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台湾の養育費(子女扶養費)―金額の決め方,18歳までの期間,未払い回収及び日台間の承認・強制執行(AI作成)

台湾で「養育費」と呼ばれる費用は,離婚後の父母が未成年の子の生活・教育等のために負担する子女扶養費を指すことが多い。
本記事は,児童手当その他の公的給付や,出生から成人までの子育て費用の総額ではなく,父母間で分担する子の扶養費を扱う。
台湾法上の金額・終期・未払い時の手続と,日本と台湾をまたぐ事件の確認順序を,令和8年10月16日現在の一次資料に基づいて整理する。

第1 結論

台湾の民法には,子ども1人につき毎月一律に支払う全国共通の法定額は定められていない。
子の必要,父母それぞれの経済力・身分及び具体的な生活事情により金額を決め,複数の扶養義務者がいるときは原則としてその経済力に応じて分担する。

検索結果等で「台湾の養育費は1人当たり月1万6000台湾元」と紹介されることがあるが,この金額を現在の台湾法に基づく全国一律の公定額として扱うことはできない。
裁判例が地域の1人当たり消費支出等を参照することはあるものの,統計額がそのまま支払額になるわけではなく,子の個別の必要と父母の負担能力を併せて判断する。

台湾では令和5年1月1日から成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられた。
もっとも,同日前に契約,裁判その他によって「成年まで」又は20歳までの給付を受ける権利が成立している場合は経過措置があるため,作成日と文言を確認しなければならない。

台湾国内の未払いには,継続する給与債権等への執行や履行を促す制度がある。
他方,日本の調停調書・審判・判決を台湾の給与・預金等へ用いる場合,又は台湾の判断を日本で用いる場合は,判断の種類,確定性,送達,承認要件及び執行国の手続を別に検討する必要がある。

第2 台湾法上の扶養義務

1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない

台湾民法1114条は直系血族相互間の扶養義務を定め,1116条の2は父母の未成年子に対する扶養義務が婚姻の無効・取消し又は離婚によって影響を受けないことを定める。
親権又は監護を担っていない親であることだけを理由に,子に対する経済的負担が消滅するものではない。

父母の一方が子を日常的に監護している場合,その親は住居,食事,通学,医療及び日々の世話を現実に負担している。
他方親に求める金銭額は,子の費用全額ではなく,父母双方がどのように分担すべきかという問題である。

2 未成年子と成年後の扶養を区別する

未成年子の扶養では,子が自ら生活費を得られるかだけでなく,父母がその生活をどの程度保障すべきかが問題となる。
これに対し,成年後の扶養については,台湾民法1117条が,自力で生活を維持できず,かつ,労働能力がないことを原則的な要件としている。

したがって,18歳到達後も在学中であるという事情だけから,未成年期と同じ内容の定期扶養費が当然に続くとはいえない。
既存の合意・裁判の終期,成年後の子の就学・健康・就労能力及び父母の合意を分けて確認する必要がある。

第3 台湾の養育費はいくらか

1 子の必要と父母の経済力で決める

台湾民法1119条は,扶養の程度を扶養を受ける者の必要と扶養義務者の経済能力・身分により定める。
また,同順位の扶養義務者が複数いる場合,1115条3項により,原則として各人の経済能力に応じて義務を負う。

実務では,子の年齢・人数,居住地域,住居費,食費,衣服費,教育費,医療費,保育費その他の具体的支出,父母の収入・資産・債務及び現実の監護負担が問題となる。
父母の所得額だけを比較するのではなく,監護親が金銭以外の方法で負担している日常の監護も考慮対象となり得る。

2 地域の消費支出は参考資料であって固定表ではない

台湾台北地方法院令和6年4月2日判決は,台北市の1人当たり月平均消費支出,子の実際の生活状況及び父母の経済状態等を踏まえ,子1人の月額必要費を3万3000台湾元とし,父母の負担割合から他方親の月額負担を2万2000台湾元とした。
これは当該事件の事実関係に基づく判断であり,他の家庭にその額をそのまま当てはめる先例的な料金表ではない。

