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租税条約の相互協議と国内救済―二重課税の相談で確保する期限・資料・合意後の手続(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

外国で追加課税を受け,日本でも同じ所得に課税されている場合,税額の計算に加え,どの手続で,いつまでに,何を求めるかを整理する必要がある。本記事は,企業の経理・法務担当者,税理士及び弁護士が,租税条約の規定に適合しない課税について初動を検討するためのものである。基準日は令和8年10月10日である。

相互協議の申立て,国内の不服申立て・訴訟,納税・猶予は別々に確認する。相互協議の結果を待つ間に国内の期限が当然に延びると考えてはならない。また,合意が成立しても,必要な更正・還付の手続が自動的に全て終わるわけではない。

最初に,課税した国,納税者,税目,対象所得,課税年度,通知を受けた日及び既に行った救済手続を一枚にまとめる。その上で,条約の適用と各手続の期限を照合するのが実務上の出発点となる。

第2 相互協議の位置付けと条約の確認

1 税務当局間で解決を図る手続

国税庁の相互協議ガイダンスQ1-1~3によれば,相互協議(MAP)は,租税条約に基づき,締約国等の税務当局間で,条約の規定に適合しない課税等の解決を図る協議手続である。納税者が相手国を直接訴える裁判ではない。条約があっても両国の課税の扱いが食い違い,二重課税が残る場合がある。

本記事は,既に行われた課税又は行われると認められる課税についての相談を扱う。将来の移転価格等の事前確認(APA)に係る相互協議とは,準備する資料と手続の段階を分ける。

2 国籍だけで入口を決めない

日本国籍がある,外国で税を払った,又は条約の署名があるという事実だけで,申立ての可否は決まらない。適用される租税条約,居住者等の地位,対象税目・所得・期間,相互協議規定及び申立先を確認する。条約の改正議定書やBEPS防止措置実施条約による修正も点検する。

租税条約等実施特例法施行省令12条は,条約に適合しない課税を受け,又は受けるに至ると認める場合の申立書と添付書類を定めている。国内法と条約の入口を併せて確認する必要がある。個々の条約を調べず,全ての国で同じ申立先・期限が使えるとはしない。

外交的保護では,国籍国が個人の被害について他国の国家責任を援用する。これに対し,相互協議は租税条約に定められた救済経路である。外交的保護の国内救済完了の考え方を,相互協議にそのまま移して「訴訟を終えるまで申立てできない」と考えることはできない。

第3 申立ての期限を別々に確保する

1 相互協議の期限

国税庁Q2-9は,OECDモデル租税条約では,条約に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から3年以内とされている一方,個々の条約によって異なると説明している。3年を全ての租税条約の一律期限にしない。適用条約の原文で期間と起算点を確かめ,通知書・受領日を保存する。

2 国内救済の期限

日本の国税の不服申立てについて,国税通則法77条1項は,原則として,処分を知った日(通知を受けた場合はその受領日)の翌日から3か月という期間を定める。再調査の請求後の審査請求,同条3項の処分日からの期間,正当な理由の例外及び特別な処分の期限は別に点検する。取消訴訟もその固有の期限と不服申立て前置の要否を確認する。

国税庁の事務運営指針第2・3の注2は,不服申立て又は訴訟を行っているかどうかにかかわらず,相互協議の申立てができると説明している。両方の経路を利用する場合は,片方の申立てを他方の期限保全の代わりにしない。

第4 事前相談に持参する資料と担当

1 課税・取引・主張を同じ資料で説明する

国税庁の事務運営指針第2・6に沿って,課税通知等,取引と課税の事実関係,条約に適合しないと考える理由,対象年度,不服申立書・訴状等を整理する。相手国でも申立てをしている場合は,その資料も確認する。外国語資料には日本語訳を付ける。

契約書,請求書,送金記録,税の納付証明,申告書,居住者等の地位を示す資料と,双方の当局に出した説明を対応させる。国税庁Q1-8は,両国への説明の著しい食い違いや重要資料の未提出が円滑な解決を妨げることを指摘している。

資料がそろうのを待って期限を失わないよう,申立期限と不足資料を分け,早期に国税庁相互協議室の事前相談を利用する。相談した事実を正式申立ての代わりとせず,必要書類と提出方法を確認する。

2 連携と記録の実務例

担当の分け方は受任範囲に応じて決める。次は法律上の専属業務を網羅する表ではなく,連携のための確認例である。

担当・場面確認・共有する事項
経理・税務担当課税年度,税額,納付・申告状況,証憑及び条約の適用資料を整理する。
法的救済の担当国内不服申立て・訴訟の期限,主張,既存の判断,和解・取下げの影響を確認する。
現地の専門家相手国の申立期限,訴訟・和解と相互協議の関係及び現地の還付手続を確認する。

