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日米地位協定と駐留経費―思いやり予算・同盟強靱化予算と費用負担の仕組み(AI作成)

第1 駐留経費では何を区別する必要があるか

1 同じ「米軍関係の費用」でも根拠と集計範囲は異なる

日米地位協定24条は,米軍を日本に維持する費用の負担原則を定める。
ただし,日本による施設・区域の提供に係る負担や,別の特別協定に基づく負担があるため,「費用は全て米側が払う」「日本が払う費用は全て特別協定による」という説明は,いずれも正確でない。
令和8年10月9日現在の協定本文と公表資料を基に,法的な根拠,予算の費目,数字の集計範囲を分けて説明する。

「思いやり予算」は,在日米軍駐留経費負担について用いられてきた俗称である。
日本政府は,令和3年12月の合意を踏まえて,その通称を「同盟強靱化予算」とすると説明した。
名称だけで負担の範囲は分からず,米軍に関係する予算の全てが同盟強靱化予算に入るわけでもない。
根拠は,林外務大臣の令和3年12月21日会見(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_001051.html)及び第5で掲げる令和8年度の公式予算図表である。

2 地位協定の総論や被害救済とは扱う問題が異なる

この記事は駐留経費の負担制度を扱うものであり,米軍人等による事故の損害賠償を定める協定18条の制度とは区別する。
刑事裁判権,身柄引渡し,事故の賠償,環境調査及び改定論の全体像は,日米地位協定の総合解説(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-chii-kyotei-keiji-saibanken-songai-baisho/)で扱っている。

第2 日米地位協定24条の費用負担原則

1 米側による維持経費と日本側による施設提供

協定24条1項は,同条2項で日本が負担するものを除き,日本に米軍を維持することに伴う費用を米側が負担する原則を定める。
2項は,2条・3条に定める施設・区域と路線権を日本側が米側に負担をかけずに提供し,相当の場合には所有者・提供者に補償することを定める。
3項は,資金取引の経理に関する日米間の取極を予定する。

ここでいう施設の提供と,日本に駐留する米軍の全ての活動費を負担することは同じではない。
土地の借料,施設整備,労務費等の具体的な費目は,協定の条文に加え,政府の説明と特別協定を照合して確認する必要がある。
根拠は,日米地位協定24条(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/24.pdf)である。

2 地位協定の範囲内で負担する費用

防衛省は,地位協定の範囲内で日本が負担するものとして,駐留軍等労働者の福利費等と提供施設整備費等を説明している。
提供施設整備には,隊舎,家族住宅,消音装置,汚水処理施設等が含まれ,個々の施設について日本側の判断で措置するとされる。
土地の借料等を含む施設提供の費用も,基本給等を負担する特別協定分と同じ費目ではない。
根拠は,防衛省の駐留経費解説「経緯」「具体的内容」(https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/)である。

第3 特別協定は何を定めているか

1 現在の協定期間と年度ごとの金額

現在の特別協定は,令和4年1月7日に署名され,同年4月1日に発効した。
7条による有効期限は令和9年3月31日であり,1条~3条は令和4年度~令和8年度の日本側の負担を定める。
この協定は地位協定24条についての特別の措置であり,地位協定全体の改定とは異なる。

特別協定5条は,日本が毎会計年度の具体的な負担額を決定して米側に通報することを定める。
したがって,5年間の交渉時の規模,ある年度の予算額,実際に支出した決算額を同じ数字として扱うことはできない。
発効日は外務省の条約掲載ページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/st/page22_003828.html),規定の内容は特別協定本文(https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/kyoutei_j.pdf)による。

2 負担する主な費目と条件

費目特別協定の根拠確認すべき条件
労務費・基本給等1条日本が雇用する労働者の給与・手当。米軍人自身の給与とは別である
光熱水料等2条適当な証明書を付して日本で公用のため調達する電気・ガス・水道・燃料等
訓練資機材調達費3条1項(a)訓練能力と即応性・相互運用性等に資することや,日本側による負担の通告等
訓練移転費3条1項(b)合同委員会における日本側の要請に基づく訓練場所の変更に伴う追加費用

3条2項は実施手続を合同委員会で定めるとし,4条は米側が経費の節約に一層努めること,6条は実施事項について合同委員会を通じて協議できることを定める。
個別の支出を評価するときは,費目の名称だけでなく,対象者・調達内容・条件と年度額を確認する必要がある。

3 労務費には従前の日本側負担との区別がある

合意議事録は,特別協定1条の給与・手当に,昭和62年の特別措置協定の発効時に既に日本の負担対象だった部分を含めないことを確認している。
給与に関係する支出が全て現在の特別協定1条によるものだと読むことはできない。
この点は,福利費等と基本給等を分ける予算図表とも併せて確認すべきである。
根拠は,令和4年1月7日の合意議事録(https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/goui_gijiroku_j.pdf)である。

第4 思いやり予算と同盟強靱化予算

1 通称の変更と法的根拠は別に読む

外務省は,令和3年の合意が在日米軍の駐留支援に加え,自衛隊と米軍の相互運用性等を含む日米同盟の強化に資するとの考えから,通称を同盟強靱化予算としたと説明している。
これは政府による名称と政策目的の説明である。
名称の変更だけから,地位協定24条が改正されたことや,全ての支出の必要性・費用対効果が確定したことを導くことはできない。

