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共有物分割と不動産取得税――価値を等しく分けても課税される場合(AI作成)

第1 共有物分割なら非課税とは限らない

共有している土地を分けて各人の単独所有にする場合でも,不動産取得税が生じることがある。
当事者が「双方の取り分は同じ価値である」と合意したことと,税務上,従前の共有持分を超える取得がないことは,同じではない。
分割案を決める前に,分割前後の持分,不動産ごとの価格及び土地の評価単位を確認する必要がある。

本稿は,令和8年10月4日現在の法令と,最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決及び最高裁判所第三小法廷令和4年3月22日判決を基礎に,この問題を整理する。

第2 非課税の範囲と税務上の価格

1 持分を超える部分は非課税から除かれる

地方税法73条の2第1項は,不動産の取得に対して,その所在地の道府県が取得者に不動産取得税を課する仕組みを定めている。
同法73条の7第2号の3は,共有物の分割による取得を非課税とする一方,取得者の分割前の持分割合を超える部分の取得を除外している。
したがって,「共有物分割」という登記原因や合意書の表題だけでは,取得全部が非課税とは判断できない。

2 売買価格や当事者間の評価をそのまま使わない

同法73条の13第1項は,課税標準を取得時の不動産の価格とし,同法73条の21第1項本文は,固定資産課税台帳に登録された価格により課税標準となるべき価格を決定すると定める。
価格の登録がない不動産や,同条1項ただし書の特別の事情がある不動産については,同条2項により固定資産評価基準に基づいて価格を決定する。

当事者間の売買相場,不動産鑑定による評価,相続税の評価方法を参考にした配分及び固定資産評価による価格を混同しないことが重要である。
共有者間の公平な分配を考える資料と,不動産取得税の課税判断に用いる資料を分けて準備する。

第3 令和2年判決――一体利用する土地の地積按分

1 617㎡と566㎡に分けた駐車場の事案

最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決(平成31年(行ヒ)第99号,民集74巻3号227頁)は,各2分の1の持分で共有していた土地を分筆し,一方が617㎡,他方が566㎡の土地を単独所有とした事案である。
判決本文は,裁判所公表の判決全文で確認できる。

分筆後の土地も構造物で物理的に区分されず,連続して舗装され,駐車区画の一部等が両土地にまたがっており,全体が駐車場として一体的に利用されていた。
課税庁は,両土地を一画地と認定して価格を算出し,617㎡の土地の価格を,全体の価格に617/1183を乗じて求めた。

この算定では,617㎡の土地の価格が,分筆前の土地の価格の2分の1を超える。
当該事件の持分超過部分に係る課税標準額は101万3000円,税額は3万0300円であった。
この税額は当該事件の処分内容であり,現在の個別案件の税額を示すものではない。

2 最高裁が判断した範囲

最高裁は,隣接する複数の宅地を一画地として認定し,画地計算法を適用する場合,各筆の評点数は,その画地の単位地積当たりの評点数に各筆の地積を乗じて算出すべきであるとした。
持分超過部分の判断のために評価するときや,各筆の所有者が異なるときにも,これと別の評価方法を採る理由はないと判断し,本件処分を適法とした。

この判決は,隣接する土地を常に一画地とするものではない。
形状,利用状況等から一体を成していると認められることが前提であり,「面積が持分割合を超えたら,どの土地でも直ちに課税される」と一般化することはできない。
分筆線だけでなく,取得時の実際の利用状況を確認する必要がある。

第4 令和4年判決――複数の不動産は個々に比較する

1 全体の取り分が釣り合っていても相殺しない

最高裁判所第三小法廷令和4年3月22日判決(令和3年(行ヒ)第62号,民集76巻3号310頁)は,複数の不動産を一括して共有物分割した場合の持分超過部分の判断方法を示した。
判決全文によると,取得者は従前各土地について10分の1の持分を有していたところ,分割により当該土地を単独所有とし,他の共有者の10分の9の持分を取得した。

最高裁は,分割の対象とされた個々の不動産ごとに,分割前の持分割合に相当する価格と,分割後に所有する不動産の価格を比較すべきであると判断した。
この事件では,新たに取得した各土地の10分の9全部が持分超過部分に当たるとされた。
他の不動産の持分を手放したことと,取得した土地の超過部分とを一括して相殺する考え方は採られていない。

2 二つの判決で確認する事項は異なる

判決確認する事項実務上の注意
令和2年3月19日一画地として評価する複数の宅地の価格の算定方法一体利用の実態と,画地全体の価格の地積按分を確認する。
令和4年3月22日複数の不動産を一括分割したときの超過部分の判断単位全体の損得だけで処理せず,不動産ごとに分割前後を比較する。

令和2年判決の「一画地としての評価」は,令和4年判決が示す「個々の不動産ごとの超過部分の判断」と同じ問題ではない。
一画地という評価上の単位を理由に,複数の物件について取得した持分と失った持分を自由に通算できると解することはできない。

第5 分割案を合意する前の確認表

確認項目準備する資料・確認内容
不動産と持分分割前後の登記事項証明書,物件目録,各共有者の持分割合。土地は筆ごと,建物は個々に整理する。
価格固定資産評価証明書,価格登録の有無,分筆後の評価方法。当事者間の評価との違いを確認する。
土地の利用実態公図,地積測量図,現況写真,駐車区画,塀・舗装・出入口の配置,一体利用の有無。
分割案各人が取得する物件・持分,代償金,履行日,登記日及び利用状況の変更時期。
税と費用不動産取得税,登録免許税,登記・測量等の費用,代償金の支払資金。所得税・贈与税等は別の税目として検討する。
課税庁への確認物件と分割案を示して,所在地の都道府県税事務所へ非課税の範囲と評価方法を確認し,回答の前提と未確定事項を記録する。

弁護士が分割案を比較するときは,民事上の取り分だけでなく,取得後の税・登記費用を含む資金計画を税理士,司法書士等と確認することが有用である。
課税庁への事前相談で得た回答も,示した現況や分割案が変われば同じ結論になるとは限らないため,前提資料を残す。

第6 別に検討すべき取得と税目

売買による共有持分の取得,現物分割,価格賠償による単独所有化及び換価による売却は,権利移転と金銭の流れを分けて検討する。
共有物分割による非課税の規定を,一般の持分売買や,すべての取得方法にそのまま当てはめない。

また,相続による不動産の取得には,地方税法73条の7第1号の非課税規定がある。
遺産分割による取得と,相続後に成立している通常の共有関係の分割とを区別し,今回取り上げた判決の結論を,遺産分割へ一律に適用しない。

不動産取得税が生じないことから,譲渡所得税,贈与税又は登録免許税も生じないと結論することはできない。
反対に,不動産取得税だけを減らす目的で面積を等しく分け,経済的価値の偏りや使い勝手の悪化を生じさせないよう,全体の条件を比較する。

共有持分買取業者との交渉や共有物分割の方法については,共有持分買取業者の目的とトラブル対応―共有物分割と建物買取請求権も参照されたい。

第7 出典

①地方税法(e-Gov法令検索)。
②最高裁判所第一小法廷令和2年3月19日判決。
③最高裁判所第三小法廷令和4年3月22日判決。
④山本常幸「法律家のための税法知識 第15回 共有物分割の場合における不動産取得税の課税」(LIBRA2026年9月号)。

本テーマの検討の契機は,東京弁護士会が公開するLIBRA2026年9月号36頁・37頁の同論説である。
同論説の本文を確認した上で,令和2年判決については裁判所の判決全文を照合し,令和4年判決も併せて検討した。