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中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行(AI作成)

第1 本記事で扱う「中国の養育費」

本記事は,中華人民共和国本土の民事法における父母から子への養育費(抚养费)を扱う。
香港特別行政区,マカオ特別行政区及び台湾には別の法制度があるため,本記事の説明をそのまま当てはめない。

中国語の「养育成本」は子育てに要する社会的・経済的費用を広く示す表現であるのに対し,法律上の請求対象として問題となるのは主に「抚养费」である。
中国の「養育費はいくらか」「何歳までか」という質問には,中国法が適用されるか,既に合意・裁判・調解があるか,父母と子がどの国に住み,財産がどこにあるかを確認してから答える必要がある。

法律上の論点中国法の基本線日中間の事件で別に確認する事項
金額子の実際の必要,父母の負担能力及び現地の実際の生活水準を考慮するどの国の法が準拠法となるか
支払終期原則18歳までであり,例外がある成年年齢だけでなく就学・障害等を確認する
変更事情により増額請求等があり得る既存合意・裁判の効力と変更手続を確認する
未払い中国の有効な裁判・調解等に基づく執行を検討する債務名義と財産がある国を一致させる
外国判断条約又は相互主義等の承認要件を確認する身分部分と金銭給付部分を分ける

第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

中華人民共和国民法典1067条は,父母が扶養義務を履行しない場合,未成年の子又は独立して生活できない成年の子が扶養費を請求する権利を定める。
父母が離婚した場合も親子関係は消滅せず,同法1084条・1085条により,子を直接養育しない側の父又は母は養育費の一部又は全部を負担する。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子も,民法典1071条により婚内子と同等の権利を有する。
父母が婚姻していたかどうかだけで養育費請求の可否を決めず,親子関係,直接養育者,子の年齢及び既存の合意・裁判を確認する。

離婚協議書,人民法院の判決,調解書その他の文書があるときは,子本人,直接養育する親その他の誰が債権者として記載されているかを原文で確認する。
日本で手続をする場合の申立人・法定代理・利益相反は,日本の家事事件手続と準拠法に基づいて別に判断する。

第3 中国の養育費はいくらか

1 収入の20~30%は固定額ではない

最高人民法院の婚姻家庭編解釈(一)49条は,養育費の額を,子の実際の必要,父母双方の負担能力及び現地の実際の生活水準に基づいて決めるとする。
固定収入がある場合は,月の総収入の20~30%を基準として定めることができ,複数の子を負担する場合は割合を適切に引き上げることができるが,一般に月の総収入の50%を超えない。

この20~30%は,すべての事件に機械的に適用する法定定額ではない。
子の人数,具体的な生活・就学・医療上の必要,父母双方の収入・財産・他の扶養負担,居住地の生活水準及び既存の養育状況を資料で示す必要がある。

2 固定収入がない場合

固定収入がない場合は,婚姻家庭編解釈(一)49条により,当年の総収入又は同業種の平均収入を参照し,前記の割合を手掛かりに額を決めることができる。
事業所得,報酬,配当,賃料等があるときは,給与明細の有無だけで無収入と扱わず,税務資料,銀行取引,会社資料及び生活実態を確認する。

特別の事情がある場合は,20~30%又は50%という一般的な割合を適切に引き上げ,又は引き下げることができる。
したがって,検索で見つけた割合だけから個別事件の金額を断定しない。

第4 養育費に含まれる費用と支払方法

婚姻家庭編解釈(一)42条は,養育費に生活費,教育費及び医療費等を含むとする。
学費,通院・治療費その他の支出が通常の定期額に含まれるか,別途分担の対象となるかは,既存合意・裁判の文言,支出の性質と必要性,父母の負担能力等から確認する。

同解釈50条は,養育費を原則として定期的に支払うものとし,条件がある場合は一括払いも認める。
51条は,一方の親に経済的収入がなく,又は所在不明である場合に,その財産を養育費に充てることができるとする。

