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マグニチュード9.9は起こるのか―発生条件・巨大隕石との比較・緊急地震速報の誤報(AI作成)

第1 マグニチュード9.9という数字の意味

1 計算できる条件と実際に起こる条件

モーメントマグニチュード(Mw)9.9に相当する地震モーメントは,約8.9×10の23乗N・mである。
例えば,岩盤の剛性率を30GPa,断層の幅を200km,平均すべり量を25mと仮定すると,長さ約6000kmの断層面が一つの地震としてすべる計算になる。
しかし,必要な断層面積を式から求められることと,その広い領域が実際に連続して破壊することは,別の問題である。

本記事は,令和8年10月16日現在の資料に基づき,断層運動によるMw9.9の条件,同日の緊急地震速報で表示されたM9.9の意味,巨大隕石衝突に伴う地震動との比較を整理する。
将来の発生日・場所・確率を予測するものではない。
同日の速報のM9.9は,実際にMw9.9の巨大断層地震が発生したことを示す値ではない。

2 地震の規模と各地の震度は異なる

気象庁の解説によれば,マグニチュードは地震そのものの規模を,震度は各地点の揺れの強さを表す。
同じ地震でも,距離や地盤によって震度は異なる。
規模だけから,ある都市の震度,津波の高さ又は死者数を一意に決めることはできない。

マグニチュードには算出方法の違いがあるため,速報の「M」と,断層運動から求める「Mw」を無条件に同一視してはならない。
以下の断層の計算にはMwを用い,誤報については気象庁発表のM表記を用いる。

第2 Mw9.9に必要な断層の大きさ

1 地震モーメントから計算する

米国地質調査所(USGS)の解説では,地震モーメントM0は,岩盤の剛性率μ,断層面積A及び平均すべり量Dの積で表される。
断層面を長方形で近似すれば,Aは長さLと幅Wの積である。
μをPa,Aをm²,Dをm,M0をN・mで表すと,関係式は次のとおりである。

M0=μ×A×D=μ×L×W×D

Mw=(2/3)×(log10 M0-9.1)

Mw9.9を代入すると,M0=10の23.95乗≒8.9×10の23乗N・mとなる。
地震モーメントは断層運動の大きさを表す量であり,単位の次元が同じでも,放射された地震波のエネルギー(J)そのものではない。

2 断層寸法を仮定した二つの計算例

剛性率30GPa,幅200kmを共通の仮定とすると,次の二つの組合せはいずれもMw約9.9となる。
これは式の感度を示す計算例であり,特定の断層について実現可能性を確認した予測ではない。

長さ幅平均すべり量計算したMw
6000km200km25m約9.90
3000km200km50m約9.90

幅と剛性率を一定にすれば,平均すべり量を倍にすると,必要な長さは半分になる。
もっとも,断層の幅を地中へ無限に広げたり,局所で観測された最大すべり量を断層面全体の平均値として用いたりすることはできない。
実際の評価には,プレート境界の形状,地震を起こし得る深さ,固着状態,すべり分布及び破壊の伝わり方の検討が必要になる。

3 M9の地震が二つ起きてもM18にはならない

同じMwの比較では,差が1大きくなると地震モーメントは約31.6倍になる。
Mw9.9の地震モーメントはMw9.0の約22.4倍,Mw9.5の約4倍である。
これは地震モーメントの比であって,被害額や死者数が同じ倍率になるという意味ではない。

Mw9.0の二つの地震の地震モーメントを算術的に合計して一つのMwへ換算すると,約9.20になる。
マグニチュードの数値自体を加算することはできず,別々の地震のモーメントを合計した値も,単一地震が発生した証拠にはならない。

第3 巨大地震の連動と規模の上限

1 8800kmの連動を置いた試算の読み方

平成24年11月21日の地震予知連絡会の資料には,マリアナ,伊豆・小笠原,日本,千島・カムチャツカ及びアリューシャンの各領域について,合計8800kmを仮定した松澤暢氏のM9.9の試算がある。
同資料は幅約200km,平均すべり量20m,剛性率30GPaを置いている。
これらの条件を前記の式へ代入するとMw約9.949となり,小数第1位では9.9となる。

この資料から確認できるのは,非常に長い領域の連動を仮定すれば,M9.9という数値を計算できるということである。
曲がったプレート境界や性質の異なる領域を越えて破壊が継続すること,そのような連動の発生確率,又は近い将来の発生まで実証した資料ではない。
同会議の議事概要にも,過去にM10の発生を示す証拠がないことと,今後起きないとは言い切れないことを区別した議論が記載されている。

2 観測史上最大と物理的上限は同じではない

USGSの1900年以降の巨大地震一覧では,1960年チリ地震のMw9.5が最大である。
この観測記録だけから,9.5が地球上の絶対的な上限であるとは証明できない。

一方,USGSのFAQは,必要な断層の長さからM10以上を否定的に説明している。
別のUSGS解説は,理論上は考えられても極めて起こりにくく,必要な断層が知られていないという説明をしている。
説明の強さには違いがあるが,どちらも既知の断層の規模による制約を重視している。

