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京大総長選考2026-立川康人氏の選出理由,意向調査3位と説明責任(AI作成)

第1 意向調査3位の立川康人氏が総長に就任

京都大学総長選考・監察会議は,令和8年6月16日,立川康人氏を第28代総長候補者に全会一致で選出した。
立川氏は10月1日に就任し,任期は令和14年9月30日までである。
6月15日の学内意向調査では,立川氏は299票で3位であり,1位の椹木哲夫氏は478票,2位の田尾龍太郎氏は301票であった。

なぜ得票3位の候補者が選ばれたのか。
京大の規程は最多得票者の自動選出を定めておらず,過半数の得票者がいない場合の再意向調査も必須としていない。
ただし,選考権限が会議にあることと,投票結果との違いを具体的に説明できていることは,別の問題である。

本記事は,令和8年10月3日を基準に,京大の選考結果,規程,議事録及び職員組合等の声明を確認し,選出理由と説明責任を検討する。
票数だけから選考全体の適法性や候補者の能力を判断するものではない。
選出・得票は選考結果のPDF1頁~3頁,就任は京都大学の10月3日付けのお知らせによる。

第2 6人の得票と意向調査の投票資格

1 立川氏の得票は有効投票の約20.8%

公式の得票数を多い順に並べると,次のとおりである。

得票順位候補者得票数
1位椹木哲夫478票
2位田尾龍太郎301票
3位立川康人299票
4位浅野耕太213票
5位波多野悦朗97票
6位江上雅彦48票

投票資格者は2241人,投票総数は1439票,有効投票は1436票,無効投票は3票であり,大学公表の投票率は64%である。
有効投票を分母に計算すると,立川氏は約20.8%で,どの候補者も過半数を得ていない。
1位との差は179票,2位との差は2票である。

これらの割合・差は公式集計(PDF3頁)から算出したものであり,会議内部の評価順位や,全学構成員の支持率を示す数字ではない。

2 全教職員・全学生による投票ではない

意向調査は,1人1票の単記無記名投票である。
投票資格は,理事,又は教授・准教授・講師及び課長補佐相当職以上として別に指定された事務職員・技術職員等に定められており,特定有期雇用・有期雇用・時間雇用の教職員等には除外規定がある。
助教・助手・学生は,その身分だけではこの意向調査の投票資格を得ない。

一方,教育研究評議会による推薦に先立つ「学内予備投票」は,助教・助手や事務職員等も含む別の資格規程によって行われる。
予備投票の上位15名(末位同数の場合の扱いもある)を予備候補者とする段階と,会議が第一次候補者6名を選ぶ段階も異なる。
投票資格は意向調査規程3条(PDF1頁),実施細則第2・別表2(PDF1頁及び4頁),学内予備投票規程3条・4条(PDF1頁)を区別して読む必要がある。

第3 選考の経過と再意向調査を行わなかった判断

1 推薦15名から第一次候補者6名,最終決定へ

大学の公表資料によれば,教育研究評議会から15名の推薦があり,選考・監察会議委員からの推薦はなかった。
主な日程は次のとおりである。

日付(令和8年)実施事項
4月6日選考日程の公示
4月23日教育研究評議会による予備候補者の推薦
5月25日第一次候補者6名の選考
6月1日第一次候補者への面接調査
6月15日意向調査
6月16日第二次選考・再面接・候補者決定
10月1日立川氏の総長就任

4月23日は推薦日であり,予備投票の投票実施日を示すものではない。
6月1日の面接では共通質問・自由質問を含む調査を行い,所信表明と共通質問への回答の様子を録画して学内に公表した上で,意向調査を実施した。
第二次選考では,提出書面,面接,意向調査等を総合的に勘案して再面接の対象者を決め,再面接の結果も踏まえて合議により選考する方法が定められていた。

根拠は選考結果のPDF1頁・3頁及び令和8年度の選考方法第6(PDF2頁)である。

2 再意向調査の実施条件と今回の議事録

(1) 過半数未達だけでは再調査は必須にならない

総長選考規程6条1項は,面接調査・意向調査の結果その他の事項を勘案して総長候補者を選考することを定める。
同条2項の再意向調査は,会議が協議により必要と認める場合に行うものである。
対象は会議の評価が上位の候補者であり,得票上位2名に当然に限られるわけではない。

令和8年度の選考方法と4月6日の公示も,再調査の必要性を判断する段階を設けている。
「誰も過半数を得なければ必ず再調査をする」という制度ではなかった。

(2) 不実施の決定は確認できるが,具体的理由は分からない

6月16日の議事録(PDF1頁)には,再意向調査を実施しないことを決定し,複数名に再度面接した上で立川氏を選んだ旨が記載されている。
ただし,再面接対象者の氏名・正確な人数や,再調査を不要とした具体的な比較判断は,同議事録には示されていない。