台湾桃園地方法院が令和7年2月25日に公表した事例には,未成年子の扶養費を月額8384台湾元とした例が含まれる。
公表例の金額に幅があることからも,1件の裁判例又は統計値を台湾全体の相場とせず,事件ごとの資料を確認する必要がある。

3 月1万6000台湾元は現在の全国一律基準ではない

「月1万6000台湾元」という数字を用いる記事又は検索要約があっても,出典の作成年,対象地域,子の年齢,父母の所得及び監護状況が分からなければ,現在の個別事件の算定根拠にはならない。
少なくとも,令和8年10月16日現在の台湾民法は,子1人当たりの固定月額を定めていない。

見積りを行うときは,①子の月額支出を費目別に整理し,②父母の収入・資産と現実の監護負担を確認し,③地域の消費支出等を補助資料として比較し,④臨時費用を通常の月額と分ける方法が適切である。
学校選択,塾・留学,持病又は障害に関する支出は,通常の生活費に含めるか,別途の臨時費用とするかを明確にする。

第4 台湾の養育費は何歳までか

1 令和5年1月1日以後の成年年齢は18歳である

台湾法務部の成年年齢引下げに関する案内のとおり,台湾民法上の成年年齢は令和5年1月1日から18歳となった。
そのため,同日以後に新たに未成年子の扶養終期を検討するときは,18歳到達が重要な区切りとなる。

ただし,子が18歳になれば,未払分を含む既存債権が消滅するという意味ではない。
また,当事者が合意又は裁判により18歳後の教育期間等について給付を定めることを妨げるものでもない。

2 令和5年1月1日前の合意・裁判には経過措置がある

台湾民法総則施行法3条の1は,成年年齢引下げ前に法令,行政処分,裁判又は契約によって満20歳又は成年まで利益を受ける権利が生じていた場合について,原則として満20歳までその利益を受けられる旨を定める。
台湾法務部の離婚協議に関するQ&Aも,令和5年1月1日前の離婚協議書が「成年まで」と定めていた場合,原則として20歳までと説明する。

したがって,終期を判断する際は,現在の成年年齢だけでなく,合意書,調停記録,裁判書その他の権利発生原因が作成された日と,「18歳」「20歳」「成年」「大学卒業」等の具体的文言を確認する。
終期の文言が不明確な場合は,作成時の法制度,協議経過及び子の教育予定も含めて解釈することになる。

3 18歳後の給付は別の法的根拠を確認する

18歳後については,経過措置がある既存権利,父母の合意,裁判書の定め又は成年者扶養の要件のいずれによる請求かを区別する。
成年後の子について台湾民法1117条の扶養を求める場合は,自力で生活を維持できないこと及び労働能力の有無等を具体的に検討する。

第5 合意,調停又は裁判で定める事項

1 金額だけでなく期間と支払方法を明確にする

台湾家事事件法99条は,扶養費に関する事件で,金額,期間,方法並びに当事者の収入,財産その他の経済能力に関する資料を明らかにすることを求める。
同法100条は,裁判所が一切の事情を考慮し,一括払い,分割払い又は定期金による支払を命じ,必要に応じて担保等を命じ得ることを定める。

合意書には,少なくとも,対象となる子,月額,開始日,毎月の期限,終期,支払通貨,振込先,手数料,臨時費用,所得・住所・口座の変更時の通知及び不払い時の対応を記載する。
学校費,医療費,保険料その他の臨時費用は,対象費目,事前協議,負担割合,証明書類及び精算期限まで定めると紛争を減らしやすい。

2 日台間の送金条件を具体化する

父母が日本と台湾に分かれて住む場合は,日本円又は台湾元のいずれで支払うか,換算日と換算資料,国際送金手数料,中継銀行手数料,着金期限及び送金不能時の代替口座を定める。
送金記録には,支払日,送金元,受取口座,通貨,送金額,手数料及び着金額が分かる資料を残す。

ただし,合意書へ準拠法又は裁判管轄を書くことと,その条項が子の扶養に関する国際裁判管轄・準拠法又は外国での執行を最終的に決めることは同じではない。
子の扶養には強行的な保護が関係するため,日本側と台湾側の法令に照らして条項の効力を確認する必要がある。