一括払いは,定期払いより常に有利とは限らない。
対象期間,算定根拠,為替,送金手数料,物価変動,子の進学・医療上の変化及び未使用金の管理を合意書に明記する。

第5 中国の養育費は何歳までか

婚姻家庭編解釈(一)53条は,養育費の支払期間を一般に子が18歳になるまでとする。
ただし,16歳以上18歳未満で,労働収入を主な生活の源として現地の一般的な生活水準を維持できる子については,父母が支払を停止できる場合がある。

18歳になれば常に扶養義務が終了するわけでもない。
同解釈41条は,「独立して生活できない成年の子」に,高校及びそれ以下の教育を受けている成年の子並びに労働能力の喪失・一部喪失等により通常の生活を維持できない成年の子を含める。

大学在学という事実だけで当然に請求できる,又は当然に請求できないと一律に説明しない。
就学段階,労働能力,生活維持能力,既存の合意及び個別事情を中国法の原文と具体的資料から確認する。

第6 離婚時の合意,増額請求及び未払い

民法典1085条は,養育費の額と期間について父母が協議し,協議が成立しないときは人民法院が判断するとする。
同条は,合意又は裁判で定めた額を超える合理的な要求を子が父母の一方又は双方へすることを妨げない。

婚姻家庭編解釈(一)55条は,離婚後に子が養育費を請求する場合は別事件として提訴するとし,58条は,現額が現地の実際の生活水準を維持するのに足りない場合,疾病・就学等の実際の必要が当初額を超えた場合その他の正当な理由がある場合の増額請求を定める。
子が姓を変更したことを理由に養育費の支払を拒むことはできないとする同解釈59条も,合意書作成時に確認する。

最高人民法院の婚姻家庭編解釈(二)16条は,一方が子を直接養育し,他方が養育費を負担しないとの合意について,当事者間では効力を認めつつ,直接養育する側の経済状況の著しい悪化等により子の生活水準が著しく低下し,又は合理的な必要費が著しく増加した場合には,子が他方へ養育費を請求できることを定める。
「養育費を請求しない」という離婚合意だけで,将来の子の請求がすべて排除されるとは扱わない。

同解釈17条は,養育費を負担すると約束しながら履行しない場合の請求を定める。
未払額を計算するときは,支払開始月,各月の支払期,支払済額,代物給付,変更合意及び時効・執行期間に関する個別論点を資料化する。

第7 中国で養育費を請求し,未払いを回収する場合

中国で新たに請求する場合は,親子関係,子と父母の居住地,人民法院の管轄,適用法,請求権者及び送達方法を最初に確認する。
養育費を定めた判決又は調解書がある場合も,それが発効しているか,支払義務者と給付内容が特定されているか,未払額を計算できるかを原文で確認する。

婚姻家庭編解釈(一)61条は,生効した判決・裁定・調解に基づく子への養育費等の義務を当事者が履行しないとき,人民法院が強制執行できる旨を定める。
もっとも,実際の回収には,執行申立ての期間,管轄,債務者の識別情報,勤務先,銀行口座,不動産その他の財産,現地代理人及び翻訳・公証等を個別に確認する必要がある。

日本にいる監護親が中国で手続を進める場合は,日本から提出する出生・婚姻・離婚・親権・監護及び送金関係の文書について,原本,翻訳,公証又は認証の要否を提出先の人民法院又は現地弁護士に確認する。
本記事は,特定事件で中国の人民法院が管轄を認め,又は特定財産から回収できることを保証するものではない。

第8 日中間の事件では準拠法を先に確認する

日本の裁判所で親子間の扶養義務を判断する場合は,親子関係の準拠法から直ちに結論を出さず,扶養義務の準拠法に関する法律2条を確認する。
第一順位は扶養権利者の常居所地法であり,その法により扶養を受けられないときは当事者の共通本国法,さらに扶養を受けられないときは日本法へ進む。

子又は義務者が中国籍であるという事実だけで,中国法の20~30%基準を日本の裁判所が当然に用いるとは限らない。
常居所,国籍,重国籍,請求する権利の法的性質及び適用時点を確認する。

