第1 申告税額と会計上の税率を分けて考える
防衛特別法人税の導入では,申告して納める税額の計算と,決算での費用計上・税効果会計を分けて確認する必要がある。
税率4%は会社の所得に直接掛ける割合ではなく,法人税率や法定実効税率へ一律に4ポイントを加えるものでもない。
本記事は,令和8年10月15日に確認したASBJの公表済み会計基準・実務対応報告・補足文書と国税庁資料に基づき,日本基準を適用する会社の基本的な確認点を説明する。
当期の防衛特別法人税額が0円であることだけで,税効果会計への影響も必ずないとはいえない。
実際の申告税額,繰延税金資産・負債の計算に用いる税率,決算書の税負担率は,目的と計算の前提が異なるためである。
対象法人と申告税額の基本は,防衛特別法人税の総合記事を参照されたい。
第2 当期の防衛特別法人税はどう会計処理するか
1 地方法人税と同様の取扱いが基本となる
ASBJの実務対応報告第48号は,防衛特別法人税の会計処理について,地方法人税と同様に法人税等会計基準に従うと定めている。
表示も地方法人税と同様に取り扱う。
一般的な当期の損益に対応する税金を計上する場面では,売上や仕入れと同じ経費処理として考えず,法人税等として整理する。
例えば,通算法人以外で,12か月の事業年度の基準法人税額が1,000万円,留保金課税や税額控除等がない場合,防衛特別法人税額は20万円となる。
この20万円を当期の税金費用として認識し,決算日時点で未納である単純な例では,次の仕訳となる。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 決算で計上 | 法人税等20万円 | 未払法人税等20万円 |
| 後日納付 | 未払法人税等20万円 | 普通預金20万円 |
この仕訳は,通算税効果額,還付,中間納付,純資産・その他の包括利益に対応する税金等がない例である。
科目名や補助科目は会社の会計方針に従って設定し,他の税目との内訳が追跡できるようにする。
2 納付額だけから当期の費用を決めない
中間納付や税額控除等がある場合,当期の税金費用と決算後の追加納付額は一致しないことがある。
納付書や銀行口座の支出額だけを決算仕訳へ転記するのではなく,当期税額,既納付額,未払額又は還付額を照合する必要がある。
税務申告における損金算入の可否と,会計上の費用計上も別の問題である。
第3 税効果会計では何を確認するか
1 税効果会計の対象となる税金に含まれる
実務対応報告第48号は,繰延税金資産・負債の計算に用いる防衛特別法人税の税率について,地方法人税と同様に税効果会計の適用指針に従うと定めている。
また,法定実効税率の算定では防衛特別法人税率を考慮する。
税効果会計では,将来の税金に影響する一時差異について,その解消時期と適用税率等を確認する。
今期にいくら納めるかという当期税額の計算を,そのまま繰延税金資産・負債の計算へ置き換えることはできない。
繰延税金資産の回収可能性は,税率を選ぶこととは別に検討する必要がある。
2 対象事業年度と一時差異の解消時期を対応させる
防衛特別法人税は,令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
税効果会計では,当期がその対象かどうかに加え,将来減算・将来加算一時差異がどの事業年度に解消するかを確認する。
決算担当者は,税務上の帳簿価額との差額,一時差異の増減表,解消の見込み及びその時期に適用される税率を対応させる。
税制改正を反映した税率へ変更する場合も,対象年度と計算の前提を記録しておく必要がある。
第4 実効税率が一律4ポイント上がるわけではない
1 法人税額に対する4%と所得に対する割合は異なる
防衛特別法人税の4%は,基礎控除等を反映した課税標準法人税額に掛ける税率である。
法人税率23.2%に4%を単純に足して27.2%とする計算は適切ではない。
基礎控除その他の調整を無視した単純な関係だけを示すと,23.2%に4%を掛けた所得に対する割合は0.928%となる。
ただし,この0.928%も,地方税や事業税の損金算入を含めた法定実効税率の増加幅をそのまま示すものではない。
2 ASBJの法定実効税率の算式と算定例
ASBJの令和8年7月7日公表の補足文書は,グループ通算制度を適用する場合を除く法定実効税率の算式を示している。
法人税率に,地方法人税率・防衛特別法人税率・住民税率を反映し,事業税等の損金算入も考慮する仕組みである。
法定実効税率の分子は,「法人税率×(1+地方法人税率+防衛特別法人税率+住民税率)+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率」である。
これを「1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率」で除して求める。
割合は,同じ単位に揃えて計算する必要がある。
同補足文書の別紙1では,次の前提による算定例が示されている。
ここでの地方税率等は同資料の例示条件であり,すべての会社・所在地に共通する税率ではない。
| 税目等 | 算定例で用いる率 |
|---|---|
| 法人税 | 23.2% |
| 地方法人税 | 10.3% |
| 防衛特別法人税 | 4.0% |
| 住民税の法人税割(合計) | 10.4% |
| 事業税の所得割(超過課税) | 1.18% |
| 事業税の所得割(標準税率) | 1.0% |
| 特別法人事業税の基準法人所得割 | 260.0% |
この条件では,分子が32.7104%,分母が1.0378となり,法定実効税率は小数点以下第3位四捨五入で31.52%となる。