第6 台湾で養育費が支払われない場合

台湾家事事件法189条は扶養費等の執行費用に関する特則を置き,190条は定期的な給付の一部が履行されない場合に,将来分について継続する給与その他の債権へ執行を及ぼす仕組みを定める。
同法191条は定期給付の履行を促すための金銭的な強制措置を定め,193条は未成年子の扶養費執行について通常の差押禁止範囲に対する特則を置きつつ,債務者及びその扶養する他の未成年子に必要な生活を保護する。

実際に利用できる執行方法は,私的な合意書,調停記録,確定裁判その他の文書の種類によって異なる。
まず執行力のある名義があるか,未払期間・既払額・将来分をどのように計算するか,債務者の勤務先・預金・不動産その他の財産がどこにあるかを確認する。

台湾に財産があるからといって,日本の差押命令がそのまま台湾の勤務先又は銀行へ届くわけではない。
日本の判断を利用する場合は,次節の外国判断の承認・執行を先に整理する。

第7 日本と台湾をまたぐ請求・回収

1 最初に四つの事実を固定する

国際事件では,①子と父母がそれぞれどこに常居所・住所を有するか,②どの国でどの種類の判断又は合意を得たか,③未払額と支払通貨は何か,④給与・預金・不動産等の財産がどの国にあるかを固定する。
請求を判断する国と,財産を差し押さえる国が異なることがあるためである。

国際裁判管轄,国内のどの裁判所へ申し立てるかという管轄,扶養義務の準拠法,外国判断の承認及び強制執行は別の問題である。
一つの国との関係だけを見て,全てが同じ法で決まると扱わない。

2 日本で台湾居住の親へ請求する場合

日本の家庭裁判所に申立てができるかは,家事事件手続法の国際裁判管轄規定に照らして判断し,国際裁判管轄がある場合でも国内の管轄裁判所を別に確認する。
扶養義務の準拠法は,扶養義務の準拠法に関する法律による段階的な連結を検討し,日本の算定表を当然に台湾法上の金額へ置き換えない。

申立書等を台湾へ送達する必要がある場合は,送達方法,翻訳,住所の表記及び所要期間を確認する。
日本で判断を得ても執行対象財産が台湾にしかないときは,台湾でその判断を利用できるかを別に検討する。

3 台湾の判断を日本で使う場合

台湾の裁判所による確定判断を日本で用いる場合は,判断の種類に応じて,家事事件手続法79条の2,民事訴訟法118条及び民事執行法24条による承認・執行の要件を検討する。
確定証明,送達及び防御の機会,公序,給付内容,未払額並びに日本語訳をそろえる必要がある。

台湾の調停記録,裁判上の和解,審判又は判決を一括して同じ種類の「外国判決」と扱ってはならない。
文書ごとに日本法上の承認・執行経路を確認する。

4 日本の判断を台湾で使う場合

台湾民事訴訟法402条は,外国裁判所の確定判決について,外国裁判所の管轄,敗訴被告への適法な送達又は応訴の機会,台湾の公序良俗及び相互承認等を承認の条件とする。
台湾強制執行法4条の1は,外国裁判所の確定判決について,台湾の裁判所が執行を許す判決をした後に強制執行できる旨を定める。

もっとも,日本の家事調停調書,家事審判又は給付判決が台湾法上どの文書に当たり,402条及び4条の1の経路で扱われるかは,文書の性質ごとに確認が必要である。
日本と台湾の相互承認の実務,送達,認証・証明,中国語訳及び台湾で必要な申立書類を確認しないまま,執行可能と断定しない。

第8 よくある質問

1 台湾の養育費は子ども1人当たりいくらか

全国一律の月額はない。
子の具体的な必要,居住地域,父母の収入・資産及び監護負担等から個別に定める。

2 月1万6000台湾元が現在の基準か

現在の台湾民法上の全国一律基準ではない。
その数字を用いる場合は,出典の年月,地域,家族構成及び算定目的を確認する必要がある。

3 台湾の養育費は何歳までか

令和5年1月1日以後の成年年齢は18歳である。
ただし,同日前に成立した契約・裁判等の経過措置,18歳後を明示する合意及び成年者扶養を別に確認する。

4 台湾で養育費を払わない場合はどうするか

まず執行力のある文書,未払額及び台湾にある財産を確認する。
台湾家事事件法には,定期給付の不履行後に将来分を継続する給与債権等へ執行する制度や,履行を促す特則がある。