中国の裁判所で渉外扶養事件を扱う場合,中華人民共和国渉外民事関係法律適用法29条は,被扶養者の常居所地法,国籍国法又は主要財産所在地法のうち,被扶養者の権利保護に有利な法律を適用する旨を定める。
これは中国の抵触法規則であり,日本の裁判所における準拠法判断にそのまま用いる規定ではない。

第9 中国の判決・調解書を日本で使う場合

中国の判決又は調解書に養育費の支払が定められていても,日本で当然に強制執行できるわけではない。
まず,文書の作成主体,法的性質,確定・発効,債権者・債務者,給付内容,対象期間及び送達・応訴の記録を確認する。

家事事件手続法79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判等について,性質に反しない限り民事訴訟法118条を準用する。
同条の承認要件は,外国裁判所の裁判権,敗訴被告への適法な呼出し又は応訴,裁判内容と手続の公序及び相互の保証である。

承認され得ることと,給付部分を日本で強制執行できることも別である。
民事執行法24条による執行判決の要否・管轄を確認し,日本国内の給与,預金その他の財産に対する執行手続へ進む。

離婚という身分関係の部分と,養育費という金銭給付の部分を分けて検討する。
中国の判断があるからという理由だけで,日本での新たな本案請求,承認又は執行判決のどれを選ぶかを決めない。

第10 日本の調停・審判・判決を中国で使う場合

日本の調停調書,審判又は判決を取得しても,中国にある給与,預金又は不動産へ日本の執行手続を直接及ぼすことはできない。
中国側で,その日本の文書が承認又は執行の対象となるかを確認する。

中華人民共和国民事訴訟法298条から304条は,外国法院の発効した判決・裁定の承認及び執行を定める。
299条は,中国が締結又は参加する国際条約又は互恵原則に従って審査し,承認し,執行が必要なときは執行命令を出す枠組みを定め,300条は承認・執行を拒否する事由を列挙する。

最高人民法院の指導性案例235号は,条約がない国との相互主義について,法律上の相互関係を肯定した事例である。
もっとも,同案例は英国の商事判決に関するものであり,日本の養育費判断が中国で承認・執行されることを直接保証する先例ではない。

日本のどの文書を,どの中国の中級人民法院へ,どの法的根拠と証明資料で申し立てるかは個別確認を要する。
確定証明,送達証明,中国語訳,認証,未払額計算及び債務者・財産の所在地を準備し,中国法の専門家に最新実務を照会する。

第11 2007年ハーグ扶養条約を当然に利用できるか

2007年ハーグ扶養条約の締約国表には,令和8年9月16日更新の表に日本及び中国本土はいずれも締約国として掲載されていない。
そのため,日中間の養育費請求について,同条約の中央当局を通じた回収ルートを当然に利用できるとは扱わない。

条約を利用できないことは,日中間で養育費を一切請求できないことを意味しない。
新たな本案手続,外国判断の承認・執行,債務者がいる国の手続及び財産所在地国の執行手続を,事件ごとに組み合わせて検討する。

第12 相談時にそろえる資料

① 子,直接養育する親及び支払義務者の氏名・生年月日・国籍・重国籍・住所・居所・常居所の変遷を裏付ける資料をそろえる。
② 出生証明書,戸籍,婚姻・離婚資料,親子関係,親権及び監護に関する合意又は裁判をそろえる。
③ 養育費の合意書,判決書,裁定書,調解書等の原本又は正式な謄本,確定・発効資料及び送達資料をそろえる。
④ 父母双方の収入,事業,資産,他の扶養負担及び居住地の生活水準を示す資料をそろえる。
⑤ 子の生活費,教育費,医療費,障害・特別支出及び増額理由を示す資料をそろえる。
⑥ 支払開始月,各月の支払期,支払済額,未払額,送金記録及び変更合意を一つの表にする。
⑦ 債務者の勤務先,銀行口座,不動産その他の財産の国・地域を確認する。
⑧ 提出先ごとに翻訳,公証,認証及び原本提出の要否を確認する。