再調査が規程上必須でなかったことから,今回の不実施判断に十分な説明があるとまではいえない。
他方,具体的な理由を公表資料で確認できないことだけで,内部で検討が行われなかったと認定することもできない。

第4 公表された選出理由と職員組合等の批判

1 大学が評価した経験と改革の実行力

会議が選考結果のPDF1頁~2頁で示した理由は,内容に即して次のように整理できる。
①工学研究科長,将来ビジョン担当副学長,国際担当理事補等の経験を通じ,部局と全学の運営を理解していること。
②国際卓越研究大学構想を現場で進め,学部教育も含めたデパートメント制への移行を構想していること。
③持続可能な教育研究・大学運営の基盤を整え,自由の学風と対話を大切にしながら改革を遂行できると評価されたこと。

これらは会議による評価の要約であり,本記事による候補者の能力査定ではない。
1月20日決定の望まれる総長像も,国際卓越研究大学研究等体制強化計画の実現を重視していた。
結果文書は,総長像の作成に運営方針会議の意見も参考にしたと説明しているが,同会議が立川氏の選出を決めたとまではいえない。

公表理由からは大学改革の実行力を重視したことが読み取れる。
しかし,立川氏の長所が示されていることと,椹木氏・田尾氏等との比較や得票差の評価を確認できることは同じではない。

2 再調査を求める主張と説明を求める主張

京都大学職員組合中央執行委員会は,6月19日の声明で,再意向調査と,3位の候補者を選んだ理由の具体的説明を求めた。
同委員会は選考前の5月14日の要請でも,過半数の得票者がいない場合の再調査等を求めていた。
学生部も,6月20日付け声明(6月22日掲載)で,過程の詳細な公開と,可能な限り椹木氏・田尾氏を対象とする再調査を求めた。

これらは各団体の見解であり,全教職員・全学生の統一見解ではない。
組合が掲載した賛同者メッセージには,再調査には否定的でも説明を求めるものがあり,両者の要求は必ずしも一致しない。

本記事では,批判のうち,会議の独立した判断を検証できる説明を求める点を重視する。
ただし,得票順位と違う結論だけで,意向調査を全く考慮しなかったと立証できるわけではない。
また,大学の結果・議事録に加え,組合サイトには候補者6名への公開質問状の回答も掲載されており,「何も公開されていない」という評価も正確ではない。

第5 選考権限と説明責任はどう関係するか

1 法令の公表義務と文部科学省の説明

(1) 選考主体と公表義務を負う主体

現行の国立大学法人法12条では,候補者の選考は学長選考・監察会議の選考によるものとし,法人の申出に基づいて文部科学大臣が任命する。
会議は経営協議会の学外側と教育研究評議会側から選ばれる同数の委員で構成し,京大の会議規程2条は各6名を標準としている。

同法12条7項は,法人に選考結果等と選考基準の遅滞ない公表を求める。
施行規則1条の5第1項は,選考された者を選考した理由と選考の過程を公表事項としている。
ここで述べるのは令和8年10月3日現在の制度であり,現行条文だけで6月の個別選考全体の適法性を認定するものではない。

(2) 具体的な説明を求める通知の位置付け

文部科学省の平成26年8月29日通知(PDF8頁,第三2(4))は,選出理由について,基準に照らして適切と判断した理由を可能な限り具体的に示すことを求める。
選考過程にも,推薦受付期間,面接日,意向投票の実施状況等が含まれると説明している。
これは当時の法改正に関する通知であり,通知中の条番号を現行条番号と取り違えてはいけない。

したがって,氏名や会議開催日を公表しただけで説明の検討が尽きるわけではない。
一方,これらの条文・通知から,他候補者の全評点や各委員の個別発言の一律公開まで導くこともできない。

2 意向投票と法的拘束力のないガバナンス・コード

同通知のPDF7頁,第三2(1)②は,意向投票自体は禁止されない一方,結果をそのまま選考結果に反映するなどの過度な学内意見への偏重は,会議の主体的選考の観点から適切でないと説明する。
令和6年7月1日改定の国立大学法人ガバナンス・コード(PDF18頁・印刷14頁)も,補充原則3-3-1①で,意向投票によることなく会議自身の権限と責任で主体的に選考する方針を示している。