5 日本に住む親が台湾に住む親へ請求できるか

請求できる可能性はあるが,日本の国際裁判管轄,国内管轄,扶養義務の準拠法,台湾への送達及び最終的な財産所在地を順に確認する必要がある。
相手が台湾に住むという一事だけで,日本又は台湾のどちらで請求すべきかは決まらない。

6 日本の調停調書・審判・判決で台湾の財産を差し押さえられるか

日本の文書だけで台湾の財産を直ちに差し押さえることはできない。
台湾でその文書が承認・執行の対象となるか,文書の種類,確定性,送達,相互承認及び台湾側の申立手続を確認する必要がある。

7 台湾の裁判を日本で執行できるか

台湾の判断の種類と内容により,日本の承認・執行要件を満たすかを個別に判断する。
確定判決であれば民事訴訟法118条及び民事執行法24条が中心となり,家事判断には家事事件手続法79条の2も関係する。

第9 相談時にそろえる資料

① 子と父母の戸籍・身分関係,国籍,住所,居所及び常居所の履歴
② 離婚協議書,調停記録,審判書,判決書,確定証明及び送達関係資料
③ 子の学費,医療費,住居費その他の月額・臨時費用を示す資料
④ 父母の給与,事業所得,税務資料,預金,不動産及び債務に関する資料
⑤ これまでの送金記録,未払期間,通貨,換算方法及び未払額計算表
⑥ 相手方の勤務先,銀行口座,不動産その他の財産所在地に関する資料
⑦ 既存文書の原本,作成日,署名・押印及び日本語・中国語の翻訳

文書名が同じでも法的性質が異なることがあるため,翻訳文だけでなく原文も確認する。
未払額は,月ごとの発生額,支払額,通貨,換算及び残額が追える一覧にする。

第10 関連記事

日本の国際裁判管轄,準拠法及び外国判断の承認・執行の全体像は,国際養育費の請求と回収を参照されたい。
国際扶養の準拠法の段階的な連結は,国際扶養の準拠法で整理している。

日本国内の文書の選び方は,養育費の取り決め方を参照されたい。
日本国内の未払い回収は,養育費を払わない場合の回収方法を参照されたい。
日本法上の終期は,養育費は18歳・20歳・大学卒業のいつまでかで説明している。

第11 主な一次資料

① 台湾民法1114条,1115条,1116条の2,1117条及び1119条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000001&sid=Fth7Tj
② 台湾民法総則施行法3条の1 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000002
③ 台湾家事事件法99条,100条及び189条から193条まで https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0010048
④ 台湾民事訴訟法402条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?kw=%E6%B0%91%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E6%B3%95&pcode=B0010001
⑤ 台湾強制執行法4条の1 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0010004
⑥ 台湾法務部「民法成年年齢引下げ」Q&A https://topics.moj.gov.tw/33020/33021/33031/33180/post https://topics.moj.gov.tw/33020/33021/33031/33189/post
⑦ 台湾台北地方法院令和6年4月2日判決 https://judgment.judicial.gov.tw/FJUD/printData.aspx?id=TPDU%2C111%2C%E5%A9%9A%2C155%2C20240402%2C1
⑧ 台湾桃園地方法院令和7年2月25日公表事例 https://www.judicial.gov.tw/tw/cp-139-1400786-60c0f-1.html
⑨ 扶養義務の準拠法に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/361AC0000000084/
⑩ 家事事件手続法 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052
⑪ 民事訴訟法118条 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
⑫ 民事執行法24条 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004

本記事は令和8年10月16日現在の上記資料を基礎とする。
個別事件では,判断文書の種類,送達・確定資料及び執行対象財産の所在地に応じて,日本側及び台湾側の最新手続を確認する必要がある。