各担当の期限表を一本にまとめ,誰が申立書を提出し,誰が不足資料と当局からの連絡を管理するかを決める。国ごとの説明内容を変える場合は,理由と根拠を共有してから提出する。

第5 納税と合意後の実施を忘れない

1 申立てと納税・猶予を分ける

相互協議を申し立てたというだけで納税が当然に止まるとは考えない。国内の不服申立てについても,国税通則法105条1項は処分の効力・執行等を妨げないことを基本とし,差押財産の換価制限等を別に定めている。

移転価格課税等の一定の事案には,租税特別措置法66条の4の2等による納税の猶予があるが,別の申請と要件確認が必要である。事務運営指針第6・42は,対象となる更正決定・相互協議との対応,他の国税の滞納,原則として担保の提供等を確認事項としている。全ての二重課税相談に使える猶予ではない。

2 合意内容と国内手続を照合する

国税庁Q2-17は,正式合意の前に合意案を文書で通知し,申立者の同意を確認すると説明している。合意案の対象年度,対象所得,両国の調整額,国内救済を続ける場合の影響を確認する。主張や期間の一部が対象外なら,残る課税を別に整理する。

国税庁Q2-18の説明では,源泉徴収以外の課税事案について,日本の更正・決定を減額する場合は職権で更正する一方,相手国の更正・決定に関する合意により日本の申告額等を減額する場合は,合意の日の翌日から2か月以内の更正の請求が必要となる。通知を受け取った日と合意日を同じものとして扱わない。

法令上の確認先は,租税条約等実施特例法7条1・2項,国税通則法23条2項3号及び同施行令6条1項4号等である。2か月を全ての還付手続へ一律に当てはめず,合意内容と適用される更正請求の要件を確認する。

3 源泉徴収・地方税・外国での還付

源泉徴収に係る還付では,自主納付か納税告知後の納付か等で手続が異なる。外国で源泉徴収された税の減額は,その国の還付手続が必要となる。日本の所得税・法人税の異動に伴う地方税の手続は,地方税当局にも確認する。いずれも,合意書だけを受領して終わりにしない。

第6 判断済みの事項と未解決の事項を分ける

1 国内の判断が既にある場合

国税庁Q2-11は,対象論点について日本で不服申立て又は訴訟の結論が示されているときは,その内容を尊重して相互協議を行うと説明している。既存の判断を無視して,初めから同じ問題を交渉できると見込まない。

判決・裁決・外国での和解について,対象税目・年度,確定の有無,認定された事実,取り消された範囲及び残る課税を分けて整理する。外国の和解に応じる前には,相互協議へのアクセスや国内救済の継続に及ぼす影響を現地専門家と国税庁相互協議室に確認する。日本の取扱いを相手国にも当然に当てはめない。

2 外国の源泉課税を受けた相談の進め方

例えば,日本の居住者が外国から受け取る使用料について条約に適合しない源泉課税を受けたと考える場合は,支払と源泉税の資料,条約上の所得分類,適用税率,特典の条件を確認する。外国側の還付・不服申立ての期限と相互協議の期限を別々に確保し,どの税額をどの国で減らす必要があるかも整理する。

これは初動の確認例であり,課税が違法であること,相互協議が必ず開始・合意されること,又は一定期間内に還付を受けられることを保証するものではない。国税庁Q1-7によれば所要期間は事案により異なり,平均24か月という取組目標を個別事案の完了期限にしない。

第7 関連記事と出典

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2 出典と確認範囲

国税庁・相互協議手続に関するガイダンスQ1の概要・期間・資料共有,同Q2の申立て・国内救済との併用・合意と実施手続,事務運営指針第2の申立て・事前相談・提出資料及び同第6の納税猶予を確認した。

法令は,国税通則法23・26・77・105条,同施行令6条,租税条約等実施特例法7条,同施行省令12条,租税特別措置法66条の4の2及び同施行令39条の12の2の該当部分を参照した。行政の手続説明と法律の規定,記事で提案した資料整理・連携方法は区別している。

国別条約,個々の外国法・判決・和解文書及び案件の課税事実は本記事だけでは確認できない。実際の申立てでは対象期間の条約原文・現地手続を確認する。本記事は,特定国の申立期限や特定案件の二重課税額を確定するものではない。