したがって,Mw9.9についても,数式上の条件を示すことと,地球上の具体的な場所で発生し得ると立証することを分ける必要がある。
9.9と10.0の間に,地震の可否を機械的に分ける境界があるわけではない。

第4 令和8年10月16日のM9.9誤報

1 実際の地震と緊急地震速報

気象庁の14時00分発表資料によれば,同日12時38分頃,カムチャツカ半島付近でM6.9(速報値)の地震が発生し,国内では北海道函館市で震度1を観測した。
気象庁は12時40分頃,北海道から中部地方にかけて緊急地震速報(警報)を発表したが,実際の地震を千島列島のM9.9の地震と過大に推定したものだった。
ここで公表された誤ったM9.9を,Mw9.9の断層地震が観測された記録へ加えてはならない。

2 17時30分資料が説明した二つの原因

気象庁の17時30分発表資料は,原因として二つの点を説明している。
第一に,日本から遠く離れた地震であるにもかかわらず,国内の地震のマグニチュードを計算する式で処理したことである。
第二に,本来同じ震源を使うべきマグニチュードの計算と震度予測に,異なる震源を用いたことである。

同資料2頁の図では,マグニチュードの計算に使った震源,震度予測に使った震源及び事後に解析した震源が区別されている。
したがって,単に「震度を少し大きく見積もった」という問題として読むのは適切でなく,規模計算の方法と震源の受渡しの両方に関係する過大推定である。

ただし,同資料からは,誤った式や異なる震源が使用された実装上の詳しい経緯,なぜ最終値が9.9になったか,改修・検証が完了したかまでは確定できない。
9.9が欠測値,表示上限又は桁あふれの結果だったと断定する根拠も,同資料には示されていない。

3 速報の数字を読むときの注意

今回のM9.9は誤った推定値であり,巨大地震の発生可能性を評価する物理的な試算とは性質が異なる。
速報値と事後解析値,マグニチュードと各地の観測震度,発表時点と訂正時点を分けて確認する必要がある。
地震発生確率,被害統計及び地震保険の全体像は,日本の主な地震,被害統計,発生確率及び地震保険(AIリライト)を参照されたい。

第5 巨大隕石衝突に伴う地震動との比較

1 衝突の運動エネルギーと地震波への変換率

巨大隕石の衝突でも地震波は生じるが,衝突体が持つ運動エネルギーの全量が地震波になるわけではない。
運動エネルギーは,質量m,速度vを用いてE=(1/2)mv²で表され,衝突後には掘削,破砕,熱,大気中の波及び地震波などへ分配される。

Meschede・Myhrvold・Trompの2011年論文は,チクシュルーブ衝突を念頭に,直径10km,密度2.7g/cm³,速度20km/sの衝突体について,運動エネルギーを約3×10の23乗Jとするモデルを用いている。
地震波への変換率を仮に10のマイナス4乗と置けば,地震波のエネルギーは約3×10の19乗Jとなる。
この変換率は不確実なモデル条件であり,衝突体のエネルギーから地震規模が一意に決まるわけではない。

USGSが紹介する地震波の放射エネルギーの近似式log10 E(J)=5.24+1.44MwをMw9.9へ適用すると,約3.1×10の19乗Jになる。
したがって,上記の仮定では両者は同程度の桁になるが,これは特定の変換率と近似式に基づく比較である。
衝突エネルギー約3×10の23乗Jを,そのままMw9.9の地震波エネルギーと比較してはならない。

2 チクシュルーブ衝突のM9~M11という評価

Richardsらの2015年論文の著者原稿は,地震波への変換率などの不確実性を踏まえ,チクシュルーブ衝突の有効な規模を概ねMw9~11と評価している。
これは,約6600万年前の衝突を現代の地震計で観測してMw11と確定したという意味ではない。
変換率や周波数帯を仮定した,モデル上の換算値である。

断層地震ではせん断すべりが主要な震源となるのに対し,衝突では地表へ加わる大きな力などが地震波を生む。
2011年論文も,衝突源と断層地震の震源表現を区別している。
同じ「M相当」という数字でも,波の周波数,伝わる方向及び継続時間が同一とは限らず,断層用のμADを衝突体へ直接当てはめることはできない。

3 衝突津波のエネルギーを地震規模へ読み替えない

Rangeらの2022年論文は,チクシュルーブ衝突による津波を数値計算し,初期の津波エネルギーが2004年インド洋津波の最大約3万倍に達するとの結果を示している。
比較されている量は津波エネルギーである。
地震波のエネルギー,マグニチュード,津波高又は人的被害が3万倍になるという結果ではない。

巨大隕石衝突は,地震動に加えて,津波,衝撃波,熱及び噴出物などが重なる現象である。
断層地震と比較するときは,地震モーメント,地震波エネルギー,衝突エネルギー及び津波エネルギーのどれを比べているかを明示する必要がある。
その区別が,M9.9という大きな数字を過大にも過小にも受け取らないための出発点となる。