2 複数年度の合意額と令和8年度予算を混同しない

外務省の交渉時の概要では,令和4年度~令和8年度の同盟強靱化予算の規模は年平均約2110億円,5年間の総額は約1兆551億円とされる。
提供施設整備費は,特別協定に基づく経費に加えて交渉されたものとして説明されている。
これらは,次の令和8年度予算の2191億円や特別協定による負担1677億円と同じ対象・期間の数字ではない。
根拠は,外務省の特別協定概要(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100318272.pdf)である。

第5 令和8年度の予算をどう読むか

1 公式図表の金額と包含関係

防衛省の令和8年度予算図表の主な表示値は次のとおりである。
単位は億円であり,決算額ではない。

区分表示額集計範囲・関係
同盟強靱化予算2191地位協定の範囲内の614と,特別協定分の1577を含む
同予算内の地位協定分614提供施設整備329,福利費等286。四捨五入による差がある
同予算内の特別協定分1577基本給等1397,光熱水料等133,訓練資機材33,訓練移転14
周辺対策・施設借料等2470同盟強靱化予算と別の費目として整理される
駐留に関連する防衛省関係予算4660同盟強靱化予算と周辺対策・施設借料等を含む範囲
SACO関係経費115訓練移転費16を含む別区分
米軍再編関係経費2145訓練移転費84を含む別区分
特別協定による負担1677上の1577に,SACO分16・再編分84を合わせた横断的な区分

出典は,防衛省「在日米軍関係経費(令和8年度予算)」1頁(https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/zainitibeigun_kankeikeihi_r08.pdf)である。
図表の注記は,四捨五入のため合計値が合わない場合があることを明記している。

2 特別協定分をもう一度加算すると重複する

同盟強靱化予算2191億円に,特別協定による負担1677億円をそのまま加えて日本側負担とすることはできない。
1677億円のうち1577億円は,すでに2191億円に含まれている。
残る訓練移転費もSACO・米軍再編の区分に含まれるため,これらの区分と重ねて数えないことが必要である。

SACO関係経費は沖縄の負担軽減のための最終報告を実施する経費,米軍再編関係経費は地元の負担軽減に資する再編措置の経費として,防衛省が区別している。
同じ特別協定が根拠になる支出でも,政策目的による予算の分類が同じとは限らない。

3 年度・予算・試算をそろえてから比較する

公式図表には,防衛省以外の他省庁分や,国有財産を提供することについての借上試算も注記されている。
その注記には前年度の予算・試算が使われており,令和8年度の実支出と扱うことはできない。
予算は支出の計画・権限に関する数字であり,決算や現金の支払額とは区別する必要がある。

数字を比較するときは,年度,予算か決算か,実際の支出か評価上の試算か,含まれる費目,同じ費目を既に含む総額がないかを確認する。
この確認なしに,広い集計と狭い集計を並べて「負担が増えた」「減った」と評価することはできない。

第6 費用負担を評価するときの確認事項

負担の妥当性を検討する際は,まず地位協定の原則,特別協定の条件及び予算上の分類を特定する。
その上で,事業の目的,対象者・施設,調達・移転の内容,年度額,実績,節約や効果の説明を検討する。
政府が説明する安全保障上の意義と,具体的支出の経済性・必要性の評価は同じ判断ではない。

現在の協定には期限があるため,令和9年度以降の制度を調べる場合は,次の協定の署名・承認・発効と,その年度の予算を別途確認する必要がある。
現在の5年間の条件が,次の期間にも当然に続くと推定してはならない。

第7 関連記事

協定全体の内容と被害救済は,日米地位協定の総合解説(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-chii-kyotei-keiji-saibanken-songai-baisho/)を参照されたい。

施設の提供・管理・返還,施設統計と主要裁判例は,在日米軍基地の法的根拠と主要裁判例(https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/04/20/beigun-kichi/)で扱う。

特別協定3条・6条で登場する協議機関の位置付けは,日米合同委員会の解説(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/nichibei-goudou-iinkai-kengen-goui-koukai/)を参照されたい。

第8 出典

① 外務省掲載の日米地位協定24条。米側維持経費と日本側施設提供の原則。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/24.pdf

② 外務省の特別協定掲載ページ。令和4年1月7日署名,同年4月1日発効。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/st/page22_003828.html

③ 防衛省掲載の特別協定本文1条~7条・末文,7頁。費目・条件・年度額・有効期間。
https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/kyoutei_j.pdf

④ 同合意議事録全文,2頁。労務費の従前負担との区別。
https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/goui_gijiroku_j.pdf

⑤ 防衛省「同盟強靱化予算(在日米軍駐留経費負担)」令和8年4月8日更新。費目の説明・予算の注記。
https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/

⑥ 防衛省「在日米軍関係経費(令和8年度予算)」1頁。金額と各区分の包含関係。
https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/us_keihi/pdf/zainitibeigun_kankeikeihi_r08.pdf

⑦ 外務省「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」概要1頁。5年間の合意の規模。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100318272.pdf

⑧ 林外務大臣会見記録,令和3年12月21日。在日米軍駐留経費の合意と通称についての説明。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_001051.html