ただし,コードには法的拘束力がなく,原則を実施するか,実施しない場合に理由を説明する方式である(PDF7頁・印刷3頁)。
投票によらない選考という方針を,投票を行っただけで法令違反になるという意味に置き換えるべきではない。
また,「投票は参考」と述べるだけでは,会議が主体的に何を比較して判断したのかという疑問への回答にはならない。

3 公表資料で残る疑問と追加説明の方向

今回確認した結果文書と議事録からは,選出者の肯定的評価,得票,再調査を行わない決定,再面接及び最終決定を確認できる。
他方,候補者間の項目別比較,意向調査をどの程度重視したか,再調査を不要とした具体的理由は,これらの資料だけでは明らかでない。

独立した選考判断を理解するためには,①総長像のどの項目を重視したか,②得票順位と異なる結論を支えた比較要素は何か,③追加の投票より再面接で判断することを選んだ理由は何か,という説明が有用であると考える。
これは本記事の提案であり,各項目すべてが法令上の個別公表義務であると断定する趣旨ではない。
人事情報に配慮しながら,会議として説明できる判断の筋道を示すことが課題となる。

大学の令和8年度議事録掲載一覧には,9月14日に「総長選考の総括」を扱った旨があるが,10月3日に確認した一覧にはその議事録本文へのリンクが見当たらなかった。
総括本文や補足説明が公表されれば,現在確認できない比較判断を改めて検討できる。
公表資料だけで外部の圧力や人物の私的な動機を断定することはできず,説明の十分性への批判と,そうした事実の立証は区別する必要がある。

第6 関連記事

全国共通の制度は,国立大学の学長選考-誰が決めるか,意向投票と公表義務で説明している。
東大については,2026年の藤垣裕子氏の選出理由と意向投票,総長選考の仕組み,2020年の検証,2021年報告書と2026年の制度比較を参照されたい。
大学ごとに候補者段階,投票資格・回数及び議決方法が異なるため,東大の規程を京大へそのまま当てはめることはできない。

第7 出典・参考資料

1 法令

①e-Gov法令検索「国立大学法人法」(令和7年6月1日施行版)12条1項・2項・7項,21条の8第2項。
②同「国立大学法人法施行規則」(令和8年8月7日施行版)1条の5第1項。

2 京都大学の選考記録・内部規程

①京都大学総長選考・監察会議「第28代京都大学総長候補者選考結果」(令和8年6月16日),PDF1頁~3頁(印刷1頁~3頁)。
②同会議「総長選考規程」(令和8年1月20日施行版),6条,及び「令和8年度に実施する総長候補者の選考の方法等」,第6,PDF2頁。
③同会議「望まれる総長像について」(1月20日),「総長選考の公示」(4月6日),各PDF1頁。

④京都大学「総長選考・監察会議規程」(4月1日施行)2条,PDF1頁。
⑤同会議「総長選考意向調査及び再意向調査に関する規程」(1月20日施行)2条・3条,PDF1頁,及び「実施細則」(5月25日施行・4月1日適用)第2・別表2,PDF1頁・4頁。
⑥教育研究評議会「国立大学法人京都大学総長学内予備投票規程」(1月23日施行)3条・4条,PDF1頁。

⑦総長選考・監察会議議事録:5月25日,6月1日,6月16日,各PDF1頁,及び令和8年度掲載一覧。
⑧京都大学「立川康人 総長および理事の就任式を実施しました」(10月3日掲載)及び総長紹介・任期。

3 文部科学省の通知・ガバナンス・コード

①文部科学省「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律等について(通知)」(平成26年8月29日,26文科高第441号)第三2(1)②・(4),PDF7頁~8頁(印刷7頁~8頁)。
②文部科学省・内閣府・国立大学協会「国立大学法人ガバナンス・コード」(令和6年7月1日改定)PDF7頁(印刷3頁),PDF18頁(印刷14頁)。法的拘束力を持たない統治原則である。

4 職員組合等の見解・候補者回答の掲載資料

①京都大学職員組合中央執行委員会「総長選考・監察会議は再意向調査を実施せよ! 意向調査で3位の候補者を選出した理由を説明せよ!」(6月19日)及び「透明性の高い総長選考手続きを求めます(要請)」(5月14日)。
②学生部「2026総長選考の過程を批判し同過程の詳細な公開および再意向調査の実施を求める声明」(6月20日付け,6月22日掲載)。各団体の主張を確認する資料であり,違法性を認定した資料ではない。

③同組合掲載「総長選考・監察会議に対し,経緯の説明および再意向調査の実施を求める声明への賛同者からのメッセージご紹介02」,「2026総長選考候補者への公開質問状の回答」。
候補者回答の確認は導入及び質問1・2に限定した。