同じ未払分について日本と中国で手続を進める場合は,二重回収を避けるため,請求額,入金及び各手続の進行を一元管理する。
相談時には,「日本で新たに請求する」「中国の判断を日本で使う」「日本の判断を中国で使う」のどの経路を検討しているかを明記する。

第13 よくある質問

1 中国の養育費は収入の20~30%で必ず決まりますか

必ずではない。
20~30%は固定収入がある場合の一般的な基準であり,子の実際の必要,父母双方の負担能力,現地の生活水準,子の人数及び特別の事情を併せて判断する。

2 子が18歳になれば必ず終了しますか

原則は18歳までであるが,16歳以上18歳未満で自立して生活できる場合の停止や,18歳以上でも高校以下に在学中又は障害等により独立生活できない場合の扶養が問題となる。
年齢だけで結論を出さず,就学段階と生活維持能力を確認する。

3 離婚時に「養育費を請求しない」と合意すれば将来も請求できませんか

当事者間の合意があっても,子の生活水準の著しい低下又は合理的な必要費の著しい増加等がある場合には,子から他方の親への請求が認められることがある。
合意文言,作成経緯,現在の必要及び父母双方の負担能力を確認する。

4 中国籍の親であれば日本でも中国の20~30%基準を使いますか

中国籍であることだけでは決まらない。
日本の裁判所では扶養義務の準拠法に関する法律により準拠法を決め,その結果として中国法が適用されるかを先に判断する。

5 中国の判決があれば日本の預金をすぐ差し押さえられますか

すぐに差し押さえられるとは限らない。
日本法上の外国裁判承認要件と執行判決等を確認してから,日本の民事執行手続へ進む。

6 日本の審判があれば中国の財産をすぐ差し押さえられますか

日本の執行手続を中国の財産へ直接及ぼすことはできない。
中国法上の承認・執行の対象,要件,管轄人民法院及び必要書類を個別に確認する。

第14 関連記事と出典

日中間を含む国際養育費の管轄,準拠法及び外国裁判の承認・執行の全体像は,国際養育費の請求と回収を参照されたい。
準拠法の段階的な決め方は,国際扶養の準拠法で整理している。
日本国内の不払いへの回収方法は,養育費を払わない場合の回収方法を参照されたい。
外国にいる当事者への訴訟書類等の送達は,外国送達の方法,送達条約及び公示送達を参照されたい。

本記事は,令和8年10月16日現在の次の法令,司法解釈,最高人民法院資料,HCCH締約国表及び日本法を基礎とする。
個別事件の中国の人民法院における管轄・提出書類・執行運用,日本の家事判断を中国で承認・執行する最新実務及び中国の判断に関する日本の裁判例全文は,事件ごとに追加確認を要する。

① 中華人民共和国民法典 https://www.spp.gov.cn/zdgz/202006/t20200602_463886.shtml
② 最高人民法院「婚姻家庭編の適用に関する解釈(一)」 https://www.court.gov.cn/fabu/xiangqing/282071.html
③ 最高人民法院「婚姻家庭編の適用に関する解釈(二)」 https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/452771.html
④ 中華人民共和国渉外民事関係法律適用法 https://wb.flk.npc.gov.cn/flfg/PDF/28487fc272234eddb41ba40d04d48188.pdf
⑤ 中華人民共和国民事訴訟法(2023年改正) https://cicc.court.gov.cn/html/1/218/62/83/443.html
⑥ 最高人民法院指導性案例235号 https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/448651.html
⑦ HCCH「2007年ハーグ扶養条約の締約国表」 https://www.hcch.net/en/instruments/conventions/status-table/?cid=131
⑧ 扶養義務の準拠法に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/361AC0000000084/
⑨ 家事事件手続法 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052
⑩ 民事訴訟法 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
⑪ 民事執行法 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004