この算定例を自社へ当てはめるときは,所在地,法人の区分,適用税率及び通算の有無を確認する必要がある。
第5 基礎控除500万円を実効税率の式から引くのか
1 実際の申告税額には基礎控除を適用する
一般的な12か月の単体法人では,基準法人税額から年500万円を控除し,残額に4%を掛けて防衛特別法人税額を計算する。
基準法人税額が500万円以下であれば,この単純な条件では税額が0円となる。
短い事業年度,グループ通算,留保金課税及び税額控除等がある場合は別の確認が必要である。
2 ASBJの標準的な算式は基礎控除を考慮していない
ASBJの令和8年7月7日公表の補足文書は,法定実効税率の算式について,防衛特別法人税の基礎控除500万円を考慮していないと注記している。
したがって,同文書の算式を説明するときに,分子から500万円を直接引くことはできない。
金額である基礎控除と,割合である税率を混同しないことが大切である。
これは,実際の申告で基礎控除を適用しなくてよいという意味ではない。
また,個別の会社の繰延税金資産の計上額が,標準的な税率を掛けるだけで常に確定するという意味でもない。
当期の申告税額の計算と,会社の一時差異・解消見込み・回収可能性等を踏まえた税効果会計を区別して検討する。
第6 実務対応報告第48号と令和8年改正基準の適用関係
実務対応報告第48号は,令和8年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される。
その後,ASBJは令和8年7月7日に企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」を改正した。
令和8年改正会計基準の原則適用は,令和10年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首からである。
ただし,公表日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができ,その改正基準の適用により実務対応報告第48号の適用を終了する。
7月に改正基準が公表されたことだけで,すべての会社が直ちに同報告の適用を終えるわけではない。
改正基準と実務対応報告のいずれを適用するかを,会計年度の開始日と会社の適用方針に照らして確認する必要がある。
IFRS等の別の会計基準や,異なる会計の枠組みを採用する会社へ,本記事の日本基準の説明をそのまま当てはめない。
第7 決算担当者が揃える資料
当期税額の計算書,基準法人税額の計算根拠,事業年度の期間,所在地ごとの地方税率,通算の有無及び適用する会計基準を先に確認する。
その上で,一時差異の明細,解消見込み,繰延税金資産の回収可能性の検討資料及び税率変更の計算過程を揃える。
税額計算・会計処理は税理士や公認会計士と確認し,契約・債権放棄・会社再編・税務争訟など法的な取引内容が問題となる場合には,弁護士にも同じ前提資料を示す。
税金費用,未払額,実際の納付額及び決算書に表れる税負担率が異なる理由を,計算書から説明できる状態にしておくことが重要である。
第8 よくある質問
1 防衛特別法人税の勘定科目は何か
日本基準の実務対応報告第48号では,地方法人税と同様に法人税等会計基準に従って会計処理・表示する。
一般的な当期の損益に対応する例では,法人税等と未払法人税等を用いて整理できるが,取引の性質や会社の会計方針による確認が必要である。
2 法定実効税率はすべての会社で31.52%になるか
31.52%は,ASBJ補足文書の特定の前提による算定例である。
所在地,法人の区分,地方税率及び通算の有無等を確認せず,全社共通の税率として使用することはできない。
3 防衛特別法人税が0円なら税効果会計も不要か
当期税額が0円であることだけでは判断できない。
適用する会計基準,一時差異の解消時期,計算に用いる税率及び繰延税金資産の回収可能性等を確認する必要がある。
第9 出典・関連記事
ASBJ実務対応報告第48号(PDF実頁3~4・6~8,第7~18項・BC7~BC17):https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/zeikouka20260227_02.pdf
ASBJ企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」(令和8年7月7日改正,PDF実頁11~12,第20-7項・第21-2項):https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/zeikouka_20260707_02.pdf
ASBJ補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(令和8年7月7日,PDF実頁3・7~8,第9項・別紙1):https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/zeikouka_20260707_14.pdf
国税庁「防衛特別法人税が創設されました」(令和8年6月改訂,PDF実頁1~3):https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf
制度の対象・開始時期・税額計算は,防衛特別法人税の総合記事を参照されたい。
法人税の基本税率と所得計算は,法人税とは―税率・計算方法・申告期限と会社経営で注意する法律問題(AI作成)で説明する。