents/data/4/8b0cbb3e-b4b2-413d-93c3-dc3b1916134b.pdf

④同「網路申辦繼承案件戶籍謄本注意事項」。
https://www.ris.gov.tw/apply-householdRegistrationApply/app/aw072701/main

⑤同「戶籍登記簿冊卡書表保存年限表」。掲載表は2016年5月6日改正。
https://www.ris.gov.tw/documents/data/2/1/b94daa4f-ba44-4756-b305-2baf3d24b5d.pdf

⑥台湾「涉外民事法律適用法」58条・62条。
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000007

⑦台湾「民法」1138~1144条・1174~1176条。
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000001

⑧最高裁大法廷昭和37年12月5日判決・昭和33年(あ)第2109号・刑集16巻12号1661頁。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-56979.pdf

⑨国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」(令和8年4月1日現在法令等)。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm